神の血を受け継ぐ者:世界樹の守護者 ( Inheritor of Divine Blood: Guardian of the World Tree)   作:Sol Pendragon

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(Chapter 4) 4. すべての始まり、パート3。

オムニシエント・ピーオーブイ(Omniscient POV)

 

「私は誰か……? 私は……セイバー(Saber)だ」

 

アルスの左手の紋章が深紅に輝いた。

 

「えっと……セイバーさん、どうしてうちにいるの?」とアルスは尋ねた。

 

「全部説明するのは面倒だ。さっきの質問を考えながらその木に触れろ。それと、英霊(Heroic Spirits)と英霊の座(Throne of Heroes)についても思い浮かべろ」

 

冷たい声だった。

 

「それで本当に何か分かるの?」と半信半疑で聞き返す。

 

ここ数日、彼はワールド・ツリー(World Tree)や、見え始めた奇妙なもの――マナ(mana)を理解しようとしていた。触れても何も起きなかった。だから疑うのは当然だった。

 

「本当に鈍いな。さっさと触れろ」

 

視線を感じる気がして、彼は従った。

 

手が触れた瞬間、今度は違った。金色の光が腕から全身へ広がる。はっきりとした繋がり。感情まで伝わる。

 

嬉しさ。高揚。

 

「……僕の両親を殺したの?」

 

声が震える。だが目は逸らさない。

 

感情が揺れ、複雑に絡む。悲しみ。

 

金色の文字が浮かぶ。

 

『NO』

 

アルスは気づかぬうちに止めていた息を吐いた。胸が激しく鼓動する。

 

嘘かもしれない。それでも信じたかった。悪意は感じなかった。

 

涙がこぼれる。緑の光が包み込み、疲労と重圧を溶かす。

 

慰められているのだと理解した。

 

「教えて。あなたは何? 守護者って何をするの?」

 

『私はワールド・ツリー。この星と全生命は私と繋がっている。守護者の真の役目は、私を他の位相へ安全に繋ぐこと』

 

「他の位相?」

 

『時が来れば話す。今は生きよ』

 

彼は深追いしなかった。

 

「彼女は何? どうしてここに? 英霊と英霊の座って?」

 

再び光が弾け、知識が直接流れ込む。英霊、サーヴァント(Servants)、令呪(Command Seals)、英霊の座。

 

理解は説明なしに完了した。

 

だが負荷は重い。息が荒くなる。

 

手を離すと光は消えた。

 

「……あの時、本当に何もできなかったの?」

 

沈黙の後、声。

 

「私が召喚された時、両親は既に死んでいた。生きていたのは君だけだ」

 

震え、そして深く息を吸う。

 

彼は頭を下げた。

 

「命を救ってくれてありがとう。一生忘れない。あなたにも、ワールド・ツリーにも感謝してる」

 

枝が揺れ、葉が舞う。

 

「礼はいらない。取引を果たしただけだ」

 

「それでも、ありがとう」

 

舌打ち。

 

「立て。もう行く」

 

「待って。本当の名前は? 姿は見せられない?」

 

「必要ない。セイバーでいい。不可視は気に入った」

 

「じゃあ……ヒーローって呼んでいい?」

 

長い沈黙。

 

「私は英雄ではない。英雄は失敗しない。セイバーと呼べ。危険な時は守る。明日来い。最低限の護身術を教える」

 

声に痛みが滲んだ。

 

風が止み、気配が消える。

 

その夜、アルスはさらに多くを知る。魔術、神、まつろわぬ神、カンピオーネ(Campione)。

 

世界は思っていたより深い。

 

翌日から剣の基礎訓練が始まった。剣だけは半ば可視化される。

 

三か月が過ぎる。

 

スミコの容体は悪化する。

 

ワールド・ツリーは多量のマナを消費していた。残りは結界維持やセイバーへの供給に必要だった。

 

やがて恐れていた時が来る。

 

スミコは二十五年の闘病の末、息を引き取った。

 

葬儀の後。

 

「一人でここにいるべきじゃない」とナオ。

 

ヒロも説得する。

 

だがアルスは拒む。

 

部屋へ駆け込み、涙を流す。

 

そこに小さな少女がいた。

 

金髪を青いシュシュで結んだ少女。顔に漫画が乗っている。

 

「ナオさん……?」

 

少女が目を開ける。

 

「ママ?」

 

誤認。

 

気づき、慌てて鼻を殴る。

 

「ご、ごめん!」

 

「君は誰?」

 

「早坂愛(Hayasaka Ai)。母と来たの」

 

やがて名を告げ合い、彼女は去る。

 

その夜、ヒロが部屋に入る。

 

沈黙。

 

「どうして僕だけ?」

 

震える声。

 

「皆いなくなる」

 

ヒロは遮らない。

 

「祖母は強かった。人生を恨まなかった」

 

静かに語る。

 

「死者に縋るな。生きろ。前へ進め」

 

荒いが温かい手が頭に置かれる。

 

「でも……痛い」

 

「ああ。痛くて当然だ。それだけ大切だった証だ」

 

アルスは額をヒロの腕に預け、静かに震える。

 

外では夜風が揺れる。

 

見えない場所で、ワールド・ツリーと、一人の女もまた、同じ痛みを抱えて見守っていた。

 




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