ようこそ自由気ままな奴がいる教室へ   作:アマテラスすず

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交渉

 

 中間テストまで残り1週間となった。鈴音たちは桔梗ちゃんの協力を得て、須藤たちとまた勉強会を開くことに成功したようだ。うまくいっているようでなにより。

 そして、今日の放課後も図書館で勉強会を行うらしい。ま、僕には関係ないけど。

 他人事だと思って、昼飯を食っていると鈴音から話しかけられる。

 

「若代君、入試で遊ぶくらいだから勉強もできると思っていいのよね?」

「まー、やる気になればって感じかな」

「そう、ならあなたも勉強会に参加して。教える人が多い方が私の負担も減るわ」

「え? 話と違うじゃねぇか。この間は僕には頼りたくないって言ってたじゃないか」

「背に腹は代えられない状況なのよ……」

 

 やはり、3バカたちの相手は疲れるのだろうか。

 とはいっても、僕が手伝ってやる義理はどこにもない。丁重に断るとしよう。

 

「悪いが鈴音、僕は用事が…… ウ‶ッ」

「何か言った?」

「行きます、行かせていただきます……」

 

 また腹パンされた……。せめてコンパスで刺すくらいにしてくれ……

 

 

 そういうわけで放課後となり、勉強会に強制参加することになった僕は図書館に向かう。

 皆すでに、勉強をし始めていた。どうやら僕が最後のようだ。

 

「遅いわよ若代くん。また食らいたい?」

 

 拳を見せながらそんなことを言ってくる鈴音。……気のせいかな、生徒会長に抱き着いてから当たりが強くなっているように感じるんだが。

 

「悪かったよ。で、何の勉強してるの?」

「今は世界史の勉強をしてるよ。それじゃ、私から問題出すね。帰納法を考えた人物は誰でしょう?」

「うわー、何だっけ。うまそうな名前の奴だよな」

 

 桔梗ちゃんが3バカたちに問題を出す。ちなみに答えはフランシス・ベーコンだ。

 ただ、ここで少し疑問に思ったことがある。楓花からもらった過去問すべてに目を通して暗記したのだが、フランシス・ベーコンは問題に出ない。というか、その範囲の問題は見受けられなかった。

 しかし、事前に配られたテスト範囲にはそのあたりの内容が記載されているんだが、どういうことだ?

 

 頭の中で考えを整理していると、須藤と鈴音が隣で勉強している生徒と言い争っているのに気づいた。

 

「さすがDクラスって感じか。まさかテストの範囲にはないところまで勉強してるなんてよ」

「ああ!? てめー、バカにすんのもいい加減にしろよ!」

「待って須藤君。ねぇ、今の発言はどういうこと?」

「教えてやる義理はねぇな、Dクラスさんよ~」

「っ! てめぇ!」

 

 須藤が挑発してきた生徒の胸ぐらをつかみ、殴りかかろうとする。

 図書館には多くの生徒がいる。ここで問題行動を起こされると後々面倒になるので、僕と清隆はアイコンタクトを取り、須藤を止めに入ろうとするが……

 

「両者そこまで! 同じ図書館を利用するものとして、これ以上は見過ごせないかな」

 

 薄ピンク色の髪をした女の子が仲裁に入る。乳でけぇなおい。

 ただ、過去問を売るために他クラスのことを調べていたからわかる。こいつはBクラスのリーダー、一之瀬帆波だ。

 

「もし続けるなら君たちから挑発したとして、このことを学校に報告することになるけどいいのかな?」

「わ、悪かったよ一之瀬。もう行くよ」

 

 そう言って、喧嘩を吹っ掛けてきた生徒は図書館を出ていった。

 

「君たちも騒ぎを起こさないようにね」

 

 そう言って、一之瀬は自分のクラスメイトがいるところに戻ろうとする。だが、聞きたいことができたので僕は一之瀬に声をかける。

 

「待ってくれ、テスト範囲について教えてくれないか。もちろん、お礼もする」

「え? えっと、君は」

「Dクラスの若代直経だ。もしかしたら、僕たちDクラスはテスト範囲が違う可能性があるんだ」

「一之瀬さん、私からもお願い!」

 

 隣に桔梗ちゃんも来て、僕と共に頼みこんでくれる。

 

「テスト範囲が違う? ……えっと、一応聞くけどテスト範囲が変更されたことは知ってるよね?」

 

 衝撃の事実が一之瀬から言い渡された。Dクラスにとっては寝耳に水だ。

 その反応を見て、一之瀬も察したのか。僕たちに変更された後のテスト範囲を快く教えてくれて、クラスメイトのところへ戻って行った。

 

「全く違うわね……。茶柱先生は何を考えているの?」

「それなら、今から職員室に行って確認するか堀北?」

「そうね。これが本当のことなら、私たちは無駄な勉強をしていたことになる。すぐに行きましょう」

 

 そう言って、鈴音たちは教科書などをしまって職員室に向かう準備をする。

 

「お前は行かないのか、直経?」

「僕は一之瀬とまだ話したいことがあるから、清隆たちだけで行ってくれ」

「……分かった」

 

 そして、清隆たちは急いで職員室に向かっていった。一之瀬から教えてもらったテスト範囲を見た感じ、過去問と同じ範囲だったため本当に変更が行われたのだろう。それなら、過去問の有用性が上がったということだ。

 僕は、一之瀬が勉強しているところへ向かう。

 

「一之瀬、お礼をしに来たぞ」

「若代君だっけ? お礼なんて、そんな大したことしてないよ」

「けど、テスト範囲を教えてくれたらお礼するって言っただろ? 約束を果たさせてくれ。できれば二人きりで話したいんだが」

「待て、俺もついていく」

 

 そう言ってきたのは、イケメンの神崎隆二だ。確か、一之瀬の参謀的立ち位置だった気がする。

 

「俺がいても文句はないよな? 若代」

「ホントは美人と二人きりで話したかったけど、仕方ない。いいよ」

「び、美人だなんて。そんなことないよ……」

 

 あまり褒められ慣れてないのかな? 一之瀬は顔を赤らめる。

 対照的に、神崎は顔を険しくする。警戒心が強いって感じか。ま、他クラスの人間だしな。

 そうして、僕たちは人気の少ないところに移動して本題に入る。

 

「それで、話って何かな?」

「二人は、この中間テストについて先生からなんて言われたか覚えているか? ちなみにうちのクラスは『この試練を乗り切れる方法はあると確信してる』って言われたんだけどさ」

「……そういえば、似たようなこと言ってたかも。そうだよね、 神崎君?」

「ああ、確かに言っていたがそれがなんだ?」

「この試練を乗り切れるってことは、一生懸命勉強せずとも退学者を出さずに済む方法があるということ。それがなんだか分かるか?」

「え? 何だろう?」

 

 この反応を見る限り、まだ過去問には気づいていないか。それなら、交渉の余地はあるかもな。

 

「答えは過去問だ。実はすでに上級生から中間テストと四月末の小テストの過去問をもらっているんだ。確認してくれ」

 

 僕は過去問の内容を見せる。そして、二人はとある事実に気づく。

 

「こ、これ。小テストの過去問……」

「……ああ、俺たちが解いた問題とすべてが一緒だ」

「そうだ。つまり、中間テストもこの問題と全く同じ可能性が高い。変更されたテスト範囲と内容もぴったりだしな」

 

 そう言われて、二人は考え始める。できれば、受け取ってくれるとありがたいんだが。

 

「……この過去問、もらってもいいかな?」

「もちろんだ。ただ、ポイントは欲しい」

「待て若代、お前はさっきお礼すると言ったな。それならタダでくれてもいいんじゃないか?」

「その時は、AクラスとCクラスのどちらにも情報を提供する。そうすればこの情報に価値はないからな」

 

 そう言うと、神崎は顔をしかめる。ちゃっかりしてやがるな神崎は。

 

「大丈夫だよ、ちゃんとポイントは払う。いくら払えばいいかな?」

「一人1万。合計40万PPtでこの過去問を渡そう」

「分かった、クラスメイトにはうまく説得しておくよ。ただ、一つ聞いてもいいかな?」

「なんだ?」

「どうして私たちに売ろうとしてくれたのかな?」

「一番の理由は、信頼できそうだったからだな。Aクラスは派閥争いが起きててめんどくさそうだったし、Cクラスも胡散臭い連中の集まりだからな。あと、ポイントをちゃんと払ってくれそうだからかな」

「さっきの感じだと、自分のクラスにも過去問のことはまだ言ってないよね? それはどうして?」

「特に理由はないよ。強いて言うなら僕が言ったとしても、誰も信じてくれないからかな」

「……そっか、分かったよ。それじゃ、後でポイントを振り込みたいから連絡先交換しよ?」

「オッケー」

 

 そうして、僕は連絡先に一之瀬の名前が追加される。

 

「神崎も交換する?」

「ああ、いいだろう。どうやらDクラスにも頭のきれる奴がいるようだな」

「そんなんじゃないよ、僕は」

 

 神崎とも連絡先を交換して、二人に過去問を送る。

 

「……うん、確認したよ。それじゃ、あとでポイントも振り込んでおくよ。ありがとね! 若代君」

 

 そして、二人はクラスメイトのところへ戻る。僕もやりたいことができたし満足だ。

 さて、そろそろ清隆のもとに行くか。自身の荷物を持って僕も図書館から立ち去ることにした。

 

 

 職員室に向かうと、須藤たちが『やってやるぜ!』とやる気になっている。何があったんだ?

 

「来たか、直経。一之瀬と何を話していたんだ?」

「告白してきた。無事付き合うことになったよ」

「嘘つけ」

「……即答で言うなよ、傷つくぞ。で、何があったんだ?」

「ありえないことに、茶柱先生がテスト範囲が変更したことを伝え忘れていたんだ。それで先生にムカついてるから見返してやるって躍起になってる感じだ。部活も休むってさ」

 

 やる気になることは良いことだ。それに池や山内が退学になる分には問題ないが、須藤が脱落するのは避けたいからな。直感がそう言ってる。

 

「残り一週間、必ず赤点を取らないように私もフォローするわ。だから須藤君たちも死ぬ気でやって」

「「「おう!」」」

 

 色々あったが、この勉強会を通して鈴音たちは大きく成長できたようだ。できればこれからも成長し続けていて欲しい。人間が成長する様を見ているのは楽しいからな!

 

 

 

 中間テスト前日の昼休み、どうやら清隆が桔梗ちゃんと一緒に学食に行くようだ。『僕もついて行っていいか?』 と聞いたら『来るな』と即答で返されてしまったので、今日も仕方なく一人で昼飯を食べようとする。

 しかし、珍しい生徒が僕に話しかけに来てくれた。

 

「若代君、今いいかな?」

 

 茶髪ロングで大人びている女の子、松下千秋だ。

 

「おー、松下。珍しいね、大丈夫だよー」

「ありがと。食べ終わったらでいいからさ、二人きりで話せない?」

「美人からのお誘いだ。今から行くぞ」

 

 ご飯なんて今食べなくても問題ないしな。僕はコンビニ袋から取り出そうとしたおにぎりを即座に戻す。

 

「そ、そう? それじゃ、人気のないところに行こうか」

 

 そうして、僕たちは特別棟に向かう。ここはなぜか人があまり来ない場所だ。監視カメラもない。

 

「……ここでいいかな。単刀直入に聞くけどさ、若代君って結構な実力を持ってるよね」

「まぁ、そうだね」

「ごまかさないんだ」

「隠す必要もないしな。ただ、実力を行使するかどうかは今後次第だ」

「……私はAクラスに上がりたい。だから若代君、その実力をクラスのために使ってほしいの」

 

 そんなこと言われてもなぁ。そもそも他人に指図されたくない。

 

「悪いけど、今のところその予定はないかな。ていうか、松下も鈴音と同じくらいの実力を持ってるでしょ? それなら自分でクラスを引っ張っていけばいいんじゃない?」

「……それができれば苦労しないよ」

 

 何か事情があるのかな? とはいえ、僕には関係ないことだ。

 

「まぁなんにせよ、僕は好き勝手やらせてもらうよ。松下も好き勝手やってみたら? 案外楽しいぜ!」

 

 そう言って、僕は特別棟を後にする。冷たくしすぎたかな?

 だけど松下が憎くて言っているわけではない。Aクラスに上がったとしてもメリットがないだけなのだ。それなら好き勝手やる方がいい。

 

 ……ただ、もし僕の本気を受け止めてくれる存在が他クラスにいるのなら……

 そんなあり得ないことを考えていると、昼休みの終了を告げるチャイムが鳴り響いていた。

 

 

 放課後になり、桔梗ちゃんが手に紙束を持ちながらクラスの前に立つ。

 

「みんな少しいいかなー? 実は三年の先輩から過去問をもらったんだ。一昨年の中間テストもこの問題とほぼ同じだったんだって! だからこれを使えばみんな高得点をとれると思うの!」

 

 配られてきた過去問は僕が楓花から貰ったものと全く一緒だった。周りのクラスメイトも大いに喜んでいる。

 だが、桔梗ちゃんが過去問に気づいたのか? そういえば昼休み、清隆と学食に行くって言ってたけど、もしかしてそのときか? だとしたら、清隆も一枚嚙んでいるかもな。

 兎にも角にも、僕以外の生徒が過去問に気づいてくれたのはうれしい。

 それに、テスト前日に渡すことによって皆も必死になって暗記する。これなら中間テストは無事乗り切れるだろうな。

 

 

◆◇◆

 

 そして翌日となり、中間テストの日がやって来た。

 今回のテストでは清隆の真似をしてやろうと思い、全教科50点を狙いに行く。

 その理由として『かっこいいから』というのもあるが、少しでも平均点を下げるためだ。赤点組は全てを暗記できているとは思っていないからな。

 そして計画通り、午前中のテストは50点を取ることに成功する。だが、問題は昼休みに起きた……。

 

「わりぃ鈴音、実は昨日徹夜で勉強してたら寝ちまってよ。英語だけまだ暗記できてねぇんだ」

 

 ……ということを須藤が言ってきたからだ。これが池や山内ならどうでもよかったんだが、須藤は別だ。こいつの身体能力はこの先、役に立つ時が必ず来るはず。退学させないためにも英語に関してはギリギリのラインを攻めるしかない。

 なので英語のテストに関しては50点ではなく、40点に調整してテストを乗り切ることにした。

 中間テストが終わったあと、須藤が不安そうにしていた。だが安心しろ、僕が命懸けで平均点を下げてやったからな! お前が退学することは絶対にない!

 

 

〜〜〜

 

 そうして、待ちに待った結果発表の日が来た。教室の扉が開き、佐枝ちゃん先生が入室してくる。

 

「まずは、よくやったと褒めておこう。正直、ここまで高得点を取るとは思っていなかった。見ろ、満点を取った生徒が14人以上もいるぞ」

 

 そう言って黒板に張り出されたポスターには、生徒の名前と各教科の点数が書かれていた。確かに国語や社会、そして英語で満点をたたき出している生徒が多い。

 だが、そんなのはどうでもいい。問題は須藤だ、英語が不安と言っていたが……。須藤の英語の点数を見てみると、結果は39点。

 ……これは、まずいかもな。英語で100点を取っている生徒もいるし、ほとんどの生徒も80点あたりの点数を取っている。平均点はかなり上がったはずだ。……あれ? もしかして、僕も危ないか?

 そんなことを考えていたら、佐枝ちゃん先生が赤ペンを持ち出し、とある生徒の名前が書かれた上に線を引く。

 

「だが、お前()()は赤点だ」

 

 『若代直経』の上に一本の赤いラインができていた。僕の下には『須藤健』の名前もある。

 つまり、ギリギリの点数を攻めすぎたせいで僕も赤点になってしまったということだ。

 

「は? 何言ってんだよ! なんで俺が赤なんだよ!」

「この学校での赤点の判断基準を教えてやろう。『平均点÷2』をした数が赤点となる。今回の場合でいくと平均点が81.6。それを2で割ると40.8となる。小数点は四捨五入されるので、41。つまり、赤点を回避するためには41点以上取らなくてはいけなかったということだ。理解できたか?」

 

 僕の中学でもこの算出方法だった。というか、これ以外の赤点の基準を僕は知らない。だから平均点を下げるために点数を下げたのだが、それが裏目に出てしまったか。

 多くの生徒がこの現実を受け止めきれないのか、どんよりとした空気になる。

 

「う、嘘だろ……。俺が、退学……?」

「須藤はともかく、若代は運が悪かったな。お前の点数を見る限り、平均点を下げるためにあえて高得点を取らなかったんだろう? だが、英語に関しては見誤ったな。堀北のように51点にすればお前が退学になることはなかったはずだ」

 

 佐枝ちゃん先生の発言で、須藤や他のクラスメイトもそのことに気づく。

 

「……すまねぇ若代、俺なんかのせいで」

「……ごめんなさい若代君。私ももっと点数を落とすべきだったわ」

 

 須藤や鈴音から謝罪の言葉をもらう。だが安心しろ、僕も須藤も退学する気は毛頭ない。

 僕は席を立ち、佐枝ちゃん先生に質問をする。

 

「佐枝ちゃん先生、質問です。この学校において、ポイントで買えないものはないんですよね?」

「! ……そうだな。それがどうかしたか?」

 

 目を少し見開き、笑みを浮かべながら先を促す先生。

 周りの生徒は、また入学式の時みたいに『先生の下着は買えますかー?』みたいなくだらない質問をするんじゃないかとヒヤヒヤしていることだろう。だが、今回は大真面目だ。僕の人生もかかってるからな。

 

「よかった。なら、僕と須藤の英語の点数、合計3点を売ってください」

「……ふ、ははは! 点数を売ってくれと来たか。確かに、この学校内においてプライベートポイントで買えないものはない。そういう考え方もできなくはないな。だが、お前の手持ちで買えるとは限らないぞ」

「先生! いくらなのでしょうか! 教えてください!」

 

 洋介が力強く質問する。退学を免れる可能性があるのだ。必死になるのも当然か。

 

「そうだな。1点につき、10万ポイントで手を打つことにしよう」

「みんな! 須藤君と若代君を守るためにポイントを貸してくれないかな!」

 

 桔梗ちゃんがクラスメイトに説得してくれる。クラスの天使に頼まれれば断れる奴はいない。だが、一筋縄ではいかない……

 

「待て櫛田、本当に二人を助ける必要があるのか?」

 

 待ったをかけた生徒は、幸村だった。

 

「何言ってるの幸村君! このままお別れしてもいいの?」

「これが平田や櫛田だったらポイントを使うのはやぶさかじゃない。だが、須藤と若代はクラスにとって不利益だ。今のうちに排除できるならそれに越したことはない」

 

 幸村の意見に、多くの生徒は沈黙する。つまり、大半の生徒は幸村の言っていることに賛同しているということなのだろう。ポイントが絡むと、いくら桔梗ちゃんの頼みでも聞くことはできないか。

 というか、須藤だけじゃなくて僕も嫌われていたんだな。こうもはっきりと分かるとショックだぜ……。

 まぁいいや。そもそも皆には期待してないしな。自分のケツは自分で拭くさ。

 

「どうやら、クラスメイトは助けてくれないそうだぞ若代。どうするんだ?」

「安心してくれ皆。今回は僕が好き勝手やった結果だ。責任は自分で取るよ」

 

 僕は佐枝ちゃん先生のもとに行き、ポイントが表示された端末を見せる。

 

「! ……若代、一体どこでこんなポイントを」

「言ったでしょう? 好き勝手やったって。これで3点分、買えますよね?」

 

 端末に表示されているポイントは47万5000ポイント。Bクラスからいただいたポイントだ。

 本当は貯金しておきたかったが、自分のミスだしな。使うしかない。

 

「……お前も面白い生徒だな若代。いいだろう、あとで30万引いておく。これで須藤と若代の退学は取り消しだ」

 

 そう言い残して、佐枝ちゃん先生は教室を出ていく。

 

「よし! これで僕も須藤も退学しなくて済んだな!」

「お、おう。そうだけどよ……」

「……先生の言うことを信じるなら若代君、君は30万持っていたということかい? 一体どうやって?」

 

 洋介がクラスの代表として、皆が気になっていることを質問してくる。当然といえば当然か。

 

「好き勝手やった結果だってさっきも言っただろう? ただ一言だけ言うのなら、皆もやろうと思えばできたことだよ。特に桔梗ちゃんなんかは、ね?」

「え? 私?」

 

 桔梗ちゃんにフォーカスを当てさせる。少しでも僕から注目をそらすためだ。

 クラスメイトも桔梗ちゃんに視線を向ける。そんな目を向けられても本人も分からないだろうけどな。

 

「ま、とにかくだ! これで一件落着だろ? 早く次の授業の準備しようぜー!」

 

 そう言って、僕は無理やりこの話を終わらせる。おそらく後で鈴音から質問攻めされるだろうが、教えてやるつもりはない。

 とにかく今は、退学者を出さずに乗り切れたことを喜ぼうじゃないか。これを機に須藤は真面目になってくれると嬉しいな。

 

 

 それはそうと、今回の一件でプライベートポイントの大切さがよく分かった。クラスポイントを増やすのも大事だが、僕の中ではあまり優先度は高くない。

 よし、決めた! 今後は、プライベートポイントをメインに動くとしよう。その過程でクラスに貢献できることがあるのなら喜んでやろう。それなら松下も文句はないかな?

 

 

 

 こうして僕たちDクラスは、一人も退学者を出すことなく中間テストを乗り切ることができた。

 

 

 

 

 

 

 

 




《本来の若代直経の実力》

学力:C-→A+
身体能力:C-→A+
知性:D-→A
協調性:E→D-
判断力:E+→A

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