オーバーロード・ジブリールのC.E.84 ~転生者が導いた運命の終着点へようこそ~ 作:LN58
原作:ガンダム
タグ:転生 機動戦士ガンダムSEED DESTINY デスティニープラン 1984年 バッドエンド
しかし、歴史の表舞台に立つことになるC.E.73の【第二次連合・プラント大戦】まで10年の時間があることを把握した上で、彼は史実通りの悪の道を貫くことを決意する。
そして、C.E.73年から74年に渡る【第2次連合・プラント大戦】から10年後となるC.E.84年――――――、
人類が戦うべき世界の真の敵として断罪された軍産複合体:ロゴスの崩壊後にデスティニープランが施行された世界は“オーバーロード・ジブリール”に支配されていた。
これはなぜそのようにコズミック・イラの歴史が進むことになったのかを綴った記録となる。
そのヒントとなるのは【ガンダムSEED】という作品群の時代性から導き出された令和時代の人間になら視えてくる【デスティニープラン】の想定の穴である。
『1984年(ジョージ・オーウェル)』とは、1949年に刊行したイギリスの作家:ジョージ・オーウェルのディストピアSF小説。
全体主義国家によって分割統治された近未来世界の恐怖を描き、特に欧米での評価が高く、思想・文学・音楽など様々な分野に今なお多大な影響を与えている近代文学傑作品の一つである。
1950年代に勃発した第三次世界大戦の核戦争を経て、1984年現在、世界はオセアニア、ユーラシア、イースタシアの三つの超大国によって分割統治され、間にある紛争地域をめぐって絶えず戦争が繰り返されている。
本作の舞台となるオセアニアでは思想・言語・結婚などあらゆる市民生活に統制が加えられ、物資は欠乏し、市民は常に“テレスクリーン”と呼ばれる双方向テレビジョン、町中に仕掛けられたマイクによって屋内・屋外を問わず、ほぼ全ての行動が当局によって監視されていた。
C.E.73年から74年に渡る【第2次連合・プラント大戦】から10年後となるC.E.84年――――――、
人類が戦うべき世界の真の敵として断罪された軍産複合体:ロゴスの崩壊後にデスティニープランが施行された世界は“オーバーロード・ジブリール”に支配されていた。
そこには 遺伝子工学によって戦争のない平和な世界を実現する人類救済計画【デスティニープラン】の提唱者である 第2次大戦の勝利者:ギルバート・デュランダル議長が思い描いていたユートピアは存在していなかったのである。
たしかに、デュランダル議長は【第2次大戦】においてZAFTの新時代の象徴にして自身が選抜した精鋭であるミネルバ隊を差し向けて、計画の最大の障害である 第1次大戦の英雄たち“歌姫の騎士団”を歴史の闇に葬り、地球連合を意のままに操る最高権力を持つ“平和を阻害する死の商人”軍産複合体:ロゴスを魔女狩りにして絶滅たらしめたのだ。
その結果、地球圏はプラント最高評議会議長:ギルバート・デュランダルの下に統治されることになり、もはやデスティニープランの導入に抗える勢力が存在しなくなったことで、全人類の遺伝子登録が進められると同時に二度に渡る大戦で荒廃した地球圏の再構築が行われ、人間の遺伝子を解析することによる人材の再評価と人員の再配置が粛々と進められていったのある。
これにより、正史ではまさかの主人公交代で散々な扱いだった“主人公(笑)”怒れる瞳を宿したシン・アスカが心から望んだ“優しくて温かい世界”が完全に実現されると信じて、デュランダル議長に対して反対を表明する人たちやデスティニープランに抵抗する勢力を次々と滅ぼしていったのだった。
戦後、テロメアが短いクローンだったことで余命僅かだった戦友の姿はなく、最後までギルのために戦い抜いた彼の分までシン・アスカは敵を徹底的に殺し尽くした。
それは 反感を抱きながらも憧れていた かつての上司であり 裏切り者として討ち果たして海の藻屑となったアスラン・ザラが修正しようとしたヒーローごっこの続きであった。*1
しかし、今となっては第2次大戦を終結に導いた“ZAFTのトップエース”にして、デスティニープランが施行された戦後世界の平和な世界を守るために反乱分子を鎮圧していく“平和の使者”として世間から大いに称えられる存在になっていたのだが、
一方で、今もなおしぶとく世界各地で抵抗を続けている 反乱分子のレッテルを貼られた
それでも、遺伝子の信奉者であるデュランダル議長が見出した“最高の戦士”としての運命から抜け出すことができないまま、ひたすら下された命令に従い続けて 来る日も来る日もいつ終わるとも知れない反乱分子の鎮圧に駆り出され、
血溜まりの後すらビームで残らない 戦場とは名ばかりの虐殺の現場;MSに対抗する戦力を持たない非戦闘員しかいないことがわかりきっている
もちろん、アスランが脱走した日に一緒に妹が海の藻屑となったことで 互いの傷を舐め合うように急速に距離を縮めることになった 戦友にして最愛の人:ルナマリア・ホークは、平和を勝ち取ったはずの世界で精神が擦り切れていく恋人:シン・アスカのことを癒そうと手を尽くしたのだが、最終的に“見てられなくなって”二人は破局してしまうのであった。
これが決定打となって親友と恋人を失った孤独に苛まれた英雄は怒れる瞳からついに光が消え失せ、いよいよ人間性を捨てて、殺人という単語が頭につく“機械”に変容することになったのである。
このことで恋人であったルナマリア・ホークを責めるのはお門違いである。むしろ、彼女こそが一番に【デスティニープラン】の矛盾と理不尽さを身を以て体感した一人であり、“ついていけなくなった”人間なのだから。
なぜなら、愛する人の苦悩を分かち合おうとする 恋人なら当たり前の献身を『そういったメンタルヘルスケアは専門家であるメンタルヘルスカウンセラーがすべきことである』と【デスティニープラン】に支配された世界はそう酷評するのである。
積もり積もった鬱憤から多少の愚痴や怒気が混じった相談だったとしても、彼女がわずかな希望を抱いて意を決して真剣に頼った『こころの相談窓口』の対応は極めて事務的で機械的でひどく冷淡であり、彼女の遺伝子に刻まれた
それでも、職適性が無いと言われようと無い知恵を絞って捻り出した答えというのが自分が帰る場所になること、すなわち愛する人と家族になることであり、愛する人との間に子供を作って未来を共に築いていくことを、上官であったミネルバ艦長:タリア・グラディスから教わったのである。
もちろん、すでに彼とは身体を許す関係となっており、それでこれまで慰めてきたわけなのだが、いよいよ 家族になって子供を作る 明るい未来図を語り聞かせたことで 最愛の人の精神が持ち直してきたところで、残酷な運命は嬉々として人生最大の悲劇をもたらした。それには相談相手になったタリア艦長も言葉を失った。
なんと、シン・アスカとルナマリア・ホーク、この両名の遺伝子調査の結果、『二人の間に子供ができる確率が極めて低い』ことが判明したのである。
当然、婚姻統制を敷くプラントでは婚姻を認められないのだが、可能性はゼロではないとして婚姻を認めるように猛抗議したタリア艦長に対し、デュランダル議長は
そう、
厳格な婚姻統制のルールに則ってきっぱりと婚姻を不受理するならわかる。それが国家のルールならば、国民は基本的に従う義務があり、異議を唱える場合は所定の手続きを踏んで法律を変えるように諮る必要がある。
一方で、第2次大戦の英雄であるシン・アスカとルナマリア・ホークが恋人関係にあることは世間に知れ渡っており、二人の結婚を祝うことは世界にとってもめでたいという政治的判断で例外を認めることも十分に納得できることのはずだった。
しかし、ギルバート・デュランダルはどちらの選択もしなかったのだ。厳格な法の支配者になることも、強かな政治的手腕を発揮する策謀家になることも拒否したのだ。
そう、自身の悲願であった【デスティニープラン】実現に貢献した 最大の功労者と言ってもいい シン・アスカとルナマリア・ホークの両名にこの男は報いようとしなかったのである。誠意を示そうとしなかったのだ。
それどころか、いつまでも終わることのない反乱分子の鎮圧に追われることもあって、この
当初は部隊の面々も二人の仲は周知の事実として 婚姻が認められないことに同情的で お熱い仲だと茶化していたのだが、毎日のように搾り取られて明らかにシンの調子が悪くなっていく様子にいつしか不穏なものを感じるようになり、
やがて、それが戦場において命取りになりかねない致命的な隙を生んでしまったことで、そのことがデュランダル議長の耳にまで届いて査問会が開かれる事態となり、
愛する人との子供が欲しくて必死になっていたルナマリアは究極の選択を突きつけられることになったのである。
すなわち、愛する人の命をとるか、己の愛欲を優先するのかを――――――。
結果、査問会で『自分では彼を救えない』と気づいてしまったルナマリア・ホークは一頻り涙を流した後、疲れ切った表情で転属命令を受け入れることになり、外でずっと待っていたシン・アスカに別れ話を切り出すことになったのだ。
それでも、本心ではあきらめてはいなかった。軍人以外に示されていた自分の遺伝子情報にある才能から退役後の人生を選んで、そこで彼の心の拠り所になる場所を用意して待っていようと健気に尽くそうとしていたのである。
だからこそ、大戦の英雄として並び立つ二人の関係は崩れ去ってしまったものの、近いうちに退役して いつでも帰ってきてもいい場所を開いて シンのことを待っていることを最後に伝えて 彼の前から去っていったのだ。
できるだけ明るい表情を取り繕って 精一杯 未来に希望を抱かせるように――――――。
だが、別れ話をし始めた時点ですでにシン・アスカの心は崩壊していた――――――。
そして、デュランダル議長もまた孤独な独裁者の道を歩み始めることとなった。
それは他ならぬ元恋人:タリア・グラディスと英雄の恋人:ルナマリア・ホークが 今回のデュランダル議長の対応が原因で退役した後、市井で反デュランダル派の中心人物になったことが大きなきっかけとなった。
そもそも、プラント国内では当初から遺伝子情報から得られた職適性に従って職業を選ぶ人生設計が一般的なために 当然ながら その延長線と理解されていた【デスティニープラン】の導入に反対意見はないに等しかったものの、
それはそれとして、プラントが独立国家となってから直面している政治的課題の解決に関して不満の解消が思うように進んでいないのが現状であった。
なにしろ、タリア・グラディスとルナマリア・ホークが反デュランダル派に与することになった大元の原因である婚姻統制に代表されるコーディネイターに特有の社会問題が 平和になった世界だからこそ 目を逸らすことができない将来の問題として真剣に議論され始めるようになったのである。
そう、【デスティニープラン】で世界が平和になったところで、純コーディネイター国家であるプラントの衰亡は免れない事態となっており、このままだと平和になった世界でプラントだけが数十年後に没落して一人負けすることを実感する声が日増しに増えていっているのである。
それは実に滑稽で皮肉な光景ではないか。今までは挙国一致体制で地球との戦争に国民の意識が全て傾いていたからこそ、戦争に勝つことが第一条件として強大な指導者を求めていたのだが、
第二世代以降のコーディネイターの出産率の低さから『種族としての未来は無い』という正しい状況把握が戦争から解放されたプラント国内の弛緩した空気の中で広がったことで、
これまで盤石だったデュランダル議長の支持率が揺らぎ始めるようになり、『無能な科学者のせいでプラントが滅んでも世界にはデスティニープランが永遠に残る』という皮肉が囁かれ始める。
そこで 俗に“反デュランダル派”と呼ばれる 現状に不満を覚えるプラント国民たちは判断を保留にし続ける最高権力者を見限って、自分たちで打開策を導き出そうと様々な集会を開くようになったのである。
最終的に婚姻の自由を求めて他国に渡ることを推進する移民派と、遺伝子改変禁止に関する協定:トリノ議定書を破棄して新たなコーディネイターを誕生させて人口を維持しようとする新世代派へと分かれていくことになり、
これを国家の秩序と治安を乱す不穏分子として
そこからの展開は早かった。かつてのロゴスの魔女狩りのようにデュランダル議長の信奉者たちが国内の反デュランダル派を血祭りに上げていき、【第1次大戦】終盤のパトリック・ザラ政権以上の監視社会と警察国家へと坂を転げ落ちていくようにプラントが変貌していくことなったのだ。
地球圏全体の【デスティニープラン】の導入にしか興味がないとして国内の問題を後回しにしていることへの反発や反論を言葉ではなく暴力で封じていく自国民の野蛮さにデュランダル議長自身が慄いた時にはすでに手遅れとなっていたのだ。
デュランダル派による反デュランダル派への迫害が本格化したことで、反デュランダル派の移民派は命からがら他国へ亡命し、新世代派はコーディネイター至上主義を掲げて 将来的に【デスティニープラン】で要職につける才能の付与した自分の分身を生み出せる環境を求めて各地を渡り歩き、プラントの人口流出に拍車を掛ける結果になったのである。
そうなれば【デスティニープラン】の導入と運営の基盤となるプラントの国家運営はいよいよ破綻の危機を迎えることになり、そこでついに“オーバーロード・ジブリール”が仕掛けたブービートラップ:
――――――それは 特段 難しい話などではない。
そう、その仕掛け人こそが【機動戦士ガンダムSEED DESTINY】のわかりやすい悪役として 黒幕であるギルバート・デュランダルの手のひらの上で踊った ある意味でその計画達成に率先して協力していたことになる
しかし、このロード・ジブリールは ロード・ジブリールであって ロード・ジブリールではなかった。
その正体は20年の時を経てまさかの劇場版【機動戦士ガンダムSEED FREEDOM】が公開された令和時代を生きたガノタの魂を宿した転生者であったのだ。
原作
そのことに気付いた時には時はC.E.63であり、奇しくもプラントの自治権と貿易自主権を求める政治結社:
さて、その時はまだ21歳の過激な反コーディネイター主義のブルーコスモス青年部の若造に過ぎなかったロゴスの御曹司だったのだが、ここでガノタである彼はあえて原作通りの展開をなぞることを決心したのだ。
というのも、転生した先があのロード・ジブリールだったのだ。将来的にこの小物界の大物に降りかかる自業自得の災難と結末のことを思えば、普通はその運命から逃れようと必死に足掻くことだろう。
しかし、まだ【第1次大戦】も始まってもいない戦前、動乱の兆しが見えても変革が訪れることが決してない金縛り状態となっていたのだ。
考えてみて欲しい。前任者であったムルタ・アズラエルが 使える駒になるならコーディネイターであっても登用する
ラウ・ル・クルーゼ同様に正論に聞こえてしまう熱さと一理を戦場で吐き出してきた国防産業理事:アズラエルに対し、国防産業理事を超えるロゴス代表の肩書も引っ提げたこの男はコーディネイター憎しの完全に感情任せの三下の悪役ムーブしかしておらず、利敵行為や自滅にしか思えない戦略的に無駄なことしかない 逃げ足が自慢の 口だけは達者な 無能な働き者なのだ。
アズラエル以上にどっぷりと憎しみの連鎖に運命を雁字搦めにされていた男の若かりし頃は当然ながら右も左も反コーディネイター感情が渦巻く狂気の世界の真っ只中なのである。
しかも、すでにロゴスの一員となるべく後継者育成も完了して身も心も世界の支配者の選民思想に染め上げられているので、ナチュラルだとかコーディネイターであるか関係無しに他人の人生を踏み台にするのが当たり前の地獄みたいな環境に向き合わされることになったのだ。
そのため、何かを変えようと思ってもロード・ジブリールとなる運命から降りることは叶わないまま、運命の年である【
――――――だが、死ぬ運命が決まっているのなら、死を乗り越えてしまえばいい。それで運命から解放される。
まるで己の死さえも金で解決できると驕り高ぶったアル・ダ・フラガのような発想だったが、ここで
そう、“ファースト・コーディネイター”ジョージ・グレンがもたらした ナチュラルとコーディネイターの争いの歴史に塗り潰された宇宙時代:コズミック・イラの行く末をガノタとして知っているからこそ、【デスティニープラン】が導入された世界を乗っ取って地球圏の真の支配者になろうという大望が生まれたのである。
ブルーコスモスの一員である以上にロゴスの一員であることが最大の足枷になる以上、【ガンダムSEED】という作品群の全体の主人公であるキラ・ヤマトの味方になる選択肢は敢えて外していた。
むしろ、彼は 自身がロード・ジブリールであることを受け容れて 悪の道を選ぶようになったのだ。
なぜなら、令和時代になってまさかの続編となる劇場版【SEED FREEDOM】が公開される以前から、ナチュラルとコーディネイターの争いは【第2次大戦】の後も続き、最終的にコーディネイターに保護政策が課せられる事態になることまで明かされているのだ。
もうどうしようもない。ロード・ジブリールの立場から根本的なコーディネイター問題の解決は不可能と判断した上で、人道的に戦争が起きない平和な世の中になるようにするにはどうしたらいいのかを考えた時、【デスティニープラン】を否定して憎しみの連鎖を断ち切るために戦う覚悟を決めたキラ・ヤマトを否定することを考え始めたのだ。
そんな未来が来ることを知る由もない“先の時代の敗北者”になることが確定している主人公:キラ・ヤマトは終わらない明日へ目指して『それでも、守りたい世界があるんだ!』と叫んだ。
ならば、有史以来存在し続けてきたとされているロゴスという巨大な悪と断罪される悪役として、コズミック・イラを生きる全ての人類に判決を下してやろう。
――――――こんな世界に守る価値なんてない!
やり方は簡単だった。エンジェルダウン作戦で
史実通り、すでに
もちろん、
しかし、殺しはしない。ちょっとの間だけ冷凍睡眠をしてもらって【デスティニープラン】が施行された戦後世界に招待するという素敵な予定が組まれているし、宇宙で別行動をしているラクス・クラインも一緒に招待しなくてはならないのだから。
そう、宇宙でエターナルの危機に駆けつけるのはキラ・ヤマトとラクス・クラインにとって平和への願いが込められた伝説の白い機体:
時はロゴス討伐をデュランダル議長が宣言したことで地球上ではロゴスへの魔女狩りが吹き荒れ、ついには屋敷に暴徒が押し寄せ、他のロゴスのメンバー共々、連合軍最高司令部:ヘブンズベースに逃げ込んでいる頃合いであった。
つまり、本来ならば支持母体であるロゴスが壊滅することになり、圧倒的不利な状況に追い込まれた中で
実は、この頃にはすでに自身の記憶を転写したカーボンヒューマンの影武者と入れ替わっており、自身はロード・ジブリールの容姿と経歴を捨てて、
いやはや、コーディネイター憎しの感情で選民思想と自己陶酔が激しいブルーコスモスの青年を遺伝子工学を応用した全身整形技術を施してロード・ジブリールに仕立て上げるのは実に容易なことであり、我ながら単純な人間だと思ってしまった。原作通りのセリフと思考回路を注入すれば 誰でもロード・ジブリールになれるのだから。
こうして【ガンダムSEED】世界の中心人物となる“
なお、“
当然ながら ザフトによるオーブ連合首長国侵攻作戦:オペレーション・フューリーで
首脳陣で運悪く唯一生き残ってしまったユウナ・ロマ・セイランは公開裁判で戦犯として裁かれることになったのである。
安心したまえ。主役であるキラもアスランもいない戦場で影武者が捕まったとしても、その時はもうひとりの影武者を宇宙に解き放つだけであり、歴史の修正力は確実に味方していた。
これが転生者であるロード・ジブリールが体験した【第2次大戦】の顛末であり、【デスティニープラン】が実現されていく平和な時代が来たとされる戦後世界で、自身が背負う運命を身代わりに擦り付けて全てから解放された男は“オーバーロード・ジブリール”を密かに名乗り始めた。
さて、話を戻そう。ここからが
地球圏が第二次大戦の勝利者であるギルバート・デュランダル議長の下に統一され、【デスティニープラン】の導入と反対勢力の撲滅が進められて世界秩序が塗り替えられていく一方で、
肝腎のプラント本国では平和な世界になったことで今まで目を逸らし続けていたコーディネイターという種の限界を突きつけられ、反デュランダル派が移民派と新世代派となって国外脱出を図り、人口流出に歯止めがかからない状況に陥っていた。
そのため、デュランダル議長は“世界は救えても祖国は救えなかった男”“祖国を犠牲に世界を救った英雄になろうとした売国奴”の評価が生まれつつあり、
このままでは【デスティニープラン】の完遂どころではないとして、人口流出でできた巨大な穴を埋めるために徹底的な
これこそが遺伝子工学で人間を理解しようとした科学者:ギルバート・デュランダルが犯した最大の罪であった。
ここでよく考えて欲しい。“平成の1stガンダム”を目指して制作された【ガンダムSEED】シリーズの時代性はまさに平成時代のものであったのだが、20年の時を要した劇場版【機動戦士ガンダムSEED FREEDOM】は令和時代に公開されたものである。
令和時代に急速に普及し、真剣に議論されるようになったものと言えば――――――、そう、
実は、宇宙世紀:ユニバーサルセンチュリー以上にクソみたいな宇宙時代:コズミック・イラでは、MSの動作用を含め量子コンピュータがそもそも広く普及しており、
そうでなくても、公式外伝【SEED ASTRAY】シリーズに登場する人工知能搭載コンピュータがコーディネイターでなければMSの操縦ができないナチュラルを補助してきた歴史がある。
極めつけは、GGユニット;ジョージ・グレン友の会によって極秘裏に脳だけが摘出冷凍・延命保存され、コーネリアス級補給艦改造船:リ・ホームの管制CPUと神経接続して、現代に蘇ったジョージ・グレン――――――。
他には、ミラージュコロイド技術を応用した量子コンピューターウイルス散布装置で、目の前に存在するはずのMSですら見えなくするなんて超技術も――――――。
このように、コーディネイターのナチュラルに対する優位性が作中でどれだけ双方の差別意識や敵対心を育んだところで、*2
スーパーコーディネイターの唯一の成功品であるキラ・ヤマトを見れば一目瞭然で、所詮はどこまでいっても人間の範疇での背比べに過ぎないのだ。決して神にはなれないのだ。
そこが
だからこそ、自分がロード・ジブリールに転生したと理解した10年間でAI工学に莫大な投資を重ね、何食わぬ顔で【デスティニープラン】の導入を後押しするために、裏でテラフォーミング事業を主に取り扱うプラント寄りの宇宙の開発拠点を用意して待っていたのである。
やはり、相手は所詮は科学者。ベンチャー企業の社長として金策にあくせくしたこともないような 研究室に閉じこもりきりでいられた エリートのおぼっちゃんに入札の流れがわかるはずがない――――――。
自国の社会問題を結果として放置し続けたことで人口流出で国家の存続を危ぶませ、人材不足を埋めるために移民ではなく
つまり、地球では戦後の復興とデスティニープランの導入による世界規模の再構築が行われ、プラントで人口流出が起きたことで
世界はギルバート・デュランダルの手から離れ、遺伝子によって支配されるのではなく、
――――――あとは細かな説明は不要だろう。
これが【デスティニープラン】に対する、令和時代でAI開発のベンチャー企業の若き社長だった
ぶっちゃけ、劇場版に登場した“コーディネイターを超える新人類”という触れ込みの進化人類:アコードなど、【機動戦士ガンダム00】に登場した人造人間:イノベイドと比べたら大したことがないというのが正直な感想だった。*3
劇場版のテーマである『能力があるから価値がある』を踏まえれば、『何も人である必要がない』と言うのがAI開発者の率直な意見であり、【デスティニープラン】の最大の欠点は
そう、世界に真の平和が訪れたという明るい未来が示された【機動戦士ガンダム00】の結末へと持っていくことが【機動戦士ガンダムSEED】の真の救済策だと――――――、
それを手本にしてあまりにも過酷なC.E.世界を生き延びようとロード・ジブリールとなったAI開発者は考えたのだ。
だからこそ、AIによる支配を通じて 遺伝子による支配では実現しなかった 恒久平和への道を切り拓こうと悪に徹する道を選んだ。
こうして世界は変わった――――――。
全人類が遺伝子の支配を受け容れなければならない以上、同じ人類に例外となる“裁定者”は存在してはならないという理屈で、極めて公平な第三者である“AI様”が沙汰を下すようになっていった。
そこには効率化と自動化の推進でAI搭載スマートフォンがほとんどタダ同然に被災地に配られ、情報インフラが整えられたことでネットワーク社会の急速な発展を遂げ、SNSの発達による情報発信と情報共有と情報氾濫が忙しなく起きていたのである。
それを管理することは圧倒的少数でしかない支配する側の人間には困難であり、ブレイク・ザ・ワールドで完全に余力を失った地球と社会問題を放置して人口流出を止められなかったプラントにはその流れを喰い止める力はすでになかった。
一方、テラフォーミング事業を主に取り扱うプラント寄りの宇宙の開発拠点を用意して
二度に渡る大戦が勃発する前から ナチュラルとコーディネイターの争いによって常に滅亡の危機に瀕している地球圏から距離を置いた 中立宙域に築かれた開発拠点にはバイオスフィアが生み出され、そこには地球さながらの自然豊かな生活風景が広がっていた。
そして、通称:魔王城には冷凍睡眠状態にした“歌姫の騎士団”の主要メンバーが封印されていたのである。
その目的はもちろんギルバート・デュランダルを勝利者に仕立て上げて遺伝子による支配をAIによる支配に上書きする行程の最大の障害として最優先で排除することであり、立場上 絶対に相容れないからには歩み寄れない敵同士であったのだから、真の平和のためにはしかたがないことではあった。
何より、ラクス・クラインである。ギルバート・デュランダルの協力者だったアウラ・マハ・ハイバルが生み出した進化人類:アコードは【デスティニー・プラン】を管理して人々を導く者にして、オルフェ・ラム・タオの
そのラクス・クラインという“運命の相手”がいなければ完成しないように創られているのが アウラ女王の寵児:オルフェ・ラム・タオという 劇場版【SEED FREEDOM】で登場したメインヴィランにしてラスボスの役割を背負わされた哀れな
そんな男が本来は歴史の表舞台に立つことがないと思われていた小国の宰相に若くして成り上がり、ファウンデーション・ショックでユーラシア連邦から独立を果たした新興国:ファウンデーション王国が【デスティニープラン】の全世界の導入を求めるべく 近隣諸国に圧力をかけていっている真の目的こそが“消えたラクス・クライン問題”の解決であった。
そう、スカンジナビア王国に匿われていたアークエンジェル隊を捕縛し、ZAFTにテロリストとして討たれようとしていたエターナルを救出したところで手のひらを返して投降させたことで、
その結果、ZAFTによるオーブ侵攻作戦が成功してしまったので、デュランダル議長が世論を操るために用意したラクス・クラインの偽物:ミーア・キャンベルの正体が露見することはなくなったのだが、
ラクス・クラインが“運命の相手”であると遺伝子に刷り込まれていた新興国の宰相:オルフェ・ラム・タオが慰問ライブのためにファウンデーション王国に訪れたラクス・クラインに扮するミーア・キャンベルと接触したことで、公衆の面前で彼女を偽物だと暴言を吐く まさかのスキャンダルが発生したのである。
地球上でデスティニープランの導入を強力に推進する プラントにとって新進気鋭の同盟国にファウンデーション王国がなるはずが、ここでデュランダル議長とアウラ女王の間にある意向の相違が浮かび上がることになり、
プラントとファウンデーションの間で コロニー・メンデルから始まった【デスティニープラン】の主導権を巡る 水面下の争いが勃発することになったのである。
令和時代に公開された劇場版【SEED FREEDOM】を大迫力の4D上映で見てきたベンチャー企業の若社長としては腹が捩れる展開であった。
なにしろ、『ジョージ・グレン以来 ナチュラルとコーディネイターの対立の歴史の原因となった 人々の欲望や憎悪を抑制して 平和な世界を実現したい』という、曲がりなりにも世界のためを思ってデスティニープランを全世界に強制したデュランダル議長に対し、
見た目は幼女に見えるが実年齢は50の正真正銘のババアで経歴詐称もしているアウラ女王は そんなデュランダル議長のアイデアであるデスティニープランに便乗して『自らが創造したアコードに世界を統治させて、その頂点に君臨したい』という、欲望丸出しの俗物だったのだから。
うん、手段は共通していても、目指すものがちがっていた以上、両者の決裂は必然だったわけだ。
更に、ラクス・クラインの偽物を用意して 本物である“運命の相手”を闇に葬ろうと画策していたデュランダル議長に、オルフェが怒りと憎悪の眼差しを向けるようになるのも必然であった。
ミーア視点だと、元々ラクス・クラインが“アスラン・ザラの婚約者”だったことは有名だったのに、いきなり地球の新興国の宰相様が“運命の相手”だと迫ってきた上で、その場で『お前はラクス・クラインではない!』と人前で叫び散らかしてきたのだ。これはたしかに怖い。
そして、【デスティニープラン】の導入によって稀に見る経済発展を遂げた新興国の誉れを受けたファウンデーション王国だったが、
首都:イシュタリアは華やかに栄えているが、同時に一画には荒んだスラム街が形成されており、そこでは公然と民間人が兵士に射殺され逮捕されているなど、行政機関による弾圧が容赦無く行われていたのである。
そんな惨状を迷い込んだ先で目撃してしまったミーア・キャンベルが本当に【デスティニープラン】で世界が平和になるのかと疑問を抱くようになってしまう弊害も生まれていた。
――――――“ラクス・クライン”って何なんだろう?
やがて、戦後世界を【デスティニープラン】の導き手としてリードしてきた本家本元のプラントと新興国のファウンデーションの間で戦争が勃発することとなる。
きっかけは、戦後 プラントが独立を支援していたとは言え、驚異的な速度で軍事力を拡大し、ユーラシア連邦を圧倒した新興国:ファウンデーション王国に対する陰謀論がSNSで拡散されたことにあった。
そう、あまりにも見た目が若すぎるアウラ女王を筆頭に国の中枢を担っている親衛隊:ブラックナイトスコードの面々が若くして揃いも揃ってコーディネイター以上の才覚と能力を持っていることに、元々からトリノ議定書に違反した違法コーディネイターの疑惑がかけられていたのだ。*5
その上で、SNSの普及によって【デスティニープラン】によってアウラ女王に才能を見出された7人の若者が要職に就いたことで奇跡の復興を果たしたとされるファウンデーション王国の華やかな繁栄の裏に隠された闇が暴露されると、ファウンデーション王国を批難する国際世論が形成され、同じ【デスティニープラン】の導き手である最大の同盟国:プラントも国際世論に逆らうことはできなかったのだ。
そして、『ブラックナイトスコードには人の心を操る能力がある』という明らかなデマがSNSの一部の界隈で話題となるが、そこで宰相:オルフェが慰問ライブに訪れたラクス・クラインを偽物だと叫び散らかしたという記憶に新しいスキャンダルと結びつけられることになり、今度はデュランダル議長の代弁者を務めてきたラクス・クラインに偽物疑惑がつきまとうようになったのである。
ここで下手な対応をしたのが
当然、プラントとファウンデーションの対立は【デスティニープラン】が導く戦後世界の秩序と信頼を揺るがす一大事であるため、表沙汰にならないように再びデュランダル議長は陰謀を慎重に張り巡らせることとなったのである。
だが、ここで投じられた爆弾というのがファウンデーション首脳であるアウラ女王とオルフェを筆頭とする若き俊英たちの正体を暴露するSNSの投稿であり、アコードというコーディネイター以上の化け物の存在とトリノ議定書に違反して進化人類を生み出したという罪状が告発されることとなったのである。
結果、戦後世界で積もり積もった不平不満をぶつける都合の良い悪役として魔女狩りならぬアコード狩りが叫ばれるようになり、
かつてデュランダル議長がロゴスを“人類が戦うべき世界の真の敵”として断罪し、地球圏の指導者としての地位を確立した過去が足枷となり、
ここで国際世論に逆らえば戦後世界の主導者としての地位を失うということで、プラント最高評議会議長:ギルバート・デュランダルが民衆のために立ち上がらないといけない状況へと追い込まれていったのである。
更に畳み掛けるように、すでにプラントではファウンデーションの闇を掴んでアコードと戦う準備がしてあることまでSNSで暴露されたことにより、明らかにプラントとファウンデーションをぶつけさせようというSNSに潜む何者かの意志が確認されたものの、
デュランダル議長がこれまでプロパガンダのために大いに利用してきた民心は二度に渡る大戦で戦争の記憶が染み付いており、これまでさんざんプロパガンダで ZAFTのエースが敵をあっという間に倒す カッコいいMS戦の映像が目に焼き付いていた民衆は軽々しくも正義の鉄槌を求めてきたのである。
そう、大衆は真に正義を求めているのではない。日頃の鬱憤を晴らす刺激的な娯楽を求めて、自分たちがその地位に就かせた自分たちのための支配者に自分たちの要求を押し通そうとしているのである。
そして、国際世論に後押しされたプラントはかつてのオーブの時と同じようにファウンデーション侵攻作戦を決行することとなる。自身の目的のために大いに利用してきた民衆に今度は自分自身が欲望のために利用されることになったのだ。
これはまさにドイツの哲学者:ヘーゲルが『精神現象学』の中で展開した『主人と奴隷の弁証法』として知られる有名な概念の体現であり、主人が主人たりえるのは主人の存在を認める奴隷あってのものであり、一方的な支配・服従関係に見えて、実は主人と奴隷が互いに依存し合っている相互依存関係にあることを顕にした。
当然、世界正義の体現者であるデュランダル議長が健在である以上、原作【SEED FREEDOM】にあったようなファウンデーション蜂起;ラクス・クライン政権に不満を持つ軍部によるZAFTのクーデターが起こるはずもなく、大気圏を離脱してアルテミス要塞やダイダロス基地を掌握することも叶わない。
更に、ここで埋伏の毒の第一弾が発動する――――――。
コーディネイター同士の子供が生まれなくなって国家運営が破綻する未来を憂えた反デュランダル派のうち、トリノ議定書を撤廃して【デスティニープラン】に最適化された新世代コーディネイターを生み出そうとプラントから離脱した新世代派にとってはアコード狩りは自分たちの踏み絵となっていたのだ。
アコードを否定することはコーディネイターの人口問題を解決するために唯一無二の解答であるコーディネイターの新規製造の道が絶たれることになり、新世代派は自分たちの主義主張のために世界の敵であるアコードが支配するファウンデーションへの支持を表明しなくてはならなくなったのである。
これにより、すでにプラントを捨てて他国へ亡命していたとは言え、決して少なくない元プラント国民も討ち果たさなければならず、グローバリストであるデュランダル議長は完全に純コーディネイター国家であるプラントの命脈を断ち切る選択を下さなければならなくなった。
そして、反ロゴス同盟軍の再来である反アコード同盟軍の総攻撃によってファウンデーション王国は地上から消滅することとなったのである。
もちろん、アウラ女王が世界の支配者となるべく生み出した進化人類:アコードの能力は絶大であった。
圧倒的物量差で反アコード同盟軍がファウンデーション軍の主力となる無人MS群を蹴散らしたかと思えば、ナチュラルはおろか並みのコーディネイターでは太刀打ちできない戦闘能力とパイロット能力を備えている超能力者の集団である親衛隊:ブラックナイトスコードが出現した途端に戦況は覆されることとなった。
しかし、それでも勝ったのは遺伝子によって人間というものを定義したデュランダル議長であり、そんな彼が“最強の戦士”キラ・ヤマトを倒せる唯一の切り札として見出した“デスティニープランの守護者”シン・アスカがたった7人しかいない進化人類:アコードを駆逐してみせたのである。
なぜなら、怒れる瞳から光を失ったシン・アスカの心の闇を覗いたアコードたちはたちまちのうちに闇に呑まれてしまったからだ。
そう、完全に心が壊れたシン・アスカはもはや“人間”ではない。“デスティニープランの守護者”として世界の平和と存続を脅かす敵を命令のままに駆逐する“殺人機械”と化していたのだ。
更には、壊れた心を取り繕って“人間”であるように見せかけるために、皮肉にも彼が“守るべきもの”として亡き妹と重ねて心を通わせていたエクステンデッドの少女:ステラ・ルーシェと同じ“ゆりかご”という催眠装置によって記憶を改竄することで特定の行動に適した人格へと再構築させられていたのである。
まさにZAFTのコーディネイター技術と連合のエクステンデッド技術の悪夢のコラボであり、デュランダル議長も“デスティニープランの守護者”の役割に据えたシン・アスカが精神崩壊しても倒れてもらうには早すぎるということで手段を選ばなかった結果、知らぬ間に悪魔に魂を売って死人に鞭打つことになったのである。
もちろん、その悪魔というのはダイダロス基地で討ち果たされたはずのロード・ジブリールこと、遺伝子による支配を上書きしてAIによる支配を達成していた“オーバーロード・ジブリール”であり、
そして、劇場版のテーマである『能力があるから価値がある』を踏まえて、役割を果たせるのなら『何も人である必要がない』わけなので、『アコードを倒すのは人の心を失った主人公(笑)』という最高の脚本が上演されて、“オーバーロード・ジブリール”はご満悦であった。
こうして再び世界を救った救世主として戦後世界の主導権を回復することができたプラント最高評議会議長:ギルバート・デュランダルではあったが、
かつてコロニー・メンデル時代に自分の思想に賛同してくれていたアウラ・マハ・ハイバルでさえも擦れ違いの末に討ち果たすことになったことで心に深い影を落とすことになったのは人間として自然なことであった。
しかし、もはやデュランダル議長自身もシン・アスカ同様に精神状態が危うく次第に精彩を欠くようになっていくようになったのを自覚したことで、自分自身がロード・ジブリールのような欲望に塗れた唾棄すべき独裁者には絶対にはなるまいと戒めることを言い訳にして、彼もまた楽な方へと流れていってしまったのである。
疲れていたのだから、しかたがないではないか。正史でデュランダル議長を討って混迷する世界に立ち向かう覚悟を決めた“最高のコーディネイター”キラ・ヤマトですらも劇場版【SEED FREEDOM】であのざまだったのだから、誰がこのことを責めることができよう。
そう、デュランダル議長も疲弊して自分自身を信じられなくなっていく過程で、真に公平な第三者である“AI様”への依存を強めるようになり、次第に“遺伝子”ではなく“AI様”に仕える神官へと役割を変えていくことになったのだ。
――――――C.E.73年から74年に渡る【第2次連合・プラント大戦】から10年後となるC.E.84年、世界はついに“オーバーロード・ジブリール”の手に落ちた。
世界は変わった。デュランダル議長の下で平和を謳歌する宇宙時代:コズミック・イラでは戦争は過去のものとなっていた。人々が待ち望んだ平和な世界は実現されたのである。
しかし、人口流出を
一応、世界を救った救世主:ギルバート・デュランダルもすでにプラント最高評議会議長の座を退いており、その後は自らが制度設計した【デスティニープラン】の管理運営に専念することになり、そんなギルバート・デュランダルを輩出した長老国としてプラントは一定の敬意を払われてはいるものの、それだけである。
一方、プラント国内で迫害されて 地球での亡命生活の苦節を経て 新興のスペースコロニー群に移住を果たした反デュランダル派の移民派がナチュラルとコーディネイターの融和を果たしていくことになり、宇宙時代:コズミック・イラの更なる人類文明の躍進をもたらすこととなったのである。
その頃にはコーディネイターが繁殖能力に問題がある絶滅危惧種であるという認識がSNSを通じて広がったことで、まさかの反コーディネイター団体:ブルーコスモスが本来の環境圧力保護団体へと回帰してコーディネイターを少数民族として保護する流れが生まれていき、ナチュラルの憐れみの対象へとコーディネイターが転落していくことになったのだ。
そう、地球も宇宙も【デスティニープラン】によって人類が遺伝子に支配されるようになったことで、人類は少しだけ賢くなることができたのである。人類が犯してきた過去の過ちがSNSの普及によって共有されるようになったことで。
その立役者となったのが滅亡したファウンデーション王国の生き残りとなってしまった宰相:オルフェ・ラム・タオと国務秘書官:イングリット・トラドールであったのだ。
この二人もコーディネイターを超えた進化人類:アコードとして超一流のMSパイロット能力を持つものの、国家運営の柱であったために反アコード同盟軍との戦いでは後方指揮に専念せざるを得ず、どれだけアコードが優秀であろうと数の暴力の前に屈服せざるを得なかったのだ。
そして、兄弟姉妹たる同胞が“殺人機械”シン・アスカの闇に呑まれて次々と葬られていったことで、精神同調していた二人もまた後方にいながら闇に怯えることとなり、それで司令部が麻痺して勝敗は決することとなった。
もはや、アコードの能力をもってしても世界をものにすることができなかったという 自らの存在意義が否定されることになった 最初にして最大の挫折を経験して再起不能になってしまったオルフェとそれでも側に寄り添い続けたイングリットは戦後処理でエクステンデッドの少女:ステラ・ルーシェの時と同じように研究対象となって研究所送りとなっていた。
しかし、そこに 軍を離れて実質的に反デュランダル派の中心人物となってしまったことで プラントから追われる身となって地球に降り立っていたルナマリア・ホークが面会を申し入れたことで二人の運命が変わることになったのである。
自分たちの理想の王国を破壊し尽くした“殺人機械”シン・アスカの恋人だったことを明かしたルナマリア・ホークに対し、オルフェはようやく怒りをぶつける対象ができたことで、これまで胸の内に秘めていた感情をどっと吐き出すことになったのである。
それに対してルナマリア・ホークは【デスティニープラン】の最大の被害者として 愛する人の帰る場所を用意して待つ約束さえも叶えられず、今も恋人が“デスティニープランの守護者”として平和になったはずの世界で戦い続けていることを引き合いに出して、
隣にいるイングリットにオルフェが愛されていることを指摘して、あまりに近すぎて気づかなかった自分のことを見てくれている誰かの存在にオルフェはようやく気がつくことができたのである。
そこから憑き物が落ちたかのようにアコードの生き残りであるオルフェとイングリットが取り調べに協力するようになり、イングリットはルナマリア・ホークという良き友人を得ることとなった。
そして、アコードの使命から解放されたオルフェはその遺伝子に刻み込まれた“運命の相手”であるラクス・クラインと結ばれない苦しみを味わいながらも、恋人の帰りを戦場から遠く離れた場所でずっと待ち続けているルナマリア・ホークに尻を叩かれて ついにイングリットの想いを受け容れることとなったのだ。
そこからオルフェとイングリットはかつて世界の片隅にひっそり存在していた小国を【デスティニープラン】の下で戦後世界をリードする新興国まで成長させた手腕を買われて、これまでの全てを捨てて“アコードではない”別人となって新興のスペースコロニー群の開発指揮を担当することとなり、同時に籍を入れたのである。
そんな意外な結末を知って、令和時代のAI開発のベンチャー企業の若社長だった
それは令和時代においてはLGBTを社会全体に押し付ける社会正義の胡散臭さの代名詞である“ポリティカル・コレクトネス”と呼ばれる風潮の形成であり、『子供を作ることができない夫婦のことを劣等種と蔑むのは良くない』と世論を誘導していったのである。
そう、ここに来て【デスティニープラン】の前提とも言えるコーディネイター問題の転換がギルバート・デュランダルが実質的な世界征服を達成してAIに支配された情報統制の世界で行われるようになったのである。
それはサヴァン症候群のように記憶力、計算、音楽、芸術など特定の分野で突出した能力を発揮しながらも日常生活の困難と並外れた才能が共存する人間がいることを引き合いに出して、コーディネイターのことを『能力と引き換えに子供を作ることができない運命を生まれながらに選んだ人たち』と再定義されることになったのである。
だからこそ、『子供を作れないのなら 今いる子供たちを愛して支えられるだけの 与えられた使命と能力が大きいのだ』と宣伝して言い聞かせることにより、ナチュラルとコーディネイターの間で断絶していた精神の均衡が少しずつ年をまたぐごとにもたらされることになったのだ。
そして、デスティニープランの牙城であったはずのプラントから婚姻の自由を求めて地球で亡命生活を送ることになった反デュランダル派の移民派が残していった足跡がナチュラルとコーディネイターの融和の架け橋となっていったのである。
結果として、これまで迫害されてきたハーフコーディネイターの社会的地位向上にも繋がり、あれから10年で【デスティニープラン】が当たり前となった戦後世代となる“デジタルネイティブ”ならぬ“デスティニーネイティブ”が若くして制度の支援で才能を次々と発揮していって、SNSで世論形成の中心になっていったのだ。
これも未来を担っていく子供たちから優先して【デスティニープラン】の恩恵に預かるようにAIを通じて制度設計を書き換えていき、
人口減少が著しいプラントで急速に発達した
このようにAIを通じて世界の変革を促せたのも、ブレイク・ザ・ワールドを引き起こしてロゴス討伐を果たして地球経済を破壊し尽くし、ついには純コーディネイター国家であるプラントさえも社会問題を放置して破綻寸前まで追いやって、結果として世界の枠組みの全てを【デスティニープラン】に置き換えて地球圏統一を果たしたグローバリスト:ギルバート・デュランダルのおかげである。
――――――さすがは
ただし、この時は虐殺まではしておらず、あくまでも民間人を解放するために基地の破壊を行いながらの威嚇行為であったが、一歩間違っていれば『ナチュラルの捕虜なんか要るかよ!』案件でもあった。
10代前半でZAFTの厳しい訓練や任務に耐えて1~2年程度で能力・技術的にはナチュラルの正規軍人以上まで習熟でき、
D.S.S.D.の一級管制官の資格試験にもナチュラルの約1/3の平均学習時間で合格できるという。
“ひとつに、一族は、人間を滅ぼさない”
“ひとつに、一族は、人間に幸せを与える”
“ひとつに、一族は、女性が使命を引き継ぐ”
古くから「人類の幸福」を目的として、世界を影から操り続けてきたとされる。
そのためならば、部分的に不幸を生んで、それ以外の者たちに幸福を実感させるという手段も取り、戦争を起こす事も手段の1つと捉えている。
その歴史の長さから必然と地球連合やロゴスと繋がりが深く、表向きは地球連合軍特殊情報部隊と呼ばれるポストが用意されており、第二次連合・プラント大戦の開戦にも関与していた。
しかし、かつては“一族”の1人だったが、マティスとその祖母によって追放されたサー・マティアスによって引導を渡され、第二次大戦勃発直後に消滅することになる。
そのため、それ以降に製造されたものは例外なく“違法コーディネイター”である。