妖精と白き夜叉   作:さとモン

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おひさしぶりです。
一ヶ月ぶりですな(´・ω・`)
夏休み中に少ししか進まなかったことを、深くお詫び申し上げます。
しかも短い、低クオリティ……
そういえば、作者の右人差し指を、悲劇が襲いました。一応元気です( ・`д・´)


二十二話 坂田銀時である証明

 

『もうひとつの世界?』

 

まだ十にもいかぬ少年は、頭をかしげた。

 

少年は縁側に座り、一人の男と話していた。

 

 

男曰く、この世界とは違う世界が存在し、それは似て異なる世界だそうだ。

 

『ええ…、正確には、こことは違う世界がたくさんあるんですよ。』

 

こと男、顔こそ女に見えるが、背丈や体格、声色は男である。

名を松陽といい、様々な子供たちから、先生と呼ばれ慕われていた。

松陽は、己よりまだ遥かに小さい少年を見て微笑む。

 

『へー、いけねーわけ?』

 

『多分、行けないでしょうねぇ…』

 

少年のふわふわとした髪を、くしゃくしゃと撫で回す。

少年は、『やめろよ!』と叫んでいる。が、嫌そうな顔はしていなかった。

 

『……』

 

『どうしたんですか?』

 

松陽は、黙る少年を見た。

なにか、考え込んでいるようだった。

 

『行けねーなら、手紙は渡せねーかな…』

 

それを聞いて、松陽は目を見開く。

何故、手紙なのか。

どうして、渡したいのか

 

『その世界に、俺がいるんなら、聞きたいことがあるんだ』

 

松陽は笑う。

いつか、己を越えてほしい。

この子はきっと越えることができる。

進んだ道の先で見つけた、己の剣で

 

 

 

*****

 

 

 

 

「無理だ。もう、お前には何も残っていない。」

 

 

銀時を見下すように、男は立っていた。

それに、何も抱かない。

何故か、イラつきすら湧かない。

銀時は男を見て、頬の筋肉を微かに上げた。

 

それを決めるのはお前ではない。

馬鹿にするな。

 

そうだ。確かにあの時、何も残ってないと思っていた。背負うことも背負われることも全てから逃げて何もないんだと思い込んでいた。

背負うことを恐れ、このまま散ればいいと。

 

それなのに

 

俺のことを殺すという少女がいた。

俺のことを生かそうと、逃がす男がいた。

 

少し、生きようとおもった。

 

墓場で死にそうになっていた。

腹が減っていた。それが不思議だった。

運が良かったのか悪かったのか、ババアが来た。

その旦那に一方的にだが、饅頭をもらった。

ただの饅頭のくせして、今までで一、二を争うほど美味しかった。

代わりに、ババアを護ると約束した。

そんなことがあって、俺は万事屋を始めた。

 

 

「なにも、残ってねぇ?あぁ、俺だってそう思ってたさ。」

 

 

何度、振りはらったことだろう。

何度、突き放したことだろう。

 

 

重くて、苦しくて、何もかも投げ捨てたはずなのに

 

 

「でもな、俺の荷物は、そう簡単にはなくならねぇんだよ」

 

 

振り返ると、何故かいつもそこにあった。

 

 

刀の柄に触れる。

刀全体が震えていた。

何故かと思って、俺は気づいてしまった。

 

この刀を振るうことを恐れていることに。

 

そんなこと、信じたくなかった。

捨てた筈の刀がここにあって、それを今、俺が持っていることを。

 

それでも、目の前のアイツと戦うためには、これを抜く必要があった。

 

 

「俺が捨てても、勝手に戻ってくるような、そんな馬鹿なんだよ。俺の荷物達は」

 

 

「そんなこと、あり得るはずがない。それはまやかしだ。」

 

 

あれが幻だと?

そうなのかもしれない。

だが、確かに俺の隣には、アイツらがいた。

俺のことをクソ上司だの、アバズレだのビチクソやろうだの言うが、そう言いながらも俺をいざというときは見捨てないのだから、俺はアイツらに愛されていたんだろうか。

本当に、俺は愛していたんだろうか?

 

愛情なんて不確かなもの、あの時は欲しくなんてなかったのに、変だな…。

微笑みとはいえはないが、銀時は口角をあげた。

 

 

「大体、テメェがどこで何しようが俺には関係ねーんだよ。」

 

 

「なら、どうして戦うんだ。」

 

 

それを聞きたいのは自分だ。

別に、この世界の平和を取り戻したいとか。そういうヒーローみたいなことは全然頭のなかにはない。

なんとなく戦っている。っていうわけでもない。

 

一歩、また一歩、ソイツの方へ歩む。

お前が黒幕ではないことは知っている。

お前が俺の知っているアイツではないことは知っている。

俺の知るアイツはこんなことはしない。まぁ、似たようなことは前までしていたが。あ、そんなこと考えたらやりそうな気がしてきた。

前言撤回で。

 

 

「いいか、お前が世界のどこで何しよーがかまわねー。

だが、俺のこの剣。コイツが届く範囲は、俺の国だ」

 

 

つーか、この台詞は原作でとっくの昔に似てるのを言ったんだよ。アニメでも言ってるんだよ。

何回言わせんじゃコラァァァ!!

 

 

「お前の国だと?そんなものっ…」

 

 

その先の言葉は聞かなかった。

もしかしたら、聞こえなかったのかもしれない。

ただ、聞く意味はなかった。

そこに、アイツの答えはないから。

 

鞘から刀身を抜く。

久しぶりに見たその刀は、やはり銀色に輝いていた。

名は知らない。ただ、それが切れ味のいい刀だということは知っていた。

 

 

「人を馬鹿にしたてめーの態度を、文字通り打ち砕いてやるぜ!」

 

 

この場に新八がいたのなら、こうツッコむだろう。

 

『それ別の人だろーが!!CV○田だけど違うから!!』

 

とでも言うだろう。

 

 

『つーかシリアスはどこに消えたァァァ!?シリアスな空気が何で急にシリアルなギャグになってるんだよ!!』

 

 

「うるせぇな…」

 

 

頭のなかでギャーギャーと喚くメガネ掛け器を、銀時は頭の中から追い出した。

シリアスな空気が壊れた?

そもそも、銀魂がそんな空気など意図も容易く壊してしまう作品だというのに。

それは今更だろう。

そんなことよりも、今は目の前のことを片付けなくてはならなかった。

 

頭のなかを整理し、もう一度目の前の敵を見据える。

何を迷う必要がある。

これはアイツであって、アイツではないのだから。

 

 

刀を構えずに、腕をぶらっと力を抜いたようにする。

普通の侍は刀を両手で持ち、相手に切っ先を向けて構えるが、銀時はそんなことはしない。

 

ゆらっ…と、銀時の体が揺れた。

 

そして、次の瞬間には銀時の姿は男の視界から消えていた。

 

男は驚き、目を見開くが、すぐに冷静になり、気配を探る。

しかし、銀時は気配を消しているのか、男には銀時を見つけることはかなわなかった。

 

そして、男は気づく。

後ろにナニカいる

ハッとして後ろを見たとき、男の体はぶっとんで、壁に打ち付けられていた。

そして、目線が地面とほぼ同じになっていた。

 

 

「魔法、は…使わないのか…?」

 

 

途切れ途切れに男は言う。

 

 

「テメーと喧嘩するのに、そんなもんいらねーだろ。」

 

 

ふざけていたときの死んだ目ではない。

殺気を滲ませ、眼力だけで人を殺せるぐらい目を鋭くさせて銀時は言う。

 

男はそれを聞き、声を少しだして笑う。

 

目の前の銀色は、馬鹿にしているわけではない。

それは、目を見れば分かった。

鋭く睨んではいるが、とても真っ直ぐな目だ。

 

そんな目で、見られたくなかった。

 

 

たとえ、それがシルヴィアでなかったとしても。

 

 

「あぁ、そうだな。」

 

 

男は立ち上がる。

 

長い髪が肌にくっつき、邪魔くさい。

男は、どこからか結紐を取り出すとその黒髪を高く結んだ。

 

 

「行くぜ、ヅラァ!!」

 

 

「ヅラじゃない、桂だ!!」

 

 

住む世界は違えど、お互い知った顔

 

 

そこに、手加減などという言葉は存在しなかった。

 

 

 

*****

 

 

 

「なんだ、よ…お前」

 

 

「あ゙?それはこっちの台詞だこの野郎」

 

 

シルヴィアは、つい数分前までの口調とは違い、荒々しく、目付きも変わり、遠目で見ない限りは別人のようになっていた。

どことなく、銀時に近くなっている。

 

 

「猫、を被って…いたのか…?いや、猫にしては暴れていたか…」

 

 

こちらの世界のV字の男…エド方とでも言うべきか…

エド方は、目の回りの血を拭う。

 

何が起こった?

 

今まで、本当に猫を被っていたのか?

それとも、タガが外れて、本来のシルヴィアになったのか…?

 

 

エド方は刀を構えた。

シルヴィアの速さは、こちらよりも遥かに速い。目にとらえるのでやっとだ。

 

 

シルヴィアが、視界から消えた。

その瞬間にエド方は気配を探る。

後ろ。

後ろにいる。

しかし、後ろを振り返れば、その時にはすでに己は斬られているだろう。

背中を。

では、どうすればいい。

後ろを振り向いたときに、その場から離れればいいのだ。いや、後ろは振り返らない。振り返るふりをするのだ。

離れていれば、おそらく空振り、隙ができるだろう。

 

だが、シルヴィアはエド方の予想とは違い、後ろにではなく、前にいた。

 

腹に木刀が叩き込まれる。

胃の中のものが逆流するような気持ち悪さを感じた。

痛みに、前かがみのような姿勢になる。シルヴィアはそれを見て、エド方の背中を思いきり蹴りつけた。

 

 

「がはっ…!」

 

 

血をはいたわけではないが、何かを吐いたような気がした。

 

 

「木刀はいいな。殺さないでいい」

 

 

笑いながら、そう呟くシルヴィアの瞳は、今まで見たことのないものだった。

まるで、殺したくない。と、訴えているようだ。

 

 

「土方、お前は俺と同じぐらいだろう。なら、聞いたことぐらいあるだろ?」

 

 

「なにがだ」

 

 

シルヴィアが何を話そうとしているのか、エド方にはわかるような気がした。

だが、確証はない。

おとなしく話を聞くことにした。

 

 

「10年…いや、もっとあったかもしれない。エドラスに禍をもたらすといわれた鬼子が現れたと。」

 

 

そこで、予想は確信に変わる。

シルヴィアが、彼が話したいことは何なのか。

 

 

「鬼子は血に濡れた白髪と、瞳を持ち、人知れず人を喰らう…。

一説には、鬼子は侍と名乗るものに退治されたとあるが……」

 

 

"じゃあ、お前の目の前にいる俺は、一体何なんだ?"

 

 

彼は問う。

かつて、鬼子と呼ばれたその少年は、世界に絶望していたわけではない。

 

ただ、愛されたかったのだ。

だが、愛されてもなお、それを理解することはできず、己がいることで、相手が不幸になると考えていた。

 

 

教えてほしかった。

 

自分は誰なのか。

 

誰に聞いても、お前はお前だという。

そんなの当たり前だ。

そういうのが聞きたいんじゃなかった。

それを、あの銀時はさも当然のように答えた。

 

 

その名を、名乗ってもいいのなら。

 

 

その資格が、己にあるのなら

 

 

酔狂なアイツを信じてみてもいいと思った。

 

 

「土方十四郎…お前なんかには負けるわけにはいかない。

俺はこの世界の……

 

坂田銀時なんだから」

 

 

『行くぞ。坂田銀時』

 

 

自分を、坂田銀時だと気づいてくれたのは、坂田銀時だったのだ。

 

 

 

 




って言うお話。
補足としては、シルヴィアという名前は、偽名であって、本名ではない。
本名はあの名前だ。
ということです。

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