無能治癒師だった私ですが、魔獣や魔族には効くようです。   作:麗紫 水晶

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 2話目にございます。
では………。


私の出来る限り……。

 私は”イザリア・キャンベラ”27歳女性、独身……もう少しでアラサー世代だが何か?まだ3年もあるがな。

 

 私は人間の治癒師をしていたが、力が使えず散々な言われようで、居場所が失くなりラドル国を身一つで飛び出した……絶望で生きる気力も皆無で、いく宛の無いまま森にさ迷い込んで奥へと進んでいた。

 そのまま消えてしまった方が良いとも思いながら……。

 だが、その絶望から救ってくれたのは魔獣のメリル……全身は黒豹に似ているが、2本の長い牙と尻尾の先端が三矛の形になっている獣で、怪我を治癒したら完全回復して懐かれてしまった。

 一番驚いたのは私自身だ!人の治癒は全くの皆無な程の力しか無かった私が、魔獣は完全回復だなんて……信じられない事だが事実なのだ。現にメリルに懐かれてしまい、私は一緒に行動する事にした。

 更には、お告げ?の様な言葉が頭の中で聴こえて来て、魔獣治癒やら魔獣使役やら収納やら分量調節やら……レベル付きで使える様になった。あ、これって聞いた事がある……スキルと言うものでは?

 何故急にそんなものが発動したかは分からないが、使える様になったからには存分に使わせて貰うつもりだ。レベルも上がりそうだから、強い治癒や強力な魔獣使役も出来るかもしれない。

 急に能力が発動したものだから、心が死亡フラグだった私は足掻く事にした。

 生き抜いて国を見返してやろうと……。

 

 私はメリルと共に森の中を進んでいた、メリルが先導してくれるお陰で道なき所も割りと進みやすい。

 時折果実を見付けて収納し、食料確保も同時進行で進んでいた。

 森の中なのに、日差しが差し込んでいて明るい。改めてこんなに綺麗だったんだと実感した。確かに魔獣が沢山徘徊している事は重々承知している。危険度が高いことも……。

 だが、絶望と言う暗闇の中では森の中を認識する事は出来なかった。気の持ちようとよく言われるが、その通りかもしれない。

 私達は収納した水を摂りつつ、日が暮れる迄にある程度進んでおきたいと思っていた。かなり大きな森と聞いた事があったので、抜ける為には少しでも進んでおく必要がある。この先まだまだ危険性がある事も分かっている。無理は禁物だけど……何とか抜けたい……そうも思っていた。

 そうして進んでいるとメリルが急に立ち止まった。

 姿勢を低くして警戒している。

 

「どうしたの?」

 

 私も咄嗟にしゃがんで、周りを見渡し、音を感じてみた。

 少し離れてはいるが、自然の木々や植物の音とは違う騒ぎの様な音……。

 

《集音レベル1を獲得しました。》

 

 ……マジで!何なのこの滅茶苦茶な発動条件!マジチートだわ……。

 ここから約150m位かな……魔獣らしき声と……人間!?しかも複数……マズイ……何故この森の奥で人間がいるの?あまり近付きたくはないけど……気になるし……。

 

「メリル、気付かれないようにゆっくり近付こう。」

 

「ガルッ。」

 

 顔を見合ってゆっくりと近付いていく。気配を悟られないように……。

 

「お前は後方から殺れ!てめえは横からだ!」

 

「おうっ!」

 

「任せな!」

 

 茂み中から覗き込むと、1匹の魔獣を3人がかりで男達が囲んでいて2人は武器を、1人はロープを持って構えていた。その側で柵の檻になった荷馬車と小柄で小太りな男が1人、手綱を握っている男が1人待機していた。

 

「お前達!絶対逃がすんじゃないぞ!“フレイムスパイダー”魔獣の希少種は高額で売れる、生きてる方が値が高いが……万が一死んだとしても素材としても充分だ!何としても捕まえるんだ!」

 

 ……ああ……密猟者か……まあ、冒険者の感じには見えなかったからそうかなぁとは思ってたけどその通りだとはね。

 で、“フレイムスパイダー”!?よく見ると、体長1.5m位の蜘蛛で、全身白い体躯で背中に焔の紋様がある、確かに珍しい魔獣だ。蜘蛛だから動きは素早いはずだけど……左の後ろ足2本切り落とされてる!?そうかそれで動きが鈍ってたんだ。困ったな、見過ごす事も出来るけど……。

 

「グルルル……。」

 

「ん?メリル、どうしたの?」

 

 彼等を見た途端に形相が変わった?どうして……まさか!あの時の怪我ってコイツらが?

 私はメリルに深呼吸させるかの様に背中を撫でた。

 

「メリル、あの蜘蛛ちゃんを助けたいんだけど力を貸してくれる?」

 

「ガル?」

 

 どういう事?と言わんばかりにメリルが私の方を振り向く。

 

「メリル、あの蜘蛛ちゃんの後ろにいる男の注意を反らして欲しいの。それから横にいる男からロープを奪う事って出来る?」

 

 私はそう伝えると、ゴロゴロと喉を鳴らして頭を擦り付けて来た。か、可愛い……。

 

「私はその隙を狙って蜘蛛ちゃんに治癒を施して逃げられる様にする。そしてお互いに其処から離れるの、出来そう?」

 

「ガルッ。」

 

 今度は頷いて、彼等を見定めていた。目標を確認している様だった。

 私も直ぐに発動出来る様に、ある程度掌に集中しておく。と言っても、蜘蛛ちゃんにたどり着ければの話なのだが……。

 

「今!」

 

 その掛け声と共にメリルが茂みから飛び出していく。

 

「な、なんだ!」

 

「こ、こいつっ!ぐわぁっ!目がぁっ!」

 

 フレイムスパイダーの後ろにいた男が、メリルのムーンサルトで尻尾の三矛で片目を切り裂かれてのたうち回った。

 そのまま、もう1人に飛び掛かって押し倒し、ロープを奪い取る!

 

「こ、こいつっ!」

 

「こいつはさっきの逃がした“トライデントパンサー”かもしれん!生死は問わん、倒すんだ!」

 

「ちっ!簡単に言いやがるぜ、おらぁっ!」

 

 ロングソードを持った男が、メリルに向かって振り下ろして来た!

 

「ぐっ!こいつっ!」

 

 メリルも尻尾で剣を受け止めていた。かなりの怒りを見せている、私にじゃなくて良かった。あんな顔で食い殺されたら、死んでもその記憶が残ると思うし……。よし、今だ!

 

 私も茂みから飛び出して蜘蛛ちゃんに向かって走り寄る!蜘蛛ちゃんも逃げようとしたが、上手く動けない。私はすかさず斬られた2本足のつけねに掌をかざして集中した。

 

「……ヒール!……。」

 

 眩い光が蜘蛛ちゃんを包み込んでいく、するとどうだろう?痛みを軽減する程度のつもりが…さ、再生してるだとぉ!…私は一体何なんだ!あ、治癒師か……い、いやいやいや、再生なんて超高位の治癒でしょ!私自身がビックリ!

 完全に2本の足が生えて蜘蛛ちゃん復活!蜘蛛ちゃんが自分の復活した足を見て歓喜の声を挙げたのは言うまでもなく……。

 

「くっ、これならどうだ!」

 

 メリルと剣を交えていた男が、もう片方の手でショートソードを抜刀しメリルに斬りかかろうとした!

 

「メリルっ!」

 

 私は咄嗟に叫んでいた。こんな危険な事を頼んではいけなかったか?浅はかだったかもしれない……。

 

「ギギィッ!」

 

「なっ!?何だこりゃっ!糸が絡み付いて……ま、まさかアイツか?」

 

 突然男の上半身を蜘蛛の糸で羽交い締めにした蜘蛛ちゃんが……。

 

「くっ、身動きが……。」

 

 男は必至にもがくが糸を切る事が出来ない。その糸が1本、蜘蛛ちゃんまで延びていた。

 その時、私は思い違いをしていた。人間の様に捕物帖とばかりに捕まえて逃がさないように1本繋いでいるものと思っていた。だが、蜘蛛ちゃんは躊躇わず口から火を吹いたのだ!

 導火線の様に蜘蛛ちゃんの糸が燃えていく……。

 

「や、やめろっ!止めてくれ!止めろぉぉ!」

 

 火が男に達し、体に巻き付いた糸が一気に燃え上がり男を焔で包んでいた……。

 

「あ、あわわわ。に、逃げるぞ!ば、馬車をだせっ!」

 

「お、置いてかないでくれぇ!」

 

 他の男達は焼かれている男を助ける事もなく、馬車に乗ってその場を立ち去っていった……。

 私は呆然とその光景を見ていた……魔獣も恐ろしいモノと再認識し、人間も浅はかで弱く、愚かで残酷だなと実感したのだ。獣の方が自然の摂理に従っているのかもしれない……。

 

「ギィ……。」

 

 男が崩れ落ちて、動かなくなった後蜘蛛ちゃんがゆっくりと私の方に振り向いて来た。

 メリルも私の傍に戻って来た。私は即座に撫でていた。

 

「ごめんね、無理させて……。」

 

「ゴロゴロゴロゴロ……。」

 

 私に甘えて頭を擦り付けてくれる……大事な友達である。

 

「キュルルルルゥ?」

 

 は!?え!?どうしたの?………あ、あの……。

 

「あ、えと、ごめんね!メリルを助けてくれてありがとう。もう大丈夫だから、今度は気を付けてね。」

 

 私がサヨナラしようと手を振るが、離れようとしない。

 

「キュルルルルゥゥ……。」

 

 きゃあっ!8個の眼でウルルン目線辞めてぇっ!

 こ、これはずるいっ!ずるいぞ!その目線で何匹の相手を落として来たんだ!

 ……全く……まあ、いいかぁ。

 

「君も一緒に行くかい?」

 

「キュルッ!」

 

 すかさず、返事を返して来た蜘蛛ちゃん。

 

「じゃあ、名前をつけないとだねぇ。う~ん…。」

 

 雄か雌かは分からないけど……これかな?

 

「ジュエラ?ジュエラでどうかな?」

 

「キュルゥッ!」

 

 あ、前足2本上げて喜んでるっぽい。

 

《魔獣使役レベル3になりました。魔獣治癒レベル4になりました。トライデントパンサーがレベル2になりました。》

 

 何その飛び級しました的なレベル!もう何言われても平気な気がしてきた……。

 

「これからよろしくジュエラ!」

 

「キュルッ!」

 

 何だかよく見ると可愛い……使役レベルが上がったせいかな?だけどジュエラが火を吹けるなんて……メリルの尻尾も凄いけど、頼もしい仲間が増えた感じで嬉しいな。

 

「よしっ、まずはここから離れよう。追っ手が来ても困るし。」

 

 私と2匹は改めて森の中を進み始めた。追跡されないようにジグザグに、しかも足跡を消しながら……。

 

 どの位かな移動したの?う~んと、直線にすると5~6km位かな?右往左往したり真っ直ぐ進んだりしたからハッキリとは言えないけど、結構離れた気はする……。

 で、薄暗くなって来たのもあってここで野宿する事にした。とは言うものの、ここは魔獣の棲む森の中。

 いつ他の魔獣に襲われでもしたらと思うと危険極まりない……と心配していたら、ジュエラが半径10m位に糸を張って敵が侵入してきたら分かる様になってるとか……優秀な子だ、レベルが上がった時が楽しみだ。あ~後は焚き火だよねぇ……火はジュエラにお願いするとして、枯枝を集めないと……と、集めるのに四苦八苦していたらジュエラが集めてくれていた。

 すみません、お荷物な私で……。

 早速火を付けてくれて灯りと焚き火が出来上がった。収納から果実と水を取り出して分け、移動中に川魚をメリルが捕ってくれてたので、枝を1本1匹ずつ刺し、焚き火に炙って焼くことにした。メリルとジュエラは“生”でも食べれるかもだが、私には無理。お腹を壊したく無いし焼いた方が身も美味しいだろうし。

 果実を食べ終わった2匹はまだかまだかとヨダレを垂らしつつ焼けるのを待っていた。うん、良い匂いがしてきた…頃合いかな?

 少し身を開いてみると焼けている様だ。1匹ずつメリルとジュエラに枝を抜いて渡した。

 

「熱いからね、冷ましながら食べて……と言っても無理かなぁ……。」

 

 もう既に2匹は咀嚼している。美味しい時ほど寡黙に食べる。焼いた魚…が初めてだったのだろう、瞬きする間も無いくらい黙々と食べていた。私も頂こうっと……。

 いやぁ久しぶりの食事………国にいた頃じゃこんな美味しい物にもありつけなかったからなぁ、今の方が贅沢だなんて……でも結果オーライだ!私は今の方が充実してる、これはこれで満足かな。

 あ、お腹一杯になったら急に眠たくなってきたな。確かにずっと動きっぱなしだったし、眠たい……。

 私が座ったままうとうとしていたら、メリルが寄り添って来た。ジュエラが糸で敷物を編んでくれて、粘着性は無く弾力があって柔らかい毛布の様な感じの織物を敷いてくれた。ジュエラ……スゴすぎでしょ……どこまで素晴らしいの?

 

「一緒に寝よ。」

 

 私はメリルとジュエラ2匹とくっつく様に横になった。魔獣と添い寝なんて……私も自分で驚いている。こんな日が来ようとは……充実感あるわぁ………おやすみなさい………zzz………。

 




 読了ありがとうございます。
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