世紀末ヒャッハー伝説 〈汚物は消毒だァ!!〉 作:ヒツジ(ラム肉
ヒャッハー!
賞金首登録――それは名誉か、死刑宣告か!
だが世紀末の住民は知っている!
生き残る者は強い者ではない!
退くべき時に退ける者である!!
そして今日もまた、
荒野にひとつの英断が刻まれるゥ!!
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荒野を進む一団。
武装バイク三台。
軽装甲車一台。
歴戦のハンター部隊。
「妙だな……」
先頭の男が呟く。
風がない。
鳥がいない。
物音がない。
荒野では珍しくない光景。
だが。
経験が警鐘を鳴らしていた。
「静かすぎる」
後続の一人が同意する。
「嫌な静けさだ」
視線が自然と周囲へ向く。
砂丘。
崩れたビル跡。
錆びた鉄骨。
そして。
――いた。
黒塗りのバイク。
無造作に立てかけられている。
沈黙。
全員の動きが止まる。
誰もが理解していた。
理解してしまった。
「あれ……」
「まさか……」
ゴーグル。
装甲板。
溶接跡。
見間違える余地ゼロ。
世紀末最大級の死亡フラグ。
「ヒャッハーの……」
言葉は最後まで続かなかった。
なぜなら。
背後から声が響いたからである。
「ヒャッハー!!」
絶叫。
振り返る。
いた。
いつの間にか。
「なッ……!?」
理解不能。
接近経路不明。
気配皆無。
だが存在感だけが異様。
モヒカンの男。
満面の笑み。
狂気の輝き。
「いいねぇ!!」
実に嬉しそうだった。
まるで偶然出会った友人を見るかのように。
「客じゃねぇか!!」
ハンターたちの背筋が凍る。
敵意ではない。
悪意でもない。
純粋な歓喜。
それが最も恐ろしい。
「撃てェ!!」
半ば反射的な号令。
銃声。
爆音。
弾幕。
だが。
ヒャッハーは笑っていた。
「ヒャッハッハァ!!」
避けない。
隠れない。
止まらない。
被弾。
火花。
それでも前進。
「なにィ!?」
常識が拒絶する光景。
硬鞭が振り抜かれる。
ゴシャァッ!!
一台目のバイクが吹き飛ぶ。
金属が砕ける音。
人間の悲鳴。
恐怖が一瞬で伝染する。
「距離を取れ!!」
冷静な判断。
実に正しい対応。
だが遅い。
ヒャッハーは既に間合いへ侵入していた。
「ヒャッハー!!」
異様な速度。
異様な機動。
異様な破壊力。
装甲車へ接近。
叩き付け。
衝撃。
横転。
「撤退だ!!」
指揮官の絶叫。
それは敗北宣言ではない。
生存戦略。
荒野における最適解。
「全力離脱!!」
誰も異論を挟まない。
なぜなら。
戦って勝てる相手ではないからである。
エンジン全開。
砂煙。
急旋回。
必死の逃走。
背後。
ヒャッハーは追ってこなかった。
ただ。
笑っていた。
「ヒャッハッハァ!!」
楽しそうに。
実に楽しそうに。
「いい判断だァ!!」
意味不明な評価。
「生き延びる気概がある!!」
狂人の基準は理解不能。
そして。
最後に叫ぶ。
「また来いよォ!!」
二度と来るか。
全員が心の底からそう確信していた。
遠ざかる爆音。
静寂が戻る荒野。
誰かが震える声で呟く。
「……なんなんだよ……あいつ……」
答えは出ない。
だがひとつだけ確かな事実があった。
彼らは生き残った。
それは敗走ではない。
荒野に刻まれた。
最高級の英断であった。