刻を廻る術師の話   作:もく 

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百鬼夜行後の軽い日常回となります。短めで申し訳ございません。
一部、他の作品の要素が含まれるシーンがございますが、気にせずそのまま読み進めていただけますと嬉しいです。

アンケートが全項目1票ずつで来週以降どうしようかずっと考えているところです。本当に難しい…


16話 少女の願いと少年の思い

「いえーい、死刑取り消し~!」

 

高専の教室に、白制服を着た照の能天気な声が響いた。

その様子に、パンダが呆れたようにツッコミを入れる。

 

「やっぱ次はお前だったか……てか死刑だったのかよ!?」

 

「ツナツナ!」

 

棘も驚きを隠せない。その時、憂太がふと辺りを見回した。

 

「あれ、月詠君は?」

 

――ガン。

 

手荒く教室のドアを開けて入ってきた月詠の制服は、白ではなく、いつもの黒い通常の制服のままだった。

月詠は照の白い上着を一瞥し、短く鼻を鳴らす。

 

「似合ってるぞ、照」

 

「なんで着てないのさ!」

 

「悟のときはなかったらしいぞ? じゃあ俺も別にいいだろ」

 

「えぇ……」

 

双子の温度差に照が肩を落とす。その横で、真希は照の白制服をじっと見つめ、小さく、誰にも聞こえない声で呟いた。

 

「特級か……」

 

だが、その呟きを隣のパンダだけは見逃さなかった。

 

(お~?)

 

 

そこへ、タイミングよく五条が軽い足取りで教室に入ってきた。

 

「はいはーい! 今年教えることもう終わっちゃったし、今日の授業はなし! それぞれペアで適当に鍛錬ね。はいクジ、せーの!」

 

五条が差し出したクジを、全員が一斉に引く。

 

「3!」と照

「3」と月詠

「1」と真希

「1!」とパンダ

「2番だ」と憂太

「こんぶ」と棘、手には2番の割り箸を握っていた

 

「じゃあ解散!」

 

五条の号令とともに、生徒たちはそれぞれ校庭の別々の場所へと散っていった。

 

グラウンドの隅、そして林の奥。それぞれ分かれた場所で、パンダと月詠は、目の前の相手に対して同時に口を開いた。

 

「そんで、照とは順調か?」

「いつまで嘘つくんだよ」

 

突拍子もない質問に、それぞれの相手が眉をひそめる。

 

「なんでそれ聞くんだよ」

「ん? なにが?」

 

パンダと月詠は、確信を込めてそれぞれに言い放った。

 

「だってお前――」

「照のこと好きなんだろ?」「真希のこと好きだろ」」

 

「なんでそうなんだよ! 殺すぞパンダ!」

 

真希はいきなり大刀の刀身を剥き出しにして、猛烈な勢いでパンダに斬りかかった。

 

「いやいやいや! 思っただけ! 思っただけ!」

 

大慌てで武器を受け止め、パンダが必死に弁明する。

 

「まあ落ち着けよ、別にからかうつもりはねえって。片想いってわけじゃなさそうだしさ」

 

「なっ……!」

 

真希の顔がみるみる赤く染まっていく。

 

 

 

一方、林の奥で月詠と対峙していた照は、視線を逸らして力なく笑った。

 

「真希は友達だよ。別に好きってわけじゃ……」

 

「あいつのこと、まだ気にしてるんだろ」

 

月詠の言葉が引き金となり、照の脳裏に、()()()()()()()()()()()()()()()()()、鮮明に流れ込んでくる。

 

 

『幸せになってね、照』

 

 

「……気にしてないって」

 

「あいつがそれを望んでるわけ――」

 

 

「気にしてないって言ってるでしょ!」

 

 

照がこれまでにない大声を上げ、月詠の言葉を遮った。周囲の空気が凍りつく。

月詠は静かに照を睨みつけ、容赦のない言葉を叩きつけた。

 

 

「……気持ち悪い生き方してんじゃねえよ。()()に来る前に決めただろうが」

 

「……」

 

「あいつのことは俺にもお前にもわからねえ。けど、お前に幸せになってほしいんなら、お前に正直に生きてほしいって思ってるはずだ。自分のために嘘ついてまで生きるお前なんか、あいつは見たくないだろ」

 

「……っ」

 

「呪術師なんて、いつ死んでもおかしくない仕事だろ」

 

月詠は一度視線を落とし、少しだけ声を和らげて言った。

 

「……手遅れになる前に、言いたいことは言っておけよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぁー! わーったよ! 私は照が好きだ!」

 

パンダのしつこい追及に耐えかね、真希がついに怒鳴るように白状した。

 

「きっかけは?」

 

ニヤニヤとするパンダに、真希はバツが悪そうにそっぽを向く。

 

「……あいつは私よりずっと強いのに、なんて言うか……ずっと真っ直ぐで……」

 

ニヤニヤが止まらないパンダに、真希は再び大刀を突きつけた。

 

「ニヤニヤすんじゃねえ! 殺すぞ!」

 

「いや~、いいこと聞いちゃったな~。早く告っちまえよ……曖昧な距離でいられても、こっちが困っちゃうぞ」

 

パンダの言葉に、真希はふと寂しげに目を伏せた。

 

「……私にはまだ、あいつの隣に立つ資格はねえんだよ」

 

「それって、あいつが前言ってた『背中を任せる』ってやつか?」

 

「……私は、一級術師にならなきゃいけないんだ」

 

「関係ないだろ。東堂に聞かれて適当に答えたんじゃねえの?」

 

その時、林の奥から月詠がゆっくりと歩いてきた。

 

「ペア変えようぜ。パンダ、手合わせ」

 

「うい」

 

パンダが空気を察して即座に頷く。

 

「おい!」

 

真希が呼び止めるが、パンダは親指を立てながらそのまま二人で立ち去ってしまった。

 

「あの野郎……」

 

一人ベンチに居残ることになった真希。そこへ、少し遅れて照が静かにやってきた。

 

「真希……」

 

真希は隣のスペースを顎でしゃくる。

 

「……座れよ」

 

二人が同じベンチに腰を下ろす。カサカサと風に揺れる木の葉の音だけが響き、気まずい時間が流れていく。

 

「なあ」「ねえ」

 

声が重なり、二人は弾かれたように顔を見合わせた。

 

「あ、ごめん、先いいよ」

 

照が譲ると、真希は拳をぎゅっと握りしめ、前を見据えたまま、決意を口にした。

 

「……私は、自分の意思を曲げるつもりはねえ」

 

続く言葉を察し、照は俯きながら最後まで聞こうとする。

 

「だから……」

 

真希は照の方を真っ直ぐに向き直り、その瞳に強い光を宿して言い切った。

 

「私が強くなって、堂々とお前と立てるようになるまで……待ってくれないか」

 

照は驚いたように目を見開いた。だが、胸の奥にあった冷たい霧が、彼女の真っ直ぐな言葉で溶けていくのを感じた。

 

過去の約束も、彼女の願いも、全部抱えたままでいい。

今、目の前で自分を見てくれているこの人のために、正直に生きようと。

 

「……うん、待ってる」

 

照は、心からの優しい笑みを浮かべて頷いた。

出てきてほしいキャラ、絡みを見たいキャラを教えてください(複数の場合は感想に加えてください)

  • 九十九由基
  • 東堂葵
  • 七海建人
  • 伏黒恵
  • 京都校メンバー
  • ドブカス
  • 秤、綺羅羅
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