そのうち原神のクロスも書いていきたいから更新が遅くなったりしてしまうかも。申し訳ない。
とはいえ、ちょくちょく更新を続けていくつもりです。
え?2作品を同時に?できらぁ!
あの嵐のような新人歓迎会が終わってから数日間のこと、狩人は完全に暇をしていた。時折、課せられる任務以外で悪魔を狩ることを禁じられているからである。これはアキから教えられたことなのだが、悪魔を狩る者たちには我々、国が管理する公安と一般企業が経営してる民間とで分けられるらしい。
民間デビルハンターが目につけた悪魔を殺してはいけず、民間で手に負えなかった悪魔たちが私たちに回ってくるというわけだ。そのため、任務をしている以外の時間はこの通り、アキの家でテレビと呼ばれる四角い物体から光る絵を出してくれる機械を眺めていることが多い。
しかし、今流れている番組は通販ばかりで特段、面白いと思うようなものはなかった。これから狩人の夢へと戻り、聖杯ダンジョンに潜ってもいいが、同じような敵とばかり戦うのも飽きてしまったので、なかなか気分が乗らない。
持っていたリモコンを机の上へと置き、大の字の形で地面へと寝っ転がるとそばにいたニャーコが私の方へと近づき、背中を丸くして同じようにごろんと寝始めた。そんなニャーコの背中を毛並みに沿ってゆっくりとなでてやると喉の奥をゴロゴロと気持ちよさそうに鳴らす。
狩人は、猫と犬どっち派と聞かれれば間違いなく猫と答える。理由は簡単、犬は襲ってくるが猫は襲ってこない。それに限る。ただ、それを抜きにしてもニャーコは心を温めてくれる存在だと思う。気を許せる生き物など、貴重だからな。
このまま、ニャーコと共に休むのも悪くない。と考えていたその時。アキの家に備え付けられていた電話がけたたましくなり始めた。突然の電話に驚かせられながらも、受話器を取ると聞こえてきたのは見知った人物の声だった。
「もしもし。狩人君はいるかな」
「どちら様かな──と、姫野だったか。今日はアキと一緒に仕事だったと聞いてたが、どうした。何か問題でも起きたか?」
「いや、全然。むしろ、悪魔をちょうど倒し終えて順調ってところ。ところで狩人君。今日、暇?」
「ああ。暇すぎてニャーコと戯れていたところだ」
「じゃあ、服を買いに行かない?この前ホテルに閉じ込められた時の約束したのちょうど思い出してさ」
そういえば、そんな話もあったな。このまま家にいたところですることも特にないし、友好を深めるという面でも断る理由はない。狩人は姫野の申し建てに対して二つ返事で了承すると、彼女の方からすぐに待ち合わせ場所を指定してくれた。徒歩で行けば30分ほどかかるであろう距離だったが、そこは偶然にも狩人が最初に来た時にランタンをつけていた場所だった。
「じゃあ私、近くのカフェで時間つぶして待ってるね」
「いや、その必要はない。直ぐにつく」
「狩人君、今アキ君の家でしょ?そこからここまで結構距離あるよ」
「まぁ、信じてくれたまえよ」
本当かなぁ、と姫野が半信半疑のまま待ち合わせ場所で待っていると、きっかり3分後。狩人が目の前に現れた。
「ほら。嘘は言ってないだろう」
「……本当に来た。もしかしてそれも狩人君の能力の一つだったりする?」
「そういうことになるな」
「不死に転移、それとデタラメな戦闘能力。……なんでもありだね」
「私のいたところでは普通だったんだがな?」
「本当に、狩人君の前いた所がどんなとこだったのかが気になるよ」
ほとんどの狩人に備わった標準技能でもあり、獣たちに対抗するための手段。どれか一つでもかけていれば、私はあの夜を生き抜くことはかなわなかっただろう。
「まぁいっか。それよりも予定通り服でも買いに行こうか。前から思ってたけど狩人君の服装はかなり目立つからね。普段着みたいなやつを買っておいた方がいいと思うんだよ」
確かに、姫野の言う通りだ。現に、私は通行人たちに奇異なものを見るような視線を送られている。中には子供が指さすのを止める親までいる。このまま不審者扱いをされるのも気に食わないので、今回の姫野からのお誘いというものは本当にありがたいものだ。それに、ここにおける”おしゃれ”というものにも興味はある。
このあたりの地理に疎い狩人は、姫野の案内に従いついていくと、ショーケース越しに多くの服が飾られている洋服屋へと着いた。店内には多くの服が飾られており、そのデザインはヤーナムでは見られないものばかりだった。
「ふむ……こうも多いと選ぶのも難しいな」
「狩人君が求めてる要素を店員に聞いてみたら?ほら、ちょうどあそこにいるよ。すませ~ん」
姫野が近くにいた店員に声をかけると、狩人の服装に一瞬驚きの表情を浮かべながらもすぐに営業スマイルへと切り替えた。
「この人に合う服を見つけてほしいんだけどいい?」
「お連れ様のですね。なかなかに前衛的なファッションセンスをされているようですが、何かご要望などはありますか?」
「そうだな……なるべく軽い素材で、ある程度、斬撃や重打に耐性があるものがいいな」
狩人はの戦闘スタイルは回避が主体であるため、動きを阻害してしまうような服はダメだ。だからと言って、攻撃を食らうことももちろんあるため、保険として攻撃に大してある程度の耐性は欲しいところだが。
狩人が要望を店員へと伝えると彼は苦い顔をし、非常に言いにくそうな様子で言う。
「えっと……そのようなものはうちにはありませんかと。出来ればデザイン面の方での要望をいただければ」
「そうだよ。服を選ぶときに斬撃と重打なんて言葉を聞くとは思わなかったよ」
どうやら求められていた答えとは違うものを言ってしまったらしく、店員を困らせてしまった。確かによく考えてみれば、人形ちゃんの服などいくつか戦闘面において使えそうにないおしゃれ用服を持っていたのも事実だ。この際、そっち方面に合わせるとしよう。
「であれば、今かぶってる帽子が合いそうな服を選んでもらってもいいかな?これだけは外したくないのでね」
「そちらのトップハットですか……うーむ。難しいですね。こちらの服はいかがですか?」
「ありがとう。とりあえず着てみようじゃないか」
「だったら、更衣室はあっちの方にあるよ」
「いや、必要ない」
更衣室の方へと連れて行こうとする姫野を横目に、狩人は服を受け取ると、まるでどこかの怪盗のような早着替えで一瞬のうちに試着を済ませた。
「早っ!!何その早着替え?」
「これはまぁ特技みたいなものだよ」
「そうなんだ……着心地はどんな感じ?」
「悪くはないが……色合いが少しばかり明るすぎるな。他のはないだろうか?」
「え~っと。そうですね。こちらなんかはどうでしょうか?」
それから、店員のおすすめされる服を何着も試着した狩人だったが、彼の食指にかなうものはなかったのか、結局、何も買わずに店を出てしまった。
二人はその後、近場に合ったカフェへと入り、休憩をすることにした。店に入った後、それぞれ紅茶とコーヒーを注文した。
服を選ぶという慣れないことをした狩人は身体的というよりも精神的な疲れを感じていた。普段は紅茶に砂糖はあまり入れないのだが、脳みそが糖分を求めているような感覚を受けたので、角砂糖を一つつまみ入れ、スプーンで塊が解けてなくなるまでぐるぐると混ぜ合わした。
「結局、狩人君の服買えなかったね」
「付き合ってもらったのに申し訳ないな。ただ、好みに合うものがなかったものでな」
「まぁ、気持ちはわかるよ。私も買うか買わないか迷うこと結構あるからね」
姫野はコーヒーを少し啜ると、ふぅっと小さく息を吐き出した。
そういえば、いまさらながらだが、あの飲み会の後、姫野はデンジと一緒に帰っていたが何かしたのだろうか。しかし、これを直接的に聞いてしまうのは余りにも野暮というものだ。姫野は余りそういうことを気にしなさそうではあるが……少し、遠回しに聞いてみるか。
「姫野は最近、デンジと仲がよさそうだが、何かきっかけでもあったのか?」
「ん~?それはね、私はデンジ君と『同盟』を組んだからなんだ」
予想だにしなかった『同盟』という言葉を聞いて、虫を何よりも忌み嫌うあの同盟の長ヴァルトゥールが真っ先に頭に浮かんでしまったが、デンジと姫野とは何の関係もない。と、頭を振り、雑念を払う。
「その『同盟』というのは?」
「私がマキマさんとデンジ君が付き合えるようにする代わりに、アキ君が私と付き合えるようにするの」
「なるほど、だから最近、貴公らの仲が良かったというわけか。しかし、意外だな。姫野とアキはそういう関係だと思っていたが、そうではなかったのか」
「え~~~?そう見えちゃう?」
「少なくとも、私の目線からはな」
狩人の発言を受けて、姫野は実に気分がよさそうな様子で身をくねくねとよじらせる。場が少し甘ったるいような空気になってしまったため、紅茶に砂糖を入れたことを若干後悔しながら、残った紅茶を一気に飲み干した。
ようやく高ぶっていた気持ちを落ち着かせた姫野は狩人に対して、唐突な質問を投げ掛けた。
「狩人君は、マキマさんのこと好きじゃないの?」
「まったくもってそんなことないが。どうしてそう思った?」
いままで、私がマキマに対してそのような行動をとったことがあっただろうか。ほぼ、必要最低限の関わりしかないはずだが、何か彼女がそう思うような理由があるのだろうか。
「いや、アキ君も、デンジ君も、マキマさんのこと好きだからさ。もしかしたら狩人君もかな~って。特に深い理由とかはないよ」
「そうか。なら構わないんだが。しかし、意外だな。アキがマキマのことが好きだとは」
「ね~狩人君もそう思うよね……そうだ!よかったら狩人君も私と『同盟』を組もうよ」
「デンジと同じようなのをか?」
「そう。とはいっても狩人君がマキマさんのことを好きじゃない以上、他のメリットを提示しないといけないけどね。何か望みはある?」
別に、姫野の恋路を手助けすること自体は構わないのだが、『同盟』とやらを掲げている以上、何かしらの望みを言った方がいいだろう。しかし、急に望みと言われても特には……いや一つだけあるな。
「そうだな。だったらさっきの服屋で思ったことなんだが──」
▲▽
カフェでの休憩を終え、狩人の望みをかなえるべく、姫野は公安のある一室で何かを探しているかのように段ボールを開封していた。ようやく、お目当ての品が見つかったのか、彼女は丁寧にたたまれたそれを狩人へと手渡した。それは、ほかでもない。公安の制服であった。
「あったよ。これ、公安の制服だけど……本当にこんなのでいいの?」
「ああ。この前、アキから公安の制服は悪魔の攻撃に耐えられるような作りになっていると教えられたのを思い出してね」
狩人は公安の制服へとそれを通すと、その生地の具合を確かめるように指でなぞる。黒いコートの下に隠された白シャツ以外、ネクタイまでもがすべて黒色で構成されてる公安の制服は、暗い色を好む狩人にとって実に喜ばしい要素だ。それに、このトップハットとの相性も悪くない。
「デザインも実用性も素晴らしい。理想的な服だ」
「うん。実際似合ってるし気に入ってくれて嬉しいよ。……それに、なんだか本格的にデビルハンターって感じがするね」
「そういってもらえて嬉しい限りだ。さて、これで『同盟』とやらは成立だ。貴公とアキの恋路を微力ながら手伝おうじゃないか」
「じゃあ今日から私たちは先輩後輩じゃなくて、友達で行こう。それに、今日みたいな感じでアキ君もまた連れてこようよ」
姫野がそう言いながら手を差し出すと、狩人はその華奢な手をしっかりと握り返した。
新しい制服での狩りと、これからの日々に思いを馳せながら。
狩人に公安の制服を着させるためだけの話に思ったよりも時間がかかってしまった。
次回は、みんな大好きサムライソードが出てくるよ。