世紀末ヒャッハー伝説 〈汚物は消毒だァ!!〉 作:ヒツジ(ラム肉
ヒャッハー!
世紀末世界において最も危険な行為――
それは敵を甘く見ること!!
だが人は学ぶ生き物!
一度の遭遇!一度の地獄!
それだけで十分すぎる教訓となる!!
そして荒野には今、
ひとつの新常識が刻まれようとしていたァ!!
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荒野の酒場。
鉄板と廃材で組まれた即席建築。
照明は不安定。
空気は淀み。
酒は妙に強い。
世紀末らしい安息地。
「聞いたか……?」
片隅で男が呟く。
周囲の視線が自然と集まる。
荒野では情報が通貨。
噂が命綱。
「……ヒャッハーの話だ」
その瞬間。
空気が変わった。
笑い声が消える。
食器の音が止まる。
誰もが反応してしまう単語。
「あの化け物か……」
別の男が顔をしかめる。
「討伐隊が全滅したって?」
「いや……違う」
最初の男が首を振る。
「逃げ延びた連中がいる」
ざわめき。
それは異例中の異例。
ヒャッハー遭遇後の生存者。
「マジかよ……」
「どうやって……?」
問いは当然だった。
答えも単純だった。
「戦わなかった」
沈黙。
あまりにも身も蓋もない真実。
「見た瞬間に全力撤退だ」
「撃つより先に逃げた」
場が静まり返る。
「……正気か?」
「それでいいのか?」
だが男は断言する。
「それしかない」
重い言葉。
現実の重さ。
「戦う相手じゃない」
「関わった時点で負けだ」
誰も反論できなかった。
なぜなら。
全員が理解しているからだ。
ヒャッハーという存在の異常性を。
「見た目はただのモヒカンだぞ……?」
若いハンターが震える声で言う。
「だから恐ろしいんだよ」
即答。
「理屈が通じねぇ」
「目的が読めねぇ」
「恐怖で制御できねぇ」
荒野で最悪の特性。
理解不能。
予測不能。
対策不能。
「……災害だな」
誰かの呟き。
それが最も的確だった。
ヒャッハーは敵ではない。
現象。
理不尽そのもの。
「じゃあどうする……?」
問い。
全員が薄々答えを知っている。
「見たら逃げろ」
即答。
「聞いたら距離を取れ」
「噂が出たら近寄るな」
それは戦術ではない。
災害マニュアル。
そして。
酒場の扉が軋んだ。
ギィィ……
全員の視線が集中する。
緊張。
沈黙。
入ってきたのはただの行商人。
だが。
誰も安堵しなかった。
なぜなら。
もう理解してしまったからである。
いつ現れてもおかしくない。
どこにいても不思議ではない。
ヒャッハーという存在を。
「……クソが……」
誰かが毒づく。
「まだ見てもいねぇのに怖ぇ……」
それこそが本質だった。
恐怖は遭遇時に生まれるのではない。
存在を知った瞬間に発生する。
ヒャッハー。
荒野に刻まれた新たな理。
見たら終わり。
関わったら地獄。
最善策――
遭遇しないこと。
そして遠い荒野のどこか。
「ヒャッハー……♪」
黒塗りのバイクが走っていた。
誰よりも楽しそうに。
誰よりも自由に。
恐怖の震源地は、
今日もまた元気だった。