グラインドストーン   作:にわかミリヲタ

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ここからが本筋です。

想像で書いてます。だから変な所あっても勘弁して。


隼の巣

「仕事がっ、仕事が終わらないっ! シナの連中勝てもしないのに攻撃してきやがって! 戦力の逐次投入は愚策だって習わなかったかよ! こっちは整備とパーツの交換で徹夜だよっ! いい度胸だよ。当番のローテーションも崩れたから休めねえじゃねえか!」

 ここまで息継ぎ無し。よっぽどキレているらしい。まあそうだろう。徹夜が確定したのだから。更に、MHF(多目的人型戦闘機)一機損傷が大きく、修理しての前線復帰ができるか分からないとなると、それに関する報告書と大掛かりな整備、検査も必要で、地味に面倒なのでもう部下共に押し付けることにした。

 草臥れた雰囲気を発する彼は整備部隊の隊長である、マミヤ・アカシ大尉。つまり班員の管理もしつつ、自分も作業に参加する立場だった。要するに面倒が多い中間管理職だという事だ。哀れ。

 彼は乱雑に頭を搔きながら、輸送船の出迎えのために港湾部へと向かう。

 艦はすでに係留され、基地との連絡路が接続されていた。そこからもう出て来た男性と、MHF隊隊長が居た。

「救援、感謝します。第三十一戦隊駆逐艦ハナヅキの艦長、カゲロウ・スズカゼ中佐です。乗員共々お世話になります」

「第三四三臨時MHF隊隊長のクレ・ヤマト少佐です。補給感謝します」

「同じく第三四三整備補給隊臨時隊長のマミヤ・アカシ大尉です。こちらこそお世話になります」

 お互いに挨拶を交わして敬礼する。この基地の人間にとっては一ヶ月ぶりの他人だ。隊長二人は少々嬉しさを滲ませた顔で笑っていた。

「さて、今回のの補給の確認をお願いします」

「いやあ、ありがたい。開戦前まではあんなに賑わっていたのに最近のお客さんはシナの連中位なもんで心細かったですよ」

「それは良かった。わざわざこんな艦で運んできた甲斐があります。まさか、この時代に宇宙で鼠輸送をやる羽目になるとは思いもしませんでしたな」

「それは、本当にそうですね。そこまで艦が足りていないのですか?」

「ただの輸送艦を守りきれる程の護衛の艦艇が付けられない程度には。後はドック待ちですよ」

 やはりこの基地と同じ様な損害を全体で受けているらしかった。そもそも数で負けているのに損害が嵩んで差が更に広がるとは全く持って嫌になる、というのが正直な感想だ。やってられるか、こんなアンフェアな勝負。

「その、申し訳ないのですが、自分は整備へ戻らせていただきます。人員が割れているので」

 恐る恐るといった風にアカシが尋ねる。

「それなら行って下さい。頼みますよ。我々も助けられた身なのでね」

「ありがとうございます、中佐。じゃあ監督は任せた、少佐殿」

 嫌そうな顔をしたヤマトを横目に、作業に入るためにその場を離れて、宇宙服のヘルメットを被ってエアロックを通り、いつもの作業場ヘ向かう。

 

 

 整備用のスペースに置かれた先の戦闘で頭部をぶつけた隊長機。すでに損傷箇所やその周辺の装甲が引っ剥がされ、内部の機構を露出させている。肩のミサイル発射管はすでに取り外されており、機関砲も腕部から離れて吊り下げられてベルトリンクでつながった腰に当たる部分に取り付けられている給弾機に専用の機械に繋がれ内部から空薬莢を取り出しながら弾薬が装填されていた。

「どうだ、具合は?」

 ちょうど近くにいる空中で浮きながら指揮を取っている部下へ尋ねる。

「駄目ですね。頭部のセンサーは大体イカれてます。それと相当な速度でぶつかったみたいですね。首周りの駆動系もガタが来てますし、交換しないといつ壊れることか」

「だろうな。んで、悪い知らせともっと悪い知らせがあるんだが、どっちから聞きたい?」

「それなら、悪い知らせからで。と言っても嫌な予感しかしないんですけど」

「まあ、そのとおりだな。ようやく来た輸送船、駆逐艦だから補給が想定より少ない」

 ちなみにこの輸送船の積み下ろしの監督はアカシの管轄だったが流石に仕事が多すぎたので、機体を壊した隊長が肩代わりを快く()引き受けてくれた。

「そうですか。足りますかね? そろそろ色々絞らなきゃいけないってこの前言ってませんでしたっけ?」

 受け答えをしていた部下、シラヌイ・アサヒが天を仰ぐ。とは言ってもアカシから見ると床だったが。

「じゃ、もっと悪い方行くぞ〜。あれを修理できるほどのパーツが在庫に残ってない」

「本当ですか。そんなにパーツ不足なんですか?」

「まあそうだな。頭のパーツ以外はそれなりにあるんだが、センサーの取り換えなんてこんなところでするもんじゃないからな。あんな精密部品をこんなとこで交換なんて想定してねえよ。駆動系は直せるが肝心の目が壊れてちゃ使い物にならんしな〜」

 そう、パーツがないのだ。そもそも、機体の頭部のほとんどを占めている光学センサー、レーダー機器を総入れ替えする様な大掛かりな作業をこんな僻地でやることは誰も想定していない。

 しかし、そうも言っていられるほどの余裕もない。開戦前に想定されていた戦力はすでに開戦時の奇襲で半減しているため、防衛戦力としては心許ないこと極まりない。

「しゃーない。やりたくなかったが、共食いさせるしかなさそうだな」

「こいつに食わせられる機体なんて残っていましたか?」

「ここには無い。だから封鎖区画に行く必要があるだろうから、申請しなきゃいけねえ」

 封鎖区画とは、開戦時に受けた奇襲の損傷によって復旧を諦め封鎖された本来の軍用区画のことだ。この基地は元々軍民共同の拠点だったが、最前線になった今こんなところに来る民間機などいないので接収して使っている。最前線で戦闘が頻発しているから修理のために後送できないというのもそうだが、使う人間が残っていないという面もある。

 そもそもの話、平時は万年定員割れで人手不足な組織がシキシマ共和皇国軍という組織だ。宇宙という特殊な空間を職場とする専門職で技能職な宇宙軍の兵士はそもそも訓練に時間がかなりかかる。そう簡単には補充できない。

 そういった事情でただ封鎖するどころか、機材の運び出しすら一部で諦めて直ちに被害軽減のため隔離された区画が封鎖区画というわけだ。そこには破壊された港湾設備ごと損傷した機体が放置されている。それらを回収して、使えるパーツを剥ぎ取り修理に充てようということだ。

「ま、ともかくそれより先に残ってる奴らの整備だな。直せねえこれ直すよりも生きてるのを壊れない様にしなけりゃいけねえ。これは後に回して仕事に戻るぞ」

 そう言って隣のハンガーにある整備待ちの機体へとシラヌイとその指揮下の班を連れて移る。

「そっちの足頼んだぞ」

「了解です」

 隣にあった機体も関節部のカバーが取り外され、内部の関節周りの部品が剥き出しになっていた。その整備箇所に取り付いていく。専用の機器で駆動系の電圧に異常が無いか測る。数値には異常は見られない。だが、それで過信するのも禁物だ。ここで見逃しがあったら被害を被るのはパイロットなのだ。回りまわって自分も危なくなるし、なにより、誇りを持てない仕事をしたくはない。隙間からライトを当てながら関節部分を覗き込んで外から見ることのできない内部に傷などの異常が無いか確認する。

「こっちは無さそうだが、そっちはどうだ?」

「大丈夫そうですね。こっちも」

「こちらも問題なさそうです」

 部下たちからの返答が返ってくる。

「で、あと何箇所残ってる?」

 そう、点検箇所がこの人型兵器、MHF(Multipurpose humanoid fighter)とやらは戦闘機なんて比にならないほど多いのだ。何だこの関節の数。ふざけてるのか?

「関節だけであと十、それとメインとサブ、姿勢制御用のスラスタとセンサー類とコックピット周りがまだです」

「んで、何機整備まだだっけ?」

「四機ですね。まあ他の班もいるんですし一機か二機位じゃないですか。やるのは」

「そうか、あんがと。じゃあ続けていくぞ」

 そう言って関節部の整備を続けていく。下半身の関節に取り付いて同じ手順で機械の数値と本体の隙間を覗き込んで異常が無いか確かめていく。

 今のところは異常値も損傷もなかった。

「まだ大丈夫そうだな。ただ、この損耗具合からすっと想定よりも早く交換することになりそうだな」

「さっきの話からするとパーツは大丈夫なんですよね。それなら安心なんですけど」

 ヘタったパーツで送り出すことが無いことは喜ぶべきことだった。今のところ運用している機体の稼働率は高い水準を維持している。それが崩れて自分達の仕事にケチが付くのは気に入らない。

 まあ、パーツ自体は民間からの接収品が倉庫に存在している。ここのMHFは駆動系はコストカットや開発期間の短縮のために民間の作業用ロボットの物を流用している。いやー、最近の民生品はすごいね! そのせいで駆動速度が重機としての必要性の関係から遅く、超近距離戦に対応し辛くなっているのだけども。

「ヒヨウ改はまだいいのよ。タイヨウの方は新し目だから高性能の使ってるせいで在庫が少なくてな」

「あー、そういえばモーター別物でしたからね。使い回せないんですか?」

「出来無かないんだが、機体の操縦感覚が変わるから今までのと感覚がどれとも変わるから、乗る奴らの慣らしが必要になる。そんなシュミレーションデータ無いから当然実機での訓練になるが、そんなことする暇無い。なにより調整が面倒」

「そうですね。というかそこまで出来ないでしょう。それ専門の人たちは今病院じゃないですか。無理でしょう」

 もっともな事をシラヌイが言うが、

「いや、実はそうでも無い。昔別の基地でヒヨウにタイヨウのモーターをだけどやったことがあるんだよ。ヒヨウのフレームじゃ負荷が大きすぎて寿命がゴリゴリ削れるが、逆ならまあイケそうだ」

 何故かナガトが自慢気に語るが、それをシラヌイは胡乱な視線で返した。戦前はこの男の奇行に振り回された経験があるためだ。

 こいつ、割と問題児でもあるのだ。組織に害を与える様な真似はしないが、処理に困る様なことを進んでやらかす面倒くさい男である。このモーター交換なんかは最たるものだ。有事の際は必要になるが、平時に行っては問題になることを進んで(許可は無理やり取ったが)試す。結果的には利益が出るが歴代のこいつの上官は苦労しただろう。というか、した。そういう機体に負荷が掛かる事を実験部隊はともかく、一般部隊でやるには上を納得させうる普通ではない理由を捻出するのはとても面倒であろうことは想像に難くない。いや〜皆様お疲れ様でした。

 さて、そして作業であるが、流石に手慣れたプロといった様子で話しながらも他の部下と共に作業を続けていた。




知識不足が恨めしい。
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