マブラヴガールズガーデン ドロテア・カークランドの雪山の流儀   作:マブラマ

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第9話 雪に眠る”戦術機”

雪原に再び仲間たちの声が響き渡った瞬間、指揮官は慌てて状況を切り替えた。

「と、とりあえず……それよりも、ジュリーに見つかったことを、伝えないとな!」

リュシーは鋭い目を細め、指揮官を睨みつける。

「何ごまかそうとしてんだ?…でも、確かにその通りだな。―――あとで事情を聞かせて貰うから覚悟しとけよ」

指揮官は内心で冷や汗を流す。

「(ぐう…先延ばしにしてるが、絶対にこれは後から事情聴取されるよなぁ……)」

リュシーがさらに詰め寄る。

「それとも、今ここで尋問受けるか?」

指揮官は即座に首を振った。

「……後で説明するよ(だけど、ラウラに見せた弱い姿を、他の皆に知られたくもないからな……)」

リュシーは少し視線を逸らし、ふと気づいたように言った。

「そう言えば、ジュリーは遭難しかけていたことを分かってない…よな?」

指揮官は頷く。

「ああ、まあ不安にならないようにって理由だけどな。おーい、ジュリー!!」

遠くで雪だるまをせっせと作り続けていたジュリーが、声を聞いて慌てて駆け寄ってきた。

雪を蹴り上げながら、息を弾ませる。

ラウラが手を振って呼ぶ。

「ジュリーちゃーん!」

リュシーが大声で茶化す。

「おーーーい! 生きてるかーーーー!死んでるのかーーーーー!返事をしろおおおおおおおおおおおお!!!」

ジュリーが到着し、得意げに周囲の雪だるまを指差した。

「あ、ラウラに指揮官! みてみて、これだけ作れたわよ!」

ラウラが目を輝かせる。

「わぁっ、雪だるまがたくさん! しっかり目立ってるわ!」

指揮官は雪だるまの列を眺め、苦笑を浮かべた。

「……作らせた俺が言うのもなんだが、ずいぶんたくさん作ったな」

ジュリーが胸を張る。

「ふふん! これだけあれば絶対に見つけて貰えるでしょ?」

指揮官は並び方を確認し、指摘する。

「……でも、SOSの形に並べること忘れてないか? これだと雪だるま作るのが好きな人になってるぞ」

ジュリーがハッとする。

「はっ!? そう言われればそうかも……」

リュシーが呆れたように呟く。

「忘れるなって…」

ノエルが目を輝かせて近づく。

「すっごーい!」

ジュリーがようやく気づき、喜ぶ。

「あ、リュシーさんにノエル!? 合流できたのね!」

リュシーが肩をすくめて笑う。

「お前のおかげで合流できたんだ。ありがとな」

ジュリーがさらに胸を張った。

「良かった……あたしが雪だるまになった意味があったわ!」

リュシーが怪訝な顔をする。

「は?」

指揮官が曖昧にフォローする。

「ああ、まあ色々とあってな……」

ノエルが少し涙目で言う。

「無事で良かったよー! 吹雪ではぐれちゃったとき、ジュリーちゃん達が心配でぐるぐる考えちゃってたんだ……」

ジュリーが明るく宣言した。

「そうね……でも大丈夫! ジュリー探検隊が困難を無事に乗り越えたんだから!」

ラウラが優しく微笑む。

「ふふ、そうね。ジュリーちゃん」

リュシーは満足げに頷き、無線機を取り出す。

「ホント、見つかって良かったぜ(ジュリーもなかなかセンスあるな…ハリエットより頭賢そうだ)よし、心香に無事伝えないとな……え?―――冗談だろ。ここだと、通信機どころかトランシーバーも使えない。ノイズばかりだ」

指揮官も自分の機材を確認する。

「リュシーもか……俺の機材が原因じゃなかったのか」

リュシーは無言で睨む。

「…………」

ジュリーが慌てふためく。

「ええっ!? そ、それじゃあ連絡が取れなくて本当に遭難しちゃうじゃない!?」

リュシーは深く息を吐いた。

「……グウ…撤退するしか、ないのか」

指揮官は静かに決断を下す。

「……リュシー、撤退しよう」

リュシーが頷く。

「……仕方ない、撤退するぞ!」

ノエルが元気よく言う。

「なら、早く離れちゃお! 心香ちゃんに早く連絡を取ってあげたいし!」

ジュリーが雪だるまを振り返る。

「そうね! やっぱり取り残されるのは不安だもの!…あ、でも雪だるまどうしよう?」

リュシーが肩をすくめる。

「折角作ったんだろ? そのままにしておけ」

ノエルが心配そうに言う。

「でも、知らない人が見たらびっくりしちゃうよね? それに、風とかで転がっても危ない気がする」

リュシーが考える。

「それもそうだな……」

ジュリーが名残惜しそうに雪だるまに別れを告げる。

「うう…そうね。それが正しい行動よね……バイバイ、雪太郎……雪次郎……スティーブ……ポール……ミシェル……ジョーダナ……サン……ドウェイン……」

リュシーが呆れる。

「後半からワイスピに出てた俳優の名前を付けてたのか。ポールってポール・ウォーカーだろ。ミシェルはミシェル・ロドリゲスだし…」

指揮官も驚く。

「雪だるまに名前付けてたのか……」

ノエルが元気よく手を挙げる。

「よーし、それじゃああたしが壊しちゃうね!」

ラウラが慌てて止める。

「あんまり走っちゃダメよー!」

指揮官は通信不良の原因を考えながら呟く。

「しかし、なんで通信ができないんだ?」

リュシーが茶化す。

「知るか! ポールに聞けよ」

指揮官が苦笑する。

「雪だるまに聞いても何も答えないと思うぞ」

リュシーが周囲を見回す。

「どうすんだ? また吹雪に巻き込まれたら、ヤバいぞ。ログハウスに帰るか?」

指揮官が頷く。

「そうだな……流石にログハウスに向けて帰る方がいいか」

ラウラが少し寂しげに言う。

「もしかして皆で帰るの?」

リュシーが説明する。

「通信が繋がらないし、それに心香を心配させちまうだろ? 撤退だ」

ラウラが肩を落とす。

「うん………そうだよね。折角ここまで来たのだから、何か見つかればよかったのに」

リュシーが優しく励ます。

「伝説のMGなんか簡単に見つからねえ……でもな、それを上手く乗り越えたら、いつか成果になる」

ラウラが目を輝かせる。

「リュシーさん……ありがとう! ドロテア様の側近メイドに言って貰えると心強いわ」

リュシーが照れくさそうに首を掻く。

「おいおい、よせって。照れるじゃないか……でもあたしはお嬢と違って頭悪いよ」

ラウラが首を振る。

「そんな事ないわ。リュシーさんも雪山の知識が豊富で凄く、強い人よ」

リュシーが少し誇らしげに続ける。

「それにさ、ピクシス・マスールはユーロ・タワーの中で最強だ。ま、ザルトゥーム学園全体だとシリウスシュガーの方が上だな」

ラウラが頷く。

「そうね。私達にとってもシリウスシュガーはカッコ良くて、ああなりたいって思える凄いチームだわ」

リュシーは内心で拳を握る。

「(凄いチーム……か。(バトルロワイヤルの時は不戦勝だったが、次こそは……次こそは勝利してみせる!))」

突然、ノエルが叫んだ。

「いったぁあああああ!?」

リュシーが慌てて振り返る。

「どうした!?」

ゴンという鈍い音と共に、ノエルが足を抑えて涙目になる。

「うう……雪だるまを蹴って壊していたんだけど、岩の近くにあったやつを狙ったら、岩ごと蹴っちゃって……」

リュシーが駆け寄る。

「大丈夫かよ…!? どこをぶつけた?」

ラウラがバッグを漁りながら言う。

「大変! すぐに行くからね! 私のバッグに応急手当用の道具が入ってるから!」

指揮官も驚く。

「いきなりでビックリしたぞ……」

ノエルが申し訳なさそうに言う。

「うう……ごめんね? 壊すのが楽しくなっちゃって……」

リュシーがため息をつく。

「………お前ら、あとで説教してやるからな」

指揮官は内心で苦笑する。

「ぐぬぬ…」

ふと、ノエルが蹴った「岩」を見て違和感を覚える。

「……ん? なんかおかしくないか?」

リュシーがからかう。

「おかしいのはお前のセンスだろうが」

指揮官が真剣に言う。

「違うぞ? ノエルが蹴った岩なんだが、さっき蹴ったときの音、おかしくなかったか?」

リュシーが目を向ける。

「お前、何を言って――――え?!」

全員の視線がその「岩」に集中した。

雪に埋もれていたが、質感が明らかに金属的だ。

ジュリーが興奮して言う。

「あれ? たしかにそうよね……ちょっと気になるわ! 雪を掘ってみるわね!」

ラウラがすぐに手伝う。

「ジュリーちゃん、待って! 私も手伝うわ!」

リュシーが加勢する。

「あたしも手伝うぞ!」

ノエルも痛みを忘れて参加。

「私もいくー!」

四人で雪を掘り進めていくと、徐々に現れたのは――。

ジュリーが息を呑む。

「…えっ!? これって…見覚えがあるわ!」

リュシーが目を細める。

「……岩じゃないな。これは、MGのマニピュレーターの部分か!?」

ラウラが驚く。

「え?」

リュシーが確信を持って言う。

「―――間違いない。これはMGだ。ここに眠ってる可能性が高い」

ジュリーが飛び上がる。

「うそ!? 本当に見つけちゃった!?」

リュシーが興奮を抑えきれず笑う。

「こんなの奇跡としか言えねえだろ……」

ラウラが目を輝かせる。

「これが、ザルトゥーム学園に伝わる七不思議の、雪山に眠っている伝説のMG…?」

リュシーが頷く。

「まさか実在してたとは……とんでもねえ大発見だぞ」

ジュリーが拳を握りしめる。

「すごい! すごいわ! これは最高の実績になるわね!」

リュシーが穏やかに言う。

「あたしは偶然見つけただけだ。実績はプレ・クラス-A――アンタらに譲ってやるよ」

ラウラが喜ぶ。

「やったわね! ジュリーちゃん!」

指揮官は呆然と呟く。

「…まさか、本当に見つかるだなんて」

リュシーが笑う。

「こりゃあ驚いたぜ……」

ジュリーがさらに掘り進めようとする。

「まだまだ掘り出せそう! あ! 目印も必要よね!? 雪だるまで目印にしたらいいわよね!」

リュシーが苦笑する。

「また作るのか? 次来るとき残ってるか分からないぞ」

ジュリーが少し落ち込む。

「そうよね…」

リュシーがため息をつきながら言う。

「ったく、しゃあねえな。ほら鞄で何か目印になるモノないか探すぞ。ノエルも手伝え」

ノエルが元気よく応じる。

「はーい!」

リュシーは掘り出したパーツを眺めながら、ふと閃いた。

「指揮官」

指揮官が振り返る。

「なんだ?」

リュシーが推測を口にする。

「あたしの推測だけど、通信が繋がらない理由分かった気がする」

指揮官が目を丸くする。

「何か分かったのか?」

リュシーが頷く。

「ああ、MGが原因かもしれない」

ラウラが驚く。

「え? 通信不良の原因がMGなの!?」

リュシーが説明する。

「かもな…恐らくこの機体は訓練用の機体ではなく戦闘用の機体。―――殺す目的で作られたMGだ」

指揮官が息を呑む。

「!?」

リュシーが続ける。

「お嬢から聞いた話だと、戦闘用として殺すために作られたMGが存在しているとしか言われたが……この機体は通信を傍受する……所謂通信妨害用のジャミングを積んでいる」

ラウラが目を丸くする。

「そうなのね……私、MGに乗ってるのに知らなかったわ」

リュシーが肩をすくめる。

「まあ、この機体は公の場には一切出してない…旧東ドイツの『戦術機』…旧ソ連が作り出した機体だ」

指揮官が呟く。

「戦術機……?」

リュシーが頷く。

「今では、端末があるから無線で対策してたらそんなことは一切ないな」

指揮官は内心で思う。

「(ヒントは今まで転がっていたわけか……)」

リュシーが皆を促す。

「その東ドイツは西と統一して消滅したが、その一方ソ連は暫く存続したがクーデターが起きて失敗して崩壊した――さあ、早く戻って安心させなきゃな!」

ジュリーが名残惜しそうに言う。

「えー!? でも、まだ目印が……」

指揮官が安心させる。

「心配するな! リュシーたちがマッピングして行き方は覚えてる! だから、今はログハウスに戻って休むのが先決だ!」

ジュリーが頷く。

「そうなのね! なら安心ね!」

ノエルが興奮してつまずく。

「それじゃあ、早く心香ちゃんに教えるように……わわわ!?」

ジュリーが慌てる。

「ノエル!?」

リュシーが駆け寄る。

「大丈夫か!?」

ノエルが痛そうに笑う。

「あいたた……うっかりしちゃった」

リュシーがため息をつく。

「全く、興奮し過ぎだぞ…気持ちは分かるが。ログハウスに戻るぞ!」

指揮官が皆を促す。

「それじゃあ、帰るぞ」

ラウラ、ノエル、ジュリーが元気よく応じる。

「はーい!」

そうして指揮官達は、伝説のMG…”戦術機”を発見するという奇跡を胸に、無事にログハウスへと帰還したのだった。

雪山の試練は終わった。

そして、プレ・クラス-Aの新たな一歩が、ここから始まる。

 

 

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