ハリーポッター プリムローズ通りの怪物   作:匿名魔法使い

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5話

 

 5話 ハロウィンの夜

 

 

 

 『おはよう、2人とも』

 

 

 『おはよう。アート、ティア。なんか、不思議だわ。頭に直接響いてる感じ』

 

 

 「おはよう。ティア、リズ。面白いね、これ」

 

 

 『フフ、父上から預かっているものさ。本当は、側近に渡しなさいと言われたんだけど、嫌だから。君達なら渡せるからね』

 

 

 「グレアム様の第1の側近として嬉しゅうございます」

 

 

 『アハッ、ちょ、ダメだよ! 顔に出るところだったよ!? 本当にダメだからね!?』

 

 

 『珍しい。ティアが慌ててる』

 

 

 「あはは。ごめんごめん。ティアには感謝しかないよ。今日の授業、楽しみにしてるね」

 

 

 『ずるい。私も一緒に受けたかった』

 

 

 『こればかりは仕方ないさ。次はリズの所にも行きたいね』

 

 

 

 この魔法具はティアが父親から渡されたもの。他にもあるが、まずはこれ。耳に取り付ければ、同じイヤーカフをつけている人物に言葉を発さずにも話せるようになる魔法具。かなりの値段がするため、4つしか貰えなかった

 

 そして、これからアーサーとセレスティアは、グリフィンドールとスリザリンでの合同授業がある。変身術の授業と魔法薬学の授業だ。担任は、マクゴナガルとスネイプ

 

 マクゴナガルは、城の女王と呼ばれるほどの人物で、グリフィンドールの寮監である。スネイプはスリザリンの寮監。陰湿な性格で元デスイーターとの噂もある

 

 アーサーは、前日に夜更かしをしていたが、規則正しい生活を送っていたため少し眠いが、きちんと起きられた。ロンとハリーがまだ寝ていたため、揺り起こす

 

 

 

 「遅れるぞー」

 

 

 「んー」

 「もう少しだけー」

 

 

 「先に行ってるからなー。ネビル、行こう」

 

 

 「う、うん。なんか、悪いなぁ」

 

 

 「大丈夫だよ。寝坊しても死ぬ訳じゃないんだ」

 

 

 

 学校の案内通りに行き、早めに着く。そこにはすでに、スリザリンの大半の生徒、グリフィンドールは、ちょこちょこいるぐらいだった

 

 もちろん、アーサーはセレスティアの姿も確認済みだ。その逆も然り

 

 教壇には、1匹の猫。それとたくさんの本が出ているが、マクゴナガルの姿は見えない。黒板にはこの範囲を自習と書いてある

 

 アーサーは、既に予習済みだが、復習がてら席につき少し早いが教本を広げる。そして、自分が必要だと思う所に下線を引き、ノートに取る

 

 授業が始まるが、案の定、ロンとハリーが来ない。少し経ってから急いで入って来たが、猫に変身していたマクゴナガルに見つかり、お灸をもらう

 

 授業は、自習で終わり、次に魔法薬学に移る。ここは、暗く、ジメッとしている

 

 

 

 バンッ

 

 

 

 「この授業では、杖を振ったり馬鹿げた呪文を唱えたりしない。いいかな? 魔法薬調合や微妙な化学の芸術的を諸君らが理解できるとは到底思っていない。だが、一部の、素質を持つ人間には、伝授してやろう。人の心を操り感覚を惑わせる技を。名声を瓶の中に詰め名声を醸造し、死にすら蓋をする、そういう技を」

 

 

 

 早口でここまで言い切る根暗。それが、スネイプ。セブルス・スネイプという男だ

 

 そして、その話を無視し、カリカリとノートに書いている男。それがハリー・ポッターだった

 

 

 

 「所で、諸君らの中に自信過剰な者がいるみたいだ。既にホグワーツに来るまでに力を蓄え、授業など聞かなくても良い。そんな生徒がいるみたいだな。ミスターポッター?」

 

 

 

 ハーマイオニーが、ハリーを肘で気付かせる。しかし遅い。もう既に彼は捕まってしまった。スネイプの蜘蛛の糸に。あとは絡め取られて毒を注入され、食べられるだけだ

 

 

 

 「その名も高き、ミスターポッター。アスフォデルの球根の粉末にニガヨモギを加えると? …………分からぬか。では。もう1問。ベゾアール石はどこにある?」

 

 

 「……分かりません」

 

 

 「では、トリカブトの種類は?」

 

 

 「……分かりません」

 

 

 「全く、情けない。名ばかりが有名でも、何にも役に立たない。そうは思はないか、ポッター?」

 

 

 

 隣でハーマイオニーが必死に手を挙げているのに、気付く素振りすら見せないスネイプ。そこにチクチクとスネイプが追い打ちをかける。授業は滞りなく進んでいく。ハリーをチクチク刺しながら

 

 授業が終わり、昼休みになる。3人で昼食を食べ、談笑し合う。そして、飛行訓練のための準備を行う。ほうきを持ち、外へと出る

 

 

 

 「こんにちは、皆さん」

 

 

 「「「「こんにちは、フーチ先生」」」」

 

 

 「アマンダもこんにちは。では、いよいよ飛行訓練です! 全員ほうきの左側に立ちなさい。ボーっとしてないで、急いで! 右手をほうきの上に出して、はい、上がれ!」

 

 

 「上がれ!」

 「上がれっ!」

 「上がれ」

 「上がれ!」

 「上がれ!」

 

 

 

 生徒たちが一斉に上がれと言い始める

 

 アーサーは、集中して魔力を感じる。そして、「上がれ!」と、すると、ほうきは、勢いよくアーサーの手に収まる。が、勢いが強すぎて、アーサーが手を振りながら「いちち」と呟く

 

 セレスティアは、圧巻だ。ただ普通に「上がれ」と言うだけでほうきガふわりと浮かび上がる。そして、ふよふよと手に収まる。それをアーサーにフフンと自慢する

 

 アーサーは尊敬の眼差しでセレスティアを見る。自分がその領域に行くには、まだ、到底思いつけない。それを感じ取ったセレスティアは、アーサーに微笑む。君ならば、すぐに出来るさ、と

 

 ハリー、アーサー、ドラコ、セレスティアは、一発でクリア。他の子達は、繰り返し繰り返しで何とかクリア。そして、大体の子がほうきを掴む。ロンは、ほうきで頭を打っていたけど

 

 

 

 「では、ほうきを手につかんだら、跨りなさい。しっかり握って。決して離さない。落ちないように。笛が鳴ったら、みんな一斉に地面を強く蹴ること。放棄は常に真っ直ぐに、しばらく浮いて、前かがみになって着地すること。行きますよ! 1、2、『ピー』!!」

 

 

 「うわ、うわっ!?」

 

 

 「ネビル!?」

 「ネビル危ない!」

 「ミスターロングボトム! 落ち着いて!!」

 「ネビル!」

 「ネビル危ない!」

 

 

 「うわ、うわっ!? うわぁぁぁ!?」

 

 

 

 アーサーの真横でネビル・ロングボトムが暴走を始める。そして、暴走したほうきは、直進して壁にぶつかりながら、何とかこちらに戻ろうとしていたが、今度は、アーサー達に突っ込んでくる

 

 フーチ先生が止めようとするが、間に合わず、間一髪で避ける。生徒もしゃがみ、どうにか避ける。そして、ネビルは屋上の銅像に引っかかり、落ちてしまう

 

 

 

 

 「アーサー!?」

 

 

 

 

 そこで、間一髪。アーサーがほうきで急加速をする。ネビルが落ち、下の松明に引っかかった瞬間、アーサーが横から掻っ攫う

 

 そして、ゆっくりとネビルを抱きながら戻ってくる

 

 

 

 「…………これって、減点ですか?」

 

 

 「いいえ。あなたの勇気に、グリフィンドールに20点。しかし、その勇気は、蛮勇にもなることを覚えておきなさい。グリフィンドールにマイナス10点です」

 

 

 「ん、え? ん、プラス10点? あ、ネビル、大丈夫? 医務室行く? 」

 

 

 「う、うん。ちょっと気分が悪い」

 

 

 「私も行きましょう。皆さん、授業は一時中止です。地面に足をつけて待っていなさい」

 

 

 アーサー達は3人で医務室に向かう。その間にハリーとドラコの間でひと悶着あったが、それはセレスティアの話の1つとして報告はされていない

 

 

 ◇

 

 

 そして、本日最後の授業、浮遊術の授業だ

 

 

 「魔法使いの最も基本的な技術は、浮遊術です。そう、それはすなわち、ものを浮かせて飛ばすこと。さぁ、羽は持ってきているね? 練習した手首の動きを忘れないように、ヒューンヒョイ。ビューンと来てヒョイです。さぁ、みんなで「「「ビューン、ヒョイ」」」あぁ! 素晴らしいです! では呪文を正確にやってみましょう」

 

 

 「ウィンガーディアムレビオさー」

 「ウィンガーディアムレビおーさー」

 「ウィンガーディアムレビオーサー」

 「ウィンガーディアムレビオさー」

 

 

 アーサーとドラコ、セレスティアは一発で浮かせる。ロンに限ってはブンブンと杖を振り回し、少し危険だ。ソレをハーマイオニーが止め、手本を見せる。ソレにロンが拗ねるが、年頃の少年だ、当たり前だろう

 

 ちなみにシェーマスは何故か羽を爆発させていた

 

 授業が終わり、みんな一斉に帰り出す。そして、アーサーは帰りにあることを聞いてしまう

 

 

 

 「【いい、レビオーサよ、あなたのはレビオサー。】嫌味なヤツ全く、だから友達がいないんだよ」

 

 

 

 ロンがハーマイオニーの悪口を言う。それが、運悪く、ハーマイオニーの耳に届き、ハーマイオニーは涙を浮かべて走り去る

 

 ソレを見ていたロンたちも少し罪悪感を浮かべるが、それより、横からほとばしる魔力に驚く

 

 

 

 「おい」

 

 

 

 「な、なんだよ、ペンハリス。な、なんか文句であるのか?」

 

 

 

 ロンは、今の悪口を聞かれたと、少しバツが悪そうにするが、ロンの周りにはハリーも含め4人いる。だから、少し強めに言い返す

 

 しかし、そんなのお構い無しにアーサーはズンズンと近付く。そして、走り去るハーマイオニーをちらりと見る

 

 アーサーは、ハーマイオニーを過去の自分と重ねていた。【怪物】と呼ばれ、落ち込んでいた日々。辛さが分かる、だからこそ、許せない

 

 

 

 「『友達』がいない、そんなに悪いことか? そんなにおかしいか?」

 

 

 

 アーサーの杖が震え熱を帯びる。その声には、大事な『友達』をも侮辱されたように聞こえた為の怒りが込められていた。そして、その圧は、ロン達4人を後退りさせるほどの力があった

 

 

 

 

「あの子は、ただ、一生懸命なだけだろ。その事が、何がおかしいんだ。お前らにできないことをやってのけたからって、寄ってたかって笑うのか。……マグル界にもいたよ。自分より賢い奴を『変人』って呼んで安心する、お前らみたいな奴らがさ」

 

 

 

 「な、なんだって!?」

 

 

 

 ロンが顔を真っ赤にして言い返す。そして、杖を抜こうとするが、アーサーはそんなのお構い無しに、もう一歩近付く

 

 

 

 ザッ

 

 

 

 ロン達は、またもや後退する。今度は、1歩ではなく、2歩、3歩と後ずさる

 

 

 

 「………ハリー。君は良い奴だと思っていた。君の目からは、孤独を感じた。だが、友達が間違ったことを言ったのに黙ってるのは、同罪だぜ。おれは、お前達が同じグリフィンドールってだけで、恥ずかしい」

 

 

 

 アーサーは、見えなくなったハーマイオニーを追いかけるため、走り出す。ハーマイオニーの魔力は、普通だ。すぐに見失ってしまう

 

 角を曲がり、追いかけようとした時

 

 

 

 『側近1号さん。突き当たりを左だよ』

 

 

 

 頭に直接声が響く。アーサーは、登っていた血が下がっていくのを感じる。自分は、独りじゃない。みんなが着いている

 

 

 

 『ありがとう、ティア。どこに行ったかわかる?』

 

 

 『たぶん、女子トイレかな。この時間帯ならみんな食事に行くし、そっち方向に行ったって事は1人になれる所。女子トイレだと思う。一緒に行こうか?』

 

 

 『頼む、ティア』

 

 

 『頼まれた。けど、時間がかかるから、それだけはごめん』

 

 

 

 アーサーがまた駆け出す。セレスティアの誘導により、すぐにハーマイオニーの魔力を感知出来る距離にまで近づくことが出来た

 

 既に、ハーマイオニーは女子トイレの中におり、アーサー少しだけ迷って、他に生徒がいないことを確認すると、臆せず入る

 

 ハーマイオニーが泣いている。女子トイレの外からでも聞こえていた。アーサーの足音で、泣き声がピタリと止むが、嗚咽は、キチンと聞こえていた

 

 アーサーは、ハーマイオニーの入っている個室の前に行くと、声をかける

 

 

 

 「おい、グレンジャー。そこにいるんだろ?」

 

 

 「………」

 

 

 

 返事は無い。だが、間違いなく、そこにいる

 

 

 

 「………ウィーズリーの言ったことなんて、気にするな。男ってのはさ、見栄っ張りなんだよ。なんて言うか、自分に出来なかったことをすんなり出来ちまうグレンジャーが羨ましかったんだ。悪気は無いって言ったらコレはダメだ。違う、なんて言うか、吠えてるだけって言うか」

 

 

 

 「………」

 

 

 

 「………正直言う。僕はさ、昔、【怪物】って呼ばれてたんだ。周りと違う力を持っていて、さ。だから、グレンジャー。お前の気持ちが分かる。お前は、一生懸命にやってるだけなんだよな。なのに、なんで笑われないといけないんだって。わかるよ、分かる」

 

 

 

 扉の向こう側で、また、すすり泣く声が響いてくる

 

 

 

 「君はすごい。僕も、あの術を成功させたけど、君みたいに優しく浮かせることは出来なかった。あんな、繊細に浮かせる事は出来ない。て、セレスティアも、あ、スリザリンの生徒の話なんだけど、グレンジャーよりは繊細に出来てなかったぜ。グレンジャー。あの教室で、浮遊術の1番は君だった」

 

 

 

 すすり泣く声が止まり、扉の鍵が開いた。そこには、目元を赤く腫らした普通の女の子。ハーマイオニー・グレンジャーがいた

 

 

 アーサーはハーマイオニーに手を差し伸べる

 

 

 

 「グレンジャー。君は、独りなんかじゃない。俺が、1人になんかさせない。一緒に行こう。で、ロンに1発かましてやれ。大丈夫。俺が保証する。あんな小物、絶対に黙らせるからさ!」

 

 

 「………あ、ありがとう。ぺ、ペンハリス、さん」

 

 

 「いいよ。気軽にアーサーって呼んでくれ。それと、友達になってくれ。それだけで─────っ!?」

 

 

 

 アーサーはハーマイオニーの手を強く握り1番奥の個室に連れ込む。ハーマイオニーはびっくりし過ぎて声が出せていなかったが、アーサーに口に手を塞がれて声が出せない状況だった

 

 

 

 「しっ。静かに、ナニカ、外にいる」

 「っ!?」

 

 

 

 どしんっ、どしんっ、どしんっ

 ずざざざずざざざ

 

 

 

 重い物が、一定の感覚で響く。そして、ナニカ、引きずっている音が聞こえてくる。そして、悪臭が2人の鼻を刺激する

 

 音は、次第に近付いてくる

 

 

 

 「(バレている。何故だ、何が原因なんだ!?)」

 

 

 

 トロールは、危険度が上から二番目の動物XXXXだ。バカの揶揄表現で言われる通り、頭は良くない。しかし、知性がない訳では無い。声の方向、匂い、彼等は、外で生きる物。それぐらいなら感知できる

 

 そして、先程までの会話。そして、微かな火薬臭。アーサーに付いている、シェーマスが爆発させた時の煤が、トロールにバレてしまったのだ

 

 

 

 「(グレンジャー、俺が引きつける。その間に逃げろ。わかったか?)」

 

 

 「(嫌よ! ここで隠れていましょ!?)」

 

 

 「(ダメだ。絶対にダメだ。君は逃げろ。いいね?)」

 

 

 

 ハーマイオニーがしぶしぶ首を縦に振る。ソレに安心笑みを浮かべて、頭を撫でる。そして、ハーマイオニーの涙を拭い、杖を抜く

 

 

 

 「(逃げたら、先生を呼んできてくれ。多分、先生なら、どんな先生でもなんとかなるだろ。頼んだよ)」

 

 

 「(わ、分かったわ。あ、アーサー)」

 

 

 「よし、アーサー。ここが正念場だ。気を引き締めろ」

 

 

 

 扉を開け放ち、姿を見せる。そして、アーサーは、絶望を見る

 

 

 目の前にいるのは、全長4mの正真正銘の化け物。トロールだ。危険度は、動物XXXX。コレは、魔法使いでも、専門の知識がないと危険とされている危険度だ

 

 そんな化け物に、1年生が敵うはずもない

 

 

 

 「ハッ! だからなんだ!? 来いよ、化け物が」

 

 

 『グオオオオオオッ!!!』

 

 

 化け物が棍棒を振り上げる。しかし、棍棒は天井へと突き刺さり、容易に抜けなくなってしまった。コレがトロールじゃ無かったら棍棒を捨てるが、コイツはトロール。馬鹿だった

 

 

 「グレンジャー!! 今だ! 逃げろ!!」

 

 

 「っ!!」

 

 

 

 ハーマイオニーが脱兎のごとく駆け出す。トロールの横を通り抜けるが、トロールはハーマイオニー全く気付かない。が、すぐに棍棒を抜き、コンパクトに振り下ろしてくる

 

 咄嗟に横に避ける。そして、破片が容赦なくアーサーを襲う。ソレを、アーサーは魔力を放出し、擬似プロテゴを魔力のみで行う。しかし、完全に防ぐことはできず、腕や顔面、体に破片が容赦なく突き刺さる

 

 この打撲は、普通の少年なら意識を飛ばすのに余裕の衝撃だったが、アーサーは杖に魔力を集中させた

 

 

 

 「【フリペンド(撃退呪文)】!!!」

 

 

 

 「ごぉおおお!?」

 

 

 

 「はぁ、はぁ、はぁ、いてぇ」

 

 

 

 アーサーは、額から出血していた。それが片目を赤く染めるが、トロールは待ってくれない。トロールは脇腹から、浅くない出血をしているが、その目は怒りを持ってアーサーを睨みつけている

 

 ブシュゥゥゥと、音を立てて水道管から、水が溢れ出てくる。全身に水を被るが、そんなの気にする暇もない

 

 何故なら、すでにトロールが立ち上がってしまったからだ

 

 トロールは理解している。目の前のガキは、すでに虫の息。しかし、その目からは、諦める雰囲気はない。ここで始末しなければ、やられるのは自分だと、理解していた

 

 

 

 「集中しろ、アーサー。まだ、まだだ、もう少しだ」

 

 

 

 アーサーがブツブツと言っているが、トロールは頭に血が上って聞こえていない。そしてトロールは横薙ぎに棍棒を振りかざす

 

 トイレの破片が、轟速でアーサーに向かう。このままでは、アーサーはぐちゃぐちゃになり、原型など留めずに死亡する

 

 だが、そんな未来訪れない

 

 

 

 「【プロテゴ(まもれ)】!!!」

 

 

 

 アーサーが魔法を発動させる。トロールの横薙ぎの一撃を、見事、耐えきって見せた

 

 プロテゴは、6年生で習う高度な呪文だ。アーサーは、何気無しに読んでいた本でそれを知っていた。しかし、知っているだけでは魔法は発動しない

 

 しかし、アーサーの強烈な意思が、強力な魔力が魔法を発動させた。そして、トロールの一撃を跳ね返し、痛烈なダメージを与えた

 

 硬いものを殴れば、それが自分に返ってくるのは道理だ。トロールは手首が折れている事を認識し、痛みに悶え苦しむ

 

 

 

 

 そして、アーサーの勝ちだった

 

 

 

 

 トロールの後ろに見えたのは、愛する家族、セレスティアだった。その後ろから、特徴的なローブと髪型、スリザリンの寮監スネイプが来た

 

 スネイプの魔法で、トロールは一撃で気を失う。そして、その後ろから、ハリー、ロン、ハーマイオニー、アイリスとゾロゾロ出てくる

 

 セレスティアが一目散に駆け寄り、アーサーを抱きしめる。そして、アイリスが息を切らして、その横から覆うように抱きしめる。もう、人目なんて気にしていられなかった

 

 何回もアーサーに問いかけたのに、アーサーは応答せず、生きた心地がしなかったからだ

 

 ハーマイオニーは、その3人の周りでウロウロとしていた。それに気付いたアーサーが、苦笑してちょいちょいと手で呼ぶ。ハーマイオニーは、遠慮がちに2人の薄い所に来て、アーサーの無事を確かめる

 

 アーサーも2人をめいいっぱい抱きしめ大丈夫だと伝える。そして、ハーマイオニーに向き直り、ハーマイオニーにも力強く抱きしめる。ハーマイオニーは、顔を赤くしたが、遠慮がちに抱き返す

 

 

 

 「ありがとう、グレンジャー。君が先生を」

 

 

 「それは、私達だ。アーサー。本当に無茶をして、………はぁ」

 「………アーサー。後で話があります。かならず、必ず、あの場所に来て下さい。必ずです」

 

 

 「お、おう。分かったよ。ハリーとロンもありがとうな。心配かけた」

 

 

 「………アーサー、ごめん。僕が悪かったよ」

 

 

 「違う。僕じゃない。グレンジャーに謝るんだ」

 

 

 「は、ハーマイオニー。ごめん、許してくれ」

 「ぼ、僕からもごめん! ロンと一緒に笑っちゃった、本当にごめんなさい」

 

 

 「………はぁ。いいわ許してあげるわ。その代わり、わ、みんな、私と友達になってよ」

 

 

 

 

 

 

 ハロウィンの大騒動は、ここに終結した。ロンの失言からまさかのトロールとの戦闘。誰も予想なんて出来ない、最悪の物語を切り抜けたアーサー達。その夜はまだ、終わっていない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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