ヤーナムの狩人とオラリオの導き手:啓蒙から始まる恋文字(れんじ)   作:もいもい130

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第15話:安全地帯の地獄、あるいは「密会」の誤解

 

第18階層、迷宮の楽園。

クリスタルの輝きが降り注ぐ美しい森の中で、およそこの世のものとは思えない奇妙な光景が繰り広げられていた。

「……マジェスティック……マジェスティック……!」

アイズ・ヴァレンシュタインが、昨夜の悪夢の残響を振り払うように剣を振るう。だが、対峙する狩人は、その剣先が空気を裂く音すら立てることを許さない。

「静かにしろと言っている……。響けば、あの導き手が来る……」

狩人は遺志の中に杖を沈めたまま、無音のメンシス神拳を繰り出す。アイズの剣筋を最小限の動きでいなし、その懐へ滑り込んでは、ぺちぺちと、しかし確実に神経を逆撫でする打撃を叩き込んでいく。

「あ……っ、また……この、変な感じ……!」

「ああ、そうだ、素晴らしい! マジェスティック! 夢は、常に呪わしく、そして慈悲深いものだ。……なればこそ、瞳が必要なのだ。内なる瞳が!」

狩人の口から漏れるのは、狂える主がかつて放った恍惚たるうわ言。

二人の動きは、もはや戦闘というよりは、高度に訓練された、あるいは狂気に満ちた「暗黒舞踏」のようであった。

その時、運悪くベル・クラネル、リリルカ・アーデ、ヴェルフ・クロッゾの三人が、休憩場所を求めてその近くを通りかかった。

「……あれ? 誰か戦ってるのかな。凄い気配が——」

ベルが茂みをかき分け、その光景を目撃した。

そこには、自分を突き放したあの帽子を被った男と、憧れの剣姫が、至近距離で互いの身体を触れ合わせるようにして、音もなく、奇妙なリズムで激しく動き回っている姿があった。

「…………え?」

ベルの思考が停止した。

剣は使っていない。しかし、二人の距離はあまりに近く、アイズは頬を紅潮させ、喘ぐように「マジェスティック」と呟いている。

「ベ、ベル様……? あれって、もしかして……」

「……いや、リリ。あれはどう見ても、その……『密会』ってやつじゃねえか?」

ヴェルフが呆然と呟く。

ベルの目には、憧れのアイズが、あの恐ろしくも得体の知れない狩人と、森の奥で自分たちの理解を超えた親密な儀式に耽っているようにしか見えなかった。

「……アイズさんが、あの人と……あんなに、楽しそうに……」

ベルの心に、絶望と混乱の渦が巻き起こる。

「…………誰だ」

狩人がピクリと反応し、ベルたちの方を向いた。

その瞳の奥にある深淵の光を見て、ベルは恐怖とショックのあまり、脱兎のごとくその場を駆け出した。

「わあああああああ! す、すみませえええん!!」

「あ、ベル様!? 待ってください!」

逃げていく少年たちの背中を見送り、狩人は忌々しそうに狩人の帽子を深く被り直した。

(……見られたか。……もしあの少年が、今の光景を誇張してあの導き手(エイナ)に報告すれば……)

狩人の背筋に、上位者と対峙した時以上の冷たい汗が流れる。

エイナ・チュールによる第3ラウンドの説教。それはもはや、死よりも忌むべき事態だった。

「……貴様、今の少年を知っているのか。……帰れ。一刻も早く、あの少年の口を塞がねばならぬ」

「……待って。まだ、終わって……マジェスティック……」

アイズの追撃を振り切り、狩人は必死の形相でベルを追うために走り出した。

もはやそれは狩りではなく、ただの口封じのための必死な逃走劇であった。

「……待て、少年! 待つのだ! 素晴らしい(マジェスティック)誤解だ!」

その叫びも空しく、絶叫する少年の背中は遠ざかっていく。




どうしてこうなった最初考えて筋書きから大いに脱線してしまった悪夢だァ
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