無能治癒師だった私ですが、魔獣や魔族には効くようです。   作:麗紫 水晶

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 6話目でございます。
 では………。



ダークエルフの集落。前編

私はイザリア・キャンベラ”27歳女性、独身……彼氏どころじゃなかったのが現状。

 

 私はこれでも人間の治癒師をしていた……だがある時急に力が皆無の状態で、それ以降、友人にも見放され、徐々に周りから構われなくなり、人々からの信用も失い、価値も居場所も無くなり、追い出されるかのように身一つで飛び出す羽目になった。

 ……希望……そんなものはなく……絶望と言う2文字が私を覆い尽くし、いく宛の無いままに森をさ迷っていた……そのまま私は魔獣にでも喰われて消えてしまった方が良いのでは……と自暴自棄になりながら歩いていた……。

 

 だが、奇跡と言う2文字が本当にあると言うことを知った……私の治癒の力は使えなかった訳じゃなかった……それは人を治癒するものではなく、魔獣や魔族を治す事が出来る治癒……これが元で、私と一緒に旅をしてくれる事になった3匹の魔獣とダークエルフとミノタウロス……異色なパーティーの出来上がりである。私にとっては……最高の仲間だ。

 

 今私達は、ミノタウロスのアルバスを助けた場所に留まっていた。私が気を失っていた事もあり、むやみに移動しても危険があると皆の意見が一致したらしい。意識が戻るまで野宿……となった。

 私も何とか意識は取り戻したが、ミノタウロスが会話が出来る事に驚いて……心臓がいくつ必要か計算しとかないと……。

 一緒について行くと言うので、名前を付けて……頼もしい仲間がまた1人増えた、と喜ぶ今日この頃の私……。

 やはり移動した方が良い感じだな、更に進んで森を把握出来れば動きやすくなるし……。

 

「さてと、みんなそろそろ移動しようか。ねぇアルミラ、さっき気になったんだけどダークエルフの村って近いの?女性達を帰したって聞いたけど、そんなに遠い距離じゃないって事?」

 

「や、ちょ、ちょっと待って!何でまた急に?村に行ってどうするんだ?」

 

 彼女が慌てて動揺しているのが分かる。でも、アルミラは部族に認めて貰うために外に出てきた訳だし、ミノタウロスのアルバスの事もあるしねぇ、避けて通れないでしょ。

 

「アルミラが乗り気じゃないのも分かるけど、アルバスの事もあるしアルミラを認めさせたいしね。」

 

「あ、アタシは別に……。」

 

「だ~め!後ろから狙われたらどうするの?同じ部族同士でなんて……寝覚めが悪すぎる!」

 

「はぁ~…。言い出したら聞かないんだよねイザリアは……。」

 

「俺はどうせ飯で雇われてただけだからな。今はお嬢に仕えると誓った身だ、俺にはその方が大事だ。」

 

「まあ、私が繋がりを作っておきたいだけってのもあるけどね。」

 

「…分かった、案内するよ。但し、無茶は駄目だからな!」

 

「心配してくれるんだぁ、ありがとうアルミラ。大好きだよw」

 

「ばっ、バカっ!恥ずかしい事を何でさらっと……。あ、アタシもす、好きだけどさ……ぶつぶつ……。」

 

 頬を紅くして可愛い、あらメリルとジュエラが甘えて来た。焼きもち妬いてくれるの?

 

「ゴロゴロゴロゴロ。」

 

「キュルルゥ。」

 

 身体を寄せてくる2匹を同時に撫でる。魔獣だろうとその優しさは嬉しい。

 

「ありがと、勿論みんな大好きだよw」

 

「ドルッ!」

 

「へへ……。」

 

 私にとってはみんな大事でかけがえのない大好きな仲間……。

 

「な、なあイザリア、あの黒い手は一体何なんだ?」

 

 恐る恐るアルミラが聞いてくる。でも、なんの事?

 

「黒い手?何それ?」

 

「え、は、いや、分からないなら何でもない!気のせいだったんだきっと……気のせい気のせい……あはは……。」

 

 誤魔化してる感がハッキリ分かるよ、怪しい事この上ない。みんなを見回すと慌ててそっぽを向いている、明らかに怪しい……。

 まあ、いいか。知った所で扱えるかどうか分からないし、何か不気味感が半端ないし。

 

「さてと、じゃあダークエルフの村へ出発!アルミラ案内ヨロシク!」

 

「分かった、行こう。こっちだ。」

 

 アルミラの先導のもと、私達はその場を後にし、ダークエルフの村へと向かった。北北東位の方角と言った方が良いだろうか……日の光は木々の葉に遮られ、まばらに差し込んでいるだけだし、同じ様な周りの光景で感覚が鈍りそうだ。

 みんなドルクの背に乗って、周りを警戒しつつダークエルフの村へと向かっていった。木々を倒しながらなので……後ろに道が出来ているのは言うまでも無く……何か……ごめんなさい……。

 3人の女性達は無事に戻れたのかな?いくら近い場所だからって、魔獣に襲われでもしたら大変だと思うんだけど……。

 

「あの3人無事に村に着いたかな?」

 

「大丈夫だ、この近辺まで魔獣は近付かないように結界を貼ってある。怪我をしたのなら別だが、襲われる事はない筈だ。」

 

「なら、良いけど……。」

 

 私は不安が付きまとって離れなかった。結界を疑う訳ではないが、万が一、想定外があったりしたら……そう思ったら心配だった。

 そして、その心配が現実となった……。

 

「悪いがここからは全員で歩きだ。」

 

 アルミラが、ドルクの進行を止めて私達に声を掛けてきた。近くまで来たが、入り口まで道を作ってしまうと大変らしい。なので、ドルクには見張り役をお願いした。

 

「あ、それと倒して来た木々を薪にしてもらって良い?後で集めるから。前回のもそうなんだけど良い薪なんだよねぇ、お願い出来る?」

 

「ドルッ!」

 

 任せろとばかりに鋏でのグッドポーズ。そう、収納もレベルが上がってそれぞれのスペースも大きくなったから、折角だし薪として蓄えて行こうと考えた。

 

「じゃあこっちだ。」

 

「何か感じたら大声で教えてね!」

 

「ドルッ!」

 

 私達はアルミラの後を追って進んで行く。私の前にメリルが、後ろにはジュエラとアルバスが並んでいた。万が一戦闘になった時にはアルバスも両刃の戦斧を背中に背負っている。アルミラは細身の剣と弓を。アルバスには盾もあると良いかもと思った。私が戦えない分、近接戦闘を任せるのでなるべく怪我の負担を減らしてあげたい。勿論!私の治癒で回復はするつもりだ。治癒師として存分に発揮出来る事はこれ以上ない喜びだ。人の国では全く出来なかった事だから………。

 

「ここが入り口だ。」

 

 アルミラが足を止めた。

 私達も前を見ると根本に窪みのある、他よりは大きめの大樹があった。周りにも木々が生えているので、確かに外部の者には分かりづらい。

 その木の前でメリルとジュエラが臭いをかぎだした。

 

「こ、これは……。」

 

「まさか…血が……。」

 

「そうみたいだな。」

 

 地面を土や枯れ葉で誤魔化してはあるが、明らかに血の跡がある。そしてこの木の前で消えている。

 

「アルミラ、行こう!」

 

 みんな頷きあって、大樹の方へと向き直りアルミラが何か呪文の様なモノを唱える。すると、大樹の窪みが大きくなり人が通れる程の空洞が出来る。

 

「凄い……。」

 

 私には初めての事だったので、驚きだった……。

 

「行こう。」

 

 アルミラが私の手を取り、中へと入って行く。引かれて続いて行く私……。

 メリルとジュエラも続き、アルバスは四つん這いで入って来た。すると木は元の形へと戻り、入り口が塞がっていた。

 

「ようこそ、ダークエルフの村へ。」

 

 アルミラが、立ち止まって周りを見渡す様に促してきた。

 

「凄い………。」

 

 エルフの村に似ているとの事だが、大樹が立ち並びその木の中をくり貫いて部屋や階段を作り、上の方では架け橋が幾つも掛けられダークエルフ達が行き来できるようになっている。

 ただ、普段なら落ちついた村である筈が、何やら騒いでいた。村の者達が1ヶ所に集まっている。私達はそこに向かった。

 

「エミラっ!エミラぁっ!」

 

 どうやら帰した3人のエルフ達だ。

 抱き抱えている女性は別だが、一緒にいた2人は部屋の隅で座り込み、お互いに手を取り合って必至に祈っている。怪我をしている女性の傍に2人の男性のダークエルフが居た。

 

「エ、エミラは助かるのですか?」

 

「う、う~む……。」

 

 1人の男性のダークエルフが、汗を流しながら魔法だろうか……手をかざして詠唱し怪我の部位を光らせている。ただ、時間がかかっているようで治しきれないでいる。

 彼女は左足を怪我と言うか、噛まれた跡の様で止血は出来たようだが、毒だろう綺麗な褐色肌がどす黒く変色し徐々に広がりだしていた。

 

「娘は、助かるのかエイサムよ。」

 

 切なそうな顔で問いただす、治癒する隣で何も出来ずに見守っている男のエルフ。

 

「長……何とか止血は出来ましたが、毒が止められませぬ!話を聞く限り、グレーエッジスネークに噛まれたとの事。あの集団に襲われて、毒にかかった者は専用の毒消し薬か魔法でないと解毒出来ませぬ。しかし、それを用意するには時間が足りませぬ!」

 

 どうやら、族長と娘を抱えているのは母親かな?村の治癒師みたいだけど、解毒仕切れないみたいだね。

 

「イザリア、頼めるか?」

 

 真剣な顔で、私に話し掛けてくるアルミラ。彼女達だけを先に帰した事を後悔しているのか、必至に助けたいのが伝わって来る。

 

「分かった、やるだけやってみよ。」

 

「よし、みんな!退いてくれ!」

 

 アルミラが大声で後方から叫んだので、一斉に振り向く。

 

「ア、アルミラ!?」

 

「なっ!何だコイツらは!魔獣まで居るぞ!」

 

「こ、こんな時に何でコイツらが!」

 

 当たり前の分かりきった反応だと動じずに、アルミラが話し出した。

 

「彼女は私の主でイザリアと言う!凄腕の治癒師で、

ここに居る魔獣や魔族を完全に治癒した!その力を長の娘、エミラにも使って貰いたいと思っている!診させては貰えないか?」

 

 周りがざわついた。当然だろう、全く知らない者が現れて疑わない方がおかしいくらいだ。

 

「アルミラ様の言うことは信用出来ぬ!」

 

「そうだ!その治癒師とやらは人間ではないか!」

 

「そうだ!治癒すると見せかけて何かを企んでいるんじゃないの!」

 

「余所者がでしゃばる所ではない!魔獣まで連れて来るとは!」

 

「そうだ、そうだ!」

 

 村の者達が騒ぎだした。見ず知らずの、しかも村の治癒師が治せないでいる毒を治癒するとなれば、疑わない訳がない。

 

「そんな事を言ってる時じゃない!一刻を争うんだ!長!どうか任せてくれないか!」

 

「アルミラ……お前……。」

 

 長と奥さんかな?2人が頷きあって、私達の方を向いた。

 

「分かった、頼む!」

 

「族長!……。」

 

「長……。」

 

 周りから聞こえる残念そうな声。だが、娘の命がかかっている事も分かっているだけに、それ以上は言わなくなった。

 

「イザリア、頼む。」

 

「分かった、お邪魔するわ。」

 

 私は長と治癒師との間にしゃがみこむ。額に脂汗を流し、苦しい表情を浮かべるエミラ。

 

「失礼しますね。……ヒール!……。」

 

 私も手をかざして、左足の噛まれた部分に集中する。その周りが光を帯びて、傷口が綺麗に無くなりどす黒くなった褐色肌がみるみる元どうりに戻っていく……。

 

「おおお……。」

 

「あ、あなた……。」

 

「何と!この猛毒を解毒したと言うのか……。」

 

「「エ、エミラ!」」

 

 エミラの表情が落ち着きを取り戻し、静かな寝息をたて始めた。良かった、私も半信半疑だったんだよね。こんな猛毒治せるのかな?ってね。

 私は収納からあるものを取り出してエミラの下に敷いてあげた。それはジュエラが作ってくれた敷物……。

 

「おおっ!何と言う弾力と柔らかさだ。何だ、この敷物は?」

 

「回復するまで、寝かせてあげて下さい。その内に目が覚めるでしょう。」

 

「あああ、エミラ…エミラ……。」

 

 母親が、穏やかになった娘に頬を寄せて涙を流している。人間じゃなくても、役にたてたのは私も嬉しい。

 

「そ、そんな……。」

 

「あの怪我と猛毒を治せるなど……。」

 

「しかし、現に治ったのは事実だ……。」

 

「一体何者なのかしら?」

 

 村の者がざわつく中、私達は長に促され広い部屋へと案内された。

 私達全員と、奥方とダークエルフの治癒師とが同行していた。娘のエミラは、一緒にいた2人の女性に任せて来たようだ。

 円卓に椅子が並べられ、長と両隣に奥方と治癒師とが座り、向かいには私と両隣にアルミラとアルバスが座り、私の足元にメリルとジュエラが座った。

 

「まずは、礼を言わせてくれ。娘を救ってくれて感謝する!」

 

 3人が頭を下げる。一緒にアルミラが頭を下げていたのが気になった。

 

「い、いえ、でしゃばった事をしました。頭を上げて下さい、お嬢さんが治って何よりです。」

 

「父様がここまで言うのは珍しいぞ。」

 

 アルミラが私にそう言い掛けてきた。……ん!?今、父様がって言った?

 

「え!?と、父様って……?」

 

 驚いて、アルミラの顔を見つめてしまった……族長の娘!!

 

「アルミラ、驚かせるでない。客人に失礼ではないか。」

 

「先程の方も娘さんですよね?アルミラもそうなのですか?」

 

「うむ、アルミラは三女にあたる。上に2人の姉と1人の兄がいる。息子は、別の場所へ魔獣討伐に出掛けていて不在だが。」

 

「そうなんですね、アルミラが族長さんの娘さんとは知りませんでした。」

 

 先に言っといてよね、色んな話をした時はあるけど族長の娘なんて一言も聞いてないし……まあ、よっぽどでない限り話さないか。

 

「それで、何故私達の村に?アルミラが先程貴女を主と……。」

 

 そりゃ奥方も不思議がるよねぇ。

 

「話は長くなりますが、聞いて頂けますか?」

 

 長と奥方、治癒師の3人はお互いに顔を見合った。

 

「話してくれるか?」

 

「分かりました、では……。」

 

 私は、事の経緯から話し出した。スキルまでの詳しい事までは話さないが、国を追われてから、メリルやジュエラ、アルミラとドルク、アルバスに出会い、怪我を治した事がきっかけで絆が出来て一緒に旅をしてきたこと。と言ってもまだそんなに日にちは経ってないけどね。そして、アルミラとアルバスを一緒に旅をすることを了承して欲しいと頼んだ。

 

「2人は私にとっては大事な友人であり、仲間です。どうかお願いします!一緒に旅をすることをお許し下さい!」

 

 私は頭を下げた。折角親しくなれた2人だ、離れたくなかった……。

 

「父様、母様、アタシからもお願いします!イザリアはアタシにとっても恩人で大事な仲間……一緒に居たいんです、お願いします!」

 

「俺もお嬢に救ってもらった恩がある。お嬢を護ると誓った。だから、悪いが護衛の仕事からは抜けさせてもらう。」

 

「2人とも……。」

 

 何だか嬉しかった、今までこんなに慕われた事がなかったから……。

 

「娘を救ってくれた恩もある…断る理由も無いだろう。何より、小魔獣位は使役している者を見たことはあるが、魔族すら使役出来た者が居ない程の、獰猛と恐れられる希少魔獣を使役するなど前代未聞。大人しく、しかも懐いているなどそんな光景は初めてだ。」

 

「では、父様!」

 

「イザリア殿、足手まといかも知れぬが娘を宜しく頼む。」

 

「ありがとうございます!」

 

「やたっ!イザリア、一緒に居られる!」

 

「あ、ちょっと、待っ……。」

 

 アルミラが飛び付いて来たので椅子ごと後ろにひっくり返った。

 

「こら!アルミラ、はしゃぎ過ぎです!」

 

「ご、ごめん!イザリア、大丈夫か?」

 

「あ…あはは、何とか無事そう……いつつ…。」

 

「済まない、勢いづいた……てへ。」

 

 逮捕だぁ!この美人で可愛いダークエルフを逮捕しろ~~!許してしまうではないか~~!まあいっか。

 まずは、一安心だね。後はこれからどうするか……そう言えば毒蛇の集団に襲われたって行ってたっけ?

 このままだとまた被害に遭う村人が居るって事だよね……マジか~~、アルミラの故郷だし撃退しておかないとダメって事か……。

 ま、何処に急ぐ訳じゃなし被害を押さえておきますか………って私たちで出来るかな?…………。

 

《魔族治癒レベル5を獲得しました。》

 

≪毒耐性・麻痺耐性・睡眠耐性レベル4を獲得しました。≫

 

 

 




 読了ありがとうございます。
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