ToLOVEる─ラショナリズム─   作:げるみん

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ザスティンの戦闘力を盛りまくったため無印でザスティンの攻撃を捌ききったリトの戦闘力が凄いことになりますが、そもそもリトは運動神経がめちゃくちゃ良いし、たぶんそのときのザスティンも手加減してくれていたんだと思います。

ようやく原作キャラたちとの顔合わせが終わったので、ここら辺から独自設定が増えていきます。


5:デビルークじるしのドキドキ近接格闘講座!

芽亜が敵と判明してから数日。ヤミさんとの生活にも慣れてきて、たいやきを布教されたり面白かった本を教えあったりして過ごしているうちに、ついに腕が治った。

 

「ということで、最低限すぐに殺されないための訓練を始めましょう」

「頑張ります。師匠」

 

ぼくは結城邸に来ていた。

……正確にはさらにそこから繋がる、空間歪曲によって拡張された天井裏の中に広がる戦闘訓練用スペースだ。

 

「……師匠は私ではありません。私はそこまで熟達しているわけではないので、デビルークいちの戦士であるザスティンにきてもらいました。よって私は姉弟子ですね」

「お前がモモさまの言っていた久慈環というヤツか……惰弱な地球人のくせに、なにをしたら宇宙人から命を狙われるようなことになるのか……」

「よろしくお願いします。ザスティン師匠」

 

なにやら骸骨を想起させる物々しい鎧と幅の広いマントを羽織ったイケメンが現れた。師匠と呼ぶとピクリと動いて反応したので結構まんざらでもないらしい。

 

「コホン。さて……渡しておいた本は読んだか?」

「はい。腕も折れていて暇だったもので」

 

そう。以前モモさんから武術の入門書を渡され、それを暗記するまで読むように言われたのだ。知識としては吸収したけど身体を動かせなかったので全く身についてはいないが……

 

「よし。それなら基本はもう身についているな。実践としていまから私が攻撃するから、全力で避けろ」

「え」

 

抗議する間もなく振り下ろされた大剣を間一髪で回避する。

 

「安心しろ、刃は潰してあるし手加減もする」

 

どこに安心できる要素があるのだろうか。宇宙人の異常な筋力で振り回されるぼくの身長ほどもある鉄(製かは知らないが)の塊が当たれば大抵の生身の人間は死ぬ!死なないために死にかけるなんて本末転倒だ!

 

「いや!これ!当たったら死ぬから!!」

「大丈夫だ、お前が当たらなければいい」

「理屈が破綻しているぞ!」

「師匠には敬語を使え!!」

 

文句を言っている間にも剣戟の嵐は止まず、死にたくないので全力で回避を続ける。

 

「なかなかやるではないですか。久慈環」

「ヤミさんも呑気にたいやき食べてないで助けて!」

 

褒められることは嬉しいのだが、護衛対象が死にそうだというのに止める気配はない。

 

「安心してください。ザスティン卿は相当の使い手ですので寸止めくらいはできるでしょう」

「怖いものは怖いですよ!」

 

ヤミさんがそう言うならそうなのだろうが、なにも死の危険を覚悟してここに来たわけではなかった。ぼくの想像していた訓練ではなかった。

 

「当たり前だろう!敵と戦うときは常に命懸けだ!訓練に命をかけられなければ本当に危機に晒されたとき恐怖で動けなくなるぞ!!」

「ザスティン卿の言う通りです」

「やってることはむちゃくちゃでも実感のこもった本職二人の意見だから否定できない!!」

 

本当にタチが悪かった。

それにしたって意外と避けれている。読まされた本の知識が自然と湧き出て上手く対応できている気がする……相手の視線を見てどこを狙っているかを予測し、そこをズラすように動き、ときどき入れてくるディレイやフェイントがいやらしいがそれも手首の動きで判別できる。踏み込んで来たら……むしろ前に出ることで間合いを崩し、手首を叩く!!

 

「取ったッ!」

「甘い」

 

瞬間、師匠は剣を手放し……腹に重たい衝撃が飛んでくる。

 

「グオッ!オエッ、ゲホッゲホ!」

「最後、一矢報いようと挑戦したのは良かったがまだ早い。そういうのはとりあえず十分間私の攻撃を完璧に回避ができるようになってからにしろ」

 

いまのはどの程度動けるかの試験だったのだと思うが、あまりに急な開始だったからそこまで頭が回らなかった。……急すぎると非難しても、また実践のことを引き合いに出して怒られるだけなのでなにも言わないが。

 

「ぐっ……はい。師匠」

「三分休んだらもう一回だ……次は徒手でやる」

「分かりました」

 

地面にしゃがみこみモモさんに手渡された水筒から水を飲む。

 

「けっこう動けるじゃないですか。本当にこれが初めてですか?」

「……まぁ、それでもギリギリですが……自分でも意外でしたね。読まされた本がよかったのか自然と体が動いてくれます」

「なかなかいい動きでしたよ。久慈環。あれなら並の殺し屋と一人で戦っても三秒くらいは時間が稼げそうです」

「うーん。求められるレベルが高いな……」

 

本気か冗談かわからない。地球ならプロボクサー級以上の猛攻撃をあんなにうまく避けてたった三秒のはずが……

 

「そうだ!参考までに、ヤミさんとザスティンのスパーを見せてくれませんか?本当の戦闘を見ることは糧になるはずですし!」

「……ふむ。いいでしょうプリンセス・モモ。私も彼とは決着をつけておきたかったところです」

「地球の生活に慣れて鈍っているらしいが……負けても言い訳はなしだぞ」

「ザスティン卿こそ最近は剣よりペンを握っている時間の方が長いと聞きますが……鈍っているのはどちらでしょうね……」

 

因縁があるのか、始まってもいないのにバチバチだ……

……戦いが始まり、ぼくはヤミさんに言ってもらった❝三秒もつ❞すら過大評価な気がしてきた。

ザスティン師匠の腕は視認できない程の速さで動き、ときどき音速を超える音(ソニックブーム)も聞こえる……得物は鞭じゃなくて剣だよな……?

剛剣だというのに快剣のように見えるというのは不思議な光景だった。

 

ヤミさんは髪を操り作った刃や腕で牽制を放ちつつ、手足を様々な武器に変身させて素早い手数で圧倒している。

なにが起きているのかはほとんど理解できないが、これが宇宙レベルの戦力か。さっきぼくとやっていたときは本当に手加減していたんだな……

 

「いちおう言っておきますが、これは宇宙全体で見ても最高峰の戦いですので、環さんが攻撃されるとしても確実にこれ以下の攻撃です。そこまで青ざめなくても大丈夫かと」

「それなら安心……とはならないけど……あんなに強いヤミさんに守られてるっていう安心はありますね……」

「そうですね。……お二人もその辺にしておきましょう。ザスティンが倒れてしまっては訓練の続きができませんから」

 

モモさんがそう言って手を叩くと二人の動きがピタリと止まる。へぇー慣性って無視できるんだ。物理学の教科書に新しい項目を追加するべきだと思うな。

 

「モモさま!まさか私が負けるとお考えですか!?」

「いえ、どちらにしても環さんを守るヤミさんに倒れられても困りますし……」

「それもそうですね、プリンセス・モモ。……卿も決着はお預け、ということで」

「フン。そういうことにしておいてやる……なにボケっと見ているんだ、環。次はお前の番だ、立て」

 

そう言って師匠は巨大な剣を脇に置き、自らの装備を取り外していく。

……不完全燃焼になった鬱憤をぼくで晴らそうとしているようにしか聞こえないが、師匠の言うことなので大人しく聞いておくことにしよう。次は徒手での訓練だった。

師匠がファイティングポーズを取ったのでぼくもそれを真似して構える。

 

「奇しくも同じ構えか……」

「いえ、真似しているだけです」

 

……なぜこの人は地球の漫画のネタを知っているのだろうか。

 

「まあいい。いくぞ!」

 

シュッと音がして耳の横を拳が通る。重たい剣より無手のほうが速くなることに異論はないがあまりにも速すぎる。さっきのヤミさんとの戦いで加減がバカになっているんじゃないだろうか?

五感全てとヤマ勘をフルに使って全力で回避する。すぐに息が絶え絶えになってしまい限界が近づいてくる。

 

「まだいけるはずだ!限界を超えた先にしか成長はないぞ!短期間にある程度強くなるなら、その程度の苦しみには耐えてもらわないと困る!あと五分耐えろ!」

 

汗で垂れてきた髪が目に入りそうで邪魔だし、口の中はカラカラで呼吸がしにくい。視界がチカチカと明滅し、いまにも肺がひっくり返り、脳が爆発して気絶しそうだ。心臓の鼓動は太鼓のように響き、全身が燃え尽きるような熱に包まれる。鼻の下が湿ってくる。腕が、足が千切れそうになる感覚を味わいながらも動き続ける。次第に体の先端部分から感覚がなくなっていき、相手の動きに対して自動で身体が動いているような気すらしてきた。唇にドロリとした液体が触れ、鉄臭い血の味が口内に広がる。

 

「よし!休憩だ。五分休憩後にもう一度やるぞ」

 

師匠の動きが止まり、ぼくはその場でうつ伏せに倒れ伏す。

足首や手足、首元などの関節部周辺に無数の針で刺されたような痛みを感じた後、乾燥した口内を潤そうと嫌に粘ついた唾液が出ることで耐え難い不快感を感じる。息を吐き出そうとした瞬間、わずかな視界の暗転があり気絶しそうになる。呼吸が困難になり全てを投げ出したくなるような、強烈なだるさを感じる。身体の芯から溶岩が溢れてきたかのような、熱く、ベタベタした汗が吹き出し急速に体を冷やしていく。体温が下がるにつれ、爽快感が現れ気分が落ち着いてくる。最後にはジンジンとした頭痛と普段より少し早い程度の心拍を残し全力を出し切ったという証拠が消えていく。

 

「大丈夫ですか久慈環。生きていますか?」

「もちろん……」

「地球人はデビルーク人より弱いのに、すこし追い込みすぎましたかね?」

 

そうか。種族的に肉体強度に差があるのは当然のことだった。

 

「モモさんもあんな激しい訓練を乗り越えたんですか……?」

「いえ、私はもう少し幼かった上に女の子ですし、時間もありましたからね。もっと易しかったですよ……限界そうですし、今日はこの辺にしておきますか。ね?ザスティン」

「ありがとうございます……そうですよね、この訓練強度が普通なわけがない……」

「フン。モモさまのお陰で助かったな。お前は次来るまでにもう少し体力をつけておくことだ……そうだ。あと、これを渡しておこう」

 

まだ膝が震えて立てなかったので、地面に寝そべりながら師匠から悪魔の顔のような模様が入った赤色の丸薬を受け取る。

 

「ありがとうございます師匠……これは?」

「デビルークの戦士が戦いのときに飲む丸薬……〈バーサークDX(デラックス)〉だ。一粒で身体能力が大きく上がるが……数分で効果が切れて強烈な倦怠感に襲われることになる。くれぐれも使いどきを間違えるなよ。上手く使え」

「なるほど、分かりました。ありがとうございます」

「まあ、地球人は元が弱いから大した強化にはならないと思うが、ないよりはましだろう」

 

うちの師匠はかなり一言余計だ。遠回しに将来の王であるはずのリト先輩も罵倒しているので、デビルーク王室は騎士道教育を見直してみてもいいかもしれない。

……とにかく、ここぞというときのバフアイテムだ。ぼくはこういうものを大事にしすぎて死蔵するくせがあるが……

 

「……終わったか?」

 

訓練室の入口からひょっこりと可愛らしい顔が覗いていた。

 

「あら、ナナじゃない。どうしたの?」

「いや、さっきからずっと凄い音してなにやってんのかなって……え!環が死んでるっ!」

「生きてます。倒れているだけです」

「そ、そうか……大丈夫か?なにがあったんだ……」

「いや……そのー……」

 

どう言い訳をするべきか。ぼくの問題にナナさんを巻き込みたくない……命を狙われていることを伏せてボロボロになるまで戦闘訓練を受けていたことの説明をいま考えなくては……

 

「ナナさま。いまこやつに戦闘訓練をつけていたところです……不思議なことに、ただの一般地球人だというのに宇宙人から命を狙われているとか」

 

師匠に言われてしまった。モモさんは察して黙っていてくれていたが……いや、従者として嘘はつけないから仕方がなくはあるが……

 

「は、はぁ!?命狙われてるって、なにしたんだオマエ!」

「……まあ色々あって……いまはヤミさんに護衛としてついてもらっているからそこまで心配しなくても大丈夫だけど」

「そういえば前うちに来たときにそんなこと言ってたな……ほんとに大丈夫かよ?友達が出会って数日で死ぬのは嫌だぞ?アタシになんかできることあるか?」

 

少し考えてみても、特になにも思いつかない。ついさっき〈バーサークDX〉とかいう宇宙的な超アイテムをもらったので、試しにダメ元でそういうものがないか聞いてみようか。

 

「うーん。特には?……外付けでぼくを強化できる宇宙アイテムがもしあったら嬉しいけど、そんな都合のいいもの……」

「あるぞ!」

「あるんだ」

「アタシのペットの一匹に、ちょうどいいヤツがいたはず……でてこい!」

 

ナナさんが携帯電話を取り出しなにやら操作すると、黒くドロリとした粘液質の不定形の怪物が召喚された。バレーボール程の大きさのそれはぼくの口の中に飛び込み体内を侵していった。

 

「ぐ……んっ、えっと……呑み込んじゃったんだけど、これ本当に大丈夫なやつなんですか?ぼくの身体乗っ取られたりしませんか?」

「大丈夫!大人しいヤツだし、そんなことできるほど強くねーから」

「……たぶんそれ、デビルーク基準で強くない。ですよね?」

「……まァそうだけど……もしかしてまずかった?」

「正直に言うと本当に怖いです。いますぐにでも御門先生にかかりたいかな」

 

『そんなつれネーこと言わずに、仲良くやろうゼ』

 

……なっ!?……こ、こいつ……頭の中に直接っ!?

 

「どうかしたか?環」

「さっき呑み込んだ生物が頭の中に語りかけてきた……仲良くしようって言ってる」

 

ナナさんはぼくの言葉に不思議そうな顔をしている。

 

「え……あれ、環も動物と話せるのか?」

「そういうわけじゃないけど……」

『オレはオマエの体内にいるんだから、当然オマエと会話くらいできるダロ』

「理屈はよくわからないけど、とにかく話せるみたいですね」

 

なぜ体内にいると会話ができるのだろうか。この場合、ぼくの脳を侵されていないと考える方が難しいのだが……

 

「あら、なんだか面白いことになってきましたね」

「久慈環。身体を乗っ取られたときはひと思いにやってあげます」

 

『タマキっていうのか。モテモテじゃねーかオマエ』

─まったくそういう関係じゃないけど……金髪の子は本当に強い元伝説の殺し屋だから、ぼくの身体を乗っ取ったりしないでくださいね?

『そりゃ怖ぇーナ。ま、安心しろ、元からそんなことできねーヨ』

─それならいいんだけど……

『本気デ信じテねーダロ』

─心を読むな

 

「寄生した相手を生かすように作用する寄生生物の例がいないわけじゃないし、ある程度高度な知性を持っているようだからいますぐに危険があるように思えないけど、とりあえず医者の意見を訊きに行ってみます」

「えぇ。私もそれがいいと思います。ナナの連れてきた動物ですからね」

「どーいう意味だよ!モモ!」

「どうもこうも、どうせ自分でもどういう生物なのか詳しく理解していないんでしょう?」

 

喧嘩が始まってしまった。このふたりはどうにも反りが合わないらしい。ナナさんは素直で、理由なしに人を悪く言うタイプじゃないし、モモさんだってよく考えて行動している賢い人だから、どちらもそう簡単に喧嘩するような性格じゃない。それに、ぼくも二人にそういうことをして欲しくはなかった。どうしてこうなるのか……こればっかりは二人の問題なのでぼくから言えることはないが……

 

『イヤ……なんでだヨ、仲良くして欲しいって言ってやりゃぁイイじゃネーか』

─ぼくの考えていることを勝手に読まないで欲しいんだけど、とにかく人の問題に口を出すほどぼくの面の皮は厚くない。これは二人の間で解決するべき問題だから。

『いいヤ、言ってやることが絶対二人のためになるネ。オレとしても元ご主人様のナナには、望みを叶えてもらいテーからナ』

─望み?

『ときどきペットの動物たちに愚痴ってんダ。憎たらしいほどカワイー妹ともっと仲良くしたいってナ。ありゃほとんど惚気けだゼ』

─そうなんだ?ぼくの主義に反することだけど、いいだろう。お前とは長い付き合いになりそうだし、機嫌を取るくらいはしてあげよう。

 

……それにしても、ナナは思ったよりモモさんのことを好きらしかった。

 

「ふたりは、どうしてそう喧嘩な仲なんですか?」

 

喧嘩は一時停止してくれたが、二人はキョトンとしてぼくのことを見ている。そんなに変なことを言っただろうか。とりあえず言いたかったことを言っていく。

 

「お互い相手に、ぼくの知らないなにかしらの考えがあると思うんですが、ぼくの視点から言わせてもらうとそんなに相性が悪いようには思えません。ナナさんの純粋で真っ直ぐな部分はモモさんの考えすぎてしまうというある意味悪いくせを補えるように思えるし、モモさんの深い思考力と計画性はナナさんの早とちりと思い込みしやすい性格を補える……どうしても反りが合わない部分もあると思いますが、ぼくは二人がいい人だと知っています。悪いところは話し合いで解消することができるはずだし、それによってリスペクトを持った関係になれると思っているんですが……」

 

とりあえず思っていたことを伝えてみたはいいものの、二人はやはり黙っている。そんなに変だったか?気まずい空気だ。誰かがなにかを言ってくれないとぼくの心が死んでしまうかもしれない……そうなるまで残り十秒…………

 

「そりゃ、アタシだってモモと仲良くしたいとは思ってるケド……いつもこいつが突っかかってくるんだ」

「……それは!あなたが考えなしに行動するからでしょう!?私は助言のつもりで……!」

「助言のつもりぃ?イヤミを交えた助言があるかよ!」

 

また喧嘩が始まりそうな空気になってしまったので咄嗟に話を逸らす。

 

「……どっちが悪いかの議論は置いておいて、モモさんはナナさんともっと仲良くしたいとは思っていないんですか?」

「……それは……まあ、そう思いますけど……」

「じゃあ解決ですね。お互いに歩み寄りたい気持ちがあるなら、お互いの悪い所を指摘するだけじゃなくてどうして欲しいかまで伝えられたらいいと思いますよ。そして、それをちゃんと受け入れられれば」

「……そう、かもしれませんね。ちょっと考えてみます」

 

そして二人は考え込むようにしてまた黙ってしまった。これで関係が改善してくれることを願いつつ、もうぼくにできることはなさそうなので退散することにした。

 

「じゃあぼくはそろそろ帰るから、あとは若いおふたりでよろしくやっておいてください」

 

それに、さっさと帰って御門先生にぼくに寄生しているこいつを調べてもらいたい……

 

「待て」

「……はい師匠」

「まだ私は訓練が終わりと言った覚えはない。ナナさまの厚意で新しい力を手に入れたようだし、それを確かめるためにもまだまだやるぞ」

「…………はい」

 

たしかに師匠の口からそう言ってはいなかったが、モモさんが訓練の終わりの流れにしていたはずだった。しかしその彼女は考え込むと周りの声が聞こえなくなるくせがあるし、師匠が怖すぎて口答えはしようとも思えなかった。

……それにしても、依然死ぬのは嫌だし自衛能力も欲しいが、あの戦いを見たあとだと辛い思いをしてささやかな力を得たところで意味があるようにも思えずどうにもやる気が出ない。師匠はまだまだやる気満々のようで、忙しいであろう方を呼びつけて訓練をつけてもらっているのだからこちらも全力で取り組むのが筋だろう。仕方ない、師匠が満足するまでやるしかない。

 

「……まだかかりそうなので、私は美柑のところに行っていますね」

 

ヤミさんに見捨てられた。

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

その後みっちりしごかれ、この寄生生物はそうとう有用ということがわかった。ただし、その代わりにぼくは指先数センチ程も動かせないほど全力を出し切ってしまったので、ヤミさんに髪で簀巻きにされながら帰宅することになってしまった。次までの宿題も出されたし、どうやらこれを隔週でやるらしい。ありがたいけど嬉しくない。とりあえず、今日はもう寝よう。




ザスティンが強くなった結果宇宙全体の戦闘能力も上がり、環くんの求める戦闘能力も上がったのでドーピング(寄生)で無理やり強くなってもらいます。さもなければアゼンダに瞬殺されてバッドエンドです。

バーサークDXについて
無印本編ではこれを呑んだペンギンが空を飛んでいました。そうするためには筋力が二十倍程度増加する必要があるらしいので、全か無かの法則を完全に無視していますが本作のバーサークDXの効果は「筋肉の出力が二十倍になり、反射神経と瞬発力が高まり、性格が凶暴になる」でお願いします。
ただしこれはAIに聞いた結果なので嘘の可能性があるため、もしペンギン物理学(これは誤用。正しくは❝バイオロギングの明らかにした野生動物のダイナミックな動きを紹介し、その背景にあるメカニズムや進化的な意義を明らかにすること❞です)に詳しい人がいたら正しい情報を教えていただけると嬉しいです。

会話について
環くんにしか聞こえていない声(寄生生命体の言葉や芽亜の疑似テレパシー)は 『』
それに対する環くんの心の中の返事は ─
をそれぞれつけています。
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