ダンジョンマスターになりました   作:饅頭怖い

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騎士団の調査

 迷宮都市の最低限の都市機能が完成し、騎士団のダンジョン調査が決定した。

 

 騎士団が持ち帰るダンジョンの富を目当てに、様々な人々で都市は賑わっている。

 

 騎士団の動きに呼応するように、迷宮都市の空気が変わる。

 

 ギルドは依頼掲示板を更新し、

 商人は“騎士団向け装備”を並べ始め、

 貴族は“騎士団との接触”を図る。

 

 迷宮都市の表も裏も関係なく、ダンジョンの富を狙う全ての人々が騎士団の調査に注目していた。

 

 この調査の結果で迷宮都市の未来は決まる。

 

 調査メンバーに選ばれたのは近衛騎士団員マイク。そして、マイクが率いる上級騎士が6名の7名編成だ。

 

 マイクはBランク冒険者に匹敵する実力者だ。その他のメンバーもCランク冒険者の上位に位置するだろう。

 

 しかし、Cランク冒険者が半壊し13名死亡、国内最強のCランク冒険者パーティー『絶剣』が全滅したことを考えると、比較的安全が保障されている左ルートでも油断は出来ない。

 

 ダンジョンでは何が起こっても不思議ではないのだ。

 

 隊長を務めるマイクはあらゆる状況を予測し、過剰なほどに物資を揃えた。

 

 全ての準備が完了し、ダンジョン入口へと集まった騎士団一行。

 

 全員が揃うとマイクは号令を発した。

 

 

「諸君!我々が進むのは多くの精鋭が消息を絶った魔窟である。Dランク冒険者が生きて帰ってきたことは忘れろ!我らが挑むは地獄である。……では行くぞ!」

 

 

 マイクの号令に応じ、精鋭騎士団がダンジョン左ルートの調査を開始した。

 

 多くの人々に見られながら。

 

 

 黒犬団は、騎士団の動きを監視していた。

 

 

「……騎士団が動いたか。シャナ様に報告だ」

 

 

 裏路地の影に潜む構成員が、静かに姿を消す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ダンジョンに潜ったマイクは騎士団員に外では出来なかった話をする。

 

 

「諸君。我々の任務はDランク冒険者たちの証言を基に作成された資料の正確性の確認。そして、可能であれば富を回収することである。しかし、度重なるトラブルにより迷宮都市の利益は未だ0。このままでは北部戦線に影響が出る。ゆえに必ず富は持ち帰る。これは秘密裏に下された王命である。繰り返す、これは王命である。分かるな?」

 

「「「御意」」」

 

「よろしい。ダンジョン左ルートを踏破し、富を確保する。急ぐぞ!」

 

「「「ハッ!」」」

 

 

 マイク率いる騎士団員は休憩部屋まで駆け抜けた。

 

 

「敵影なし!」

 

「罠反応なし!」

 

「作成された地理と一致します!」

 

「よし。では予定通り左ルートに向う。二人はここで待機。右ルートの監視と退路の確保を命じる」

 

「「了解」」

 

 

 そのまま左ルートを進み、開けた空間が見える場所まで進む。

 

「敵あり。スライム3、不明1。人型のスライムに見えます!」

 

「罠あり。通路の床に反応あり。推定【落とし穴】です!」

 

「地理一致。罠一致。敵不一致。資料ではスライム7、マタンゴ3となっています!」

 

「了解。ここから魔法で狙撃する。火魔法用意……打て!」

 

「「「【ファイア・ランス】」」」

 

 

 マイクの号令により3人の騎士が”火槍”を放つ。

 

 

「着弾確認。効果あり。敵消滅!」

 

「よし。罠を避けて前進」

 

「「「了解」」」

 

 

 スライムがいた部屋を探索し、資料の正確性を確認した騎士団は次の部屋に向う。

 

 そこで前を進んでいた騎士が違和感に気が付く。

 

 

「報告。甘い香りあり。正体不明。指示を求む」

 

「待機。罠の探知を実行」

 

「了解。……罠反応なし」

 

「了解。身体に異常は?」

 

「報告。身体が暑いです。魅了系統のスキルの疑いあり!」

 

 

 マイクは眉をひそめた。  

 

 

「魔力感知担当、前へ。香りの発生源を探れ」

 

「了解!」

 

 

 【魔力感知】を得意とする騎士が前に出て、魔力の流れと揺らぎを探る。

 

 

「報告。前方の部屋から微弱な魔力波。複数体の魔物が存在。魅了属性を含む可能性あり」

 

「資料ではゴブリン10体のはずだ。……また魔物が変わっている?」

 

 

 マイクは資料を確認しながら呟く。

 

 

「魔物の入れ替え、罠の変化、香りによる精神干渉……。これは“ダンジョンが進化している”可能性がる」

 

 

 騎士たちがざわめいた。

 

 

「よし、ここは慎重に行く。幻覚・魅了耐性を展開。前衛は守りを固めろ」

 

「「「了解!」」」

 

 

 騎士団は即座に陣形を変更し、【魔力障壁】による精神耐性を展開した。

 

 

「敵の姿を確認次第、魔法で牽制。接近戦は避けろ。……行くぞ!」

 

 

 部屋の奥には、

 

 マタンゴが3体、人型の魔物が1体、ゆらりと立っていた。

 

 その姿は――美しい。頭に花を咲かせた少女は蠱惑的に微笑む。

 

 だが、騎士たちはすぐに異常に気づく。

 

 

「報告。高出力の魔力波確認。魅了属性、確定。精神干渉系です」

 

「距離を取れ! 魔法班、牽制!」

 

 

 ”火槍”が放たれ、魔物たちに着弾する。

 

 だが――

 

 

「報告。マタンゴ消滅。人型、再生中。効果なし!」

 

「くっ……! これはCランク以上の個体か!」

 

 

 マイクは即座に計算する。敵はCランクが一体。Bランク冒険者ーー英雄級の人間と同じ戦力。通常なら撤退するべきだが……資料では次の部屋が富が見付かった部屋。敵はワイトが3体。情報の信頼性は低いが……王命が天秤を傾ける。

 

 

「二人残って時間を稼げ。私を含めた三人で次の部屋を確認。その後撤退する」

 

「「了解」」

 

「駆け抜けるぞ!」

 

「「了解」」

 

 

 花の少女を避けて次の部屋に行く。時間稼ぎとはいえ、二人で相手をするのは無理だ。最速で目標を達成する。

 

 

「罠の探知だけ行え!罠以外は気合でなんとかしろ」

 

「「了解」」

 

 

 ダンジョンを駆け抜けると直ぐに次の部屋に辿り着いた。

 

 部屋の中に敵はいない。部屋の中央に宝箱が三つあり、真ん中の宝箱が金色に光り輝いている。

 

 

「敵なし。罠なし。宝箱3あり!」

 

「罠一致、敵不一致、宝箱不一致。敵はワイト3、宝箱は1となっています!」

 

「ここも変化しているのか。だが宝箱が増えているのは良い誤算だ。急ぎ回収しろ!」

 

「「了解」」

 

 

 今回の王命遂行には国宝のマジックバッグが下賜されている。

 

 金色の宝箱からは大量の魔石、貴金属、宝石が出てきた。マジックバッグが無ければ持ち帰るのは不可能だったな。

 

 三人で手早く財宝を収納する。

 

 

「回収完了。急ぎ二人と合流し、ダンジョンを脱出するぞ!」

 

 

 三人は宝箱を回収し、来た道を戻る。

 

 だが――

 

 通路の先から、異様な静寂が流れてきた。

 

 

「……おかしい。音がしない」

 

 

 マイクは手で制止の合図を出し、耳を澄ませる。

 

 先ほどまで戦闘音が聞こえていたはずの場所が、

 

 痛いほどの静寂に包まれている。

 

 

「急ぐぞ!」

 

 

 三人は駆け出し、仲間二人が残った部屋へと飛び込む。

 

 部屋の中央に花の少女が座っている。

 

 二人の騎士もいた。一人は少女にうつ伏せで膝枕をされ、ツタで肩や背中を揉まれている。

 

 もう一人は隣で正座し、“順番待ち”のように羨ましそうな目でその光景を見つめていた。

 

 

 ……何をしているんだコイツらは。

 

 

 マイクは思わず目をこすった。

 

 だが、視界は変わらない。

 

 マイクに付いてきていた二人の騎士も絶句している。

 

 

 ……どうやら私の見間違いではないみたいだな。幻覚か?

 

 

 マイクは【魔力感知】を行う。

 

 

「……幻覚反応なし。精神干渉もなし。これは……“素でやっている”のか?」

 

 

 理解が追いつかない。

 

 膝枕されている騎士が、うっとりした声で呟いた。

 

 

「隊長……この魔物、すごく優しいんです……肩こりが……消えていきます……」

 

 

 隣の騎士も続く。

 

 

「隊長、これは敵意ゼロです!むしろ……癒し系です! 安全です!」

 

 

 マイクは頭を抱えた。

 

 

「バカか貴様らは! 敵意ゼロどころか、“お前たちの警戒心がゼロ”になっているんだ!」

 

 

 花の少女は、にこりと微笑んだ。

 

 その瞬間、甘い香りがふわりと広がる。

 

 

「っ……! 全員、息を止めろ! 【魔法障壁】を強化!」

 

 

 マイクの怒号で、後ろの二人が慌てて障壁を展開する。

 

 花の少女は、まるで子供のように首を傾げた。

 

 その顔は柔らかく、優しく、しかし底知れない“何か”を含んでいた。

 

 マイクは直感した。

 

 ――これは戦ってはいけない。

 ――殺されるタイプではない。

 ――“絡まれたら終わる”タイプだ。

 

 

「二人とも、立て! 撤退するぞ!」

 

「えっ、でも隊長……もう少しだけ……」

 

「立てと言っている!!」

 

 

 マイクが怒鳴ると、花の少女のツタがしゅるりと伸び、膝枕されていた騎士の頭を優しく撫でた。

 

 花開くような笑顔で騎士に微笑む。

 

 その瞬間、騎士の顔が真っ赤になった。

 

 

「……っ、行くぞ!!」

 

 

 マイクは二人の襟首を掴んで強引に引きずり、全員で全力撤退を開始した。

 

 最初の部屋で退路を確保していた二人とも合流し、全速力で外に出る。

 

 地上に飛び出した瞬間、騎士団はその場に倒れ込んだ。

 

 マイクは荒い呼吸を整えながら呟く。

 

 

「……ダンジョンは進化している。魔物の入れ替え、宝箱の増加……“意味不明な行動”。」

 

 

 部下の一人が震える声で言う。

 

 

「隊長……あれは……敵なんですか?」

 

 

 マイクは答えられなかった。

 

 

「……分からん。だが一つだけ確かなことがある」

 

 

 マイクは空を見上げ、深く息を吐いた。

 

 

「――あれは、騎士団の想定外だ」

 

 

 騎士団の帰還を察知して群がってくる群衆を見てマイクは気を引き締めた。

 

 魑魅魍魎の貴族をやり過ごし、陛下に国宝を返還するまでがマイクの使命であった。

 

 

 

 

 

 

 ダンジョンのコア部屋で、俺は報告を受けていた。

 

 

「騎士団が動いたか。……予定通りだな」

 

 

 俺はDP収支表を確認しながら、ダンジョンの改造計画を再確認する。

 

 

「この一年で、どれだけ“資源”を吸えるかが勝負だ。騎士団も、冒険者も、貴族も――俺の掌の上で踊ってもらう」

 

 

 パソコンの緊急アラームが鳴り響く。その音を聞いて俺は笑った。

 

 パソコンで侵入者の様子を見る。侵入者は統一された鎧を着た騎士だ。一人だけ豪華な鎧を着ている。指揮官だろう。

 

 騎士団は入口から休憩部屋までの通路の途中で立ち止まり、指揮官が団員に声を掛けていた。

 

 音声は聞こえないので何を言っているのかは分からないが、国家に仕える騎士団だからな。冒険者と違ってお堅い何かがあるんだろうな。知らんけど。

 

 陣形を整えて進み始めた彼らは休憩部屋まで駆け抜けた。

 

 そのまま二人を休憩部屋に残し、残りの五人が左ルートに侵入した。残された二人は右ルートの監視だろう。

 

 

 ……ククク、可哀そうに。左ルートには天国が待っているのになあ。

 

 

 休憩部屋に残された二人を憐れんでいると、五人が部屋Aに到達した。

 

 ここは可愛らしいスライムガールが待つ部屋だ。

 

 彼女は粘液の身体を活かして服の中に潜り込み、全身をマッサージしてくれる。

 

 流石に自分のダンジョンをエロトラップダンジョンにするつもりはないので、あくまでも健全なマッサージだ。

 

 

 さあ、スライムガールに骨抜きにされるがいい!

 

 

 そう思いながらパソコンを見ていると、騎士団は部屋の外から火魔法を打ち込んでスライムガールを攻撃した。

 

 愛らしい笑顔が特徴のスライムガールは、泣きながら蒸発して苦しみに喘ぎながらこの世を去った。

 

 

 ……こ、こいつら人間じゃねえ!あんなに笑顔が可愛い子にやる仕打ちじゃねえよ!

 

 

 俺は思わず椅子から立ち上がった。

 

 スライムガールは、ただの戦闘要員じゃない。

 

 ダンジョンの“顔”であり、侵入者を和ませるための癒し枠だ。

 

 それを――部屋の外から火魔法で焼き殺すとは。

 

 想定外だった。異世界の住人がここまで蛮族だとは思っていなかった。

 

 奴らはそのまま部屋Bに移動し、またもや火魔法を発動し、アルウラネを攻撃した。

 

 攻撃されたアルウラネは【再生】し余裕の笑みを浮かべている。

 

 さすがはCランクの魔物だ。

 

 

 「よしよし……お前は頼りになるな」

 

 

 アルウラネは【妖香】を漂わせ、騎士団の前衛をじわじわと侵食していく。

 

 画面の向こうで、騎士たちがざわつき始めたのが分かる。

 

 ――魅了。

 ――精神干渉。

 ――未知の魔物。

 

 彼らの混乱が手に取るように分かる。

 

 

 「ふふ……いいぞ。“想定外”ってのは、国家が一番嫌う言葉だからな」

 

 

 そのまま見守っていると、二人だけ残して三人は財宝部屋に向かって駆け出した。

 

 アルウラネを倒すのは諦めて、財宝の回収に舵を切ったか。

 

 だが二人で対抗するには厳しかったみたいだ。アルウラネのツタが二人の騎士を捕らえる。そのまま大きな花を二人の顔に当てると二人は大人しくなった。

 

 一人はアルウラネに膝枕をされながらマッサージを受けている。もう一人は床に寝ていたが、起きた後はアルウラネの隣りで正座して順番を待っている。

 

 

「そう、これだ。これが俺の狙いなんだ。このまま癒しにハマって通いに来い」

 

 

 この二人はしっかりとアルウラネに骨抜きにされている。警戒心がゼロだ。

 

 だが、財宝部屋から戻ってきた指揮官は優秀だった。

 

 すぐに撤退を判断し、仲間を引きずってでも連れ帰る。その判断力は素直に評価できる。

 

 最後に、アルウラネのツタがしゅるりと伸び、膝枕されていた騎士の頭を優しく撫でた。

 

 花開くような笑顔で騎士に微笑む。

 

 その瞬間、騎士の顔が真っ赤になった。

 

 

 ふっ、堕ちたな。だが、今の笑顔は目を付けられた証だぞ。

 

 

 アルウラネの元々の種族はマンイーター。人間を捕食する魔物だ。その性質をしっかりと引き継いでいる彼女は、人間を甚振り、弱らせ、隠している巨大な花の口に取込み、ゆっくり溶かしながら捕食を行うのが本性だ。

 

 あの笑顔には”貴方は私が食べる”の意味が込められている。あの騎士は、右ルートでアルウラネに出会ったら大変なことになるな。……まあ、俺は関係ないからいいや。

 

 

 

「……さて。これで王国はどう動く?」

 

 

 騎士団が帰還したことで、迷宮都市は必ず混乱する。

 

 ギルドは騒ぎ、

 貴族は動き、

 裏社会は蠢くだろう。

 

 そして――その全てが、俺のダンジョンに“資源”を運んでくる。

 

 

「さあ、迷宮都市の幕開けだ。俺のダンジョンに貢献してくれよマルス王国」

 

 

 

 

 

 

 騎士団が帰還したという報せは、迷宮都市全体を一瞬で駆け巡った。

 

 その日の夕刻、都市の空気は明らかに変わっていた。

 

 

 

 ギルドの扉が勢いよく開き、受付嬢たちが慌ただしく走り回っている。

 

 

「騎士団が……? 本当に戻ったの?」

 

「ええ、しかも全員生存。でも……何か様子がおかしいって噂が……」

 

「また“絶剣”の時みたいに情報規制が入るぞ。ギルド長はどこだ!」

 

 

 ギルド内は騒然としていた。

 

 “騎士団が生きて帰った”それだけで、冒険者たちの目の色が変わる。

 

 ――ダンジョンは攻略可能なのか?

 ――富は本当に存在するのか?

 ――次は自分たちの番か?

 

 そんな欲望が渦巻き、依頼掲示板の前には人だかりができていた。

 

 

 

 

「騎士団が宝を持ち帰ったらしいぞ!」

 

「本当か!? じゃあ迷宮都市は一気に発展する!」

 

「急げ! 武具の値段を上げろ!冒険者が殺到するぞ!」

 

 

 商人たちは狂喜乱舞していた。

 彼らにとって、“騎士団が帰還した”という事実はそのまま“金の匂い”に直結する。

 

 

 

 

 迷宮都市の仮設貴族館では、すでに複数の貴族が密談を始めていた。

 

 

「騎士団が宝を持ち帰った……これは大きいぞ」

 

「迷宮都市の利権は、我々のものだ。ギルドや商人に好き勝手させるな」

 

「近衛騎士のマイク殿と接触を図れ。彼の証言次第で、都市の価値は跳ね上がる」

 

 

 彼らは、“ダンジョンの富”を巡る政治戦の準備を始めていた。

 

 

 

 

 

 マルス王国玉座の間

 

 

「ーー以上が私からの報告で御座います。陛下」

 

 

 玉座の間ではダンジョン調査隊で隊長を務めた近衛騎士団”序列九位”のマイクが国王に報告をしていた。

 

 王から密かに下されていた王命の達成。非公式に下賜されたマジックバックの返却と富の献上。

 

 迷宮都市に蠢く数多の陰謀を全て退け、ダンジョンの富の全てを王都に持ち帰ったのだ。

 

 

「よくやった。さすがは予の近衛騎士だ。予はそなたら近衛騎士こそ我が国の最高戦力だと確信しておるぞ」

 

「もったいないお言葉でございます。陛下」

 

 

 マイクは深く頭を垂れた。

 

 王の左右に控える宰相と軍務卿が、互いに視線を交わす。

 

 宰相は静かに口を開いた。

 

 

「マイク殿。報告の中で……“魔物の入れ替え”とありましたな。これは、ダンジョンが自律的に進化している、という理解でよろしいか?」

 

 

 マイクは一瞬だけ言葉を選び、答えた。

 

 

「はい。資料と実際の構成が一致しない箇所が複数。魔物の種類、宝箱の数……ダンジョンの進化と見られます」

 

 

 軍務卿が眉をひそめる。

 

 

「……ダンジョンが進化することはよく知られていることだがーー推定Cランクの魔物の出現は出来立てのダンジョンの成長速度ではない。強大なダンジョンの影響を受けているのか?」

 

「可能性はあるかと。今後の迷宮都市の運用にも大きな影響が出ることが予想されます」

 

 

 玉座の間に、重い沈黙が落ちた。

 

 

 国王はゆっくりと立ち上がり、玉座の間に響く声で宣言した。

 

 

「……ダンジョンが想定を超えるならば、それ相応の準備をするまでだ。北部に物資を輸送するにはダンジョンの富が必要なのだ!」

 

 

 宰相と軍務卿が同時に頭を下げる。

 

 

「調査隊は再編し、次の調査に備えよ。必要とあらば――国宝級の魔道具の使用を全面的に許可する」

 

 

 その言葉に、玉座の間の全員が息を呑んだ。

 

 国王は続ける。

 

 

「近衛騎士マイクよ、予はそなたの働きに期待しているぞ」

 

「仰せのままに、陛下」

 

 

 マイクは深く頭を垂れた。

 

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