ダンジョンマスターになりました   作:饅頭怖い

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王国の反応

 ダンジョンの調査から帰ってきた俺達は、直ぐに冒険者ギルドに報告をした。

 

 ダンジョンに出現した魔物、罠、手に入れた物……そしてダンジョンで起こったこと全て。

 

 俺達からの情報を専門家たちが分析して、お偉いさん方がダンジョンの扱いを決定するんだ。

 

 だが、今回はイレギュラーが発生している。マルス王国有数の冒険者パーティーである『絶剣』がダンジョンで消息不明になったんだ。

 

 冒険者ギルドのランクは飾りじゃねえ。長い歴史の中で精密に定めてきた指標だ。

 

 まず、魔物のランクと冒険者のランクはちょっと違う。

 

 

 魔物のランクはこうだ。

・Fランク:人間の子供と同程度の脅威

・Eランク:一般的な人間の大人と同程度の脅威

・Dランク:戦闘を生業としている人間と同程度の脅威

・Cランク:個人で戦略を左右する英雄クラスの人間と同程度の脅威

・Bランク:単体で大型の都市を破壊する化物。

・Aランク:国家存亡の危機。討伐どころか撃退した記録すらない。人類では敵わない本物の怪物たち。まさに生きた災害だ。

 

 

 

 そしてこれが冒険者のランクだ。

・Fランク:多数のFランクを個人で討伐可能

・Eランク:二匹以上のEランクを個人で討伐可能

・Dランク:単体のDランクを個人で討伐可能

・Cランク:二匹以上のDランクを個人で討伐可能

・Bランク:単体のCランクを個人で討伐可能

・Aランク:名誉ランク。対魔物との戦闘で人類に多大な貢献をした者が 選ばれる。

 

 

 今回消息不明になった『絶剣』の冒険者ランクは実質最高峰のBランクだ。人類最高峰の実力者が消息不明になったダンジョン。普通に考えたら完全攻略指定なんだが……上の連中は迷ってやがる。クソったれめ!

 

 俺達Dランク冒険者が大量の富を持ち帰ったことで下らねえ欲をかいてやがる。本来ならさっさと完全攻略指定をして『絶剣』たちの救出部隊が組まれるはずなのに、ダンジョンの富を諦めてねえ。

 

 俺たちがミルスに帰還してもう四日が経過した。すぐに完全攻略指定にしてくれたら救えたかもしれねーのに……『絶剣』たちの生存は、上のクソどものせいで絶望的だ。

 

 王都にBランクの魔物が襲ってきたとき『絶剣』に救われたくせに、恩を仇で返しやがった。

 

 ただの冒険者に過ぎない俺達にはどうすることもできない。せめてあいつらが安らかに眠れるように願いながら杯を傾ける。

 

 

 

 

 

 

 

 ミルス冒険者ギルド会議室

 

 ミルス冒険者ギルド長のラザニアは、ダンジョンから帰還した冒険者たちからの報告、ミルス最強の冒険者パーティー『絶剣』が遭難した可能性を聞いた瞬間に救出部隊の編成を決めた。

 

 しかし、実際に救出部隊が編制されることはなかった。

 

 副ギルド長をはじめとした幹部陣が王国に配慮して、救出部隊の編成を認めなかったのだ。

 

 彼らの言い分も分かる。我々が王国から許可されたのはダンジョンの調査。それも与えられた侵入許可は一回のみ。これは、大量の富が見つかった場合に冒険者ギルドが独占できないように、ダンジョンと外を往復できないようにするものだ。今回だけでなく、ダンジョン調査の際は国から必ず念押しされるものだった。

 

 さらに、『絶剣』の救出が絶望的だったことも挙げられる。冒険者たちの話ではダンジョン内で4時間は生存未確認。これにダンジョンとミルスを往復する時間、救出部隊の編成と許可のための会議時間を加えると8時間は超えるだろう。王国に逆らって強行して、『絶剣』の死体を見つけてもあまりにも割に合わない。

 

 しかも、今回は大量の富がダンジョンから見つかってしまっていた。間違いなく王国からのペナルティは重たくなる。その時に、冒険者たちが手に入れるはずだった金銭の補填を冒険者ギルドが行うのは現実的ではなかった。

 

 会議室に一人残ったラザニアは机を叩き、己の無力を悔いることしか出来なかった。

 

 

「……すまない、アリア。私にはどうすることもできない。どうか、無事に……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 マルス王国会議室。

 

 この会議室では前代未聞のダンジョンについての話し合いがされている。

ミルスから少し離れた場所にできたダンジョンのことだ。出来立てのダンジョンなのに高純度の魔石や、多数の宝石、貴金属を冒険者たちが持ち帰ってきた。

 

 それだけなら国家の管理下に置くだけだが……国内有数の冒険者、『絶剣』が死んだとあっては慎重に議論せねばなるまい。

 

 

「しかし、不可解なのがBランク率いる国内有数の冒険者パーティーが死んで、Dランク程度の者たちが全員生存しておることだな。」

 

「ですな。ダンジョンが原因というより富を巡って争ったと言われたほうがまだ納得できる」

 

「だが、それでも死ぬのはDランクの冒険者たちでしょう。やはりレアケースと考えるべきでは?」

 

 

 今の議論での最有力候補がダンジョンが合体した説だ。元々ダンジョンがあった場所に新しいダンジョンができて合体。そして、合体した影響で人目に付く場所に入口ができた。

 

 これだと、できて間もないダンジョンから大量の富が出現した説明がつくし、Bランクが死んでDランクが生き残った説明もつく。

 

 おそらくは、Bランクの冒険者たちが古い強大なダンジョンの方に進んでしまったのだろう。

 

 そうなると迷宮都市を周辺に作って、安全な方を国の管理下におき、危険な方を冒険者どもに完全攻略させるのが良いな。

 

 我ながら完璧な案だ。さっそく陛下に奏上しよう。

 

 

「クローディア殿下!」

 

「おお、相変わらずお美しい」

 

 

 頭の中で陛下への報告を思案していると会議室が騒がしくなる。まさか、我が国の至宝がこの様な場に現れるとは。

 

 クローディア・フォン・マルス。またの名を『雷霆の姫騎士』。

 

 輝く金色の髪は金糸のように美しく、青き瞳は青空のようだ。鍛えられていながらも女性らしい肉付きの身体は艶やかで目を奪われる。

 

 彼女は王族に流れる英雄の血を覚醒させた現代の英雄だ。強大な魔力から放たれる雷の一撃は、王都を襲撃したBランク”風の竜”を討ち破った。

 

 王女には相応しくない、動きやすさを優先した露出の多い姿を堪能していると、彼女が口を開いた。

 

 

「私の友人『絶剣』アリアの情報はまだ集まっていませんか?」

 

 

 すぐに返答できる者はいなかった。会議ではすでに死亡したとして議論していたが、面と向かって言えるわけもない。

 

 

「……まだ続報は入ってきておりませぬ。冒険者ギルドも動いてないようです。……もはや生存は絶望的かと」

 

「そう……ですか」

 

 

 踵を返して会議室を出ていくクローディア殿下。一瞬見えた横顔から覗いた目は何かを決心した決意の光が浮かんでいた。

 

 間違いなくダンジョンに行くつもりだ。陛下と騎士団長に報告するべきだな。

 

 服の上からでも分かる実った桃尻を見送りながら、迷宮都市とクローディア殿下の件を陛下に奏上する案を考える。

 

 

「アリア……あなたが竜の翼を切らなければ、私はあの竜に殺されていた。今度は私の番です」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ミルスの冒険者たちが持ち帰った大量の富は多くの者たちに知れ渡っていた。

 

 

「ミルスの冒険者どもが持ち帰った宝石、あれ本物らしいぜ」

 

「だったら俺たちも一攫千金だ!」

 

 

 ミルス近辺で暗躍していたオーザ盗賊団がダンジョンの盗掘に動き始める。

 

 ミルス周辺で最も凶悪な犯罪者として手配されている彼等は、残虐で悪行を行うことに一切の躊躇いがない。

 

 血に飢えた獣たちがダンジョンを目指す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 侵入者達を撃退してから四日が経過した。

 

 何か忘れてるなと思ったら左ルートに行った男の侵入者たちを完全に忘れていた。つまり財宝をすべて奪われてしまった。

 

 それもこれもゴブリンキングを爆殺して俺から余裕を奪ったアリアたちが悪いということで、ダンジョンを作成がてら全員お仕置きしてやったのでスッキリしたけどな。

 

 最初は恥ずかしがっていたが、途中から吹っ切れたのか「もっとお仕置きして下さいっ♪」とノリノリだったから、お仕置になったかは怪しいが……。多分ダンジョンの戦力になったらダンジョンマスターに対して忠誠心MAXになるような仕掛けがあるんだろう。

 

 話が逸れたな。あれだけの財宝を持ち帰ったんだ。隠し通せるような量じゃない。

 

 これをきっかけにしてダンジョンに来る人間が増えるかもしれない。ちょうどダンジョンの防衛力も強化できたしな。悪いことばかりではないと自分を無理矢理納得させて財宝のことは忘れる。

 

 というわけで、ダンジョンの強化も終わったことだしどこが変わったのか整理してみよう。

 

・11人の侵入者が脱出したことでDP入手。100DP×11人で1100DP入手。

※どうやらダンジョンから脱出した人数×100DPが手に入るみたいだ。

・二層が追加されたことでダンジョンの広さが倍になった。5000DP消費

・二層に部屋を設置した。3300DP消費

・【10日間生存達成】という実績を達成してガチャチケット1枚入手。ラミアを召喚。

・二層追加中に20人の侵入者が到来。15人は新設した監禁部屋に捕らえて、5人は殺害。5000DP入手。

※会話してみた感じ盗賊の集団だったみたいだ。オーザ盗賊団とか名乗ってた。このダンジョンから大量の財宝が見つかった話を聞いてやってきたらしい。さっそく宣伝の効果が出ている。狙い通りだな。ヨシ!(大ウソ

 

 

 今の所はこのくらいか。今の所持DPはリリスを強化した時点で10860DPあったから、10860DP+1100DP+1240DP+6640DP+5000DP-5000DP-3300DP=16540DPだな。

 

 

 解説すると、10860DPがリリス強化後のDP。1100DPが侵入者が脱出した時のDP。

1240DPが監禁部屋(三人)の二日分の収入だ。10DDP×24時間×2日×3人-200DP。

なぜ二日分だけかというと三日目にダンジョンの二層追加+捕虜が15人追加されたからだ。

 

 

 6640DPってのが捕虜18人分の二日間の監禁部屋の収入だな。

10DP×24時間×2日×18人-2000DP(ダンジョンに捧げるDP)=6640DPだ。

 

 

 なんと、今まで一日100DPで済んでいたダンジョンに捧げるDPが一日1000DPに増えやがったのだ。ファッキュー!!

 

 

 監禁部屋の捕虜が3人のままだと赤字になるところだったから盗掘者が来てくれてマジで助かった。

 

 あとの+5000DPが盗掘者の殺害分のDPで、マイナスの項目は二層の追加と部屋の追加で消費したDPだな。

 

 

 とりあえずこれが新しいダンジョンの完成図だ。

 

 

【挿絵表示】

 

 

【挿絵表示】

 

 

 一枚目が一層で二枚目が二層の完成図だ。見てもらったら分かると思うが、部屋の数が多過ぎて魔物の数が全く足りなくなってしまった。

 

 新しくガチャで引いたラミアを追加してもあと53体の魔物を設置可能だ。だが、もうFランクは作成したくないので、最低でもEランク以上の魔物で固めるとしたらDPが全く足りない。

 

 そこで、魔物の配置を見直して最小限の追加で済むように工夫したい。

 

 

 まずは現在の魔物を確認しよう。

・リリス、シャルロット、クドラクの三人娘

・レオン

・クドラクの眷属7人

・ゴブリンキング

・ゴブリンナイト

・ホブゴブリン8匹

・ワイト3匹

・ゴブリン13匹

・マタンゴ3匹

・スライム7匹

・新しく召喚したラミア

 

 以上の48体が俺のダンジョンにいる魔物だ。ここから魔物の配置を考えていく訳だが・・・ボス部屋と戦闘部屋Aは今のままでも良いな。

 

 ボス部屋はシャルロット。戦闘部屋Aはリリス、レオン、クドラク、クドラクの眷属7人の合計10人で完成だ。

 

 あと監禁部屋の看守はスライム1匹ずつでいいか。戦闘部屋Aが抜かれなければ監禁部屋も無事だからな。とりあえず看守さえいたら監禁部屋の機能で捕虜を捕らえておけるので、必要最低限の戦力で問題ない。

 

 次はゴブリンキングを配置している戦闘部屋Bだな。ここも配置している魔物は変えなくてもいいと思うが、強化によるテコ入れはしたいな。

 

 ゴブリンキングに5000DP、ホブゴブリン達に1000DPずつ与えて強化した。

 

 

ステータス

Cランク

名無し

種族名 ゴブリンキング

戦闘力 3407 (3557)

種族スキル 【小鬼強化】 【小鬼進化】

      【暗視】 【王の威圧】

技能スキル 【武術:大剣(中級)】 

      【武術:体術(中級)】

      【統率】 【闘気】      

魔法 【攻撃魔法:土(中級)】 

 

 

ステータス

D-ランク(D+ランク)

名無し

種族名 ゴブリンパラディン(ゴブリンジェネラル)

戦闘力 935 (1685)

種族スキル 【暗視】 【小鬼鼓舞】

      【威圧】

技能スキル 【投擲】

      【武術:槍(中級)】 

      【統率】                

        

 

ステータス

D-ランク(D+ランク)

名無し

種族名 ゴブリンメイジ(ゴブリンセージ)

戦闘力 935 (1685)

種族スキル 【暗視】 【魔力操作】

技能スキル 【投擲】

魔法 【攻撃魔法:火 土(中級)】 

   【攻撃魔法:風(下級)】

   

 

ステータス

D-ランク(D+ランク)

名無し

種族名 ゴブリンシャーマン(ゴブリンプリースト)

戦闘力 935 (1685)

種族スキル 【暗視】 【魔力操作】

技能スキル 【投擲】

魔法 【攻撃魔法:水 光(中級)】

   【回復魔法:光(中級)】

   

 

 

 ゴブリンキングは進化はしなかったが戦闘力がそこそこ上昇したな。

 

 ホブゴブリン達はDランクのパラディン、メイジ、シャーマンに進化して、ゴブリンキングのスキルでジェネラル、セージ、プリーストというD+ランクの魔物に進化した。

 

 これでCランクのゴブリンキングとD+ランクの、ジェネラル3体、セージ3体、プリースト2体、ロイヤルナイト1体のそこそこの戦力の部屋になった。

 

 

 次は左ルートだ。

 

 本当は右ルートの戦闘部屋Cにも魔物を配置したいが、戦力になりそうなのはガチャで召喚したラミアだけだ。一匹だけ配置しても数の暴力で簡単に突破されてしまうからな。防衛にはまだ使えないと判断した。

 

 左ルートは余った魔物を適当に配置していく。

 

 部屋Aにゴブリンを10体。部屋Bにゴブリン3体、マタンゴ3体、ワイト3体、スライム1体を設置した。

 

 なお、多少は相手の力を確認したいので500DPでスライムを強化した。

 

 

D-ランク

名無し

種族名 キングスライム

戦闘力 529 

種族スキル 【物理軽減:大】

      【粘液大拡散】 

      【拘束】

 

 

 これで多少は相手の攻撃に耐えてくれるかもしれない。

 

 今のところ消費DPが16540DP-5000DP-8000DP-500DP=3040DPで一瞬でDPが溶けたな。

 

 もうそんなに改造できないし余ったDPでリリスを強化してやるか。

 

 リリスを3000DPで強化する。

 

 

ステータス

C+ランク

リリス

種族名 淫魔

戦闘力 4360 (4510)

固有スキル 【淫紋】 【輪廻】

種族スキル 【飛行】 【魅了】 【催眠】 

      【淫夢】 【妖香】 【吸精】 

      【誘惑】

技能スキル 【武術:体術(中級)】 【愛撫】

      【搾精】 【魔力操作】

      【魔力感知】 【魔力障壁】

魔法 【攻撃魔法:火 風 闇(中級)】 

   【強化魔法:身体強化(中級)】

 

 

 まだまだクドラクには見劣りするが、クドラクの眷属よりは強くなったな。新しい固有スキルも獲得したみたいだしリリスの強化は一旦よさそうだな。

 

 DPもなくなったし、最後に二層の戦闘部屋Fに新しく召喚したラミアを設置したことで今回のダンジョン強化は完了だな。

 

 

【挿絵表示】

 

 

【挿絵表示】

 

 

 結局、ほとんどの部屋に魔物を設置できなかったな。そろそろ罠も設置してみたいんだがマジでDPが足りない。……というか新規の魔物すら作成しなかったな。

 

 まあ、一日当たりの獲得DPは大幅に増えているから地道に改造していくか。

 

 最後に新顔のラミアのステータスを確認してダンジョンの編集は終わろうかな。

 

 

ステータス

C-ランク

名無し

種族名 ラミア 

戦闘力 2112(2212)

固有スキル 【益良雄】

種族スキル 【蛇眼】 【魅了】 【再生】

技能スキル 【武術:槍術(中級)】

      【武術:体術(中級)】

      【投擲】

魔法 【攻撃魔法:水(中級)】

 

 

 固有スキル【益良雄】ってなんだよぉぉぉおおおお!!!

 なんでラミアが男なんだ!!クソったれめ!!!!

 

 

 目の前でマッスルポーズを取り続けるラミアに心を打ち砕かれた俺は、涙を流しながら世の不条理を嘆くのだった……。

 

 

 

 

  

 

 

 戦闘部屋Bにてゴブリンキングは考えていた。かつての自分はこのダンジョンで最強の守護者であったはずだ。

 

 自身のスキルで配下のゴブリン達を強化し、偉大なる王からの信用も厚く、戦闘部屋Aを任されていた。

 

 気が付けばダンジョンには己以上の戦力が充実している。王に最高幹部として認められた”名前付き”、シャルロット様、リリス様、クドラク様。

 

 この三人までなら許せた。しかし、この三人の眷属までもが我以上の戦力になってしまった。しかも、我を倒したあの小娘だ。

 

 このままではいけない。

 

 自身の軍勢に目を向ける。ロイヤルナイト、ジェネラル、セージ、プリースト。今までとは比べ物にならない精強な我が軍だ。……だが、足りない。

 

 目指すはクドラク様の眷属に匹敵する軍団だ。

 

 自身のスキルについて考える。

 

 ゴブリンとは女を攫い、犯し、孕ませ、増殖する生物だ。

 

 大量のゴブリンを進化させるのがゴブリンキングのスキル。すなわち質より量の物量タイプのスキル。

 

 ダンジョンのシステムとは相性が悪い。クドラク様の量より質の【眷属作成】スキルの方がダンジョンに適しているのだろう。

 

 我が軍と戦闘訓練をしながら考える。王の役に立つために。

 

 

 

 

 

 

 

 コア部屋にて、クドラクとリリスによる眷属たちの戦闘訓練が行われていた。

 

 コア部屋は、もはや“訓練場”と呼んでも差し支えないほど広く、天井には魔力灯が淡い光を放っている。

 

 その中央で、クドラクが静かに手を上げた。

 

 

「……じゃあ、始める。パパの眷属として、弱いままではいけない」

 

 

 その声と同時に、空気が震えた。

 

 クドラクの静謐な魔力が、まるで月光のように淡く広がる。

 

 アリアが二刀を構えた瞬間、クドラクの姿が消える。技能スキルの【影操作】だろう。

 

 だが、影の扱いはクドラクの特権ではない。”影の低級悪魔”に進化したシャナが影の中でクドラクを捉える。

 

 

「【シャドウ・エッジ】」

 

 

 影の中から緑色の霧が噴き出し、陰からシャナを引きずり出した。クドラクの【形態変化:毒霧】だな。

 

 緑の霧は一瞬で収束しクドラクに変化する。クドラクはシャナに追撃の手刀を繰り出した。

 

 

「「【スラッシュ】」」

 

 

 クドラクの手刀をカイル、レックスが受け止めた。

 

 

「いきます!【ファイア・バースト】」

 

「合わせよう。【トルネード】」

 

 

 アルがクドラクに向かって炎のビームを放ち、メリッサが風の竜巻で援護する。

 

 

「……【アビス・ブレイド】」

 

 

 クドラクが闇を収束させた斬撃を放つ。闇が炎と風を貫いてアルに迫る。

 

 

「……魔力の質が違いすぎる……!」

 

 

 魔法をあっさりと突破されたメリッサが悔しげに唇を噛む。

 

 

「【ハード・スラッシュ】」

 

「【パリィ】」

 

「【ファイア・ウォール】」

 

 

 咄嗟にカイルとレックスがスキルで庇い、アルが炎の防壁を展開したが、三人とも吹き飛んだ。

 

 

「エリア・ヒール」

 

 

 ジャンヌの回復魔法で三人は即座に復帰する。

 

 さらに、大技を放ったクドラクにアリアとシャナが襲い掛かる。

 

 

「【絶剣】」

 

「【アサシン・エッジ】」

 

「……甘い。【魔力障壁】」

 

 

 迫る【絶剣】の斬撃に、相反する属性の魔力で障壁を展開。アリアの意図しないタイミングで爆発を起こす。

 

 爆発に巻き込まれてシャナが吹き飛んだ。アリアは咄嗟に【縮地】で上に飛んだが、【飛行】スキルに慣れていないアリアは着地まで無防備だ。

 

 アル、カイル、レックスも回復はしているが、吹き飛ばされた影響で離れた位置にいる。

 

 このタイミングを逃すほどクドラクは甘くない。一番厄介な回復魔法を使うジャンヌを強襲した。

 

 

「やらせん。【アクア・ランス】」

 

 

 メリッサはクドラクの狙いを分かっていた。先読みして準備していた渾身の魔法を放つ。

 

 鋭い”水槍”がクドラクの死角から飛ぶ。しかしクドラクは振り向きもせず、影を伸ばして”水槍”を絡め取り、メリッサに跳ね返す。

 

 

「……それは反則だろ!」

 

 

 メリッサが慌てて横に飛ぶ。これでメリッサもクドラクの邪魔ができない。

 

 ジャンヌ自身もシャナの回復のために魔力を練っていたので反応が遅れている。

 

 

「【吸血】」

 

 

 クドラクは左手でジャンヌの首を絞めながら、ジャンヌの首に嚙みついて血と魔力を吸う。

 

 首筋に牙が触れた瞬間、ジャンヌの身体が震える。

 

 【吸血】は相手に快楽を与える効果がある。日頃からクドラクに吸われているジャンヌは、抵抗どころかクドラクに身を任せているようにも見える。

 

 回復役のジャンヌが脱落したことで眷属たちはジワジワと削られていった。

 

 

「……はい、クドの勝ち」

 

「くぅ……!7人掛かりで負けた……!」

 

「……うん。アリア、強くなってる。パパの血のおかげ」

 

「それ言われると複雑なんだけど!?」

 

 

 アリアは悔しそうにしつつも、どこか嬉しそうだった。

 

 その横でメリッサが汗を拭いながらぼやく。

 

 

「はぁ……私以上の魔力制御。……魔力の流れが全然違う……。でも……追いついて見せる……!」

 

 

 シャナは影からぬるりと現れ、俺の足元に跪いた。

 

 

「お館様。訓練の成果、必ずお見せします。……次は、もっと強くなれる」

 

 

 ジャンヌは胸元を押さえながら、控えめに手を挙げる。

 

 

「……あの、服……もう少し布を増やしていただけると……その……動くたびに色々と……」

 

 

 この戦闘訓練でジャンヌの胸が零れた回数は3回。3回ともしっかり拝ませてもらった。

 

 

「ジャンヌ、似合ってるぞ。最高だ」

 

「……っ、視線がいやらしいです……!」

 

 

 そんなやり取りをしていると、背後からシャルロットが腕を組んで現れた。

 

 

「主様よ。そろそろ訓練は終わりでよいのではないか? 我は主様の膝の上で休みたいのじゃが」

 

「おいシャル、訓練中に甘えるな。ほら、みんな見てるぞ」

 

「構わぬ。主様の膝は我の特権じゃ」

 

 

 レオンにスキルをかけまくっていたリリスがすかさず割り込む。

 

 

「はぁ!? 何勝手に特権とか言ってんのよ! マスターの膝は私の指定席よ!」

 

「……パパの膝はクドのもの」

 

 

 三者三様の主張がぶつかり、眷属たちがざわつく。

 

 

「……あの、訓練は……?」

 

「どうするんだろう……?」

 

「親父ぃ……あれが主の争奪戦か……」

 

 

 俺は頭を抱えながらため息をつく。

 

 

「お前ら……せめて順番を決めろ……」

 

「順番など不要じゃ。主様は我が独占する」

 

「独占なんて許さないわよ!」

 

「……パパはクドのもの」

 

 

 諦めた俺は、三人を引き連れてコア部屋の生活エリアに戻るのだった。

 

 途中、リリスのスキルの影響で、ズボンにありえないサイズのテントを立てて白目で気絶したレオンを見た気がするが……多分気のせいだな。

 

 

 

 

 

 

 その頃、ラミアは戦闘部屋Fで一人筋トレに励んでいた……。

 

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