その飲みかけ、致死量につき。――男女比1:4の世界で普通に生活する俺が、飲みかけボトルを置き忘れた結果―― 作:やっくん。
――子猫を大雨から救出したその日の晩――
スポッ――
《結城悠》
『結城悠です!子猫、預かってもらえて本当に助かりました!』
『シャワーと着替えまで借りちゃって』17:56
「送信完了……っと」
捨て猫のことで連絡をする必要があるからと、凛さんとはRINE(ライン)の交換をしていた。
スポッ――
凛さん、返信早いな……
《浅見凛》
『こんばんは(^^)こちらこそありがとう♫』
『子猫は今ぐっすり寝てるよ〜』17:58 写真添付
こちらこそありがとう? 彼女には迷惑しかかけてないはずだが。
下にスクロールすると、気持ちよさそうに寝ている子猫の写真。
「よかった……元気そうだ。えっと返信は……っと」
スポッ――
《結城悠》
『よかった……凛さんがいなかったらどうなってたか……』
『すぐに里親探しをするんで、もう少しだけ子猫のことお願いします!』18:05
スポッ――
ものの数秒で返信が来る。
早い!
さすが仕事ができる大人の女性はメッセージの返信まで早いのか……
《浅見凛》
『うん、まかせて(^^)』
『無理はしないで。難しそうなら私が探すからね。』
『ううん。私が全部やるからいいわよ。早速、会社とか友人に聞いてみるから』18:05
凛さん……優しすぎ……
でも、さすがにそこまで甘えるわけにはいかない。
俺も明日からさっそく里親探しを開始しよう。
◇
翌朝――
スマホを開くと、凛さんからRINEが来ていた。
浅見凛『おはよう(^^) ユキちゃんは今日も元気よ』
『名前がないのも可哀想だから、ユキちゃんと命名しました♫』08:05 添付画像
猫の写真が一枚添付されている。
すっかり元気になった白くてふわふわな子猫が、窓際で丸まっていた。
スポッ――
《結城悠》
『おはようございます!元気そうでよかった!』
『里親探しの件ですけど、凛さんだけに頼るわけにはいかないです!』
『今日友だちや知り合いにあたるんで、もう少しだけ待ってくださいね!』08:10
スポッ――
彼女からすぐに親指グッドスタンプが返ってくる。
うーん……もらってくれそうな人、もらってくれそうな人……
隣の魅夜さんは同じマンションだからペット不可だし。
そうだ、バイトのみんなにも聞いてみるか。
◇
バイトの出勤時間――
「店長、猫好きですか?」
「なんだい急に……ペットはねぇ、言う事きかないからねぇ……」
「そうですか」
だめか……
じゃあ、先輩の真鍋さんに聞いてみよう。
彼女は俺がバイトに入りたての頃から親切にいろいろと教えてくれる頼れる先輩だ。
黒髪ショートのセンターパートに少し垂れ目の瞳。
既婚者でもうとうに三十代に入っているらしいが、どう見ても二十代にしか見えない。
個人的には店長よりも頼りになると思っている。
「まなべさーん、今いいですか?」
「ん〜? どうしたの、悠くん」
「相談があって……猫、好きですか?」
「唐突ね。まぁ好きだけど、どうして?」
「実は先日、捨て猫を拾いまして……」
「あら、そうなんだ」
「今は知り合いに一時的に預かってもらってるんですけど、できれば里親を探したくて」
子猫を拾ったこと、今は知り合いに一時的に預かってもらっていること、できれば里親を探したいことを、かいつまんで話した。
「……それって、私に引き取ってほしいってこと?」
「お願いできたら、と思って……」
真鍋さんは旦那さんもいるし、急にペットなんて無理だろうな……
「無理ですよね〜」
「いいよ〜」
「ですよね……だめですよね……え?」
「うん、いいよ。でもどんな子か見たいな〜写真ないの?」
俺は凛さんから送られてきた、元気になったユキちゃんの写真を見せた。
「すごくかわいい〜!!」
「ほんとに!?ありがとうございます!」
「でもさすがに今すぐは無理だから、来週までにお迎えの準備しとくからそれでいい?」
「もちろんです!助かります!ほんと!もう神様、仏様、真鍋様!」
俺は大げさに手を合わせた。
「もうやめてよ〜」
真鍋さんが笑いながら俺の肩をポンと叩いた。
その瞬間――
ビクッ。
何かの視線を感じて後ろを振り返る。
振り返った先には、室内モップをかけている小鳥麗華さん一人だけ。
……気のせいか。
俺は真鍋さんに向き直った。
「じゃあさ、グループラインじゃあれだから悠くんのライン教えてもらっていい?」
「もちろんです!」
お互いのスマホを出して友達登録をする。
登録完了の確認がてら、スタンプを送ってみた。
ありがとうもろこしスタンプ。
「もぅなにこれーw」
「最近おもしろスタンプにハマってて」
「センス謎すぎる笑」
「失礼な!」
「はははっ……ふぅ。まぁ子猫の件だけど、来週までは待ってね、しっかり準備しとくからね」
「はいっよろしくお願いします!」
よし。これで、子猫のもらい先が決まった。
凛さんにも連絡しよう。
◇
バイトが終わり、自宅に帰って一服していると、ふと思い出した。
そうだ、凛さんに連絡しないとな。
スポッ――
《結城悠》
『里親の件、バイトの先輩が引き取ってくれることになりました!』
『来週にはお迎えできるそうです。もう少しだけよろしくお願いします!』21:34
スポッ――
すぐに返信が来た。
《浅見凛》
『あっそうなんだ。よかったわ』21:34
『そのことなんだけど、ちょっと話が……』21:34
『今、電話できる?』21:35
【あとがき】
浅見凛:『子猫、ユキちゃんと命名しました♫』
作者:飼う気満々やん