リハビリついでのメックもの短編   作:性癖により性癖を語れなくなった者


オリジナルSF/冒険・バトル
タグ:R-15 残酷な描写
リハビリ短編。色んな意味で性癖を自覚してはいけない者の性癖語りとも言う。

1 / 1
超久々の執筆です。リアルで時間とメンタルに余裕があれば続きます。プロット上では4〜5話予定。


リハビリついでのメックもの短編

 "敵を排除したい"と考えた時、人は何を手段とするだろうか。

 己の肉体を信じて殴りかかる者、あるいは武器を探す者も居るだろう。口八丁で騙し宥めて自主的に去らせる者も居るかも知れない。

 これはそういう話だ。

 

 

 

 地球の人口増加に歯止めが掛からず、食い扶持を賄い切れないその人口を過酷な開拓惑星に開拓船団として送り込む政策が成立しておよそ100年が過ぎた。目的地であった複数の開拓惑星の一部は既にテラフォーミングが終了し、地球との交易が開始されたと、地球圏を離れる前にニュースで見かけた。

 自分のような低所得のスラム出身者からすれば、本来どうでも良い話ではある。

 

 しかし今の私は、基礎訓練をしっかりと終えた軍属の戦闘用メック操縦者であった。

 正確には、偶然にも元の職場が違法な賭博事業の仲介に手を染めており、たまたま出勤中に一斉摘発の場に居合わせ、数週間の勾留を経て個人レベルでの無実が立証された後、働き口を求めてその場で軍警に志願を行い、教練期間中も自由時間の外出もせずに自習とシミュレータを繰り返して成績のみを積み上げてきたやる気のある新兵、それが今の私だ。

 

 そこまで大層なモチベーションがあった訳ではないが、寄らば大樹の影とも言う。それに少なくともこの職場ならば、知りもしない内容で職場が諸共無くなることはない。恐らくは、だが。

 

 そしてそんな新兵な私が赴任する先こそが、その初期の開拓船団の一つが向かった惑星である。細かい記号で名前が付いていたが、それは今覚えていなくても良いだろう。

 その惑星を目指した開拓船団は目的地に到着し、テラフォーミング作業を開始して少し後、急に地球との連絡役を殺害し独立宣言を行った。

 

 過激な話ではあるが、それだけならば他にも数ヶ所似た事例があった。だが、この半世紀超に渡り未だ制圧されず、既に3度の制圧部隊を斥けているとなると話が別である。

 

 つまるところ私はピカピカの新兵であるにも関わらず、この惑星への『名誉ある4度目』に選ばれたらしいのだ。よく調べもせずに安定した仕事の一点に釣られ、内容も聞かずに飛び込むとこうなる、という素晴らしき悪例であった。

 

 

 

 事前のブリーフィングでの最終説明によると、メックのコックピットに搭乗した状態で冷凍睡眠処理を施された私達は、およそ8年ほど掛けて制圧対象の開拓惑星に到達し、これを速やかに鎮定。首謀者が生きていればこれを拿捕、或いは殺害し、降下してテラフォーミング用に用いられている筈の開拓船団旗艦のコンピュータから詳細な経緯を推し量る為の参考資料を持ち帰る、と言う段取りらしい。

 

 メック操縦者としてこの制圧に関わる私の役割は実働班である。想定される敵対勢力の抵抗戦力を打ち抜いてこれを破壊し、対人火器しか持たない陸戦隊と、その陸戦隊が指揮するドローン群が抵抗し得ない脅威の全てを排除する。

 

 そもそも冷凍睡眠など、地球圏外へ向かわない限りは利用することもないものだ。こうして誰かと話すわけでもないのにつらつらと取り留めの無い思考を続けているのは、おおよそが冷凍睡眠明けの脳の8年分の寝呆けによるものであった。もっとも、雑談に興じるような友人が居るわけでもないのだが。

 

 

 

 全高8メートルにも及ぶ戦闘用メックのコックピットはそこまで大きくはない。ミニマムに纏められた計器類、過酷な環境での運用を前提とするが故に長期行軍も視野に入れた大型のサバイバル・キット、軽度の脳神経インプラントによって外部視野を操縦者に直接同期するが故に簡素化されたコンソールモニター。

 成人としては小柄な方である私にとってはギリギリ狭くないと言えるサイズ。教練の担当官からは『逆に危ないから起動中は操縦者固定ベルトを外さないこと』と念を押されている。

 

 大柄な割に肝の小さい心配性で、それ故に親身になってくれた担当官の締まりのない笑みを思い出して自分の頬も緩めながら、衛星軌道投射前に自己診断プログラムをブート、機体各部の動力や推進剤、弾薬類まで含めて異常が無いか点検を済ませ、母船のホストコンピュータに準備完了を報告し、瞑目。

 

 

 

 シミュレータは文字通りの意味で人一倍やった。人を傷付ける事への抵抗感も、治安の悪いスラムで育つ間に気付けば無くなっていた。法のもとで裁かれ得る犯罪ではなく、生きるに足る報酬が得られるのなら、もうそれでいい。

 

 "本当に?"

 

 どこからか誰かの声が聞こえるが、軽度の脳神経インプラントを施してから幻聴が聴こえるようになるのは、解決していない課題としてインプラントの製造元のメーカーが研究中であると聞いている。

 とっくに訓練期間の間にすら慣れてしまった幻聴だ。不意にメンタルに響くタイプの、タチの悪い澄んだ声。

 

 作戦開始前であるし、もうメックのブラックボックスに内蔵されたレコーダーは全てを録音し始めているだろう。だが、今だけは口を開いて言い返す必要がある気がした。

 

「死んで花実が咲くものか、ってね」

 

 当然、返事なんてものはなかった。




8が多いなって思ったそこのあなた。
20面ダイスと乱数の女神に言って下さい。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。