服を新調した狩人は、次の日、この前のホテルでの任務からコベニと荒井を抜いたメンバーで悪魔を狩った後、近くにあった店で食事を取っていた。
中でも、ラーメンと呼ばれる食べ物は素晴らしいものだ。醤油ベースのスープはあっさりとしながらも確かなコクが感じられ、スープと良く絡み合った麺は心地よい小麦の風味が鼻を突き抜けていく。
ラーメンをじっくりと味わっていると、外からパンッパンッと住宅街には似つかわしくない音が連続して聞こえてくる。
「なんだこの音……」
「……知らんとは愚かじゃな。これは太鼓の音じゃ」
「祭りか……」
そうドヤ顔で語るパワーに対し、狩人はどこか違和感を感じていた。
太鼓の音であれば、もっと低く重い音が鳴るはずだ。これはどちらかと言えば、銃声によく似ている。
そこまで考えて、いや、と狩人は首を横に振った。
銃の悪魔の影響で銃の仕様は全面で禁止されてるはずなので、この街で銃声が聞こえてくるというのはありえないはずだ。そうでなければ、狩人は人目のつかぬようにしまってある自分の愛銃を存分に使わせていただく。
ただの考えすぎだろうと、ラーメンの方へと意識を戻すと、最後までとっていたはずのチャーシューがどんぶりの中から消えていることに気づく。そして、目線の先には本来、一つしか入ってないはずのチャーシューがなぜかどんぶりの中に二つ入っているパワーが目に入った。
「とったのか」
「とってないが」
全く動じることなく、嘘をつくパワー。もはや、食べ物を取られることが毎度のことになってしまってるのでこれ以上は無駄だろうと諦めると、アキがじっとこちらの方を見ているのに気づく。そして、その視線の先は、狩人の新しく新調した服であった。
「そういえば、服変えたんだな」
「ああ、あの服は何かと目立つからな。どうだ、似合ってるか?」
「いいんじゃないか。少なくとも前の服よりは洗濯するのが楽だ」
その顔には、血のこびりついた狩人の服を洗う時に、洗濯機に入れることができずに手洗いを強いられてしまったアキの苦労がにじんでいた。狩人は、血がついてればついてるほどいいという考えの持ち主なので、もとより選択という概念はほとんどない。だが、パワーを除いたアキの家に住む面々は其れをよしとしないので大人しく従っている次第である。
そんな他愛のない会話をしていると、カタンッと箸をどんぶりに強くたたきつける音が店内に響き渡る。
「ここのラーメンよく食えるな……味ひどくないか?」
大きな声でそう漏らしたモミアゲが特徴的な男は顔を歪ませながら言った。
「そうか?私はおいしいと思うが」
「味の良し悪しがわからないんだな。まあ仕方ないことだ。幼少期の同じような味のモンしか食べてないと大人になってバカ舌になるらしい。舌が馬鹿だと幸福度が下がる」
「……?美味いと感じられる方が幸せじゃないのか?」
「相手にするな。店出るぞ」
久しぶりに、罵倒からはいられたな。とヤーナムの人々を思い出していると、アキがこれ以上関わるな。と言わんばかりに席を立った。
アキが椅子に掛けてあったコートを手に取ると、周りの面々も店を出る準備を着々と始める。しかし、モミアゲ男は我々が無視の姿勢を貫いてるのにも関わらず、しゃべることをやめようとはしない。
「俺のじいちゃんはさ。いいやくざだったんだぜ。なぁデンジお前も好きだったろ?」
デンジに見せつけるように取り出した写真には、おそらく幼少期の頃であろうモミアゲ男と彼の後ろに立っている老人が映っていた。恐らく祖父だろうか。それを見たデンジは驚きで一瞬、目を見開くと、すぐさま警戒色の強い目で男をにらみつける。
「なんのつもりだテメェ……」
「銃の悪魔はてめぇの心臓が欲しいんだとよ」
男が懐から取り出したのは、照明に照らされながら特徴的な黒色が輝く銃だった。男が引き金を絞った瞬間、空間には鋭いピストルの音が、空気を跳ね返すように響きわたり、弾丸はデンジの頭へと命中した。
「全員ふせろ!!」
狩人は、デンジが打たれた瞬間、そう叫ぶと、モミアゲ男が二発目を打つと同時に、左手に装備したガラシャの拳で男を吹き飛ばす。
「アキ!!」
「コン……!」
男がひるんでる隙に、アキの契約悪魔『狐の悪魔』を使用するように呼び掛けると、アキは瞬時にその意図を読み取った。アキの合図と同時に、空間が裂けたような音と共に現れたのは、狩人の三倍ほどはあるであろう狐の頭が現れ、モミアゲ男を飲み込んだ。
モミアゲ男への対処を済ませると同時に、周囲の様子を見渡すと、そこには弾丸を受けて倒れている姫野の姿があった。左胸あたりに当たった弾丸は白いシャツに大きな血のシミを作る。直ぐに、姫野の元へと駆け寄り治療を施そうとしたその瞬間。
モミアゲ男を飲み込んだはずの『狐の悪魔』の顔面が中から現れた刀によって、真っ二つに分けられる。そして、血と臓物にあふれながら、中から現れたのは頭と両の腕に刀をはやしたモミアゲ男。いや、この場合、サムライソードと呼ぶべきだろう。並々ならぬ圧を放つサムライソードを前に、狩人は出し惜しみはできないと本能で感じていた。
「アキ。銃を使う。パワーは姫野の血を止めてやってくれ」
狩人は『獣狩りの短銃』を取り出すのと同時に、サムライソードがこちらを敵として戦闘態勢に入ったのが見える。両者、わずか5メートルほどの間合いで相対すると、サムライソードは倒れるかのように姿勢をし、狩人のステップと引けを取らぬ速さで、密接。直後に下段切りを叩き込もうとする。
距離をとるかジャンプでかわすかが安牌だが、どちらも次の攻撃へつながらない。狩人は、完璧なタイミングのステップでサムライソードの攻撃をかわすとすれ違いざまに、ノコ鉈で攻撃を叩き込もうとする。だが、それを予知していたのか、半身後ろへとずらすことで狩人のリーチ外へと逃げる。どうあがこうが届きようのない距離。見事な回避。しかし、ノコ鉈は
攻撃を繰り出す直前、火花を散らしながら変形させ、リーチをのばすと、突如の変化に対応しきれなかったサムライソードの胸元へとノコ鉈の攻撃が届き、その肉を暴力的に引きちぎる。
ノコ鉈は切れ味が良い刀ではない。ただ、獣の強靭な肉体を削り、叩ききるためのものである。そのため、ガリガリと肉を削られるその苦痛は筆舌に尽くしがたい。現に、サムライソードの苦痛に歪んだ表情を見れば、それがわかるだろう。
「……クソが。奇妙な武器使いやがって」
「相手を殺せるなら私はどんなものだろうと使う。それが狩人というものだろう」
もっとも、面白くなければよい武器足りえないがな。と心の中でつぶやくと同時に、武器をもう
一度変形しなおす。
サムライソードは、両手についた刀を巧みに操り狩人に対して攻撃を繰り出し続ける。狩人は、バックステップで回避を続けるが、背後が壁であり、完全に追い詰められた形になってしまったことに気づく。
胴体を両断せんと向かってくる刀に対して、回避を図る狩人だが、今度はよけきれずに胸に大きな裂傷を食らい、吹き飛ぶ。明らかな致命傷。しかし、狩人は即座に輸血液を自身の右足に突き刺し、みるみるうちに傷口がふさがっていく。
「テメェもバケモンかよ」
「貴公にだけは言われたくないな」
こちらは特殊な医療を受けただけの人間だ。一緒にしないでほしい。
狩人は、夜空の瞳で牽制しながら、サムライソードに対して自分の最も得意な間合いへと持っていく。サムライソードは突きや頭の刀を使う攻撃などパターンを増やしてくるが、回避に専念してる狩人にその攻撃は当たらない。ただ、何かを狙うかのようにじっと左手の銃を握りしめる。
「ちょこまかと避けてんじゃねぇ!!」
「当てればいいだけだろう」
狩人の煽りに対して、苛立ちを隠せない様子のサムライソードが右手を大きく振りかぶり、自分の体重をすべて乗せた上段切りをしようと襲い掛かってくる。しかし、狩人は今までのように回避をせず、ほぼ、棒立ちに近い姿勢でサムライソードの目の前に立っているだけ。ガードの手段がない狩人に対して、確実に攻撃が当たると勝ちを確信した。その時だった。
パァンッという銃声と共に、片膝をつき、その場にうずくまるような形になったサムライソードの姿がそこにはあった。命を刈り取られる刹那のタイミングで放つ銃弾により、相手の体制を崩す。自らの死をいとわないの獣狩りの末に身に着けた狂気の産物。銃パリィである。
「普段は、ただ内臓を引き抜くのだが……恐らく、デンジと同じタイプの貴公は心臓を抜き取ったほうがよさそうだ」
銃弾によってできたその小さな傷穴。そこに対し、先端をとがらせた手を突っ込み、その心臓を抜き取ろうとした刹那
「ヘビ。丸飲み」
突如として聞こえてきた女の声と同時に現れた大蛇によって、側面から豚に引かれたような衝撃を受ける。そして、次に飛び込んできた光景は、大蛇によって加えられた胴体と、サムライソードの前で残った自身の下半身だった。
「帰れ」
女の呼べかけとともに、狩人の上半身を加えていた大蛇は姿を消し、支えるものがなくなった狩人の上半身は重力の影響を食らい、地面にぼとりと落ちたのを最後に死亡した。
狩人vsサムライソード(横槍が入らないとは言ってない)
狩人君がなんでいきなりサムライソードって呼び始めたかなんですが、テレビとかをたくさん見てるのでそれで現代知識を得たと思っておいてください。後、原作でもサムライソードって名乗ったわけじゃないのにそう明記されてたので。
個人的に、フロムの主人公たちは最強とかなんじゃなくて何度殺しても追いかけてくる最恐の方だと思ってるからトライアンドエラーの方で行きたい。(アーマドコアシリーズは除く)