『あなた』がスタレキャラと仲良く(意味深)なっちゃった! 作:ザワザワする人
あぁ、俺が挟んだ。これは嘘でも否定でもない。
あなたはベロブルグのとある花屋の店員です。
あなたの朝はいつも、太陽よりも少しはやいのです。
夜の寒さを耐えきった彼らに、少しの温かい水を与える為です。
[ふんふふ~ん♪]
彼らの事を思えば、寒さなんてこれっぽっちも効きません。
昔から我慢強かったあなた。
要因はきっとあなたの二人の幼馴染でしょう。
片方からはいつもくだらない勝負を挑まれたものです。
大抵はあなたの勝ちでしたが。
もう片方からはよく本の読み聞かせを頼まれたものです。
大抵は夜遅く、ナターシャさんすら眠りに入った後でしたが。
ですがそれらもあなたにとっては大切な思い出です。
[お、来た来た」
建物の隙間を通って、朝日が入り込んできました。
毎日あなたは見ていますが、相変わらずいい景色です。
地底に居た頃は見れなった景色に、今はもう慣れている。
時が経つ速度は、まったくもって早いものです。
「相変わらず早起きね、あんたは」
「ゼーレがいつも寝坊していただけじゃなかった?」
「そ、それは言わなくていいじゃない!」
あの時、大人の腰にも満たなかったあなたたちは、もう既に大人です。
「あ、あんたもなにニヤニヤしてんのよ!!」
おっと、ゼーレが飛び掛かってきました。
ですがゼーレの全ての弱点が、あなたの頭の中には目白押しなのです。
これは必殺技ですが、使ってしまいましょう。
[ゼーレは今日もかわいいね]
必殺 可愛い攻め!!!
ゼーレにこれが効かない日は、ほぼありません。
「え………あ、ありがと………」
まさしく効果バツグンといったところでしょう。
「………………」
おや、ブローニャが寂しそうにこちらを見ています。
こういう時にどうすればいいか。
あなたの頭には既に100以上の回答が出ています。
仕方がありません。こちらにも必殺技を使いましょう。
ナデナデ
「ん………」
ナデナデ
「やっぱり………安心する」
必殺 頭ナデナデ!!!
ブローニャは特にこれが好きなのです。
小さい頃から寝落ちしてしまった彼女に、これをすればいつも笑みをこぼしていたものです。
[あ、忘れてた!]
「どうしたの?」
あなたとしていた事がうっかりしていました。
そういえば今日は、新しい肥料の入荷日だった筈です。
あなたが色んな人に園芸を勧めまくったせいで、今ベロブルグでは一種の園芸ブームが起こっています。
肥料はいわば争奪戦状態なのです。
こうしてはいられません。あなたはダッシュで、雑貨店へと向かいます。
「ちょっとあんた!!今夜の忘れてないでしょうね!!!」
後ろからゼーレの声が聞こえてきます。
ちゃんと覚えていたあなたは片手でグッドサインを作り、掲げました。
あなたが去った後、二人はおもわず溜め息をつきます。
「彼は…本当に自由というかなんというか……」
「昔からああいう奴だったけどね」
二人もまたここに来た理由を同時に思い出します。
あなたに会う為、というのは実は二番目です。
一番の目的はまさにここ━花屋でしか果たせないのです。
少し緊張しながら、二人は花屋の扉を開けました。
□
扉のベルが、小さく澄んだ音を鳴らしました。
店内には、まだ朝露の名残を纏った花々が並んでいます。
柔らかな光が差し込み、色とりどりの花弁を静かに照らしています。
「……本当に、流行ってるのね」
ゼーレは小さく呟きます。
棚には本日分残りわずかの札。あなたの言葉通り、園芸ブームは本物でした。
ブローニャは一歩、店の奥へと進みます。
「彼は花に触れている時が、一番穏やかだった」
その声は静かで、けれど確信に満ちています。
ゼーレは腕を組み、ふっと視線を逸らしました。
「……だからよ」
「だから?」
「今日くらいは、あいつを
その言葉に、ブローニャは一瞬目を見開きます。
ゼーレは少しだけ頬を赤くしながら、小さく言います。
「……誕生日なんだから」
ブローニャは静かに目を伏せ、それから頷きました。
「彼はきっと、自分のことは後回しにする」
「そういう奴だからムカつくのよ」
でも、とゼーレは続けます。
「今日は違う。今日は、あたしたちが世話してやる番」
ブローニャは棚に並ぶ花を見つめます。
赤、青、白、紫。
どれがいいのでしょう。
あなたは明るい色が好きです。
でも彼女達から見たら落ち着いた色もきっとあなたには似合います。
強い花も、可憐な花も、どれも似合ってしまうのでしょう。
「……困ったわ」
ブローニャが小さく呟きます。
「なにが?」
「彼に似合わない花が、見当たらない」
ゼーレは一瞬黙り、そして吹き出した。
「あははっ、ほんとそれ」
けれどそんな二人は同時に、同じ花に視線を止めます。
二人ともその花言葉を知っています。
だってそれは、彼が初めて育てることができた花だから。
昔、あなたから貰った大切な贈り物だったから。
「……これにしよ」
「賛成」
二人とも、そっとそれを手に取ります。
ブローニャの指先に、頭に残るかすかな温もりと同じ温かさが灯ります。
ゼーレの頬と同じくらいの温かさが。
「夜、驚くかしらね」
「すると思う」
「泣いたらどうする?」
「……その時は」
ブローニャはほんの少しだけ微笑んだ。
「私たちが、撫でてあげればいい」
ゼーレは顔を真っ赤にしながら叫びます。
「な、なに普通に言ってんのよ!」
でもその声は、どこか嬉しそうでした。
そうして、またベログルグに新しい日が昇りました。
□
そうして変わらぬ一日は過ぎ去っていき、あっという間に夜になりました。
あなたは店のドアにCLOSEの板を掛けた後、地底に向かいます。
今日は地底でパーティをするそうです。
うっきうきの足取りで、あなたはゼーレに指定された建物へと向かいます。
[あれ?]
扉を開けても、建物の中は真っ暗でよく見えませんでした。
もしかしたら場所を間違えたのかもしれません。
あなたが踵を返そうとすると、クラッカー音が響きました。
「「「「「「誕生日おめでとう!!!!」」」」」
突然の音にびっくりして、あなたは思わずしりもちをついてしまいます。
落ち着いてよく見たら、いろんな人がいます。
ナターシャに、リンクスに、ルカに、ジェパードに……。
数えていけばキリがありません。
ですがあの二人がいませんでした。
「お誕生日、おめでとう」
「…お、おめでと」
後ろから聞こえてきたのは、あなたが探していたブローニャとゼーレの声でした。
振り返ると、その手にはそれぞれ一輪の花があります。
[それって……]
ブローニャが、目線を外しながらあなたへとその花を差し出します。
ゼーレも同じように、けれどブローニャよりももっと頬を赤くしながら。
そして二人同時に深呼吸をします。
「「これが、私たちの気持ち」」
周りの人は、固唾を呑みます。
「受けってくれると、嬉しい」
先に口を開いたのは、ブローニャでした。
「は、はやく受け取んなさいよ……」
ゼーレは、ぼそぼそと小さな声を出します。
「ひゃっ………!」
「えっ………」
突然の抱擁に、二人の体が同時に固まりました。
あなたの腕の中で、ゼーレとブローニャは完全に思考停止しています。
あなたはただ、嬉しさが抑えきれない様子でした。
誕生日を覚えていてくれた事。
それだけで胸がいっぱいになり、思わず抱きついてしまったのです。
ゼーレの顔が一瞬で真っ赤になります。
「ちょ、ちょっと!! いきなり抱きつくなバカ!!」
背中をバシバシ叩いてきますが、力はほとんど入っていません。
むしろ離れるタイミングをわざと逃しているようにも見えます。
ブローニャはというと、腕の中で一度だけ瞬きをしてから
「……暖かい」
ぽつりとそう呟きました。
あなたが不思議そうに顔を覗き込むと、ブローニャはわずかに視線を逸らします。
「……なんでもない」
そう言って静かにあなたの肩を押しました。
「皆が見てる」
その言葉で、あなたはようやく周囲の視線に気づきます。
振り向けば、ナターシャが微笑みながら腕を組み、ルカがニヤニヤし、ジェパードは妙に真面目な顔で頷いていました。
「若いって良いわね」
「違うから!!」
ゼーレの叫び声が響きます。
あなたは慌てて二人から離れました。
そして改めて、二人の手にある花へと視線を向けます。
見覚えのある花でした。
忘れるはずがありません。
それは昔、自分が初めて咲かせることができた花。
あの時、嬉しくて二人に見せびらかした花と同じ種類です。
そのことに気づいたあなたは、驚きと嬉しさが混ざった表情を浮かべます。
ゼーレは少しだけ身構えた様子でした。
「……そりゃ覚えてるでしょ」
ブローニャは静かに頷きます。
あなたは花と二人を見比べて、もしかしてという顔になりました。
わざわざこの花を選んでくれたのだろうか、そんな考えが頭に浮かんだのです。
「そう」
ブローニャが静かに答えます。
ゼーレは視線を逸らしながら腕を組みました。
「……花屋で見つけたから」
「え?」
「たまたまよ!」
ゼーレは慌てて言葉を重ねます。
「べ、別に深い意味とかないから!」
あなたはようやく花を受け取りました。
その表情は、本当に嬉しそうでした。
まるで宝物でも渡されたかのように、両手で大事そうに持っています。
その花が特別なものだということを、二人はよく知っています。
昔、初めて咲いた時のあなたの騒ぎようを思い出せば、なおさらでした。
あなたは花を見つめながら、懐かしそうに笑みを浮かべます。
昔、二人に見せた時のことを思い出しているようでした。
あの時、二人が喜んでくれたことを今でも覚えている様子でした。
ゼーレは小さく鼻を鳴らします。
「そりゃあんたが騒いでたからでしょ」
あなたは照れたように頭を掻きました。
それでも、その花を二人が選んでくれたことが嬉しい。
その気持ちは隠しきれていませんでした。
ゼーレの耳がさらに赤くなります。
「……っ」
ブローニャは静かにあなたを見つめていました。
「あなたが喜ぶと思った」
その言葉に、あなたの表情がぱっと明るくなります。
ゼーレが小さく呟きました。
「……ほんと鈍い」
「ん?」
「なんでもない!!」
その時、ルカがパンパンと手を叩きました。
「おい主役ー!!ケーキ食うぞー!」
ジェパードが、いつもとは違う優しい声で言います。
「主役が来なければ始められない」
ナターシャが朗らかに微笑みました。
「今日は、あなたの日よ」
あなたは素直に頷きます。
ですが席へ向かおうとして、ふと振り返りました。
花を胸の前で大事そうに抱えたまま、
二人に向かってもう一度嬉しそうに笑います。
[二人とも…]
その表情だけで、どれだけ喜んでいるのかは十分伝わりました。
ですがあなたはちゃんと言葉にします。
[ほんとにありがとう!!]
ゼーレは顔を逸らします。
「……バカ」
ブローニャは小さく微笑みます。
「でも、それでいい」
ゼーレが眉をひそめました。
ブローニャは静かに続けます。
「このままでも、楽しい」
ゼーレはしばらく黙ってから肩をすくめました。
「……まぁ」
そしてぼそっと言います。
「今日は誕生日だし、許してやるわ」
「おーい主役!!」
ルカが手を振ります。
あなたは元気よくそちらへ向かいました。
その背中を見ながら、ゼーレがぽつりと呟きます。
「……いつ気づくのよ、バカ」
ブローニャは少し考えてから答えました。
「たぶん」
「?」
「かなり先ね」
ゼーレは吹き出します。
「でしょうね」
そして二人も、あなたの後を追って歩き出しました。
花の香りに包まれた、とても賑やかな誕生日の夜でした。
「毬牡丹」
花言葉:忍耐、究極、短い永遠、永久不滅の愛。
エピソード:毬牡丹は花の中でも珍しく、開花期間は1年に1回、1ヶ月にも満たない。開花時は非常に美しく、高価格に見合う。ベロブルクには、開花した毬牡丹の前でプロポーズを成功させると、死ぬまで愛が続くという言い伝えがある。
贈る対象:恋人
一話の長さはどのくらいがいい?
-
2000未満
-
2000から3000
-
3000から4000
-
4000以上