『あなた』がスタレキャラと仲良く(意味深)なっちゃった!   作:ザワザワする人

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銀狼Lv.999

一匹の、狼がいた。

 

白銀の皮はゴミ溜めに長くいたせいか、くすんでいる。

 

しかしその瞳は、赤く、紅く、朱く。

 

血を、肉を、食料を求め続けている。

 

まごう事なく、獣の目。

 

 

 

一人の、少女がいた。

 

ゴミから見つけ出した大人用のフードは、夜に溶けるほど黒い。

 

両腕に巻かれた包帯は、もう何日前に巻いたか覚えていない。

 

少女の瞳は、光すらを飲み込むほど黒く。

 

しかしその頭髪だけが、一滴の銀として、その瞳を照らしていた。

 

 

両者が出会った。

 

狼の口角からは涎が、零れる。

 

狼は、少女を餌と見ていない。

 

辺りに散らばる同胞の亡骸。

 

この少女がやった事だ。

 

少女の身体に、大きな傷はない。

 

あるのは擦り傷ばかり。狼からの攻撃である筈がない。

 

少女はほぼ無傷で、この量の仲間を殺めている。

 

狼の警戒レベルは、最大まで引き上げられていた。

 

先手必勝。

 

狼は鍛え抜かれた四足で大地を踏み込んだ。

 

前腕を大きく掲げ、牙を露わに口を広げる。

 

とった。

 

そう、()()()()()が告げた。

 

狼の選択に、間違いはない。それどころか正解に等しいだろう。

 

懸念があるとすれば。

 

それは少女の暗器に気づけなかった事。

 

少女が狼との位置を事細かに調整し、少女から見て左から襲い掛かってくるようにしていたこと。

 

少女の小さな手に握られた短刀に、狼の心の臓は貫かれ、同胞の元へと送られた。

 

少女は何も想わない。

 

今更、彼らの命を奪う事に何の躊躇も必要なく。

 

そうしたところで、自らの置かれた現実は消えてくれない。

 

「はぁ……」

 

諦観か、それとも絶望か。

 

少女は止めていた呼吸を再開する。

 

パンクロードの絶対的ルール。

 

この星で生まれた人間は皆、カセットを持って生まれる。

 

それにはレベルがある。

 

生まれた瞬間に、その赤子の人生は九割九分がそのレベルに決定される。

 

少女には、それがなかった。

 

Lv.0

 

ある意味ではそう言えるかもしれない。

 

実際に、パンクロードの住民からはそう蔑まれている。

 

くだらなく、馬鹿げていると思うしかない現実から目を背け、少女は再び歩き出した。

 

その背後に立つスクラップ山の主(Lv.63)に気づかずに。

 

 

 

 

 

 

 

「は?」

 

少女が瞼を開けた時、目に映ったのは見知らぬ天井だった。

 

今にも吹き飛ばされそうな廃家の天井とは、少なくとも違かった。

 

(どこ、ここ……)

 

疑問が浮かんだ時、それよりも早く脳のスペースを処理するものが現れた。

 

「目覚めたかね、少女よ」

 

ベットの横に突如現れたかのように、長身の男が現れた。

 

「誰」

 

少女の目に、光は入らない。

 

「まずは助けてもらってありがとう、ではないかな」

 

「……何の話」

 

「スクラップ山の主、聞いた事は?」

 

「ない」

 

「まぁちょっと強い雑兵の事だ。そいつに君は襲われていたのさ」

 

「あっそ。で」

 

「ん?ん?」

 

「………助けてくれてありがと」

 

「ん~やれば出来るじゃあないか」

 

「で。()()()()()()()()()()()L()v().()9()9()()がLv.0に何の用」

 

「本題に急に入るのは嫌いじゃない。君に依頼がある。まぁ二つと言えば、二つだ」

 

「あなたなら全部自分一人で出来るでしょ」

 

「そうもいかないから依頼があるんだ。一つはただの仲介だがな」

 

「やらない。私が元いた場所にさっさとエーテル編集で返して」

 

少女はベットから立ち上がり、部屋の出口へと向かう。

 

そこで男は、一つこぼした。

 

()()()()()()()()()()()

 

「…ある訳ないでしょそんなの」

 

「信じるか信じないかは君次第だ」

 

「……もう一個は?」

 

「渡した後だ」

 

少女は悩む。

 

しかし、目の前の男のレベルを考慮し、逆らえばどうなるかは容易に想像できた。

 

少女は仕方なく、首を縦に振る。

 

「素晴らしい!!では、まずこれを」

 

男は自らが手に持つカセットを少女に授けた。

少女は、カセットを片手で奪い取るように取った。

 

「もう見えている筈だ」

 

 

"Would you like to play a game?"

 

 

そう、照らされているディスプレイが少女の前に浮かんだ。

 

「まぁ、それは置いといてだ」

 

男が手を振るうと、そのディスプレイは消え去り、男が少女の前に立っていた。

 

「君に依頼するのはもう一つある」

 

「何」

 

「見れば分かる」

 

パチンと、男が指を鳴らした。

 

言葉そのままに、景色がほどける。

 

廃家の天井も、薄汚れた壁も、湿った空気も。

すべてが紙のように剥がれ落ち、代わりに白い部屋が現れた。

 

眩しいほど清潔な部屋。

柔らかな絨毯。

小さな机。

積み木と、絵本と、使い込まれたぬいぐるみ。

 

その真ん中に、子供がいた。

 

まだ、少女よりも小さい。

椅子に座っていても足が床につかず、ぷらぷらと揺れている。

 

()()()は両手で絵本を抱えていた。

突然現れた少女を見ると、ぱちぱちと瞬きをして、それから花が咲くように笑った。

 

「おきゃくさん?」

 

「そうとも。今日から○○の護衛兼、話し相手だ」

 

「ごえい」

 

あなたは言葉の意味を確かめるように、ゆっくり繰り返した。

 

「じゃあ、つよいひと?」

 

「少なくとも、そこらへんの狼を殺すくらいにはね」

 

「おお~」

 

あなたは素直に感心したように手を叩いた。

少女は眉をひそめる。

 

「……何これ」

 

「見ての通り、私の子供だ」

 

「小さすぎ」

 

「成長には個人差がある」

 

「そういう話じゃない」

 

男は笑った。

軽薄で、薄くて、何を考えているか分からない笑み。

けれどその手があなたの頭に触れる時だけは、少しだけ慎重だった。

 

「この子はLv.1だ」

 

空中に文字が浮かぶ。

 

Lv.1

 

その数字を見て、少女は何も言わなかった。

言う必要がなかった。

Lv.0と呼ばれていた少女には、それがどんな意味を持つか分かる。

 

「だから、同世代の子供とは会わせていない」

 

「何で」

 

「決まっている。傷つくからだ」

 

男の声は穏やかだった。

穏やかなのに、どこか歪んでいた。

 

「世界とは残酷だ。Lv.1を見れば笑う。押す。奪う。泣けばもっと面白がる。君が最も分かっている筈だ。私はこの子に、そんな世界を見せる気はない」

 

「閉じ込めてるだけじゃん」

 

空気が止まった。

 

あなたは絵本を抱く手に少しだけ力を込めた。

けれど、すぐに男を見上げて首を傾げる。

 

「おとうさん、おこった?」

 

「少しだけだよ」

 

「だめだよ。おきゃくさん、まだきたばっかりだもん」

 

男は黙る。

それから、深く息を吐いた。

 

「……そうだな。失礼した」

 

あなたは満足そうに頷き、今度は少女を見た。

 

「おねえちゃんもおこってる?」

 

「………別に」

 

「じゃあ、よかった」

 

何がよかったのか、少女には分からない。

 

あなたは椅子から降りようとして、少し手間取った。

床に足が届くと、嬉しそうに少女の方へ歩いてくる。

 

警戒するほど遅い。

攻撃するには弱すぎる。

逃げるにも危なっかしい。

 

あなたは少女の前で止まり、下から覗き込む。

 

「ねえ。おはなししてくれるの?」

 

「依頼なら」

 

「じゃあ、してくれるんだ」

 

あなたはまた笑った。

 

少女はその笑顔から目を逸らした。

こんな星で、こんなふうに笑う子供を少女は知らない。

 

「報酬は先ほど渡したカセットだ」

 

男が言う。

少女の手の中で、黒いカセットが冷たく光る。

 

"Would you like to play a game?"

 

「護衛って、ここ安全なんでしょ」

 

「概ね安全だ」

 

「概ね?」

 

「この星、銀河に絶対はない。私がいない間、この子のそばにいろ。話し相手になれ。何かあれば守れ。それだけだ」

 

「それだけで、これを?」

 

「君にはそれだけではないはずだ」

 

男は見透かすように言った。

少女は返事をしない。

あなたはカセットをじっと見つめていた。

 

「それ、あそぶもの?」

 

「多分、違う」

 

「でも、ゲームってかいてるよ」

 

「……うるさい」

 

「えへへ。おこった」

 

楽しそうだった。

本当に、ただそれだけで楽しいみたいに。

 

少女は理解できなかった。

 

けれど。

理解できないものから、目を離せなかった。

男が指を鳴らす。

 

「では、私は席を外す。仲良くしたまえ」

 

「仲良くするかは決めてない」

 

「だそうだ」

 

男があなたを見る。

あなたは少し考えてから、少女の袖をちょんと掴んだ。

 

「じゃあ、いまからきめよ」

 

少女はその小さな手を見る。

 

振り払うことは簡単だった。

壊すことだって、たぶん簡単だった。

 

けれど少女は、何もしなかった。

 

あなたは嬉しそうに笑った。

 

その瞬間、カセットの文字が赤く滲む。

 

YES / NO

 

少女は短く息を吐き、YESに触れた。

 

暗闇が落ちた。

 

――STAGE 1

 

護衛対象を守り抜け。

 

白い部屋の外で、獣の爪音が鳴った。

 

 

 

 

 

 

白い部屋の外で、獣の爪音が鳴った。

 

少女はあなたの前に立つ。

袖の内側から短刀を抜き、扉を睨んだ。

 

「わんちゃん?」

 

「違う。後ろにいて」

 

「うん」

 

あなたは素直に頷いた。

けれど、怖がっているというより、よく分かっていない顔だった。

 

扉が砕ける。

 

飛び込んできたのは、白銀の狼だった。

あのゴミ溜めで殺したものより一回り大きい。

牙は長く、爪は鋭く、瞳は赤く濁っている。

 

少女は息を止める。

 

狼が跳んだ。

少女はあなたを抱えて横に転がる。

直後、牙が絨毯を裂いた。

 

「きゃっ」

 

「喋らないで」

 

あなたを背に隠し、少女は狼の懐へ潜った。

短刀が喉を裂く。

狼は暴れたが、少女は離れない。

 

心臓の位置を見極める。

肉の隙間へ刃を滑り込ませる。

押し込む。

 

狼は黒い血を吐き、白い床に崩れ落ちた。

 

その瞬間、少女の前に文字が浮かぶ。

 

Lv.1

 

「……は?」

 

生まれて初めて、自分に数字がついた。

 

あなたはぱちぱちと瞬きをして、それから両手を上げた。

 

「おねえちゃん、つよい!」

 

「……別に」

 

「つよいよ。わんちゃんに勝ったもん」

 

「狼」

 

「おおかみ」

 

あなたは覚えたばかりの言葉を嬉しそうに繰り返した。

 

少女はその無邪気さに、少しだけ困った。

 

 

 

 

それから、少女はあなたの傍にいるようになった。

 

最初は依頼だからだった。

食料が出る。

寝床がある。

カセットによって、レベルも上がる。

 

理由はそれだけでよかった。

 

あなたはよく話した。

 

絵本の話。

ぬいぐるみの話。

窓の外に見える作り物の空の話。

 

「おねえちゃんは、何がすき?」

 

「知らない」

 

「じゃあ、ぼくのことは?」

 

「……嫌いじゃない」

 

「じゃあ、すき?」

 

「飛ばしすぎ」

 

あなたはそれだけで笑った。

 

少女は理解できなかった。

嫌いではない、という言葉がどうしてそんなに嬉しいのか。

 

けれど、その笑顔を見ると、胸の奥に変な熱が残った。

 

少女のレベルは少しずつ上がっていった。

 

最初は、部屋に迷い込んだ獣を殺しただけだった。

次に、施設へ侵入した盗賊を撃退した。

その次は、あなたを狙った連中の拠点を一つ潰した。

 

Lv.8。

Lv.21。

Lv.46。

 

騒ぎは、レベルに合わせて大きくなっていった。

 

少女が動けば、誰かが倒れる。

少女が睨めば、路地が静まる。

少女があなたの手を握って歩くだけで、低層区画の人間は道を空けた。

 

それでも、あなたは変わらなかった。

 

「おねえちゃん、あれなに?」

 

「看板」

 

「あれは?」

 

「壊れた看板」

 

「あれは?」

 

「もっと壊れた看板」

 

「外って、看板いっぱいだね」

 

少女は少しだけ息を吐いた。

 

「他にもあるでしょ」

 

「でも、おねえちゃんと見たから、ぜんぶおもしろい」

 

その日、少女はあなたの手を離さなかった。

 

 

 

 

騒動が街一つを巻き込んだのは、少女がLv.70を超えた頃だった。

 

あなたを連れ去ろうとした組織があった。

目的は、Lv.99の男への取引材料。

 

少女は怒った。

 

静かに。

深く。

自分でも驚くほど、冷たく。

 

その夜、組織の拠点は消えた。

 

人も。

武器も。

名前も。

 

誰も少女の本当の名を知らなかった。

黒いフード。

銀の髪。

獣のような目。

 

そして彼女が現れた場所では、必ず狼の遠吠えに似た悲鳴が上がる。

 

いつしか人々は、噂するようになった。

 

狼を殺す少女。

狼より速い少女。

狼の群れすら退かせる少女。

 

あなたはその噂を聞いて、嬉しそうに言った。

 

「おねえちゃん、狼の王様みたい」

 

「違う」

 

「じゃあ、狼のみち?」

 

「何それ」

 

「おねえちゃんが歩くと、みんな道をあけるから」

 

少女は返事をしなかった。

 

ただ、あなたの頭を軽く撫でた。

 

あなたはそれだけで、くすぐったそうに笑った。

 

 

 

 

最後の騒動は、星全体を揺らした。

 

きっかけは小さかった。

 

あなたが外で転んだ。

膝を擦りむいた。

泣きそうになった。

 

ただ、それだけ。

 

けれど周囲の人間が笑った。

 

「Lv.1だから転ぶんだ」

「弱いな」

「Lv.99の子供なのに」

 

その声を聞いた瞬間、少女の中で何かが切れた。

 

男が止めるより早く。

あなたが袖を掴むより早く。

 

少女は、その場の全員を黙らせた。

 

殺しはしなかった。

あなたが見ていたから。

 

ただ、星中の通信網に自分のレベルを叩きつけた。

 

Lv.99

 

少女の頭上に浮かんだ数字を見て、誰もが言葉を失った。

 

かつてLv.0と蔑まれた少女。

カセットすら持たずに生まれた例外。

ゴミ溜めで狼を殺し、生き残るためだけに歩いていた獣。

 

その少女が、この星で二人目のLv.99になった。

 

あなたは泣きそうな顔で少女を見上げる。

 

「おねえちゃん、こわい顔してる」

 

「……ごめん」

 

「でも、守ってくれた?」

 

「うん」

 

「じゃあ、ありがとう」

 

あなたは小さな手で、少女の指を握った。

 

少女はその手を握り返す。

今度は、壊さない力加減を知っていた。

 

星は少女の名を知らない。

誰も、その本当の呼び名を与えられていない。

 

けれど、別の名なら知っている。

 

狼を殺し。

狼のように走り。

大切なものへ牙を剥く全てを噛み砕く者。

 

人々は畏れを込めて、その少女をこう呼んだ。

 

ウルフロード、と。

 

 

 

 

 

 

"Would you like to play a FINAL game?"

 

少女は、文字を眺めていた。

 

でかでかと飾られたFINALの文字。

 

その中に何がいるのか。

 

誰にだって分からない。

 

「はっきり言って驚きの連続だよ」

 

男が、ゆっくりと後ろからこちらに歩んできた。

 

「まさか君のレベルがここまで上がるとは」

 

「当然でしょ」

 

「昔の君にそれを言ったとして信じるかね?」

 

「無理だね」

 

「断言か、潔いのは嫌いじゃない」

 

「あんたもそうだもんね」

 

「はは、面白い事を言う」

 

二人は、眺めている。

 

最近になって銀狼が教えたゲームを、嬉しそうにプレイしている、Lv.1の少年を。

 

笑顔が、溢れている。

 

「勘違いするなよ、少女。私は君のために死ぬわけじゃない」

 

男はいつものように笑っていた。

薄く、軽く、どこか人を食ったように。

 

けれどその身体は、指先から少しずつ白い粒になって崩れていた。

 

「この子が、君を選んだ。なら私は、その選択を守るだけだ」

 

少女は何も言えなかった。

 

気付けば、あなたはゲームを止めていつの間にか二人の傍に来ていた。

 

「おとうさん、どこいくの」

 

「少し遠くへね」

 

「いっしょにいく」

 

「駄目だ。○○には、もう話し相手がいるだろう?」

 

男はあなたの頭を撫でる。

その手は、もうほとんど形を失っていた。

 

「少女。この子を頼む」

 

「……勝手に決めないで」

 

「なら依頼だ。報酬は、私の全て」

 

男は笑った。

 

()()()()()()()()()()()()()Lv.99様からの、最後の依頼だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

それから、あなたは少し無口になった。

 

何かを嫌いになった訳ではない。

少女を避けている訳でもない。

ただ、言葉を出す前に一度飲み込むことが増えた。

 

精神的支柱がなくなった事もあるだろう。

 

二本の柱は、一つの柱へと変化する筈だった。

失われた一本の分まで、残った一本が支える。

そうすれば、きっと大丈夫だと。

 

けれど、それはあまりにも乱暴な考えだった。

 

 

 

 

「私はもっと強い力が欲しいんだ」

 

『どうして?』

 

「……成りたい事に理由はいらない」

 

『なるほど、君は自分の弱さが怖いんだ?』

 

 

 

 

少女――いや、もうそう呼ぶのは失礼だろう。

ウルフロードもまた、喋る事が少なくなった。

 

あのFINALゲームで出会ったやつと交わした会話。

当てられて、いたのだろう。

 

Lv.99よりも上はあった。

今は、二百ほど。

誰も届かない場所へ、彼女は登った。

 

強く、なった。

強くなった筈だった。

 

けれど、あなたからは笑顔が目に見えて減った。

 

昔なら、どうでもいい物を見つけては袖を引いた。

壊れた看板にも、錆びた配管にも、拾った石ころにも、意味を見つけて笑っていた。

 

今は違う。

 

あなたは何かを見つけても、少女を呼ばない。

呼びかけようとして、やめる。

小さく口を開いて、それから閉じる。

 

ウルフロードは、それに気づいていた。

気づいていたからこそ、余計に強さを求めた。

 

もっと強ければ。

もっと圧倒的なら。

二度と誰も奪えないほどになれば。

 

そうすれば、あなたはまた笑うのだと。

そうでなければ、自分はあなたに応えられないのだと。

 

勝手に。

 

ひとりでに。

 

相談もせずに。

 

あなたはウルフロードが嫌いな訳ではない。

むしろ、大好きだろう。

 

けれど、失ったものを全て埋める事などできない。

埋めようとする存在が、人である限り。

 

欲しかったのは、最強の守護者ではなかった。

泣いてもいいと言ってくれる声だった。

寂しいと口にしても、黙って隣にいてくれる温度だった。

 

ただ、話すだけで良かったのに。

 

二人とも、それを知らなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「手を組まない?パンクロードのウルフロード」

 

怪しげであり、妖艶であり、それでいて狡猾の気配。

全てを漂わせながら、一人の女性が現れた。

 

「相応の価値か誠意」

 

「取引したいならさっさと出して」

 

「私は忙しいの」

 

女性は微かな笑みを浮かべながら言った。

 

「エリオから伝言よ」

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「っ…余計なお世話!!」

 

ウルフロードが出した仮想の拳は、何者かによって静止させられた。

 

「あら、価値を示したのよ?」

 

「そしてこれが私達の誠意」

 

ウルフロードの前に聳え立つは、Lv.999()

 

ウルフロードのLvは、300にて静止している。

 

届かない。

 

それが、見ただけで分かった。

 

「……なに、これ」

 

「さあ。私から説明するより、殴って確かめた方が早いんじゃない?」

 

女は笑っている。

楽しんでいるようにも、憐れんでいるようにも見えた。

 

ウルフロードは舌打ちを一つ落とし、仮想の拳を影へ叩きつけた。

 

届く。

 

そう思った瞬間、身体が床に沈んでいた。

 

何をされたのか分からなかった。

拳を出した。

影は動かなかった。

なのに、自分だけが倒れている。

 

「……っ」

 

起き上がるより早く、影の足が視界に入った。

 

蹴りではない。

踏みつけでもない。

 

ただ、そこに立っているだけ。

 

それだけで、ウルフロードの全身が悲鳴を上げた。

 

「1回目」

 

女が、軽やかに数えた。

 

 

 

 

27回目。

 

ウルフロードは影の腕を切り落とした。

そう見えた。

 

だが、落ちたのは自分の右腕だった。

 

「……意味分かんない」

 

影は喋らない。

ただ、影の奥から、銀の髪だけが揺れていた。

 

自分と同じ髪。

自分と同じ声。

自分と同じ目。

 

けれど、奥にあるものが違う。

 

あれは獣ではない。

獣ですら残っていない。

 

何も守れなかった者の、空っぽの目だった。

 

 

 

 

103回目。

 

ウルフロードは、影の喉元へ刃を届かせた。

 

初めてだった。

 

確かに刃が届いた。

確かに肉を裂いた。

 

けれど影は、そのままウルフロードの胸を貫いた。

 

痛みはなかった。

痛みを認識するより早く、負けた。

 

「103回目。少し良くなったわね」

 

「黙って」

 

「怒る元気があるなら、まだ大丈夫かしら」

 

女の声は、相変わらず柔らかい。

 

「エリオが言っていたわ。あなたは、負けることでしか先に進めないって」

 

「……余計なお世話だって言ってるでしょ」

 

「ええ。だから、余計なお世話をしに来たの」

 

 

 

 

289回目。

 

影が、初めて口を開いた。

 

『遅い』

 

それはウルフロードの声だった。

 

けれど、随分と擦れていた。

長い時間、誰とも話さなかった声。

 

『弱い』

 

「っ……!」

 

『だから、奪われるの』

 

その言葉だけは、刃より深く刺さった。

 

ウルフロードの攻撃が乱れる。

影はそれを見逃さない。

 

首を掴まれ、床へ叩きつけられる。

 

『守ると言ったのに』

 

影が囁く。

 

『守れなかった』

 

ウルフロードは、影の顔を睨んだ。

 

「誰の話をしてるの」

 

影は答えない。

 

それこそが答えだった。

 

 

 

 

726回目。

 

ウルフロードは膝をついていた。

 

強くなった。

Lv.300。

かつての自分なら、想像すらできない場所。

 

それでも、目の前の影には届かない。

 

拳は折れた。

刃は砕けた。

立ち上がる理由だけが、どうにか残っている。

 

「もういいんじゃない?」

 

女が静かに言った。

 

「降参する?」

 

「しない」

 

「勝てないかもしれないわ」

 

「勝つ」

 

「どうして?」

 

ウルフロードは答えなかった。

 

理由なら、昔から一つしかない。

 

守るため。

 

けれど、その言葉すら最近は言えなくなっていた。

守ると言えば言うほど、あなたとの距離が遠くなる気がしたから。

 

影が歩いてくる。

 

処刑のように。

過去を潰すように。

 

 

その時だった。

 

 

 

「おねえちゃんを、いじめないで!」

 

 

 

場違いなほど幼い声が、空間を裂いた。

 

ウルフロードの息が止まる。

 

あなたが、そこにいた。

 

無理矢理入り込んできたのだろう。

息を切らし、両手を握りしめ、泣きそうな顔で影を睨んでいる。

 

「来たらダメ!」

 

ウルフロードが叫ぶ。

 

遅かった。

 

影が、あなたを見た。

 

その瞬間、影の気配が変わった。

 

殺意ではない。

怒りでもない。

 

もっと深く、もっと壊れたもの。

 

『……まだ、生きてるね』

 

影の声が震えた。

 

『まだ、笑えるんだ』

 

あなたは一歩も退かなかった。

 

「おねえちゃんをたたくなら、僕が怒るから!」

 

「やめて!!」

 

ウルフロードは走った。

 

けれど、届かない。

 

影の手が、あなたの胸元へ触れた。

 

それだけだった。

 

あなたの身体が、糸の切れた人形のように崩れ落ちる。

 

ウルフロードは、あなたの元へ駆け寄る。

 

抱き上げる。

名前を呼ぶ。

揺さぶる。

 

返事はない。

 

小さな手は、力なく落ちている。

 

「あ……」

 

声にならない音が漏れた。

 

「あ、ああ……」

 

影が見下ろしている。

 

その目に、涙はなかった。

 

ただ、過去を繰り返した者の諦めだけがあった。

 

『だから言ったの』

 

影が呟く。

 

『弱いから、奪われる』

 

その瞬間。

 

ウルフロードの中で、何かが終わった。

 

同時に、何かが始まった。

 

「……黙って」

 

低い声だった。

 

自分の声だとは思えないほど、低く、冷たい声。

 

「黙って」

 

ウルフロードはあなたをそっと床に寝かせた。

 

壊さないように。

傷つけないように。

今までで一番優しく。

 

そして、立ち上がる。

 

「あなたは私でしょ」

 

影は動かない。

 

「守れなかった私だ。失った私だ。話すことから逃げて、強さだけを追って、最後に何も残らなかった私」

 

影の指が、僅かに揺れた。

 

「でも」

 

ウルフロードの瞳が赤く灯る。

 

「それを、今の私に押しつけないで」

 

Lv.300の表示が揺らぐ。

 

301

350

400

500

 

止まらない。

 

空間そのものが軋む。

女が初めて笑みを薄めた。

 

「あら……これは、()()()()()()()()()()

 

ウルフロードは踏み込む。

 

「殺す」

 

影も同時に踏み込んだ。

 

拳と拳がぶつかる。

 

今度は、ウルフロードだけが倒れることはなかった。

 

二人の拳が砕ける。

二人の刃が生まれる。

二人の牙が、互いの喉元へ届く。

 

同じ動き。

同じ速度。

同じ殺意。

 

違うのは、一つだけ。

 

背負っているもの。

 

影は、失ったものを抱えている。

ウルフロードは、奪わせないものを抱えている。

 

その差は、あまりにも小さく。

 

けれど、絶対的だった。

 

「私は、強くなりたかったんじゃない」

 

刃が影の肩を裂く。

 

「守りたかった」

 

影の拳が頬を掠める。

 

「でも守るって、殴ることだけじゃなかった」

 

ウルフロードは影の懐へ入る。

 

「話せばよかった」

 

影の目が僅かに見開かれる。

 

「寂しいって言えばよかった」

 

影が初めて後退する。

 

「怖いって、言えばよかった」

 

ウルフロードの拳が、影の胸を貫いた。

 

黒い身体に、亀裂が走る。

 

影は崩れながら、ウルフロードを見た。

 

『……言えなかった』

 

その声は、少しだけ幼かった。

 

『言えば、壊れると思った』

 

「壊れても、言えばよかった」

 

ウルフロードは影を睨む。

 

「壊れたら、直せばよかった」

 

影の口元が、ほんの僅かに笑った。

 

『……遅かったね』

 

「……そうだね」

 

ウルフロードは拳を握り直す。

 

「結局、私はあなただったみたい」

 

最後の一撃が、影を砕いた。

 

黒い破片が舞う。

 

その中で、数字が浮かぶ。

 

Lv.999

 

ウルフロードは、それを見なかった。

 

どうでもよかった。

 

そんなものより、大事なものがあった。

 

 

 

「――おねえちゃん?」

 

 

 

声がした。

 

ウルフロードは振り返る。

 

あなたが、そこに座っていた。

胸を押さえながら、きょとんとした顔で。

少しだけ涙の跡を残して。

 

「いたい夢、見た」

 

ウルフロードは動けなかった。

 

女が、肩をすくめる。

 

「誠意と言ったでしょう?本当に殺したら、交渉にならないもの」

 

「……っ」

 

ウルフロードは、あなたを抱きしめた。

 

強く。

けれど、壊さない力で。

 

その筈だった。

 

「おねえちゃん?」

 

あなたの声が、少しだけ不安に揺れる。

 

ウルフロードの腕が震えていた。

力を込めている訳ではない。

むしろ、必死に抑えている。

 

けれど指先が、空間を軋ませていた。

 

白い床に亀裂が走る。

壁が歪む。

彼女の髪の先から、黄金色の粒子がこぼれ落ちる。

 

Lv.999。

 

それは勝利の証だった。

同時に、今の彼女には大きすぎる力だった。

 

影を砕いた瞬間、未来の自分が積み上げた全てが流れ込んできた。

強さ。

記憶の残滓。

後悔。

殺意。

孤独。

 

その全部が、ウルフロードの中で暴れている。

 

「離……れて」

 

ウルフロードは掠れた声で言った。

 

あなたは動かなかった。

 

「いや」

 

「お願いだから」

 

「いや」

 

あなたは小さな手で、震える彼女の服を掴んだ。

 

「おねえちゃん、また一人で我慢してる」

 

ウルフロードの息が止まる。

 

「いっぱいお話しよ」

 

「……これは、話してどうにかなるものじゃない」

 

「でも、言って」

 

あなたは泣きそうな顔で、それでも逃げずに言った。

 

「こわいなら、こわいって言って」

 

ウルフロードの瞳が揺れた。

 

赤く、紅く、朱く。

獣のように灯っていた光が、一瞬だけ弱くなる。

 

「……怖い」

 

初めて、言葉にした。

 

「この力が怖い。あなたを守るために欲しかったのに、今はあなたを壊しそうで怖い」

 

あなたは、少しだけ笑った。

 

「じゃあ、ぼくが見てる」

 

「何を」

 

「おねえちゃんが、こわくなくなるまで」

 

その言葉に、ウルフロードは何も返せなかった。

 

女は二人を眺め、微かな笑みを浮かべる。

 

「今のあなたでは、その出力には耐えられないわ」

 

「……私が一番分かってる」

 

「身体も、精神も、器が追いついていない。無理に使えば、あなた自身が壊れる。最悪、その子も巻き込むでしょうね」

 

ウルフロードの指が、あなたの服から離れようとした。

 

けれど、あなたが先に握った。

 

「離さないって言った」

 

「……危ない」

 

「でも、離さない」

 

あなたは真剣だった。

幼くて、弱くて、Lv.1で。

それでも、その手だけは離さなかった。

 

「おねえちゃんは、ウルフロードって呼ばれてるんだよね」

 

「……星が勝手に呼んでるだけ」

 

「じゃあ、ぼくも呼び名つける」

 

「今?」

 

「今」

 

あなたは少しだけ考えた。

 

そして、彼女の銀色の髪を見た。

初めて会った時から、暗い部屋でも少しだけ光って見えた髪。

 

狼みたいに強くて。

雪みたいに綺麗で。

でも、一人だと少し寂しそうな色。

 

「銀狼」

 

ウルフロードは、あなたを見た。

 

「おねえちゃんは、銀狼」

 

「……何それ」

 

「ぼくの名前」

 

「名前じゃなくて、呼び名でしょ」

 

「うん。ぼくが呼ぶ名前」

 

あなたは少し照れたように笑った。

 

「みんながウルフロードって呼んでも、ぼくは銀狼って呼ぶ。だって、おねえちゃんは怖い狼じゃないもん。ぼくを守ってくれる、銀色のかっこいい狼だから」

 

ウルフロードは黙っていた。

 

胸の奥で暴れていた力が、少しだけ静かになる。

 

Lv.999は消えない。

痛みも消えない。

今すぐ扱えるようになる訳でもない。

 

けれど、彼女は自分が何者かを一つだけ思い出した。

 

星が畏れるウルフロードではなく。

未来の影でもなく。

強さだけを求める獣でもなく。

 

あなたが呼ぶ、銀狼。

 

「……変な名前」

 

「だめ?」

 

「別に」

 

「じゃあ、銀狼」

 

あなたがそう呼ぶ。

 

その瞬間、ウルフロード――銀狼は、ほんの少しだけ笑った。

 

「何」

 

「呼んだだけ」

 

「そう」

 

「銀狼」

 

「……何」

 

「えへへ」

 

あなたは嬉しそうに笑った。

 

銀狼は深く息を吐く。

まだ身体は震えている。

力は暴れたままで、少し気を抜けば周囲を壊してしまいそうだった。

 

それでも、さっきよりはマシだった。

 

女は満足そうに手を叩いた。

彼女は一歩近づく。

 

「エリオなら知っているわ。Lv.999を御しきる方法も。その子を守ったまま、あなたが壊れずに済む道も」

 

銀狼は答えない。

 

ただ、あなたの手を握った。

 

今度は、強さを誇るためではなく。

離さないと伝えるために。

 

あなたも、その手を握り返した。

 

「銀狼」

 

「何」

 

「こんどは、ぼくも一緒に行っていい?」

 

銀狼は少しだけ黙った。

 

前なら、駄目だと言った。

危ないから。

弱いから。

守れないかもしれないから。

 

けれど今は違う。

 

「……手、離さないなら」

 

「うん。離さない」

 

「なら、いい」

 

女が楽しそうに目を細める。

 

「決まりね」

 

黒猫の鼻が優しく銀狼に触れると、するりと力が抜けていった。

 

壊れた影の破片が、足元で溶けていく。

 

未来のウルフロード。

あなたを失い、強さだけを積み上げ、最後には誰とも話せなくなった獣。

 

その末路は、消えた。

 

今ここにいる彼女は、もう影ではない。

 

Lv.999。

パンクロードの頂点。

狼の道を歩む者。

 

銀狼。

 

その名を繋ぎ止める小さな手がある限り、彼女はまだ、人でいられた。

 

 

 

 

 

 

星核ハンターの拠点には、夜というものが曖昧だった。

 

窓のない部屋。

一定の明るさを保つ照明。

どこかで低く鳴り続ける機械音。

 

けれど、あなたが眠そうに目をこすり始めると、銀狼はそれを夜だと判断した。

 

「眠いなら寝れば」

 

「ねむくない」

 

「今、目こすった」

 

「こすってない」

 

「こすった。ログ取ってる」

 

「ろぐ?」

 

「証拠」

 

あなたは少しだけ考えて、それから頬を膨らませた。

 

「銀狼ずるい」

 

「勝てばいい」

 

銀狼は携帯ゲーム機から目を離さずに言った。

けれど、その隣には小さな毛布が用意されている。

 

あなた専用の毛布だった。

 

最初はカフカが持ってきたものだった。

けれど、いつの間にか銀狼が洗い方を覚え、畳み方を覚え、あなたが蹴飛ばしてもすぐ拾える場所に置くようになった。

 

あなたは毛布を抱えて、銀狼の隣に座る。

 

「ここでねる」

 

「ベッド行けば」

 

「ここがいい」

 

「邪魔」

 

「じゃまじゃないもん」

 

銀狼はため息をついた。

 

数秒後、ゲーム機の音量が一つ下がる。

 

あなたはそれに気づいて、少し嬉しそうに笑った。

 

「銀狼」

 

「何」

 

「音、ちいさくした?」

 

「してない」

 

「した」

 

「してない」

 

「やさしいね」

 

「うるさい」

 

銀狼は画面を見たまま答える。

けれど、あなたがこてんと横に倒れると、片手で毛布を引き上げた。

 

肩まで。

ちゃんとかかるように。

 

あなたは毛布の中から、銀狼の袖をちょんと掴んだ。

 

「どこにも行かない?」

 

「行かない」

 

「ほんと?」

 

「このステージ終わるまでは」

 

「そのあと」

 

「……そのあともいる」

 

あなたは安心したように目を閉じた。

 

少しして、寝息が聞こえ始める。

 

銀狼はゲームを続けていた。

続けているふりをしていた。

 

画面の中では、同じ場所でキャラクターがずっと立ち止まっている。

 

通路の向こうから、カフカが静かに歩いてきた。

 

「寝たのね」

 

「見れば分かるでしょ」

 

「あなたも動けないわね」

 

「袖掴まれてるから」

 

「振りほどけばいいんじゃない?」

 

銀狼は一瞬だけ黙った。

 

そして、小さく言う。

 

「起きたら悪いでしょ」

 

カフカは微笑んだ。

 

「そう」

 

それ以上は何も言わず、静かに通り過ぎていく。

 

銀狼はあなたの寝顔を見る。

 

小さな手。

薄い寝息。

まだ泣き疲れることも、寂しさを全部言葉にすることも下手な子供。

 

銀狼はゆっくりと息を吐いた。

 

Lv.999の力は、今ここにはない。

けれど、この手を振りほどかないくらいの強さなら、ちゃんと残っている。

 

あなたが寝言のように呟いた。

 

「ぎんろう……」

 

「何」

 

返事はない。

 

銀狼は少しだけ目を細める。

 

「……いるよ」

 

誰に聞かせるでもなく、そう言った。

 

ゲーム機の画面は、まだ止まったままだった。

 

 

 

 




「星核ハンター」のお話と繋げてみました。
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