妖精と白き夜叉   作:さとモン

25 / 25
おっひさしぶりーです。
さらに一ヶ月と少したちました。
成長しない文才と、原作の急展開?に頭を悩まされる一方でございます。
まぁ、短いですがよんでください。


二十三話 過去は過去で今は今。だから現在を楽しもうや

土方はけして、この王国の真の忠臣ではない。

そして、彼は侍になりたかった。

この世界では、それは到底受け入れられる夢ではなかった

 

 

土方は、王国の少し田舎に住んでいた。しかし、その田舎では有名な豪農の家だった。

父の顔は知らない。土方が生まれる数ヶ月にこの世を病死にて亡くなったと聞く。また、母も彼が幼い頃にこの世を去った。

ことの詳細は省くが、土方への家の者の風当たりは、けして弱くはなかった。彼に優しく接してくれたのは、兄の為五郎と、その妻だけだった。

しかし、その為五郎も、とある件があって失明した。その件があって以来、彼の肩身は余計に狭くなった。

為五郎は気にはしてなかったが、土方本人が気にしていた。

しかし、侍という夢は消えなかった。

 

少し成長した土方は、たびたびスラム街に出ては、木刀を片手に暴れまわっていた。

当時、王国軍に挑むことは、一種の力試しとなっていた。

土方も力試しと称して、何度か王国軍にも喧嘩を売ったこともある。が、珍しく土方は魔法を使うことを嫌う性分であったため、なかなか彼らにかなうことはなかったのだ。むしろ、負けたことしかなかった。

最初の頃は。

町に繰り出すようになって一年ばかりたった頃、土方は初めて町の住民に勝った。魔法を使わずして勝ったのである。これはある意味努力の賜物といえよう。この日から、土方はうなぎ登りに強くなっていった。

 

更に一年たった。

町の住民どころか、王国軍にも勝てるようになった。この頃には"バラガキ"と呼ばれるようになっていた。

王国軍に勝てるようになったのだが、土方は満足できなかった。

それでも彼は、木刀を振るった。

いつのまにか、隣で笑っている人がいることに気づいた。

 

その人は、一言で言えば猿。もっというなら、意思疏通のできるゴリラ。

太陽みたいに暖かくて、馬鹿だった。

気になって仕方がなかった。

その人も、侍というものに憧れていた。

小さな道場が実家らしい。

土方は、そこで一人の少年に会う。

あどけない顔のなかに、黒いものを持った少年に。

 

 

そんなある日のこと。

土方の髪が、まだ長かった頃。

彼はスラム街で、奇妙な光景を見た。

いや、奇妙なのではない。おぞましいのだ。

背筋が凍るようだった。

 

赤。赤赤。赤赤赤。赤赤。赤。紅

紅色のそれは、土方の目に焼き付いた。

世界が真っ赤に染まっている。

そう思うほどに、ヒトだったものも、壁も何もかもが紅かった。

そこに動くものひとつ。

真っ赤に染まったそれは、土方をチラリと見ると、「黒」と言い、その場を去った。

土方は、その時にハッとした。

何をしていたのか。あれはなんなのか。

一瞬、時が止まったように感じた。

あれは人なのか?

同じ人間とは思えず、あれは化け物なのではないかと思った。

 

今なら分かる。

血に濡れた白と、染まる前の黒の、初めての邂逅だと。

 

 

 

 

 

あれと俺が初めてあったのは、まだ俺が幼い頃。あの時は10才くらいだったか。

つまらない日々を送っていた。

つまらなくてつまらなくて、何かに飢えていた。

そんなときに、あれに会った。

 

「白……?」

 

小さくて、白くて、世界に絶望しているような、なにか期待しているような、紅い目をした子供だった。

頭がふわふわとしていて、わたあめのようだった。

 

「アンタは、こわくないのか?」

 

怖い?

何が?何が怖い?

そう言うと、その白いのは驚いた顔をする。

何を言っているのか。それで、考えて。わからないから、本人に聞こうと思った。

 

「俺は、こんなかみとこんな目をもってるから、みんなたいてい怖がる。

たまに、怖がらないやつもいるけど、子供で怖がらないのはおまえが初めてだ。」

 

それで、俺は漸くこいつが何者なのか理解する。

白い鬼だ。

血に染まった紅い瞳はと、薄汚れた白い髪をもっていて、会えばいつの間にか殺されているという。

たまに、会っても殺されないときがあるというが、それは子供や遠くで見たものだけらしい。

だが、見る限り、殺そうとも思っていないし、恐らくだが

 

「襲われたのか…?」

 

「そうだ。殺されそうになった。」

 

そう聞くと、人間はなんて醜いんだろう。という人の気持ちがわかる気がした。なんの罪もない者の命を、人は簡単に奪おうとするんだ。

白い子に、同情した。

どれだけ苦しかったんだろうか。そう思った。

だが、それも一瞬だった。

 

「だから、殺した」

 

それを聞いて、絶句した。

言葉が何も出なかった。

 

「殺される前に、殺した。しにたくないから、おれが殺した。」

 

なにも、聞きたくなかった。それ以上、聞きたくなかった。

まだ幼い彼にとっては、それは聞くに堪えないことだった。

彼は俯いた。

 

「でもさいきんは殺してない。

動けなくするだけ。血はでるけど…。」

 

頬に、あたたかいものが触れた。

普通の人と同じ感触、温度。

あぁ、生きてる。

コイツも、俺も生きてる。

 

「……チッ」

 

舌打ちをした音が聞こえた。

その直後、俺のからだが宙に浮き、強い衝撃を体に受けた。

視界がチカチカとした。

一瞬のことだった。

 

「おい、いたぞ!!」

 

走ってくる王国軍。白いソイツは逃げようとする。

待ってくれ。手を伸ばした。

朦朧とする視界では、ろくにそいつを捉えることもできやしない。

 

「名前…は?」

 

ただ、呟く。いや、言った。

何故、名前を問うたのか。

今でもわからない。

会ったという、証明が欲しかったのかもしれない。

白いソイツは、俺のことを一目見て、懐から紙とペンらしきものを取り出した。少し考えて、何かを書いて、しゃがんだ。

そして、俺の手を開き、握らせた。

そして、そのまま走っていった。

白い背中は、俺よりもだいぶ小さいはずなのに、何故か俺よりも随分大きく見えた。そして、遠ざかっていく。

俺よりも小さな背中を、王国軍が追っていく。

誰も、俺には気づかない。まるで、透明人間になったみたいだ。

ぐらり

世界がぐにゃりと歪んで、それから回った。

どんどん暗闇に落ちていく。

なにも、聞こえない。見えない。そうなる前に聞こえたのは、聞き覚えのある「高杉!」という声だった。

 

 

 

「知っていた。 お前は、この国のために働いてるんじゃない。」

 

馴染みのある口調に戻った。

地を這う土方を、シルヴィアは見下ろした。

そして、ふと呟く。

 

「……俺、土方とは気が会わない気がするんだよな」

 

「今更かよ」

 

「…だな。」

 

シルヴィアは、初めて土方の前で笑った。

それを見て、土方も笑った。

何がおかしいのか、何が楽しいのか。

誰にも、二人にもそれはわからない。

それでも二人は笑いあった。

 

 

 

 

『何をしているんだ?』

 

『エルザ』

 

エルザの隣には土方がいた。

土方の髪は、女性のように長かったが、それを後ろで括っていた。

土方は、エルザと話ながら歩いていたらしい。

 

『この餓鬼が軍に入りたいと…』

 

そう言って兵隊がチラッと見たのは、銀色の髪をした少年だった。

少年は、ギラギラとした瞳を持っている。

が、見たのはエルザだけだった。

 

『どう思う土方』

 

『なぜ俺だ?』

 

土方は、そこでようやく少年を見た。

それは、いつかのスラム街で見た顔だった。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(必須:5文字~500文字)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。