神の血を受け継ぐ者:世界樹の守護者 ( Inheritor of Divine Blood: Guardian of the World Tree)   作:Sol Pendragon

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(Chapter 7) 7. ブレイヴ・ニュー・ワールド(Brave New World)、パート2

アルスは言語の壁のことをまったく考えていなかった。その可能性は一度も頭をよぎらなかった。

 

本当に彼のミスだった。

 

もしもっと早く気づいていれば、セイバー(Saber)やレア(Leah)に何か翻訳魔法を知っているかどうか聞いていただろう。

 

意思疎通ができなければ、基本的なことすらこなせない。

 

考え込んでいたアルスは、目の前の武装した二人の男が叫んでいることにほとんど気づいていなかった。

 

彼らの声は鋭く切迫していたが、アルスには一言も理解できなかった。

 

二人は動揺しているように見えた。緊張し、今にも突撃しそうだった。

 

アルスは手話を知らなかったが、敵意がないことを示そうと必死に身振りをした。

 

自分を指差し、次に彼らを指差し、それから両手で大きくバツ印を作った。同時に叫ぶ。

 

「アイ…ミーン…ノー…ハーム!」

 

なぜか英語に切り替えていた。それで落ち着いてくれれば、と小さくため息をつく。

 

だが、まったく効果はなかった。

 

むしろ二人はさらに激昂したようだった。叫び声を上げながら、武器を振り上げてアルスへと突進する。

 

「このクソ野郎、俺たちが大人しく殺されると思ったのか!」一人がアルスには理解できない言語で叫びながら斬りかかってきた。

 

言葉は分からなくても、顔に浮かぶ怒りは翻訳を必要としなかった。

 

アルスは剣を構え、正面からその一撃を受け止め、刃を傾けて攻撃を受け流す。

 

鋼が鋼を擦る音が響き、力を逸らされた剣士は体勢を崩した。

 

その瞬間、最初の男の背後、アルスの死角から槍が心臓を狙って突き出される。

 

剣を受け流した直後で刃が塞がっている。槍使いは完璧なタイミングだと思ったに違いない。

 

だがアルスは迷わなかった。

 

手首をひねり、剣の柄頭を下へと振り下ろして槍の穂先を弾き飛ばす。同時に前へ踏み込んだ。

 

槍はかすめるように通り過ぎ、寸前で外れる。

 

剣士が立て直す前に距離を詰め、懐に入り込み、そのまま拳を鼻へと叩き込んだ。

 

鈍い衝撃音が響く。男の握力が緩み、剣が手から滑り落ちる。よろめき、後方へ倒れ込んだ。

 

アルスは止まらない。

 

槍使いへと旋回し、槍の根元付近を足で蹴り上げ、同時に穂先近くを踏み下ろす。

 

逆方向の力が武器を激しくねじり、槍は男の手から吹き飛んだ。

 

「なっ――?!」

 

何が起きたのか理解する前に、アルスはすでに目の前にいた。

 

鋭いアッパーカットが顎を跳ね上げる。

 

男は背中から地面に叩きつけられ、肺から空気が抜けた。

 

二人とも地面に倒れ、気絶していた。

 

アルスは常人より強いが、この世界で自分がどの程度通用するのかはまだ分からない。

 

少なくとも、この二人は大した苦労もなく制圧できた。

 

あまりに早く終わったため、彼自身も拍子抜けするほどだった。

 

戦うつもりはなかった。誰かを傷つけるつもりもなかった。

 

だが彼らは明確な殺意をもって突っ込んできた。

 

急所を狙うその動きに、それははっきりと表れていた。

 

見ず知らずの相手を即座に殺そうとする者たちに対して、気絶させた程度で罪悪感を抱く必要はない。

 

アルスは素早く動き、剣と槍を遠くへ放り投げた。

 

それからバックパックからロープを取り出し、二人の手足を木に縛りつける。

 

それぞれ片手だけを自由にしておいた。その後、その手を無理やり口元へ押し付け、さらに歯の間にロープを噛ませてきつく縛り、猿轡をかませる。

 

これで大声は出せないが、かろうじて話すことはできる。

 

もっとも、彼には一言も理解できないが。

 

それでも十分かもしれない。先ほど彼らが叫んでいたとき、体内で何かが反応したのを感じていた。

 

黄金の果実(Golden Fruit)によって授かった新たな能力が、彼らの言葉に反応していたのだ。本能的にそれを察した。

 

その能力の名はパーフェクト・レプリケーション(Perfect Replication)。

 

ほぼあらゆるものを複製できる能力だ。ただし代償はある。

 

複製のたびにマナを消費する。

 

複雑さによって消費量は変わるが、理解が深まるほど必要量は減っていく。

 

この能力があれば、彼らの言語を習得できるはずだ。

 

そのためには、話してもらう必要がある。

 

アルスは二人の身体と所持品を調べ始めた。この世界について何も知らない。

 

魔法を使えるかもしれないし、隠されたアーティファクトや爆発物を持っている可能性もある。油断はできない。

 

何しろ、彼らは自分を殺そうとしたのだ。

 

セイバーとの訓練とは違う。彼女は本気で殺すかのように戦ったが、それは訓練だった。命を奪うことはないと分かっていた。

 

これは現実だ。

 

彼らは喉と心臓を真っ直ぐ狙ってきた。

 

セイバーの下で訓練していなければ、襲われた瞬間に凍りついていただろう。

 

徹底的に調べたが、大したものは持っていなかった。ゴブリンから回収したものに似た色付きの石がいくつか、硬貨、そして袋の中にバンダナが二枚。

 

硬貨はこの世界の通貨かもしれない。他に水筒と干し肉もあった。

 

バンダナを見て、アルスは手を止める。

 

典型的な盗賊だろうか。

 

多くのRPGでは、盗賊はモンスターと同じくらいありふれている。

 

バンダナは彼らを識別する最も単純な印だった。

 

ギルドや騎士団に提出すれば報酬がもらえることもある。

 

偏見かもしれないが、見た目と行動はまさにそれだった。

 

何の躊躇もなく殺しに来たのだから。

 

こんなジャングルの奥深くに来るのは誰だ?

 

盗賊なら隠れ家にしやすい。近くの街道を通る旅人を襲うこともできる。

 

もしそうなら、近くに仲間がいる可能性もある。

 

ここに留まるのは危険だ。

 

幸い、アルスは二人を街道から離れた場所へ引きずってきて縛っていた。

 

だが、盗賊ではない可能性もある。

 

RPGのローグのような冒険者の盗賊職かもしれないし、別の何かかもしれない。

 

だが事実は一つ。彼らは殺そうとした。

 

自然に目覚めるのを待つわけにはいかない。

 

アルスは水筒の栓を抜き、剣士の顔に水をぶちまけ、軽く頬を叩いた。

 

一人ずつ起こす方がいい。

 

苦しげなうめき声とともに、剣士はゆっくり目を開けた。

 

最初に見えたのは白いぼやけた塊――風に揺れるたてがみのような長い白髪。

 

思考は霞の中を漂っていたが、視界がはっきりすると、目の前にアルスが立っているのが分かった。

 

そして記憶が戻る。

 

この男と戦っていた。

 

恐怖が顔を走る。動こうとするが、身体は縛られている。

 

ロープはきつい。

 

もがくうちに、仲間も同じように縛られているのが見えた。

 

必死に暴れるが、解けない。やがて抵抗は弱まり、猿轡越しに低く哀願するような声が漏れた。

 

アルスは無言でしばらく観察し、近づく。

 

「なぜ俺を殺そうとした? お前たちは盗賊か?」

 

だが剣士には意味不明な音の羅列にしか聞こえない。

 

「た、頼む…殺さないでくれ!」

 

くぐもった声はかろうじて母語として通じる程度だ。

 

アルスにはただの雑音だ。

 

言語の壁は双方向だった。しかしこの状況では捕らわれた側の方が残酷だ。

 

交渉もできない。命乞いもまともにできない。

 

剣を持った男が目の前に立っているのだから。

 

沈黙はできない。

 

男は声色と表情で必死に訴える。泣き真似でも何でもする。

 

アルスは指を差し、男を硬直させる。

 

ゆっくりと口を指し、手で開閉の動作をする。

 

話せ、という合図だ。

 

音のパターンを感じ始めていた。能力がかすかに反応している。

 

男は理解し、再び命乞いを繰り返す。

 

アルスはその音をそっくりそのまま真似した。

 

男の目が見開かれる。

 

アルスは首を振り、人差し指を振る。

 

一瞬、拒絶だと思った。

 

だが再び話すジェスチャー。

 

続けろ。

 

今度は理解した。同じ言葉の繰り返しではなく、話し続けろという意味だ。

 

困惑しつつ従う。

 

口を押さえられ、明瞭には話せない。

 

もし塞がれていなければ叫んでいただろう。

 

どうせ理解されないと分かると、涙目の演技をしながら罵倒を並べ始めた。

 

やがてもう一人も目を覚まし、罵声を聞いて顔をしかめる。

 

状況を説明し、アルスは同じジェスチャーをする。

 

二人とも話し続けた。

 

分が過ぎ、やがて一時間。

 

喉は痛み、屈辱的で苦しい。

 

だがアルスは聞き続ける。

 

「いつまで続けさせる気だ、この野郎」

 

「手が自由になった瞬間、頭をかち割ってやる」

 

「他の連中は来ると思うか?」

 

「あと数時間持てば、ボスと連中が通るはずだ」

 

「その時は俺が殺してやる」

 

「そこまで待てないな」とアルスが突然言った。

 

二人は跳ね上がる。

 

「な、何だと?!」

 

「言葉が分かるのか?!」

 

「ならなぜ理解できないふりを!」

 

アルスは完全に言語をパーフェクト・レプリケーション(Perfect Replication)で複製した。一時間かかった。初使用で難しかったのだ。

 

慣れれば短縮できるだろう。

 

だが今は別だ。

 

ボスたちが来るなら急ぐ必要がある。

 

「記憶喪失なんだ。だが君たちのおかげで話せるようになった。良かっただろ?」とアルス。

 

二人は戸惑う。

 

「そ、そうか?」

 

「誤解も解けたし、解いてくれないか?」

 

「誤解? 殺そうとした件か?」

 

「ち、違う!」

 

アルスは無言で軽く殴った。協力的になるまで。

 

北のグレイフォレスト(Northern Gray Forest)。グレイウルフ(Gray Wolves)で名付けられた危険な森。

 

東へ三十分で村。

 

塔はバベルタワー(Babel Tower)。迷宮都市オラリオ(Orario)にあり、強力なファミリア(Familia)と冒険者が集う。

 

「ダンジョンシティ? 本当にダンジョンがあるのか? ファミリアとは?」

 

剣を持ち上げると、二人は必死に説明した。

 

神々が天から降り、ファミリア(Familia)を作る。

 

祝福ファルナ(Falna)を与え、成長とレベルアップを可能にする。

 

魔法も存在するが希少。

 

アルスは決めた。

 

オラリオ(Orario)へ行く。

 

さらに三十分、街の構造や危険を聞く。

 

そして剣を軽く振る。

 

「盗賊の扱いは? 殺すのか?」

 

二人は凍りつく。

 

半分冗談だが、知られる必要はない。

 

「殺さないでくれ!」

 

反応で確信した。

 

生け捕りの方が報酬が高い。

 

彼らの仲間は最近村人を誘拐し、奴隷商の隊商も襲った。

 

まもなくこの道を通り、売る予定だ。

 

怒りが胸に燃える。

 

だが冷静に。

 

村への道が分からない。

 

二人を木から解き、手首足首は縛ったまま背中合わせに結ぶ。

 

首にも緩く縄を回す。

 

脚の縄は外し、手は縛り直し、猿轡も戻す。

 

剣を持ち監視しながら案内させる。

 

二十分後、森が薄れ、家が見える。

 

文明に到達した。

 

少し離れた場所で、大きな隊商が森道を進む。

 

約三十五人。

 

アルスが聞いた盗賊団だ。

 

だがバンダナも粗野な服もない。

 

「ボス、隊商に潜り込むのは名案でしたな」

 

「商人許可証も手に入れたし!」

 

「今後も使えますか?」

 

「馬鹿者! 本物の商人の許可証だ。巡回に襲われないためだけだ」

 

皮肉だ。

 

「本物の商人に…」

 

「誰だ今の!」

 

騒ぎは収まる。

 

「奴隷だらけの隊商を捕まえられて運が良かった」

 

「レナード(renard)もいるぞ」

 

「ボス、あの娘で楽しんでも?」

 

檻の中、小柄で曲線的な少女。

 

金髪、狐耳と尾、緑の瞳。

 

着物姿で震える。

 

多くの少女は虚ろな目。

 

ボスは殴る。

 

「触るな! 純度が高いほど高値だ!

 

イシュタル・ファミリア(Ishtar Familia)が探しているらしい。

 

持ち場に戻れ!」

 

男は退く。

 

隊商は進み続け、ボスは檻の前で監視を続けた。

 




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