世紀末ヒャッハー伝説 〈汚物は消毒だァ!!〉   作:ヒツジ(ラム肉

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第7話 「撤退という英断」

ヒャッハー!

 

賞金首登録――それは名誉か、死刑宣告か!

 

だが世紀末の住民は知っている!

 

生き残る者は強い者ではない!

退くべき時に退ける者である!!

 

そして今日もまた、

荒野にひとつの英断が刻まれるゥ!!

 

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荒野を進む一団。

 

武装バイク三台。

 

軽装甲車一台。

 

歴戦のハンター部隊。

 

「妙だな……」

 

先頭の男が呟く。

 

風がない。

 

鳥がいない。

 

物音がない。

 

荒野では珍しくない光景。

 

だが。

 

経験が警鐘を鳴らしていた。

 

「静かすぎる」

 

後続の一人が同意する。

 

「嫌な静けさだ」

 

視線が自然と周囲へ向く。

 

砂丘。

 

崩れたビル跡。

 

錆びた鉄骨。

 

そして。

 

――いた。

 

黒塗りのバイク。

 

無造作に立てかけられている。

 

沈黙。

 

全員の動きが止まる。

 

誰もが理解していた。

 

理解してしまった。

 

「あれ……」

 

「まさか……」

 

ゴーグル。

 

装甲板。

 

溶接跡。

 

見間違える余地ゼロ。

 

世紀末最大級の死亡フラグ。

 

「ヒャッハーの……」

 

言葉は最後まで続かなかった。

 

なぜなら。

 

背後から声が響いたからである。

 

「ヒャッハー!!」

 

絶叫。

 

振り返る。

 

いた。

 

いつの間にか。

 

「なッ……!?」

 

理解不能。

 

接近経路不明。

 

気配皆無。

 

だが存在感だけが異様。

 

モヒカンの男。

 

満面の笑み。

 

狂気の輝き。

 

「いいねぇ!!」

 

実に嬉しそうだった。

 

まるで偶然出会った友人を見るかのように。

 

「客じゃねぇか!!」

 

ハンターたちの背筋が凍る。

 

敵意ではない。

 

悪意でもない。

 

純粋な歓喜。

 

それが最も恐ろしい。

 

「撃てェ!!」

 

半ば反射的な号令。

 

銃声。

 

爆音。

 

弾幕。

 

だが。

 

ヒャッハーは笑っていた。

 

「ヒャッハッハァ!!」

 

避けない。

 

隠れない。

 

止まらない。

 

被弾。

 

火花。

 

それでも前進。

 

「なにィ!?」

 

常識が拒絶する光景。

 

硬鞭が振り抜かれる。

 

ゴシャァッ!!

 

一台目のバイクが吹き飛ぶ。

 

金属が砕ける音。

 

人間の悲鳴。

 

恐怖が一瞬で伝染する。

 

「距離を取れ!!」

 

冷静な判断。

 

実に正しい対応。

 

だが遅い。

 

ヒャッハーは既に間合いへ侵入していた。

 

「ヒャッハー!!」

 

異様な速度。

 

異様な機動。

 

異様な破壊力。

 

装甲車へ接近。

 

叩き付け。

 

衝撃。

 

横転。

 

「撤退だ!!」

 

指揮官の絶叫。

 

それは敗北宣言ではない。

 

生存戦略。

 

荒野における最適解。

 

「全力離脱!!」

 

誰も異論を挟まない。

 

なぜなら。

 

戦って勝てる相手ではないからである。

 

エンジン全開。

 

砂煙。

 

急旋回。

 

必死の逃走。

 

背後。

 

ヒャッハーは追ってこなかった。

 

ただ。

 

笑っていた。

 

「ヒャッハッハァ!!」

 

楽しそうに。

 

実に楽しそうに。

 

「いい判断だァ!!」

 

意味不明な評価。

 

「生き延びる気概がある!!」

 

狂人の基準は理解不能。

 

そして。

 

最後に叫ぶ。

 

「また来いよォ!!」

 

二度と来るか。

 

全員が心の底からそう確信していた。

 

遠ざかる爆音。

 

静寂が戻る荒野。

 

誰かが震える声で呟く。

 

「……なんなんだよ……あいつ……」

 

答えは出ない。

 

だがひとつだけ確かな事実があった。

 

彼らは生き残った。

 

それは敗走ではない。

 

荒野に刻まれた。

 

最高級の英断であった。

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