『愛』カツ! 〜夜空の星に太陽を添えて〜   作:夕叢白

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第1話 衝撃☆スターライトに現れた一番星!

スターライト学園、名門アイドル養成校として名を馳せるその学び舎には特色のある三人のアイドルがいた。クールなオーラを全身に纏って赤紫の髪をロングにしている美少女、『美しき刃』と呼ばれ、後輩から畏敬の念を抱かれる紫吹蘭。青色の髪をサイドテールで結び、お姉さん的オーラを漂わせる美少女、通称『アイドル博士』こと霧矢あおい。そして、流麗と称したくなる黄金色の髪を弾ませ、元気一杯の笑顔を振りまく美少女、『太陽の化身』として知られる星宮いちご。日本中を席巻する彼女ら三人で結成されたユニットは『Soleil(ソレイユ)』の名で知られている。

 

今日も今日とて、三人はアイドル活動、通称アイカツに精を出していた。後輩である大空あかりや氷上スミレ、新条ひなきに先達としてアドバイスを授けながら、元トップアイドルの神崎美月より託されたアイカツの未来のため、そして何より自分自身、延いては応援してくれるファンのために。

 

「ええ────星宮達は相変わらずよ、美月。」

 

『.......それは、何よりです。安心しました。織姫学園長、実は...。』

 

「星宮達の近況を尋ねるために連絡をくれたわけではないのでしょう?分かっているわ。貴女にしては珍しいけれど、何か悩み事かしら。」

 

『織姫学園長には何でもお見通しですね...。実は数ヶ月前から、とあるアイドルの夢を見るようになったんです。』

 

夜な夜な夢境の存在し得ないライブで溢れんばかりの観客席を沸かせるそのアイドルは夜空に輝く星のように、鮮烈で嘘に塗れていた。朧気な意識の中でさえ、彼女が歪な形でアイドルとして花開いた事くらいは理解できてしまった。星宮達のような『青空』ではなく、自分自身の『夜空』とも違う。『ひとつの空』で繋がる私達とは一線を画す存在、孤独な『一番星』()()()()()()()()()()神崎美月の可能性の一つとして、彼女の姿は美月の心に深く刻まれた。

 

「成程...美月はそのアイドルから単なる夢とは思えないほどの強烈すぎるインスピレーションを受けた、という認識で合ってる?」

 

『仰る通りです。私の知るアイドル像を根底から覆す人間、スピリチュアルの一言で片付けることのできないあの生々しさ...。彼女を、探したいんです。』

 

「その娘の名前は?」

 

『星野、アイ。』

 

 

 

 

 

 

 

アイカツシステムのない世界、魔法のようなカードに内包されたファッションもなければ、観客の盛り上がりを可視化するアンテナもない。けれど、不自由とは言えず、決してエンターテインメントが廃れているわけではない。そんな世界で産まれた一人の女の子は昔から、頻繁に不思議な夢を見る。

 

日本中にアイドル文化が深く根付き、トップを目指す彼女らのために独自のシステムが開発され、誰もが笑顔でお互いを支え合い、時に高め合い、最後には同じ方向を向いてトライし、ゴールする。まるで夜空に浮かぶ星々のように、キラキラと輝いていて眩しい少女達の物語。

 

自分とは正反対だな、と女の子は思っていた。少女らは両親からの愛を正しく享受して、希望に満ち溢れた瞳で人生を華やかに生きていたから─────自分には愛が解らないから、女の子は余計にそう感じた。だから、突拍子もないその出来事は本来至るはずだった女の子の在り方を明確に変えるものであった。

 

「えっ...?あれ......ここ、どこ?」

 

施設で眠りについた夜、また件の夢を繰り返すのだろうか?と微睡みに沈んでいった後、ふと覚醒すれば、女の子は身一つで外に放り出されていた。あの母親の元でさえ、一方的に勘当された事はない。したがって、職員によるネグレクトという線はほぼ確実に有り得ない。なら、何で自分は外にいて、夜だった空は明るくて、どことも知れないだだっ広いグラウンドに立っているのか。

 

「夢遊病...いやいや、ないないっ。」

 

「あーーーーッ!危なーーいっ!!」

 

「夢...か、普通に考えて。」

 

「どいてぇ〜!!!」

 

「へ?」

 

衝撃と同時に明滅する視界、遅れてやってきた久々の鈍痛。女の子、星野アイは嫌でも現実を認識せざるを得なかった。

 

 

 

スターライト学園のグラウンドで、大空あかりは日課である走り込みに励んでいた。近頃は学園寮で一緒の部屋になった氷上スミレやポンポンクレープのキャンペーンガールオーディションで友好を結んだ新条ひなきと行動を共にする事が多いものの、各々の活動があるため、毎日べったりというわけではない。

 

「アイ!カツ!アイ!カツ!」

 

アイカツの掛け声と走り込みのマルチタスクはスターライト学園に通うアイドルにとって登竜門みたいなもの、つまり慣習であり、デイリーミッションだ。一部走り込みを極端に苦手とする吸血姫がいたり、地下に籠る異名持ちアイドルも存在するが、大体の生徒は走っている。因みに洗脳ではない。

 

「えっ...?あれ......ここ、どこ?」

 

大空あかりの不幸は全力疾走時の前方に、突如同い年くらいの女の子が出現した事だろう。何の前触れもない超常現象を予想できるはずもなく、既に二人の衝突は避けられない距離。

 

「どいてぇ〜!!!」

 

何やら考え事をしている様子の女の子に向けて大声を張り上げてみるも、まるでこちらを認識する気配がない。こんな時、尊敬する星宮先輩の身体能力ならどうにかしてしまうんだろうなぁ・・・と現実逃避をしながら、星野アイと大空あかりは勢いよく衝突した。

 

「あいたた......えっと、止まれなくてごめんね...大丈夫だった?」

 

「んー...いったー......でもま、これくらい平気平気。」

 

お互い打ち所も悪くなかったようだ。星野アイは額を押さえつつすっと立ち上がり、眼下で涙目ながら自分の事を心配する茶髪の少女を視界に捉える。初めて見る顔だった。ジャージ姿だが、その身奇麗な雰囲気から施設の子じゃない事は明白。言葉が通じるならば、日本には違いない。この場所の地名を聞けば、少しは今置かれている状況を把握できるだろうか。

 

「ねっ、ちょっと聞きたいんだけど、ここってどこかな?」

 

「えっ!どこって......ご...ごごご、ごめんねえええ!!私がっ...私がぶつかったせいで記憶が...!」

 

「あはは、全然違うよー大丈夫。」

 

実を言うと、大空あかりは星野アイ以上に取り乱していた。今しがた正面衝突した女の子の不自然な質問もあって、それ以前に影も形もなかった人間が一瞬で目の前に現れたのだから、当然と言えば当然である。

 

「本当に?でも、もしもって時もあると思うから、保健室で診てもらお!」

 

「保健室?ここってやっぱり学校なんだぁ。」

 

「え?うん、スターライト学園だけど......あっ、ほら早く早く!」

 

違和感はあった、数え切れないほど。目の前に出現した事は勿論、スターライト学園の制服さえ着ていない、おまけに学園を学校と口にしたこと。そう呼ぶ人がいないわけではないが、スターライトを学校と呼称する人の大半は部外者だった。しかし、心優しき大空あかりにとっては取るに足らない、些細な違和感でしかない。

 

結果、星野アイはあかりに手を引かれ、半強制的に保健室行きとなった。だが、彼女を責める人間はこの学園にいないだろう。エンタメ業界はコンディションが命。小さな怪我でも、後のパフォーマンスに悪影響を及ぼす可能性があるなら治療は受けるべき、とスターライト学園の生徒は教育されている。

 

星野アイは自分を引っ張って必死に走り、それでも時々後ろを振り返る気遣いを欠かさないあかりを見て底抜けのお人好しだ、と評価する。全く以って理解に苦しむ現状ではある。でも、不思議と悪い気はしなかった。

 

 

 

 

 

 

 

光石織姫、スターライト学園における学園長。衰えを知らない美貌を持つ彼女が執務室でその連絡を受けたのは、神崎美月との通話を終えた四時間後の事だった。

 

「大空が保健室に部外者を...?」

 

保健師からの内線で告げられた内容に、思わず眉を顰める。最近になってやっと活動が軌道に乗り始めた大空あかりが学園内の保健室に部外者を連れ込んだ。部外者の落ち着いた様子から緊急性の低い案件だったが、念のため、学園長の判断を仰ぎたい。報告は簡潔に行われ、内線は切られる。

 

現在、彼女は神崎美月から聞いた話を基に『星野アイ』という存在を調べている最中だった。関係各所に連絡を取り、同じ名前の少女が在籍していないか、可能な範囲で伝手を辿っている。ドリームアカデミーの夢咲ティアラにも情報を共有しており、協力を要請している。ティアラ曰く、どんな眉唾でも神崎美月の興味を引いた対象には特別な何かがある、動く理由はそれだけで十分、という次第だった。

 

したがって、織姫学園長は手が離せない状況にある。緊急性の低い案件ならば尚更であった。

 

『もしもし、学園マザーから俺に直接連絡なんて珍しい!何か...ありました?』

 

「ええ、実は─────。」

 

 

 

一方その頃、星野アイは保健室のベッドで退屈そうに膝を抱えて座っていた。正面には連行、元い案内してくれた大空あかりが丸椅子に腰掛けて苦笑いしている。

 

「怪我がなくて本当によかったぁ〜。」

 

「大丈夫って言ったのにねー?誰かさんが聞く耳持たないから。」

 

「あ、あはは...それは...その...ごめんなさい。」

 

「冗談、こっちこそ...ごめんね?こんな事で迷惑かけちゃって。」

 

断るべきだった。周辺の地理を聞き出して、立ち去るべきだった。スターライト学園とは耳慣れない学校だが、保健師は明らかに一目で星野アイを部外者と認識していた。この後に待ち受けているのは、事情聴取とあの施設への送還のみ。多方面に迷惑をかけた記録だけが残る。嗚呼、それはとても嫌だなぁ、なんて。

 

「あーあ......夢くらい、ゆっくり魅せてよ。」

 

夢遊病であろうとなかろうと、この際どうだってよかった。ただ、花ぞの園に戻りたくない。嫌いなわけじゃない。数年前に味わった()()に比べれば、居心地は保証されている。でも、我儘と言われようが身勝手だと罵られようが、抜け出したかった。いいなぁ、目の前で微笑を湛える穢れを知らない自由な雛鳥にほんのちょっと嫉妬する。それくらい、許してほしい。

 

星野アイが、ぐるぐるとした思考の渦に呑まれていた丁度その時、場違いなほど高らかな声が保健室に響き渡った。

 

「あーかーりーハニィーッ!!」

 

「えっ?あっ、ひゃい!?」

 

星野アイ曰く、舞台俳優の如く回転しながら保健室に飛び込んで来た男は今まで見てきた大人の中で、一番へんてこだったという。

 

「部外者を連れ込んだって話は本当か?ストレンジャー・イン・ザ・ハウス!?」

 

「す、すと...??部外者って......あ、この子の事ですか?」

 

「オー!ノー!マジだったのか。ザッツ・ビッグ・トラブルだぜハニー...。」

 

へんてこな男ことジョニー別府、侮るなかれ、彼はスターライト学園で教鞭を執る非常に有名な振付師であり、元トップアイドル神崎美月の振付を直接指導していた大御所中の大御所。多くの生徒から信頼されていて、尚且つ指導者としての能力は一級品。決してジョニー・〇ップではない。

 

そんな有名人とは露知らず、星野アイはジョニー別府の事を大袈裟な反応を繰り返すへんてこで失礼な人だと思っていた。部外者発言は甘んじて受け入れよう、事実でしかない。ただし、人の顔を見てオーノーとは不躾にもほどがある。それも年頃の女の子の顔を見て、だ。もっと別の反応があるだろう、と顔面偏差値に自信があった星野アイは多少立腹していた。

 

「ごめんなさいっ!でも、運動場で走ってたらぶつかっちゃって...怪我をしてたら一大事だと思ったので。」

 

「そういうわけか......。オッケー、学園マザーも納得してくれるだろう。ただ、そこのキュートなハニー?君からは最低限事情を聞かなきゃならない。」

 

親しみ易い振る舞いの中に一瞬、自分に対する警戒の色が混じった事を星野アイは見逃さなかった。侮蔑や色情以外の視線は彼女にとって珍しいものであり、アイはその時初めて眼前の男に興味を持った。

 

「はーい。正直、私も何が何だか...まだ自分の状態を理解できてないからぁ、お手柔らかに?お願いします。」




時系列的にはアイカツは116話と117話の中間、推しの子は原作開始前の星野アイが施設から脱走する前です。

アクアを救いたい・・・ならアイ生きてなきゃダメやん?あれ?アイ生かせたとしてカミキヒカルどうにかせなあかんやん・・・。

せや!根本から運命捻じ曲げたろ!という流れで執筆した脳筋です。
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