戦闘終了してから二日が経過した。
怒ったリリスを宥めるのに掛かった時間でもある。ブチ切れすぎである。
俺の精と尊厳を犠牲にして機嫌を直してもらえたので、ダンジョンの改造を行いたいと思う。
……淫魔は強かったよ。
現在の所持DPだが、
二日前の侵入者撃退の時点で保有していた2360DP
眷属トリオ殺害時の3000DP
リリスの眷属となったレオンが率いていたメンバーの二人を殺害時の2000DP
これに監禁部屋二日分の収入で3人(二日前に捕らえた新しい捕虜)×24時間×2日×10DP=1440DPで合計8800DPからの、ダンジョンが消費した200DPを差し引いた8600DPが今の所持DPだ。
なんとか初期DP近くまで回復させることに成功したので、そこそこダンジョンに手を加えることができそうだ。
取り敢えずやりたいことが戦闘部屋Cの戦力充実だな。Fランクのスライムとマタンゴが弱すぎて使い物にならないのだ。右ルートは防衛のためのルートなので最低でもDランクの魔物達で揃えたい。
それと監禁部屋の位置変更だな。デスの眷属トリオや、リリスが支配下に置くことに成功したレオン(D+ランク)とかいうオッサンなど、Dランク級の戦力が増えたので、監禁部屋の位置を奥のほうにすることにした。思った以上にDPが貯まらないからな。監禁部屋の重要度は俺の中で跳ね上がった。数も増やして一日当たりの収入を増やすのが重要になってくるだろう。
あと、殺した二人だがデスの眷属にしようとしたら出来なかった。多分三人が上限なんだろうな。無制限に眷属にできたら強すぎるから色々制限があるのだろう。
取り敢えず監禁部屋と財宝部屋の位置を入れ替えた。これにより戦闘部屋A、B、Cを突破しないと監禁部屋には行けなくなったので捕虜を守りやすくなった。
こんな感じだ。
財宝部屋は左ルートに設置することで客寄せに使うことにする。今のところは侵入者を全滅させているが、将来的には生きて帰って何度もダンジョンに挑戦してもらいたいと思っている。
ダンジョンに一定以上滞在するだけでもDPが入ってくれるからな。殺してしまうより永続的にDPを獲得できる方が総量は多くなる。これは侵入者が脱出したときに振り込まれるようになっているので侵入者には生きて帰ってもらう必要があるのだ。
そのため左ルートはボーナスルートとして有名になるように、Dランク以下の魔物のみを配置して罠も極力置かないようにするつもりだ。ただし、多少は死んでくれないと侵入者が増えすぎて困りそうなので、たまにCランク以上を投入することにする。不定期で出現するボスモンスターってやつだ。しかし、討伐報酬として財宝を持たせておくので挑戦する者も現れるかもしれないな。
部屋の入れ替えが終わったので魔物の再配置を行う。戦闘部屋Cのスライム7体とマタンゴ3体を部屋Aに。戦闘部屋Aと戦闘部屋Bからゴブリン10体を部屋Bに送る。ゴブリンが3体余るので3体とも監禁部屋の看守として配置した。
戦闘部屋Bには最近影の薄いゴブリンキングとゴブリンナイト、それと新たに4000DPを消費して作成したEランクのホブゴブリンを8体設置した。
これによりD-ランクのゴブリンナイトはD+ランクのゴブリンロイヤルナイトに。Eランクのホブゴブリン8体はD-ランクのゴブリンパラディン3体、ゴブリンメイジ3体、ゴブリンシャーマン2体に進化した。Cランク1、D+ランク1、D-ランク8の大戦力の誕生である。
最近、ゴブリンキングを見ていないので、パソコンで強化したゴブリン部屋を映す。
新たに進化したゴブリンパラディンたちは、武器を手にして興奮したように吠え、ゴブリンキングは”ククク……これで我が軍勢は無敵……!”とでも言いたげに胸を張っていた。
4000DPの消費でDランク8体ゲットはマジでヤバイな。本来なら2体しか作成できないことを考えると破格の戦力だ。影が薄いとか言って済まなかった。お前がナンバーワンだ。
戦闘部屋Aにはデス、デス率いるワイト3体と、眷属トリオ、リリスとレオンを配置した。C-ランク2、D+ランク1、D-ランク3、Eランク3の合計9体を配置したが・・・総合的な戦力だとゴブリンキングの部屋に負けるかもな。こっちの方が強いと思って戦闘部屋Aに設置したんだがゴブリンキングのスキルが思ったより強かった。
余った4600DPでDランクを作成しようと思っていたが、デスを強化することにした。コイツの【眷属作成】は下級だが、強化して中級とかになれば眷属が進化するかもと思ったからだ。
デスを4600DPで強化した結果がこれだ。
ステータス
C-ランク (Cランク)
名無し
種族名 リッチ
戦闘力 3264 (3414)
種族スキル 【即死】 【毒霧生成】
【再生】 【呪い】
技能スキル 【統率】 【眷属作成:不死者(中級)】
魔法 【攻撃魔法:火(上級)】
【攻撃魔法:闇(中級)】
強化したことでリッチに進化した。見た目がゾンビからちょっと顔色の悪い少女に変化した。白い髪に赤い目で顔色が茶色の少女だ。
とりあえず女の子には変わりないのと、俺の初めての魔物なので名前を与えることにした。
「うーん……アンデッドだと美少女吸血鬼が嬉しいよな。……よし。お前の名前は”クドラク”だ」
名前を告げた瞬間に空気が震える。白い光が弾け、腐肉が剥がれ落ちるように消えていく。その奥から現れたのは、まるで月光を纏ったような少女だった。クドラクはゆっくりと目を開け、赤い瞳が俺をまっすぐに射抜いた。
俺は思わず息を呑んだ。……これは来たんじゃないか?。さっそくステータスを確認する。
ステータス
C+ランク
名前 クドラク
種族名 吸血鬼
戦闘力 5264 (5414)
固有スキル 【血の系譜】
種族スキル 【即死】 【形態変化:毒霧】
【超再生】 【呪い】 【吸血】
【魅了】 【飛行】
技能スキル 【統率】 【眷属作成:不死者(中級)】
【眷属作成:悪魔(下級)】
【武術:剣(中級)】 【武術:体術(中級)】
魔法 【攻撃魔法:火 闇(上級)】
【攻撃魔法:風(中級)】
狙い通りに吸血鬼になった。それに、戦闘力も2000上昇している。シャルロットを除けば圧倒的な数値だ。ダンジョンの成長を感じるな。
スキルも色々増えてるけど、取り敢えず固有スキルの【血の系譜】がマジでチート。自分が強くなった時は眷属も強くなる。逆に眷属が強くなったときは自分も強くなる。この効果で眷属トリオが進化してC-ランクの戦力になった。アルが”リッチ”、カイルが”デス・ウォーリア”、レックスが”デス・ハンター”に進化した。
しかも進化した影響か、三人の眷属たちは言葉を話せるようになった。確かにステータスには名前が記載されているが、ダンジョンマスターが名付けをしなくても良いのは予想外だった。(ちなみにリリスが堕落させたレオンも話すことができる。こちらはリリスがダンジョンの機能を利用して支配したため)
あとは何より見た目が可愛くなった。背丈は変わらずに小柄なままだが、白い髪は腰あたりまで伸び、月光のような白銀に変わった。服装もボロボロのローブから白と黒のゴスロリドレスになった。顔だちも整っていて、肌の色が白くなったことで完全無欠の美少女になったのだ。最初の腐肉からこんなお嬢様系美少女になるとは、魔物の可能性は無限大だな。
あと、クドラクの【眷属作成】だがいくつかルールを把握したので纏めておこう。
・クドラク本人が倒した死体を使うとより強力な眷属になる
・生前の強さも多少は影響する。特に固有スキル持ちは強力になりやすい
・下級だと3人まで、中級だと4人まで眷属にできる。上級だとおそらく5人
・死亡した眷属は一日に1人まで蘇生可能
・死亡した眷属を消滅させて枠を空けることも可能
これは話せるようになったクドラクに直接聞いたから間違いない。強化と名付けによって頼れる魔物に進化してくれた。
そして新たなスキル、【眷属作成:悪魔】を使って眷属に出来なかった二人の死体を眷属にしておいた。二人共D+ランクの小悪魔だ。ただしリリスと違ってゴツいオッサンだな。角、羽、尻尾が生えたTHE悪魔って感じの見た目だ。残念だがリリスと同じ小悪魔でもお前達を抱きしめることはないだろう。小汚いオッサンに生まれたことを悔やめ。
あと、こいつらは会話ができないみたいだ。どうやら名前があるのと、Cランク以上なのが会話の条件なのかもしれないな。名付けすると絶対にCランクを超えるようになっているし。
こうして戦闘部屋Aの戦力はC+ランクのクドラク、C-ランクのリリスと眷属トリオ、D+ランクのレオンと小悪魔2体で合計8体の素晴らしい部屋になった。
ゴブリンキングよ、お前はナンバーツーだ。あと、ワイトは財宝部屋に左遷された。
DPもなくなったし改造はこのくらいだな。戦闘部屋CはDPがなくて何も配置していないんだが、侵入者が逃げたときにシャルを配置しようと思ってる。まだ一度も戦っているところを見た事がないからな。そろそろ最高戦力の力を把握しておきたい。
とりあえず改造が終わって暇になったので、じゃれあっているシャル達の所に行く。
「良いかクドよ、我こそ主様から最初に名前を賜った懐刀にして最愛の眷属じゃ」
「馬鹿言ってんじゃないわよ!私と同時でしょうが!!それに私はマスターが最初に抱いた女よ!」
「……二人とも愚か。クドはパパが最初に召喚した眷属。クドと二人の間には……絶対に越えられない壁がある」
言い争いは次第にヒートアップし、リリスの尻尾がバサバサ揺れ、シャルは腕を組んで目を細め、クドラクは無表情のまま目を光らせる。
どうやら三人とも自分こそが一番俺に好かれていると張り合っているみたいだ。全く……可愛い奴らだ。いがみ合っている三人のやりとりが尊く感じる。この光景を絶対に守ることを誓いながら俺は三人をまとめて抱きしめてベッドに向かうのだった。
自警団が若者たちを捜索しに行ってから2時間後、副団長のエイが村に帰還した。
「おお、戻ったかエイよ。それで何か分かったのか?」
「もちろんです村長。リーシャ村とミルスを繋ぐ街道の中間地点にてダンジョンが発見されました」
「何!それは本当か!?……だが待て、それがあの三人と何の関係が……まさか……」
「……はい、どうやらあの三人はダンジョンに入ったみたいなのです。三人の足跡がダンジョンに続いていました。自警団の非戦闘員三人がミルスへ向かい、私が村に……残る六人がダンジョン内の捜索に向かいました」
エイが報告を終えると、周囲で聞いていた村人たちがざわめいた。レオンの妻は口元を押さえて涙をこらえ、老人たちは「ダンジョンだと……?」と顔を青ざめさせる。
村は小さく、誰もが家族のようなものだ。その空気の重さが、逆に事態の深刻さを物語っていた。
「レオン達もダンジョンに入ったのか……息子を探したくなる気持ちはわからんでもないが一度帰還してほしかったのう。ミルスの冒険者と連携したほうが安全じゃろうに……いや、ミルスと村に人を送っただけでも冷静だと褒めるのが正解じゃな。それでミルスにもダンジョンの話は伝わっておるのか?」
「いえ、ミルスに向かった者たちはダンジョン発見前に向かわせたのでミルスにはまだ伝わってないかと」
「ならば誰かが伝えに行かねばならんな。……とりあえずレオン達の帰還を待つかの。レオンから捜索の結果を聞いてからでも遅くはあるまい。しかし、最悪も考えねばならん。エイよ、リーシャ村の村長として命ずる。レオンが明日の朝までに戻らなければお前が自警団団長を継承し、ミルスの冒険者ギルドにダンジョンの報告と自警団の捜索依頼を出すのじゃ」
「拝命しました。……ですがレオンは戻りますよ。アイツは俺が認めた男です」
「分かっとるわい。あくまで最悪を想定しただけじゃ」
翌日のリーシャ村
「…………戻らなかったのう……」
「…………ミルス行ってきます……」
マルス王国が誇る五大都市の一つミルス。この都市は新しく発見されたダンジョンの話題で盛り上がっていた。
ダンジョン。適切な管理をすれば、半永久的に富を得られる一種の永久機関。しかし、人の手が及ばない管理不可能なダンジョンがあるのも事実。
かつて人類が繫栄していた王国は、絶対零度の皇帝が君臨し、永久凍土に閉ざされた。
人の手が届かない霊峰のダンジョンでは、悠久の時をかけて嵐の王が生誕し、明けない大嵐で周辺の生態系は崩壊した。
豊かな自然に恵まれた農業大国は、大地の化身が顕現し、全てが砂の底に沈んだ。
Aランクと呼ばれる、人類では打倒できない本物の怪物が世界にはいる。例外はいるが基本的にはダンジョンによって生み出された怪物たちだ。
ダンジョンの危険性は歴史が証明しているが、それでも人は富を求めてしまう。
今回もそうだ。ミルスの冒険者ギルド主導によるダンジョンの調査。元々はリーシャ村の村人の捜索依頼だったらしいが、たかが数人の村人をダンジョンより優先するなどあり得ないことだ。
集められたのはDランクの冒険者11人と、ミルス唯一のCランク冒険者パーティー『絶剣』の私たち4人。総勢15名が今回のダンジョン調査に選ばれた。
「私たちの活動拠点の近くでダンジョンが見つかるなんて……運が向いてきたね。ダンジョンで得られる魔道具や財宝を使えばBランクも見えてくるよ!!!」
「手に入れてから言え」
「できたばかりのダンジョンってショボいよアリア」
「私も、期待しすぎるのはやめた方が良いと思うわ」
「うぅ、仲間が冷たい……もうちょっとノってよ!」
私の妄想を速攻で切り捨てたのがメリッサ。凄腕の魔法使いでちょっと素っ気ないけど頼りになる仲間だ。二人きりだと少しデレてくれる。多分恥ずかしがり屋さん。
続いて反応したのがシャナ。探索や索敵を得意とする短剣使いだ。ウチのメンバーで唯一ダンジョンに挑戦したことがある。偶然にも出来立てのダンジョンを発見して中を探索したとのことだが、何も手に入らなかった経験から今回のダンジョンにも期待していないみたいだ。
最後に声をかけてきたのはジャンヌ。癒しを施す回復術師でこのパーティーの生命線だ。回復魔法を使える術者は数が少なく、国から優遇されるはずだが何故か冒険者をやっている。優しい心を持っていてよく頭をなでてくれる。
あと私はアリア、パーティーリーダーで剣士をやってる。長剣と小剣の二刀流で魔物をバッサバッサと切り捨てるのが得意。一応この国でも有数の冒険者として有名で、私個人の冒険者ランクはBランクだ。パーティー名の『絶剣』も元々は私個人の二つ名だった。
「おーい、『絶剣』の皆さんよ。そろそろ出発みたいだぜ」
「はーい、今行きまーす」
どうやら時間みたいだ。冒険者たちに合流して出発する。
「ダンジョンまで1時間くらい歩くんだよね?それまでどんな魔道具が見つかるか予想しようよー!私は魔剣が良いなー。ビームとかでるやつ!!」
「どうせ出ないと思うが・・・私は杖だな。魔法のローブでも良いが」
「変な木の棒とかよく分からないガラクタが出るよ。宝石が出たら当たりだね」
「私は回復魔法の効果が上がる魔道具が嬉しいです」
今度はみんな答えてくれた。どうやら移動時間の暇つぶしとしては悪くないと思ってくれたようだ。そのままダンジョンの魔物や地形の考察をしながらダンジョンへと向かった。
道中、森の影から狼型の魔物が飛び出してきた。
「【アサシン・エッジ】」
Dランク冒険者たちが身構えるより早く、シャナの短剣が閃き、魔物は一撃で沈む。
その速さと、一瞬で急所を捉える正確さに周囲の冒険者たちが息を呑む。……これがCランクパーティーの実力か、と誰もが思った。
狼が倒れた直後、森の奥から二体目、三体目が姿を現した。群れで行動するタイプらしい。
「来るよ、アリア!」
シャナの声に合わせて、私は一歩踏み込み、長剣を横薙ぎに振るう。刃が風を裂き、迫ってきた魔物の首が宙を舞った。
「Dランクのガルムだね。依頼がなかったら解体できるのに」
軽口を叩きながらも、私はすでに次の敵へと視線を向けていた。その背後で、メリッサが小さく呟く。
「【アクア・ランス】」
詠唱は短く、魔力の収束は鋭い。放たれた水の槍が、逃げようとした最後の一体の頭部を正確に貫いた。
「……ダンジョン前に魔法使って大丈夫なの?」
「魔力より時間を無駄にする方が嫌いだからな」
中級魔法を使ったのに、メリッサの魔力は一切乱れていない。さすがの魔力制御だ。
倒れた冒険者はいなかったが、Dランクの冒険者たちは完全に圧倒されていた。
ジャンヌが彼らに微笑みながら声をかける。
「怪我はありませんか? 緊張しすぎると足がもつれますよ」
その優しい声に、場の空気が少しだけ和らぐ。……これが、ミルス唯一のCランクパーティー『絶剣』。
私たちの実力を、周囲は改めて思い知ったようだった。
安全を確認した後、ダンジョンへの移動が再開した。
「ビーム出る魔剣が欲しい!」
「出ない。断言する」
「アリア、さっきも同じこと言ってた」
「でも……夢を見るのは大事ですよ?」
「ジャンヌは優しい! メリッサとシャナは冷たい!」
「現実主義なだけだ」
「アリアは夢見すぎ」
「うぅ……!私もビーム打ちたいのー!」
「そもそも剣士がビームってなんだ……」
「一応……世界最強の剣士二人は打てるらしいよ。ビーム」
「あぁ……、『剣聖』と『勇者』か。」
「それに『聖女』を加えた三人が人類三強と呼ばれていましたよね?」
「そう!個人でBランクを討伐した人類の希望。その内二人が剣士でビームを打つんだよ!?私も剣士の端くれとしてビームを打たなきゃ!」
四人でお喋りを楽しんでいるとあっという間にダンジョンに到着した。