神の血を受け継ぐ者:世界樹の守護者 ( Inheritor of Divine Blood: Guardian of the World Tree)   作:Sol Pendragon

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(Chapter 9) 9.村人の救出、パート1

「お、俺は――あの森で目を覚ます前の、この世界のことは本当に何も覚えていないんだ。気づいたら、あそこにいた。自分でも驚いたよ」とアルス (Ars) は言った。

 

「ふむ……」ヒュプノス (Hypnos) は目を閉じたまま、低くつぶやいた。「ここに来る前に、何か犯罪を犯したことはあるか? この村に来た理由は何だ?」

 

「犯罪なんてした覚えはない。俺は犯罪者じゃない」とアルスは答えた。「オラリオ (Orario) に向かう途中で、ここに立ち寄って休んでいただけだ」

 

短い沈黙が流れた。それからヒュプノスが再び口を開いた。

 

「……嘘はついていないな」

 

アルスは小さく息を吐いた。その後も質問は続いた。

 

どこで盗賊と遭遇したのか。どうやって捕まえたのか。そういったことだ。

 

アルスはできるだけ簡潔に答えた。すべてが終わると、ヒュプノスはわずかに背もたれにもたれた。

 

「チーフ」と彼は気だるげに言った。「こいつにIDを渡せ。問題ない」

 

チーフはうなずいた。

 

数分後、アルスは小さな身分証を手渡された。

 

そこには彼の名前が記されていた。

 

アルサラン・アデオン・アルヴェンディス (Arsalan Adeon Arvendis)。

 

その下には村の名前。

 

ルノア村 (Runoa village)。

 

アルスはすでにチーフに名前や基本的な情報――年齢も含めて――を伝えていた。

 

これで少なくとも、この世界で自分の身元を証明するものが手に入った。

 

彼は建物の外へ出た。他の者たちはすでに外に集まっていた。

 

全部で二十七人。

 

ほとんどはキャラバンの護衛。数人は村人だった。

 

だが、その中で二人だけ、すぐに目を引いた。

 

「よし、聞け!」頬に傷のある背の高い男が一歩前に出て言った。

 

「俺はデリック (Derrick)。この隊の指揮を取る」

 

その隣には、やや背は低いが同じく屈強な男が立っていた。

 

「ポール (Paul)」と彼は短く言った。「副隊長だ」

 

二人とも、他の者とは明らかに雰囲気が違っていた。

 

(ファミリアの一員か)とアルスは思った。

 

「俺はレベル1だ」とデリックが付け加えた。「ポールも同じだ」

 

「盗賊がファミリアに所属していないからといって油断するな」とポールが言う。「数は力になる」

 

アルスは黙って聞いていた。

 

彼らがレベル1とはいえ、最も頼れる戦力であり、経験もアルスより上であるはずだった。

 

「俺たちはダルトン (Dalton) のキャラバンを二年以上護衛している」とデリックは続けた。「こういう仕事は稼ぎがいいからな」と豪快に笑った。

 

後ろでポールがうなずいた。

 

ほとんどのファミリアは資金を必要とするため、戦闘に特化した冒険者にとって護衛の仕事は一般的なのだろう。

 

納得できた。

 

自分の世界でも、人は金になる仕事を選ぶ。

 

ここで違うはずがない。

 

まもなく一行は動き出した。盗賊の進路はすでに分かっていた。時間を無駄にはできない。

 

歩きながら、人々は自己紹介を始めた。気軽に話す者もいれば、警戒を解かない者もいた。

 

先ほどまでの緊張は少し和らぎ、代わりに静かな決意が漂っていた。

 

ノーラン (Nolan) がアルスの近くに来た。

 

「……さっきはありがとう」と彼は言った。

 

「二人を捕まえてくれて」

 

アルスは彼に視線を向けた。

 

「気にするな」

 

ノーランは後頭部をかいた。

 

「いとこが……あの夜、連れていかれたんだ」

 

声が落ちた。

 

「まだ……生きてるかどうかも……」

 

彼は言葉を最後まで続けなかった。

 

アルスは黙っていた。かける言葉がなかった。

 

しばらくして、ノーランは無理に笑みを作った。

 

「とにかく……取り戻す」

 

アルスはうなずいた。

 

「ああ」

 

会話は途切れた。他の者たちも話し始める。昔話をする者、作戦を話す者。

 

あるいは、雰囲気が沈みすぎないように努める者もいた。

 

「なあ」と護衛の一人がアルスに声をかけた。「どうやってあの二人を捕まえたんだ? 周囲は探したが成果はなかった。まさか捕まえられるとは思ってなかった」

 

アルスは彼を見なかった。

 

「……運だ」

 

「運か?」男は笑った。「じゃあ今回もその運に期待だな」

 

アルスは返事をしなかった。ただ歩き続けた。意識は会話に向いていなかった。

 

アルスは慎重に自分の剣を観察した。それが鋼でできていると聞いていたからだ。彼の能力、パーフェクト・レプリケーション (Perfect Replication) を得てから、一つの考えが浮かんでいた――構成と構造を理解すれば、自分の体の一部を金属に変えることができるのではないか?

 

その考えを試すため、アルスは最も身近な金属から始めた――自分の剣だ。

 

記憶している限り、鋼は鉄と炭素から作られる――正確には合金だ。純粋な鉄は柔らかすぎて、まともな刃にはならない。簡単に曲がってしまう。

 

だが、わずかな炭素を加えることで、金属は硬く、強くなり、柔軟性を失わずに鋭い刃を保てる。

 

このバランスのおかげで、鋼は武器に適している。

 

アルスは鋼や他の金属についてすべてを知っているわけではなかった。化学の授業で学んだ基本だけだ。

 

だが――

 

さらに情報が流れ込んできた。

 

未知でありながら、理解できる。

 

鉄。Fe。原子番号26。それは元から知っていた。

 

それでも、その情報は突然、頭の中に現れた。

 

明確な思考として浮かび上がる。

 

原子は規則正しい配列――格子構造を形成している。通常状態では体心立方構造。密ではない。だから柔らかい。

 

そして炭素。

 

より小さな原子。

 

鉄を置き換えるのではなく、その隙間に入り込む。

 

侵入型。

 

その言葉が自然に浮かんだ。

 

構造を歪ませ、層が滑るのを防ぐ。

 

それが硬さであり、強さだ。

 

さらに数値が続く。

 

炭素は多くは必要ない――1%未満。それでもわずかな量で全てが変わる。

 

少なすぎれば柔らかく、多すぎれば脆くなる。均衡が必要だ。

 

アルスの握りが強くなる。

 

次に熱。

 

加熱によって構造が変化する。原子が再配置され、より密になる。炭素はより均一に広がる。

 

そして急冷――

 

構造は固定され、硬くなる。

 

だが不安定。

 

だから焼き戻しが必要――再び加熱し、内部応力を取り除く。

 

硬すぎてもいけない。柔らかすぎてもいけない。

 

刃はただ作られるものではない。

 

制御されるものだ。炎だけでなく、構造によって鍛えられる。

 

アルスはわずかに眉をひそめた。

 

これらを意識的に学んだ覚えはない。

 

それでも、流れ込んでくる。

 

視線が鋭くなる。

 

淡い金色のオーラが剣を包んだ。まるでそれを査定しているかのように。

 

それは単なる光ではなかった。

 

まるで……情報。

 

分解され、再構築され、剣と一体化していく。

 

彼の意識がそれを一つずつ吸収していく。

 

組成だけでなく――

 

構造も。

 

鍛造で形成された層。

 

微細な欠陥。

 

わずかに混ざったスラグ。

 

他元素の痕跡――マンガン、あるいはシリコンの気配。

 

純粋ではない。決して純粋ではない。

 

だがアルスはすべて理解した。

 

呼吸がゆっくりになる。

 

そしてさらに奇妙なものが現れた。

 

映像。

 

断片的な映像。

 

振り下ろされるハンマー。

 

熱。

 

火花。

 

溶けた金属の輝き。

 

職人の手――安定し、熟練した。

 

感情さえ感じ取れた。

 

集中。作品に込められた誇り。重労働による疲労。

 

アルスの目がわずかに見開かれる。

 

(この力は……ここまでできるのか?)

 

鑑定?

 

物質の理解だけでなく――

 

その歴史までも?

 

アルスがこうした気づきを得ている間にも、時間は流れていた。

 

ゆっくりと、静かに、数時間が過ぎ去っていた。

 

彼らは目的地に近づいていた。

 

何人かが彼に話しかけ、名前を呼んだが、反応はなかった。ただついていくだけで、意識はここにないのは明らかだった。

 

やがて誰も話しかけなくなった。

 

様子があまりにも異様だった。しかしアルス自身は気づいていない。まるでトランス状態だった。

 

やがて彼は正気に戻った。汗をかき、荒い呼吸をしていた。マナは大きく消耗していた。

 

周囲を見渡すと、森の中にいた。無意識のままここまで来ていたらしい。

 

「どうした? 大丈夫か?」後ろからノーランが声をかけた。

 

アルスはうなずいた。

 

そして手を見つめ、ずっと考えていたことを試した。

 

マナが消費される中、指の一本が鋼へと変わった。

 

本当にできる。

 

気づかぬうちに笑みが浮かんだ。

 

鍛錬を積めば、全身を鋼に変えることも可能かもしれない。

 

ダイヤモンドやチタン、タングステンでも同じことができるのか?

 

ダイヤモンドは最も硬い天然物質だが、最も強靭ではない。脆く、強い衝撃で砕ける可能性がある。

 

タングステンは非常に高い融点を持ち、耐熱性に優れるが、常温では脆い。

 

そのため、チタンや鋼の方が実用的だ。強度、靭性、耐久性のバランスに優れ、武器や構造材に適している。

 

それでもダイヤモンドやタングステンも状況によって有用だ――ダイヤモンドは切削や摩耗に、タングステンは高温環境に適している。

 

できるだけ早く探す必要がある。

 

だが反動も大きかった。未知の情報で頭が満たされたような感覚。頭痛は耐え難い。

 

理解するのに費やしたマナと時間も無視できない。

 

指一本を鋼に保つだけでも、マナの消費は激しかった。

 

アルスは手を鋼に変える練習を続けた。

 

幸い、手はポケットに入れていたため、誰にも気づかれなかった。

 

一方で、目的地に近づくにつれて盗賊への攻撃計画が立てられていた。

 

彼らは盗賊が通るとされる分岐点の近くで止まった。

 

盗賊は村の反対側から来るらしく、この場所は隠れ家よりも村に近いため、アルスたちは先に到着できた。

 

盗賊が現れるおおよその時間も分かっており、顔を識別できる村の護衛も同行していた。

 

そして今、アルスたちは森の中に身を潜め、盗賊のように待ち伏せをしていた。

 

なんという皮肉だ。

 

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