世紀末ヒャッハー伝説 〈汚物は消毒だァ!!〉   作:ヒツジ(ラム肉

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第8話 「学習する恐怖」

 

ヒャッハー!

 

世紀末世界において最も危険な行為――

それは敵を甘く見ること!!

 

だが人は学ぶ生き物!

一度の遭遇!一度の地獄!

それだけで十分すぎる教訓となる!!

 

そして荒野には今、

ひとつの新常識が刻まれようとしていたァ!!

 

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荒野の酒場。

 

鉄板と廃材で組まれた即席建築。

 

照明は不安定。

 

空気は淀み。

 

酒は妙に強い。

 

世紀末らしい安息地。

 

「聞いたか……?」

 

片隅で男が呟く。

 

周囲の視線が自然と集まる。

 

荒野では情報が通貨。

 

噂が命綱。

 

「……ヒャッハーの話だ」

 

その瞬間。

 

空気が変わった。

 

笑い声が消える。

 

食器の音が止まる。

 

誰もが反応してしまう単語。

 

「あの化け物か……」

 

別の男が顔をしかめる。

 

「討伐隊が全滅したって?」

 

「いや……違う」

 

最初の男が首を振る。

 

「逃げ延びた連中がいる」

 

ざわめき。

 

それは異例中の異例。

 

ヒャッハー遭遇後の生存者。

 

「マジかよ……」

 

「どうやって……?」

 

問いは当然だった。

 

答えも単純だった。

 

「戦わなかった」

 

沈黙。

 

あまりにも身も蓋もない真実。

 

「見た瞬間に全力撤退だ」

 

「撃つより先に逃げた」

 

場が静まり返る。

 

「……正気か?」

 

「それでいいのか?」

 

だが男は断言する。

 

「それしかない」

 

重い言葉。

 

現実の重さ。

 

「戦う相手じゃない」

 

「関わった時点で負けだ」

 

誰も反論できなかった。

 

なぜなら。

 

全員が理解しているからだ。

 

ヒャッハーという存在の異常性を。

 

「見た目はただのモヒカンだぞ……?」

 

若いハンターが震える声で言う。

 

「だから恐ろしいんだよ」

 

即答。

 

「理屈が通じねぇ」

 

「目的が読めねぇ」

 

「恐怖で制御できねぇ」

 

荒野で最悪の特性。

 

理解不能。

 

予測不能。

 

対策不能。

 

「……災害だな」

 

誰かの呟き。

 

それが最も的確だった。

 

ヒャッハーは敵ではない。

 

現象。

 

理不尽そのもの。

 

「じゃあどうする……?」

 

問い。

 

全員が薄々答えを知っている。

 

「見たら逃げろ」

 

即答。

 

「聞いたら距離を取れ」

 

「噂が出たら近寄るな」

 

それは戦術ではない。

 

災害マニュアル。

 

そして。

 

酒場の扉が軋んだ。

 

ギィィ……

 

全員の視線が集中する。

 

緊張。

 

沈黙。

 

入ってきたのはただの行商人。

 

だが。

 

誰も安堵しなかった。

 

なぜなら。

 

もう理解してしまったからである。

 

いつ現れてもおかしくない。

 

どこにいても不思議ではない。

 

ヒャッハーという存在を。

 

「……クソが……」

 

誰かが毒づく。

 

「まだ見てもいねぇのに怖ぇ……」

 

それこそが本質だった。

 

恐怖は遭遇時に生まれるのではない。

 

存在を知った瞬間に発生する。

 

ヒャッハー。

 

荒野に刻まれた新たな理。

 

見たら終わり。

 

関わったら地獄。

 

最善策――

 

遭遇しないこと。

 

そして遠い荒野のどこか。

 

「ヒャッハー……♪」

 

黒塗りのバイクが走っていた。

 

誰よりも楽しそうに。

 

誰よりも自由に。

 

恐怖の震源地は、

 

今日もまた元気だった。

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