ToLOVEる─ラショナリズム─   作:げるみん

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私はこの作品を何回も読み直しているため、既に何が面白いのかよくわかっていません。感想やここ好き機能で教えていただけると阿れるのでありがたいです。


9:塑性

今日のぼくは、モモさん、ナナさん、ヤミ、芽亜とともにリト先輩の尾行をしていた。

 

以前モモさんから、現在の芽亜はなぜかぼくを攻撃するつもりはないらしいということを聞いていたが、だからといって警戒はせざるを得ないしどうしても不安は残るが……芽亜の心を救うためには人との交流が必要だと考えているヤミのためにも、表面的でも親しげにしておく必要がある。

 

ヤミのその理屈が正しいかはぼくには判断できないが、同じ闇の世界を知っていて、姉妹でもある彼女がそう言うのだからそうなのだろう。……こんなことはヤミには言えないが、セストラル*1が見える人間とそうでない人間では、やはり理解しきれない部分があるはずだからだ。

 

それに、例の黒幕……ネメシスについての情報が名前しかない現状、ぼくの安全を確保する方法の一つとして、芽亜をネメシスから寝返らせ、ヤミのように闇から抜け出させる作戦を試すくらいしかできることがないからだ。

 

それで……リト先輩と一緒にいる特徴的な薄緑の髪を持つ女の子は誰だろうか。……なんにせよこの場にぼくが呼ばれたのだ。〈楽園(ハーレム)計画〉の標的の一人なのだろう。

 

「そうだ、環さん。お姉さまから預かってきた改造〈反重力ウイング〉です。もっと自由に機能を追加したかったって文句言われていましたよ」

「ありがとうございます。もう少しマシな提案してくれたらそうしますと伝えておいてください」

 

つまり、お箸が出てくる機能とエネルギー砲の機構が同じ熱量で提案されるのは意味が分からなかったのでもう少し吟味してから提案して欲しい。ということだ。

 

リト先輩たちがファミレスに入ったのを確認したため後から少し離れた席に座り、様子を見る。

 

「そろそろ聞いていいですか?リト先輩と一緒にいるあの人は誰ですか?……もしかしてまた新しい宇宙人ですか?」

「えっ、環お前、誰か知らねーのについてきたのか?」

「そういえば紹介していませんでしたね。彼女はルン=レン・エルシ・ジュエリア、メタモル星のプリンセスでありプリンスです。メタモル成人は周期的に人格が入れ替わる特質があって、それに合わせて体格や髪の長さまで全くの別人になるんです」

 

予想は正しかったが、王族である上に両性具有だとは……

 

「あまり驚いていませんね?」

「まあ、数週間前ならまだしもいまさら宇宙人とその特異な生態に驚きはしませんよ」

 

半分男性で〈楽園〉メンバーが務まるのかという疑問はあるが……

 

「え……あ、もしかしてお前、RUNを知らねーのか!」

「?はい」

「えー!環くん、意外と常識ない?すっごい人気のアイドルだよ?」

 

ははあ、なるほど。有名人が宇宙人であり半分男性のアイドルというダブルパンチで驚かせようとしたのか。ぼくがあまりテレビを観ないせいで意図を潰してしまったのは申し訳ない。

 

そうして会話をしながら様子をうかがっていると、リト先輩たちはお嬢様風の女の人に絡まれていた。気まずそうに少し会話したあと立ち上がろうとしたリト先輩が、突然お嬢様の傍付きの女性に抱き着き胸を触るセクハラをしていた。

 

「なぜ君はいつもいつもーっ!!」

 

ものすごい剣幕で怒るその女性から逃げるように、リト先輩とジュエリアさんはファミレスを出ていったのでぼくたちもそれについていく。

 

「リトのやつ、どうしてなんもないところでコケるんだ……」

「きっとそういう運命なのよ。私たちも行きましょ」

「環くんもああだったらいいのになーっ」

 

これを恣意的に行っているのでなければハンロンの剃刀的に考えて、リト先輩は愚かであるということになってしまう。

被害者女性が何回も同じようなことが起きていることを指摘していたが、そんなに都合悪く丁度セクハラになるタイミングでアクシデントが繰り返されるものだろうか。それが愚かさという一本の柱で説明できるだろうか。……やはりどうしてもリト先輩がわざと行っているという可能性が高いように思える。モモさんならこの現象についていくつか予想を立てていそうだったが、運命としか言わなかった以上なにも思いつくことができなかったのだろうか。

 

追跡を続け、歩道橋の上で会話しているのを見つけた。夕日に照らされしっとりとしたいいムードを感じる。近くの茂みに隠れ様子を伺っていると、ジュエリアさんがくしゃみをしたのと同時に煙とともに見た目が男性のように変化した。……髪は青く、背もいくらか高くなったように見える。

あたふたとひと悶着あったのちに彼はコショウを取り出し、もう一度くしゃみをすることで女性の姿に戻った。

 

「すごーい!ホントにくしゃみで男の子にかわるんだあ!」

「いいムードが一瞬にして台無しになりましたね……」

「……モモさん、あの感じじゃあ()の〈楽園〉入りは難しそうじゃないですか?」

 

いいタイミングだと思い、あの人の紹介をされたときから思っていたことを聞いてみる。

 

「それは……私も悩んでいるんです。お姉さまのメカで分離を試す案はあるんですけど、安全ではないですし……彼女は明確にリトさんに好意を抱いている一人なのでなんとか解決したいのですけれど……」

「……環」

 

ヤミがぼくの袖を掴み、さっきから読んでいた本のあるページを指さす。

 

『メタモル成人は第三次性徴により雌雄分離が起こって成人となる』

 

「解決じゃないですか」

「解決ですね……」

「あ、モモちゃん二人が行っちゃったよ?」

「いけない……追いかけましょう!」

 

そういって追跡を再開したものの、すでに結構移動されていたようでリト先輩たちを見失っていた。

手分けして探すことになり、ぼくとヤミで並んで空を飛んで捜索していた。

 

「あとでその本貸してください」

「いいですよ。……あ、環。あれじゃないですか?……なぜかルン=レン・エルシ・ジュエリアが倒れていますけど」

「……尾行とかしている場合じゃないかもしれないですね。助けに行きましょう」

 

速度を落としながら降下し近づいていく。

 

「リト先輩大丈夫そうですか?」

「あれ、環。どうしてここに……って、それより!ルンの具合が急に悪くなって……」

 

指さす先を見るとジュエリアさんが苦しみに喘ぎながら微光していた。

 

「えっ!なんで光って!」

 

……なんてタイムリーなんだ。これはおそらくついさっき学んだメタモル星人の三次性徴の兆しだ。分裂してもう一つの肉体を作るために必要なエネルギー……すなわち質量を生み出すほどの超エネルギーを周囲の物体から吸収し、その余剰分により発光と、小規模の爆発が起こる……!

 

「リト先輩、離れましょう」

「はっ?ルンが苦しんでるんだぞ!?」

 

問答している暇はなかった。ここにいては爆発に巻き込まれてしまう。爆風により近くの小石が散弾のように吹き飛ぶ二次被害を少しでも軽減するために、効果があるかはわからないがぼくが着ている上着でジュエリアさんの体を覆い、リト先輩の脇を抱えて遮蔽となる植え込みに隠れる。

 

「あら、環さん」

「え」

 

どうやらモモさんが潜んでいたところだったようだ。

 

「ちょ……離せッ環!」

「あっ!」

 

モモさんに少し驚いたせいで拘束が緩み、リト先輩がジュエリアさんの方へ走りだしてしまった。

 

「二人はここに隠れておいてください」

 

どうして少しくらいぼくの話を聞いてみようという気にならないのだろうか。……そろそろケガの危険がある距離に差し掛かるところだった。ジュエリアさんの体が一段と強く閃光し、もう時間がないことを主張する。

 

「くそっ!」

 

〈反重力ウイング〉を展開したままリト先輩の前に飛び降り、翼を前に突き出し、ララさんの改造により強度が増したそれを盾のように構える。

 

ドカンと強烈な爆発音が鳴り、近所迷惑だな。と一瞬考えたのちに砂利が礫となって飛んでくる。頭を重点的に保護していたため疎かになっていた足元に小石がぶつかり物凄く痛い。泣き所だった。

 

「はあ……はあ……メタモル星人は分裂時に爆発が起きるんですよ……ぼくもついさっき知りましたが、あなたは友人なんですから、相手の事情くらい調べたらどうですか……」

「環……」

 

ぼくの指摘にリト先輩が閉口している間にヤミとモモさんが近づいてくる。爆発なんて目印があったのだから、芽亜とナナさんもすぐ来ることだろう。

 

「晴れて成人ですね。ルン・エルシ・ジュエリア、今夜は赤飯ですね」

 

……そうか。つまり向こうで女物の服を着て吠えている青髪の彼がレン・エルシ・ジュエリアということだろう。

 

「やったー!リトくん私、とうとうオトナになったよっ♡……あ、君も、リトくんを守ってくれてありがとうね!」

「どういたしまして。久慈環です。リト先輩に抱き着く前に服を着たほうがいいと思いますよ」

 

レンさんの方が服を着ているのだから、ルンさんの方は当然裸だった。なぜか芽亜とナナさんが古手川先輩を連れてきたため、ハレンチだと騒ぎ始めてただでさえ混沌としていた状況がさらに難しいことになってしまった。

ぼくは足が痛いので一刻も早く帰りたかった。

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

次の日の保健室で御門先生に足のケガを診てもらっていると、保健室に預けているセリーヌさんの様子を見にやってきたモモさんとリト先輩と鉢合い雑談が始まった。

 

「それでお姉さまが作った胸を大きくする機械で、ナナのは大きくなったんですけど、逆に私のがなくなってしまって……」

「へーえ、なかなか面白いもの作るわねェララさんは」

 

人体の大きさはメカでどうにかなるようなことじゃないと思うが、現にそうなっているのだからぼくはなにも文句は言えなかった。……ところでこういうときいつもどうでもよさそうにしているヤミが、やけに興味深そうにしているのは気のせいだろうか。

 

「ていうか、環のその足のケガ……俺のせいだよな……話を聞かずに飛び出してゴメン。守ってくれてありがとう」

「どういたしまして。先輩も読んでみたらどうですか?『宇宙の珍種図鑑』」

「いやあ……俺、本ってどうしてもニガテで……」

 

断られてしまった。つい昨日あんなことがあったのだから、宇宙人との関わりが深い先輩は読んでおくべきだと思うのだが……

 

「あ!環くん!それにモモちゃんとリト先輩、ここにいたんだぁ。ねーナナちゃんしらない?」

「ナナならノート買いに購買部に行きましたよ」

「そっか、ありがとっ。……あなたがドクター・ミカドね、素敵♡」

 

それだけ言っていなくなってしまった。……なんだろう、彼女は意味深なことを言って人を困らせるのが好きなのだろうか。

 

「彼女が例の黒咲芽亜。自称ヤミちゃんの妹ね……」

「はい。彼女についてなにかわかりました?」

 

そうだ、そういえば御門先生に調査を依頼していたのだった。

 

「いいえ。私もそれなりのネットワークは持っているつもりなんだけどね。ヤミちゃんの元いた組織が何年も前に壊滅しているせいで調べようにもとっかかりがなくて……ティアーユさえ見つかればね……」

「えっと……誰です?」

「……ティアーユ・ルナティーク。私の、遺伝子のベースになった人であり、開発者でもある宇宙生物工学の権威ですね。たしかに彼女ならなにか知っているかもしれません……生きているなら」

 

開発元の後暗い組織が壊滅しているなら、皆殺しだろう。御門先生も行方不明だというような論調だし、死亡説が濃厚なはずだからそれに縋ることは難しかった。

自分の飛行船に同じ名前を付けるくらいの人物なのだ。大事な人だったのだろう。しんみりした空気になってしまったのでその場は解散することとなった。

 

その日の夜、だんだん慣れてきたヤミとの添い寝をしていると、彼女がぽつりぽつりと語りだす。

 

「ティアーユは……私が試験管で生まれた私に、母のように、姉のようにたくさんの事を教えてくれた人です。……ですが、真っ当な研究機関を装っていた彼らの狙いは私を最強の〈変形兵器(トランスウエポン)〉として仕立て上げることでした。だから、私を人として育てようとするティアーユが邪魔になり……施設を追放されたか……殺されたか……その後は知っての通りです。組織は壊滅し、私は一人で殺し屋として生活するようになりました」

「……そう、でしたか。素敵な人で、大切な人だったんですね」

 

……ヤミに伝えたら望みの薄い希望だけ与えることになり後から再び絶望することになる可能性の方が高い、希望的観測を含むまともな根拠がほとんどない理屈にはなるが、もしかしたら彼女は生きているかもしれない。御門先生は全く可能性がないことを口に出すタイプではないと思うのだ。あの人から“ティアーユ”という言葉が出た時点で、先生は生きている可能性はじゅうぶんにあると考えているはずだったからだ。

 

「ええ……」

 

ヤミはしっとりとした目でぼくをじっと見つめてくる。

 

「た、環……今日だけは、抱きしめながら寝てもいいですか……?」

 

つい最近スキンシップを避けることを決めたはずだったが、こんな話を聞かされた後にそんなお願いをされてしまって、断れるはずがなかった。いまの彼女には人のぬくもりが必要だ。ちょうどぼくが彼女にそうしてもらったように……

 

無言で彼女を抱き寄せ、小さな頭をぼくの胸に引き寄せる。

彼女は上目遣いでぼくを見た後安心したように微笑み目を閉じる。早くなってしまっている心臓の鼓動が聞こえているかもしれないと思うと恥ずかしかったが、彼女が安心して眠れることに比べればどうでもいいことだった。

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

「なぁ久慈、知ってるか?新しい生物の先生、めちゃくちゃ美人らしいぞ!」

 

なぜぼくは平穏な朝の時間を立花くんに妨害されているのだろうか。ぼくなんかより仲がよくて反応もいい相手は腐るほどいるだろうに、よりにもよってなぜぼくなんだ。

先週の一件から、すでにぼくは彼の話を聞くことよりも『あめんぼの歌』の替え歌を考えるほうがまだ価値を見出せると思ってしまっている。

そんなことを考えて聞き流していたが、聞き捨てならないこともあった。

 

「確か名前は……ティアーユ先生とか言ったような。外人なんかな?」

「それを早く言ってくれ」

 

これは完全にぼくが間違えていた。まだ彼の話を聞くことが重要と言うことはできないが、もうすこしまともに対応してもいいかもしれない。

ぼくは席を立ちあがり、ヤミの方へ向かう。

 

「ティアーユ・ルナティークさんが先生として来ているらしいです。きっと御門先生が連れてきたのでしょうが、会いにいきませんか?」

「そう、ですか……」

 

それだけ言って本に視線を戻すが、目が滑っている。どうやらまだ心の準備ができてないらしい。

 

「そうだよね。昨日今日で突然こんなことになって、気持ちが追いつきませんよね。……ですが、ぼくはやはり一度会って話してみるべきだと思いますよ」

 

同じ学校にいるのだからいつかは必ずしなければならないことだし、こういうことは時期が遅くなるほどやりにくくなるはずだったからだ。

 

「……環が立ち会ってくれるなら」

「それじゃあ、昼休みにでも訪ねに行きますか」

 

と、そわそわしながら妙に頭に入ってこない授業を受け、ついに約束の時間が来た。

ぼくは職員室の扉を三回ノックし、ルナティーク先生を呼ぶ。

 

「一年B組の久慈環です。ルナティーク先生はいますでしょうか」

「あ、はい。ここです」

 

奥の方の席から返事が返ってきたのでそこまで向かう。

……この人がヤミの親……たしかに血の繋がりを感じさせる美貌と綺麗な長い金髪だった。

 

「突然すいません。会わせたい人がいるのでついてきてもらっていいですか?」

「え?構いませんけど、その会わせたいという人は……だ、だれですか?」

 

わかりやすく動揺して視線がキョロキョロしている。きっと彼女もぼくが言っている人が誰なのか薄々気づいているのだろう。

 

「会ってみればわかりますよ」

 

ルナティーク先生を連れて職員室を出ると、ヤミがスタンバイしていた。本当はもう少し風情のある場所で会わせたかったが、ぼくから遠く離れられない以上これが限界だった。

 

「……イヴ……」

「ここで話すのもなんですから、場所を移しましょうか」

 

そう言って歩き始めるが、ヤミは常にルナティーク先生との間にぼくがいるようなポジションを保っている。

 

「その……久しぶり。元気そうでよかったわ、イヴ……」

「いまの私は〈金色の闇〉であり〈ヤミちゃん〉です。昔とは違います」

「……そうね」

 

しばらく無言のまま歩き続け、中庭のベンチに腰掛ける。ぼくは二人に自動販売機から買ってきた飲みものを手渡した。

 

「ブラックで大丈夫でしたか?」

「ええ……ありがとうございます。お金は……」

「結構です。代わりにヤミと話してください」

 

ルナティーク先生は缶コーヒーを飲んで一呼吸置いた後口を開く。

 

「……やっぱり怒っているわよね。あなたを……置き去りにしてしまったこと」

 

ヤミは顔を背けたまま無言でいるので、ルナティーク先生が続ける。

 

「言い訳に聞こえるかもしれないけれど、あのとき、組織から始末されそうになって、あなたを連れて逃げようと思ったの……でも、彼らにはそんなことお見通しで、生き残るだけで精一杯で……」

 

いまにも倒れそうなほど辛そうな顔をして続ける。

 

「素性を隠しながら星々を転々としているうちに組織が壊滅したことを知って、それであなたを探し始めたけれど、見つけることはできなかった」

 

震えた声になり、呼吸が多くなる。

 

「……裏の世界で恐れられる“金色の闇”を知ったのは数年後。すぐにあなただとわかったけれど……信じたく、なかった」

 

涙が溢れ、嗚咽が混じり始める。

 

「や、優しく明るかったあなたが……どれだけ絶望したらその生き方にたどり着くのか……ごめんね…………ごめんなさい」

 

メガネを外して手で涙を拭っていたので、ぼくのハンカチを貸してあげた。

 

「……そんなこと、どうだっていいんです。あなたに謝られても私の生き方はやり直せないし、“金色の闇”としての自分を否定するつもりはありません。……おかげで、環にも会えたわけですし……」

 

なかなか嬉しいことを言ってくれる。ぼくがしみじみと喜びを噛み締めているとヤミが立ち上がり、ぼくの腕を引いて立ち去ろうとする。

 

「あ……ま、待って!」

「いま私が思うことは一つだけ……あなたが生きていてよかった。それだけだよ、ティア」

 

最後に照れくさそうにそう伝え、ぼくを抱えてその場を高速移動で離れてしまった。……まだぼくのハンカチを返して貰っていないんだけど。

 

その後、モモさんが先生から芽亜とネメシスについて訊ねてくれたらしく、それについてのSNSが届いていた。

 

─────────────────────────────

 

MoMo:

もともとの組織の最終目標は「変形兵器の量産」だったらしく、メアさんがヤミさんの後継機だということも確実とのことでした。そしてネメシスについてですが、ヤミさんやメアさんを作る“プロジェクト・イヴ”と並行して進められた全く別の変形兵器開発計画である“プロジェクト・ネメシス”というものがあったらしいです。……開発に失敗して計画が凍結されたらしいですが。あと、組織の元研究者ということで命を狙われる可能性を考えてティアーユ先生に護身用の植物の種を渡しておきました。

 

久慈環:

なるほど……後継機という言い方は人格が感じられなくて具合が悪いですね。

 

MoMo:

この量の情報に対してする反応がよりによってそこなんですか……

 

久慈環:

いやあ……特に言うべき反応が思いつかなかったので……

 

MoMo:

確かに事前に予想できた範囲ではありますけど……

 

MoMo:

ついさっきメアさんに襲われて種が使われました。助けに行って、本人の口からメアさんについての追加の情報が得られたので共有します。

 

MoMo:

メアさんの最初の記憶は、壊滅した研究所と壊れたカプセルのあるところから始まったらしいです。なにもかもわからないなか瓦礫の中を歩いていたところでネメシスに出会い、そこで変形兵器としての在り方、能力の使い方、ヤミさんのことなどを教わり導かれてきた。そして、兵器であるメアさんとヤミさんのことを真に理解して導いてくれるのはネメシスだけだから、そう生きるべきだと考えているらしいです。

 

久慈環:

うーん、思ったよりネメシスに心酔していそうですね。これだと寝返らせることが難しそうです。

 

久慈環:

あと、それなら前に伝えられた、芽亜がいまはぼくを害する気はないという話はメアの独断で、彼女を懐柔できかけている証拠と思っていましたが、ネメシスの戦略の可能性が高そうですね。

 

MoMo:

それは私も思いました。相手の最終目標はヤミさんを闇落ちさせることなはずで、そのために強い絶望を味合わせる……考えられる最悪のパターンとしてヤミさんと限界まで親密にさせた環さんとティアーユ先生を同時に殺すという計画がありえますね。

 

久慈環:

すっごいありそうで困りますね。考えるだけでちょっと体調悪くなってきたかも……

 

MoMo:

強く生きてください

*1
ウィザーディングワールドの魔法生物。人の死に触れたことがある人にだけ見える天馬。ここでは殺人の意味




バージョンを格好つけてヴァージョンとするか悩みます。

あめんぼの歌の替え歌は考えていたのですが、歌詞使用のガイドラインに反するので没になりました。(著作権が切れているので楽曲コードはありません)

メタモル星人の命名規則について
原作では成人後のルンを、ルン・エルシ・ジュエリアとヤミが呼んでいたところから広げて解釈した半オリジナル設定です。
成人前のメタモル星人は現在の人格の名前を前にして別人格の名前をイコールで結んで表し、成人後にそれぞれに別れるという仕組みです。
こういう命名法にすることで、その二人が同一人物であるということが表せる上、成人済みかどうかの判別もできるという高機能の方法なのでかなり合理的な設計になっています。
そもそもメタモル星人が、子供を一人産み、一人分の食料や手間暇を使って二人育てるという超効率生物なので、そういう合理性が染み付いているのかもしれませんね。
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