ダンジョンマスターになりました   作:饅頭怖い

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冒険者襲来

 ミルスを出て1時間後。私達はダンジョンに辿り着いた。

 

 

「見た目はただの洞窟なんだねー」

 

 

 シャナが肩をすくめながら呟く。

 

 

「……私が過去に入ったダンジョンと一緒。ショボいオーラが出てる」

 

「……はぁ。薄々察してはいたが入る前に言うな。やる気がなくなるだろう」

 

 

 シャナの言葉にメリッサがため息をつきながら反応する。私は苦笑しながら二人をなだめる。すると、ジャンヌが少し眉を寄せて口を開いた。

 

 

「リーシャ村の人が行方不明になったこと忘れてないですよね?私としてはダンジョンの調査よりそっちをメインにしたいのですが」

 

「うーん、ジャンヌが優しいことは知っているけど、ギルドからの強制依頼だから厳しいかもしれない。他のパーティーもいるし」

 

「……分かってますよ、ダンジョン調査のついでで構いません。村人たちの生存は絶望的でしょうから。……亡骸だけでも村に送ってあげたいだけです」

 

 

 その静かな決意に、私たちは自然と頷いた。

 

 

「それは当然だね。ちゃんと村で弔ってもらおう。……準備ができたみたいだね」

 

 

 他のパーティーも準備ができたみたいだ。続々と入口の前に集まっている。

 

 私たちも合流し、ダンジョンへと足を踏み入れる。

 

 

 

 

 

 

「ありゃ、さっそく分かれ道だね。どう分けるんだろ」

 

 

 ダンジョンの中は一本道で特に何もない道が続いた。そのまま進み続けると開けた空間に出て道が左右に分かれたのだ。

 

 

 未知のダンジョンだから戦力の分散は悪手な気もするけど、調査と村人の捜索は分散したほうが効率が良い。

 

 他のパーティーリーダーたちと協議した結果、私たち『絶剣』が右に、他の11人が左に向かうことになった。流石に人数が偏りすぎていると文句を言ったが切り捨てられてしまった。なんで?

 

 

「なに不満そうな顔してんだよ。言っとくがお前1人と14人で分けたいとこなんだぞ『絶剣』のアリア。王都を襲ったBランクモンスターの討伐に貢献した英雄様なら余裕だろうが!!」

 

「アンタ達みたいなむさい奴らにウチのメンバーを預けられるわけないだろー!ウチの子たちは繊細なんだぞー!」

 

「ウチの子って……全員お前より年上なんだがな」

 

 

 メリッサが何か言ってるが聞こえないフリをして右側の道に進む。

 

 

「分かってると思うが探索が終わったら此処で合流だかんなー!」

 

「りょーかーい」

 

 

 

 

 

 

 右側の道をしばらく進むとさっきの場所のような開けた空間に出た。一見すると何もなさそうだが罠の類があるかもしれないのでシャナに先行してもらう。

 

 

「……何もなさそうだよ。これだけ進んで魔物も罠もないなんて、ちょっと不気味……」

 

「え?そうなの?」

 

「うん。私が入ったダンジョンは狭くて罠はなかったけど、ゴブリンやスライムとか魔物はいた。取ったら犯罪だから手は出さなかったけど、最奥のダンジョンコアだって見つけた。こんなに奥にきて何もないのは逆に不自然。……それと出来立てのダンジョンにしては広すぎると思う」

 

「ふーん、……戻ったほうが良いかな?」

 

「…………それはアリアに決めてほしい。いま帰ったら何の収穫もないからもう少し様子を見ても良いと思うけど……」

 

「そうだよねー、命優先だけどギルドからの強制依頼で収穫ナシは問題になりそうだし……もう少し進んでみようか!」

 

 

 この空間・・・部屋らしき場所には私たちが通ってきた道とは違う道がある。そこも今まで通ってきた道とは違いがなさそうだけどシャナの忠告通り警戒度を上げる。

 

 罠や魔物の索敵のためにシャナを先頭にしてメリッサとジャンヌが真ん中、私が一番後ろで背後を警戒する。一本道で気を付けないといけないことは挟み撃ちを避けることだ。もし挟み撃ちをされた場合は即座に逃げ道を確保する必要があるため、一番強い私が出口側の後方を警戒する。

 

 そんな感じで警戒しながら進んでいるとシャナから止まれの合図が送られてきた。

 

 どうやら何かを見つけたみたいだ。

 

 

「魔物の気配を感じた。この速度で進むと5分くらいで遭遇しそう。数は分からないけど一匹強い気配を感じる」

 

「やっとか、何も出なくて退屈だったところだ」

 

「リーシャ村の方々の亡骸や遺品のような物も見つかりませんし、せめて敵を討って帰りたいですわね」

 

「みんなやる気満々だね。とりあえず近付いて魔物を確認してから決めようか」

 

 

 シャナの言っていた通り、5分ほど進むと新たな部屋が見えてきた。中を確認すると複数のゴブリンがいるのが見える。部屋の最奥には巨大なゴブリンとそれに付き従う屈強なゴブリンも確認できた。

 

 

「最奥の巨大なゴブリンがキング、隣に控えているのがロイヤルナイトだね。あとはパラディン、メイジ、シャーマンが8体か……出来立てのダンジョンの戦力じゃないよね?」

 

「うん、これは間違いなく異常。……いったん撤退する?」

 

「いや、このくらいならまだ大丈夫。メリッサとジャンヌもやる気みたいだし戦おう」

 

「ああ、雑魚共は任せろ」

 

「私とシャナさんでロイヤルナイトをやりましょうか」

 

「じゃあ私がキングをもらうね」

 

 

 それぞれの獲物が決まったところで武器を構えてメリッサの魔法を待つ。

 

 

「【アクア・テンペスト】」

 

 

 津波のごとき水が部屋になだれ込み、雑兵どころかロイヤルナイトとキングも一緒に流される。魔法の効果が切れて水が消えたと同時に、全員で部屋の中に突撃しそれぞれの獲物に向かう。

 

 

「【ポイズン・エッジ】!」

 

「【ホーリー・スタンプ】!」

 

 

 起き上がろうとするロイヤルナイトの不意を突き、シャナが短剣でロイヤルナイトに毒を入れた。切られて態勢が崩れ、頭が下がった瞬間にジャンヌのメイスがロイヤルナイトの頭部を襲う。

 

 毒も入っているみたいだしこれでロイヤルナイトは大丈夫。

 

 

「【ダブル・マジック】。【アクア・ランス】、【アクア・ボール】」

 

 

 雑兵達は"水嵐"で乱れた体制を整える前に、メリッサに追撃されて順調に数を減らしている。シャナが加勢しているしこちらも大丈夫だろう。

 

 そして、残るキングには私の"絶剣"を叩き込んで終わりだ。

 

 

「【アクア・エンチャント】、【ウィンド・エンチャント】」

 

 

 両手に持つ二刀に水と風の魔力を込めて、態勢が整う前のゴブリンキングに横向きの斬撃を飛ばす。ゴブリンキングも剣を振るい始めたが、私の斬撃が届くほうが早い。【縮地】で自分が飛ばした斬撃に追いつく。

 

 

「【ファイア・エンチャント】、【アース・エンチャント】」

 

 

 斬撃を追いかける間に、二刀に火と土の魔力を込める。

 

 そして斬撃に追いつくと同時に剣を上から下に叩き込む。

 

 これが私の"絶剣"。十字に交差した斬撃は通常の何倍もの威力を発揮し、異なる四属性の魔力は互いに相克し大爆発を引き起こす。

 

 

「グギャァァアアアア!!」

 

 

 まともに当たればBランクの魔物にすら手傷を負わせる私の奥義だ。爆発に巻き込まれたゴブリンキングの身体は粉砕され徐々に塵に変わって消えていく。

 

 

「グォォォォ……ォ……!」

 

 

 王としての意地か最後まで私を睨みつけながらゴブリンキングはこの世から去った。

 

 【水嵐】で不意を突かなければこんなに簡単には倒せなかったかもしれない。そう思わされるほどには誇りある最後だった。

 

 

 

 

 

 

 戦闘が終わった後は少しだけ休息を取ってさらに進むことにした。メリッサの魔法のおかげで消耗が少なかったから、もう少し情報を集めることにしたのだ。

 

 ゴブリンキングがいた部屋から更に奥に進むと紫色の霧のような瘴気が溢れる部屋に辿り着いた。最初はその毒々しい色から毒の霧だと思ったのだが身体に害のあるものではないみたいだ。

 

 ただ、ほんの少しだけ力が入らないかも?いや、気のせいか。

 

 

「こんな色なのに何ともないんだね」

 

「……何のためらいもなく入るな」

 

「アリアは頭がおかしい」

 

「ほ、本当に大丈夫なんですの?……念のためヒール」

 

 

 失礼な者共の声は聞き流して更に奥に向かう。シャナも気が付いているみたいだが、強大な気配をこの先から感じるのだ。

 

 別行動中の11人の安否も気になるし、魔物や瘴気などダンジョンについても多少の情報は得られた。この強大な気配の持ち主を確認して帰還するくらいが丁度良いだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 奥に進み続けてようやく強大な気配を感じる場所に辿り着いた。少し離れたところから一人で先行して部屋の中をそっと覗いてみる。

 

 見た感じ数は8。全員が人型の魔物。悪魔が3。アンデッドが3。人間に見えるのが2。

 

 強大な気配を発しているのは小さな女の子だ。まるで貴族の少女のような人間にしか見えない銀髪の少女から、恐ろしいほどの魔力を感じる。間違いなく私より強い。この少女を討伐するには私と、Bランク級の実力者が一人いて五分。確実に仕留めるには、さらにBランク級が一人いるだろう。

 

 かつて王都を襲ったBランクほどではないが、外に出たら大きな都市すら壊滅させられるほどの化物。至急応援を呼んで討伐するべき存在だ。

 

 それともう4人、桃色の髪の悪魔とアンデッド達が強そうだ。一騎打ちなら勝てるだろうが4人同時なら恐らく勝てない。

 

 これだけの戦力を相手にするにはマルス王国の精鋭達の力が必要だろう。王都を襲ったBランクを迎え撃った時のようなドリームパーティーを組むしかない。

 

 可能な限り情報を集めようと少女を見た瞬間、少女と目が合った。

 

 

「ッ!!」

 

 

 目が合った瞬間に踵を返して皆の方に走る。

それと同時に少女の右手に闇の魔力が収束する。

 

 

「……【アビス・ブレイド】」

 

 

 手刀とともに放たれた”闇の斬撃”が迫ってくる。

 

 今まで見てきた魔法の中でも最大威力だ。Aランク冒険者『暁の魔女』と同程度の魔法の使い手が存在するとは。

 

 触れたら死ぬ魔法と共にみんなのもとへと走る。

 

 

「ゴメン!気が付かれたーー!!逃げるよ!!!」

 

「「「ふざけんな!!」」」

 

 

 魔法はちゃんと回避した。全員で逃げながら報告をする。誰か一人でも生還したら情報を持ち帰れるように、重要なことは全員で共有するのが冒険者の基本だ。

 

 

「みんな聞い―――「何が私一人なら気が付かれないだ!失敗してるじゃないか!!」

 

「アリアのポンコツ!!」

 

「だからもう少し慎重に行きましょうとあれほど!!」

 

 

 どうしよう、誰も聞いてくれない。

 

 確かに悪いのは大見得きって失敗した私なんだけど、もう少し話を聞いて……ダメみたいだねぇ。

 

 いや、これは私を逃がそうとしているのか。私以上の化物がいるのは全員が分かっている。あそこまで近づいてあれほどの圧力を発していたら誰でも気が付く。

 

 

 ……というかあんなヤバイ魔法を見たら分かる。(私のせい)

 

 

 あの化物が追ってきたら私は自爆覚悟で特攻するだろう。それが私にできる最適解の行動だから。それをさせないために……私の命の価値を高めるためにあえて情報を聞かないようにしているな。

 

 

「剣の腕を高める前に慎重さを身に着けろ!」

 

「後でご飯奢ってくれなきゃ許さない!」

 

「あ、私もお願いします!ついでに甘いものも!!」

 

 

 いや、日頃の鬱憤が溜まってるだけの可能性があるなコレ。

 

 心の中で号泣しながら走っていると途轍もない殺気に襲われて立ち止まる。

 

 

 ……心臓が一瞬止まった。呼吸の仕方を忘れるほどの圧力だ。

 

 

 先ほどゴブリンたちを倒した部屋に入ると、突如として黄金の異形の少女が現れたのだ。彼女から感じる力は先程の少女を圧倒的に超えている。

 

 否、私が相対してきた全ての者たちの中でも群を抜いている。間違いなくBランク以上。国家が総力を挙げて立ち向かうべき災害だ!

 

 あまりの力の差に冷や汗が止まらないが、死ぬわけにはいかない。みんなの緊張をほぐすために、なるべく平常心を心掛けながら軽口を言う。

 

 

「……さっきの部屋でお腹いっぱいなんだけどなあ……勘弁してよ!」

 

 

 いまだかつて経験したことがない死闘になることを……いや、己の敗北を確信しながら抜剣した。

 

 

 

 

 

 

 主様より与えられたボス部屋なる部屋にて、ダンジョン内の気配を探る。どうやら今回の侵入者は中々強そうな者が混じっておるの。戦闘力は3500といったところか。クドラクには及ばんがゴブリンキングは余裕で倒せる実力者じゃな。

 

 そのまま気配を探っていると、予測通りゴブリンキングは突破されてしまった。コア部屋から伝わる主様の焦りが、なんとも愛らしい。

 

 閨ではあれほど大胆に我を抱き潰すほどの豪胆さを見せるのに、ゴブリンキングがやられた程度で慌てるとは。

 

 ならば、見せて差し上げようーー”主様の最強の剣”がいかなるものか。主様の無聊を慰め、今夜も閨に呼んでもらうためにも、ここは華々しく勝利を飾らねばならぬ。

 

 主様も我の力を欲しておるようじゃの。主様の権能が発動し、我は侵入者たちの前へと転移した。

 

 

 

 

 

 

 

 侵入者の前に転移すると、剣士以外は驚いて固まっている。剣士は即座に反応して抜剣しているが……遅い。相対して既に3回は殺せているのう。

 

 クドラクの権能で眷属にする事を考えるならば我が殺すのはなしじゃな。それに主様に我の力を知ってもらうためにも、分かりやすく力を見せつけたいもののじゃ。……よし、殺さないように気を付けながら全力を出すとしよう!

 

 破壊と時空は使えぬが、主様より賜った境界がある。境界には”無限の可能性”が秘められている。

 

 境界とは、世界のあらゆるものに存在する線。物質にも、概念にも、位階にも存在する。

 

 

 たとえばBランクとAランクの境界とかのう……!

 

 

 己の位階の境界を操り、Aランクへの昇華を試みる。Aランクを知らねば成功確率は0じゃろうが、我は元Aランクの龍。一時的なら十分に可能じゃろう。

 

 ……ふむ、成功じゃな。身体の中で膨れ上がった力を一切漏らさずに、誰にも気付かれることなく我は壁を超えた。

 

 

「みんな逃げて!【限界突破】!【絶剣】!!」

 

  

 我が昇華を済ませた瞬間、剣士の小娘が玉砕覚悟で向かってくるが、空間を切り裂いて小娘の後方に繋げる。

 

 我の目の前まで迫っておった小娘は遥か後方で虚空を斬りつけていた。

 

「なんだ……今のは!……」

 

「アリアが一瞬で移動した!」

 

「まさか転移!?それも自分ではなく相手を転移させるなんて……!」

 

 

 驚いて固まっていた他の小娘共も一連の流れで我を取り戻したか。

 

 

「囀るな小娘ども。ただ、空間を切り裂いて別の場所に繋いだだけじゃ」

 

「空間を切る……思ってたより数段ヤバイね。それに会話もできるなんて……ひょっとしてAランク?」

 

「いや、Aランクなら領域でこのダンジョン周辺が死の世界になっているはずだ」

 

「……確かに。Aランクの降臨で国が滅ぶこともある。限りなくAランクに近いBランクってところかな?」

 

「いや、Aランクであっておるよ。我の領域は既に発動しておる。お主らは既に我の腹の中よ」

 

 

 Aランクと呼ばれる怪物達は存在するだけで世界を己の権能で塗りつぶす。それが領域。大抵は自然災害に等しい領域が多いため小娘共の判断も間違ってはおらんがのう。

 

 

「我が権能は破壊、時空、そして新たに境界が加わった。今までは空間が歪み、時間が乱れ、破壊で飲み込む領域じゃったがーー今は違う。歪んだ空間は正常に戻り、乱れた時間も正しく刻まれる。荒れ狂う破壊も凪のように静かになった」

 

「……弱体化したってこと?」

 

「戯けが。……分からぬのか?制御できぬ力を、制御できるようになったのじゃ。歪ませることしか出来なかった空間は自在に操れるようになった!乱すことしかできなかった時間も思い通りの方向に動かし止められる!飲み込むことしか出来なかった破壊も精密に制御できる。そして、破壊の境界を反転させて万物の修復すら可能になった!これを全能と呼ぶのじゃ!!」

 

 

 音速を超えると衝撃波で殺してしまいそうじゃ。ゆっくりと移動し、二刀流の小娘の腕を優しく摘まみ上げて、ゆっくり投げる。むぅ、摘まむだけで骨が砕けたな。Aランクに昇華したのは失敗だったやもしれぬ。手加減が難儀じゃのう。

 

 

「いけない!【ヒール】!」

 

「間に合え!【アクア・ボール】!」

 

 回復魔法が小娘の腕を直し、【水球】が小娘を受け止めた。だが、水を貫通して小娘は壁にめり込んでしまった。

 

 

「……ごめん、みんな……逃げて」

 

 

 血まみれの小娘が仲間に撤退を呼びかける。……【水球】がなければ殺していたかもしれん。

 

 反省していると短剣使いが死にかけの小娘を抱えて逃げようとしておるの。短剣使いの背後に転移して、雷魔法で意識を奪う。

 

 

「アリアだけは……絶対に!……っ!?」

 

「後ろだ!シャナ!!」

 

「【ハイヒール】!!」

 

 

 魔法使いが意識を奪った後に忠告を飛ばしておる。反応が遅いのう。

あと、せっかく上手く気絶させたのに、回復されては面倒じゃ。高密度の魔力を放出して、回復魔法を構成している魔力を乱してやる。

 

 

「私の魔法が……!」

 

「……化け物め!?」

 

「化け物とは酷いのう。お主らが弱いだけじゃろ」

 

 

 勝ち目など皆無なのに最後の特攻を仕掛けてくる。……まあ、根性だけは誉めてやろう。

 

 

「【ホーリー・インパクト】!」

 

「【アクア・テンペスト】!」

 

 

 聖職者の方はメイスだけを転移させて、己の肩を叩かせる。魔法使いは魔法を体内に転移させて溺れさせる・・・やりすぎたかもしれぬ。穴という穴から水を垂れ流して、ゲロと尿と便に塗れておる。

 

 同じ女として後ろめたい気持ちになった……。全員を目を覚まさない程度に治療してやり、綺麗にしてやった。これでいいじゃろ。

 

 さっそく主様に献上するとしよう。今夜の褒美は我のものじゃ!リリスとクドは指をくわえて見ておれ!

 

 

 

 

 

 

「このダンジョン最っ高だな!!」

 

「ああ。やばいくらい財宝が手に入ったな!」

 

「あんな小さな宝箱なのに開けてみたら溢れてきたもんな!!!!」

 

「これ俺たちで分配していいんだろう?こりゃしばらくは金に困らねーぜ!!」

 

 

 俺たちは『絶剣』と別れた場所まで戻って来て、戦利品の確認を行っている最中だ。宝石や貴金属、魔石など選り取り見取り。途中で落し穴に落ちて足首を捻った時は最悪な気分だったが、このダンジョンは最高だぜ。

 

 

「あーあ。でもこれならココは国に管理されちまうな。折角ミルスから通いやすい場所にできたダンジョンなのにな」

 

「そう言うな。まだ『絶剣』たちの分もあるんだぜ?もう一生分稼いださ!」

 

「それもそうだな。……にしてもあいつら遅いな」

 

「財宝が多過ぎて4人じゃ持てないとかじゃないか?俺たちも11人でギリギリだったしな」

 

「おいおい、そりゃあ早く手伝いに行かないとなあ、ガハハ」

 

「気をぬくな。まだダンジョン内だぞ。”何があっても不思議じゃない”」

 

「そうだな。不測の事態が起きている可能性もある。あと何時間か待って戻ってこなかったら撤退だな」 

 

 

 まあ、財宝の運搬に時間がかかっているだけだろう。あの女がそう簡単にくたばるかよ。それよりこの財宝たちの使い道を考えないとなあ。今夜は高級娼館をはしごだな、ぐへへへ。

 

 

 

 

 

 

 そんな感じで財宝の使い道を全員で話し合うこと4時間。

 

 

「あいつら……流石に遅くないか?」

 

「……遅いな。死んだか?」

 

「おいおい……あいつらが死ぬような状況ってなんだよ」

 

「……取り敢えず一度帰還しよう。多少遅れているだけならあいつらなら帰ってこれる。非常事態が起きたことを考えて早急に救出部隊を組むべきだ」

 

「そ、そうだな。お前ら早く荷物纏めろ!直ぐに冒険者ギルドに報告だ!」

 

 

 あいつらが帰ってこないなんて……大変なことになっちまったな。

 

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