タクヤのカルパスは光らない   作:ニコラス―NICORUTH―

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なんか描きたくなった。


極道脅迫!超速攻谷岡!!

 

 下北沢。カードゲーム、Lifeを通じて絶大な影響力を世に示す精霊信仰集団、アークの影響を殆ど受けていない、真のファイターたちの街。

これは、その日常風景のほんの一部だ。

 

―――ドンッ!!

 

 その大学生たち、サッカー部に所属する3人にとって、その日はあまりにも不幸な日である。

白いワゴンに後ろからカマを掘られた黒塗りの車から、鋭い眼光が彼らを見据えている。

 

「 やべぇよ、やべぇよ・・・ 」

 

「 朝飯食ったから・・・ 」

 

 車からでたその男。格好、気迫、そしてその目に宿る憤怒の感情をこれでもかと訴えかけてくる凄みに至るまで、堅気の気配を感じさせない。

明らかに裏の世界の人間、やくざ者であった。

学生たちは、ただ目の前にある状況に狼狽え、怯えるばかりだ。

 

「 おいゴルァ!降りろ! 」

 

 運転席のドアを力強く開けた男は、鬼の形相で彼らに降車を要求するが、彼らはビビってしまっていて、身動きが取れない。

それをみた男は彼らを車から降ろすのは、一旦保留とし、先ずは別の要求をすることとした。

 

「 おいゴルァ!免許見せろぉ!! 」

 

 運転免許証の開示を求められた運転手は呆然とするが、男は待つ気はないようだ。

 

「 あくしろよ。 」

 

 そう急かされるまま免許証を取り出されると、男はそれをバシュッと取り上げてしまった。

突然のことにさらに困惑する3人。

しかし、時は待ってくれない。

 

「 おうお前らクルルァについてこい。 」

 

 クルルァ、と聞こえたが、おそらく車で間違いはないだろう。このやくざ者の滑舌で笑う度胸など勿論なく、その一言に、彼らは従う以外の選択肢はなかった。

 

 

 

 

 それから何分何時間と経ったろうか、彼らは男の組の事務所に三人揃って座らされていた。

目の前の、あの男の手には、免許証がある。

どうにかして、取り返さねばならない。

 

「 オナシャス!免許証返してください!オナシャス! 」

 

「 おう、やだよ。 」

 

「 オナシャス!免許証を・・・ 」

 

「 おう、その前にまず土下座しろよ。 」

 

 後輩たち二人とともに、多田野は深々と頭を下げるほかなかった。

単なる一般人に過ぎない彼らにとって、この手の相手に取れる手段などたかが知れている。

こうやって、精一杯誠意を示す他ないのだ。

 

「 誰の車にぶつけたと思ってんだよ? 」

 

「 オナシャス!センセンシャル!! 」

 

 ただ謝るしかない多田野に対して、このやくざ者の男こと谷岡の提示した、示談の条件とは―――

と、大袈裟に焦らさずとも、この街ならば、大方決まっていた。

 

「 お前、Lifeしろよ。 」

 

「 え? 」

 

「 もってんだろ?Liberalise futureのカードデッキをよ。

あくしろよ、オレと対戦すんだよ。 」

 

「 え? 」

 

「 おう、返さねぇぞ? 」

 

「 やれば返していただけるんですか? 」

 

「 ん? 」

 

「 やれば返していただけるんですか!? 」

 

「 おう、考えといてやるよ。 」

 

 こうして、多田野と谷岡のファイトは始まった。

このようなことは、この下北沢いや、この世界では、半ば当たり前になっていた。

 

 お互いにデッキをシャッフル、カードを五枚引いた。

 

「 先行はオレだ。文句はねぇな。 」

 

「 オナシャス! 」

 

「 それじゃ、ライフから二枚引き、土地を置いて、榴弾ウルフスを召喚する。 」

 

 谷岡のこの初動を見て、多田野は彼のデッキを理解する。

ミサイルドッグス。速攻系のアーキタイプだ。

 

「 早速攻撃するぜ。2点だ! 」

 

 多田野のライフデッキから捲れたのは、土地カード。

そのままコストゾーンに送られる。

 

「 手番終了前に効果でウルフスを手札に戻す。

お前のターンだ。 」

 

「 オナシャス!ドロー!

・・・土地を置くだけです。どうぞ。 」

 

「 オレの手番、メインから引くぜ

・・・よし。

土地を置いて、二マナで、徹甲クラインを召喚。

3点だよ3点。 」

 

 多田野は、はやくも四分の一ものライフを失うこととなる。

メインデッキとは別個に用意するライフデッキは、文字通りプレイヤー、基ファイターの生命だ。

基本このライフデッキが0枚になれば、そのファイターの敗北である。

一刻も早く動きだしたい多田野だったが、捲れたカード三枚揃って魔石カードだ。

そのまま墓地に送られてしまう。

 

 そしてミサイルドッグズ共通の能力で徹甲クラインが谷岡の手札に戻った後、再び多田野にターンが回る。

 

「 オナシャス!ドロー! 」

 

 しかし、良いカードはそうやすやすと手札には舞い込まなかった。

そのターンもやはり、マナをチャージするだけに留まった。

 

「 ターン終了・・・ 」

 

「 どうした?なんもできねぇのか?

オレの出番。マナチャージの後、こいつを2マナで発動する。

・・・付与魔法カード『 二つ弾にて撃ちて候 』だ。 」

 

「 ・・・! 」

 

 多田野はそのカードに見覚えがあった。

ミサイルドッグスとは別のカテゴリーの付与魔法であるが、かねがね下北沢でそのシナジーが注目されていた一枚である。

 

「 その後に『火花の儀式』を使用して2マナを生成、

徹甲クラインを召喚だ。

ここで、この付与魔法の効果が発動する。

俺が召喚した、速攻持ちの幻獣のコピートークンを、そっくりそのまま複製する。

そしてそのまま戦闘入るぜ。

勿論こいつらでフルコン、六点だ。 」

 

 多田野のライフは、15から9に削れる。

幸いそれらのうち半数は土地カードであり、コストゾーンに置かれた。

一枚は呪言、二枚は魔石だ。

 

「 呪言カード、『 叡智神教団の聖歌 』によって、カードを二枚ドローします。 」

 

「 おう、そうか。

だが終了前に付与魔法の効果でクライン二体揃って墓地に行く。

トークンは、墓地に現物はねぇが、効果は起動できる。

クラインは墓地に送られたときにも3点を飛ばす。

6点だ。 」

 

「 ううっ! 」

 

 多田野は痛覚を伴わないゲームであるにも関わらず、身悶えするような素振りをしてしまう。

それくらいに、このゲームは彼にとって勝たねばならないものであるからだ。

当然であろう、勝てねば免許証は返ってこないのだ。

そして、彼のライフは残り、3点だ。

一ターンにして、12点も削るとは、この谷岡という男も中々の実力者である。

先の第一ターンで、榴弾ウルフスも見えている。

 

( 落ちたな( 確信 )このままウルフスで殴りゃ俺の勝ち。

仮にアイツが二つ弾を除去って壁をだしてきたとしても、

手札の『稲妻』で3点飛ばしてやれば、あいつのライフをぴったり削りきれる。

この後が楽しみだぜ。

なぁ、ヨツンヴァインになるんだよ。 )

 

「 ターン終了、お前のターンだ。 」

 

このままなにもできなければ、多田野の負けである。

しかし、そんな状況下でも、彼と後輩たちは冷静だった。

特に当の多田野本人は、怖ろしいほどに静まり返っている。

 

( なんだ?あいつのあの雰囲気は?

さっきから、焦り一つ感じられやしねぇ。

追い詰められているのは、手前だというのに。

表情が全然崩れねぇ。 )

 

 まさか、なにか逆転の手でも握っているのか?と不安になる谷岡。

ターンが回り、カードを引く多田野。

 

 一転攻勢という言葉がある。

劣勢であったものが、不利な状況から何らかのきっかけをもって、優勢に上る。そんな意味の四字熟語だ。

このLifeというゲームはまさしく、その言葉が似つかわしい。

 

「 マナをチャージし、魔法『 突発的な爆発 』。 」

 

「 !? 」

 

 そのカードは谷岡にも見覚えがあった。確か、山札を魔法でも秘宝でもないカードが出るまで捲り、それででたカードのコスト分のダメージを相手に与える。

共鳴率至上主義のファイターたちにはデッキの回りを阻害するクソカードとしかみなされていなかったが、こと下北沢においては、数々のコンボに転用できる可能性が囁かれていた。

そして、それが今来るということは・・・

 

「 それでは、デッキを捲ります。 」

 

 多田野はデッキの裏向きのカードを、上から表にし始める。

〈金属結晶〉、〈知識の嵐〉、〈稲妻〉、〈辺境への流刑〉、〈審判の光〉、〈亡霊の群れの挙兵〉・・・

そのどれもが、秘宝や、魔法カードだらけ。

幻獣など、10枚を突破するまでにでてきていない。

やっぱりな、と谷岡は腑に落ちた。

やけに幻獣が1体もでてこないと思ったら、そうだったのかと。

このデッキは、

 

「 11枚目、オナシャス。 」

 

 〈突発的な爆発〉を活かす為に、組まれたデッキだ。

共鳴率とやらを宛てにする外の雑魚どもとはまるで違う。

大まかな勝ち筋一つをコレと決めた上で、熟考の末に構築されている。

なんと歪な、しかし、

 

「 おもしれぇデッキだ。 」

 

「 捲れたのは、〈 永遠語りの神、ソトゥルス 〉。

20コストです。

ダメージ、オナシャス。 」

 

 〈永遠語りの神、ソトゥルス〉。現在のLifeのカードの中でも、最重量クラスの幻獣。

その膨大なコストは、専用の構築を組まねば、到底使い物にならないが、

まさか、こんな使い方があるとはと、感心させられていた。

 

「 おう、俺の負けだ。免許証はくれてやる。 」

 

 自然と谷岡の顔には、笑みが浮かんでいた。

その後、彼らはLifeの世界大会、エレシウスのチームの部に参加し、世界ベスト8に名を連ねることになるのだが、それはまた、別の話。

 

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