刻を廻る術師の話   作:もく 

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最近大学が忙しくて段々短くなってます…本当に申し訳ないです。

百鬼夜行から原作開始までの間が一番難しい…


17話 後悔のないように生きること

高専のグラウンドには、季節外れの緊張感が漂っていた。

 

「今日は黒閃について教えるよー」

 

五条の軽い声に、月詠が即座に食いつく。

 

「授業終わったんじゃねえのかよ」

 

「まだ三学期あるから何でもいいからやれって学長と七海がうるさくてね。ってことで特別講師の七海でーす!」

 

七海は呆れたようにネクタイを締め直すと、溜息混じりに口を開いた。

 

「突然呼び出されて何かと思いましたが、なぜ私なのですか。黒閃経験者なら乙骨君、天野君、黒羽君がいます。生徒同士で教え合うことも重要ではないでしょうか。まずあなたでもよくないですか」

 

五条は平然と肩をすくめる。

 

「……僕含め全員感覚派なんだよ。同じ血が流れてるから」

 

「先祖の方に呪われますよ」

 

「まあ、的確に説明できる七海が適任ってわけ。それじゃ僕、仕事あるからよろしく!」

 

五条は去り際、教師としての責任を全て七海に押し付け、瞬く間に消え去った。

 

 

 

七海は改めて生徒たちを見渡し、静かに問いかける。

 

「……確認ですが、黒閃を体験した3人は、その際どのようなことを感じましたか?」

 

「すみません、よく覚えてなくて……」

「なんかこう、ぐわー!って!」

「なんか出たなって」

 

七海は深々とため息をついた。

 

「……これでは狗巻君たちは全く理解できないまま終わるところでしたね。実戦でいきなりやるのも限りなく不可能に近いですし、基礎的なことをまとめますので、一度教室に戻りましょう」

 

教室で七海は淡々と、しかし核心を突く講義を続けた。

 

「黒閃を発生させると、その術師はスポーツにおける『ゾーン』に入った状態になります。一時的にではあるが、普段意識的に行っている呪力の操作が呼吸するかのように自然と行われ、圧倒的な全能感を味わいます。同じく呪力出力も上昇します。2回以上の黒閃を繰り出すとしたら、連続で発動させるか、その日のうちでしょうね。1回目はまぐれでも実力でも構いません。百鬼夜行の際、私は4度の黒閃を発生させましたが、今後それ以上のパフォーマンスは発揮できないでしょう」

 

七海は黒板にチョークを置き、生徒たちを真っ直ぐに見る。

 

「 ……みなさんは黒閃の有無関係なく、十分に力を身につけることができています。今日の話はあくまでも知識として覚えておいてください」

 

感覚で黒閃を発生させた3人にも、まだ発生させたことのない3人にも有意義な時間となった。

 

 


 

 

授業後、七海は教室を出ようとする照の背中に声をかけた。

 

「天野君」

 

「はい」

 

「少し話があります」

 

二人は自販機の近くにある静かなベンチへと移動した。七海は財布を取り出し、自販機の前に立つ。

 

「何か飲みたいものはありますか?」

 

「じゃあZONEで」

 

「……体に悪いですよ」

 

そう言いながらも、七海はコインを入れ、照にエナジードリンクを手渡した。

 

 

「冥冥さんの件、申し訳ありませんでした。何も警戒もせず、君と月詠君の身を危険に晒してしまった」

 

照は少し驚いたような顔をしたが、すぐに優しく微笑んだ。

 

「そんなの気にしないでください。僕でもそうしましたよ」

 

「……そうですか」

 

「あまり悩まないでください」

 

七海は照の瞳を見つめ、静かに呟く。

 

「……君は大人ですね。時折、君を子供として見れなくなってしまうときがあります」

 

「……僕は子供ですよ」

 

「……そうですね、君の繊細な部分も見てきました。本題に入りましょう」

 

七海は視線を空へと移し、ポツリと言った。

 

「……ここは10年前、夏油さんと九十九さんが話した場所です」

 

照の表情が引き締まる。

 

「……九十九さんから聞きました。『私の言葉のせいで夏油君を呪詛師にしてしまった。私の最大の罪さ』って言ってました。」

 

七海は深く、重い言葉を吐き出した。

 

「あの人を悪く言うつもりはありません。夏油さんを呪詛師にした原因は、私にもありますから。」

 

「……私から君に言うことは一つです。もし君がこれから選択を迷ったとき、大きな壁にぶつかったときは、必ず私たち(仲間)を頼ってください。一人で抱え込まないでください。時には弱さを見せることも必要ですよ」

 

その言葉に照は何も返さなかった。

 

 

 

午後

 

少し離れた場所で、同級生と談笑する照の姿を七海は眺めていた。

 

(君はやはり子供でした。他よりずっと大人びているだけの子供。日々の小さな絶望の積み重ねが人を大人にするのなら、君が知っているのは抱え込むにはあまりにも大きすぎる絶望なのでしょう)

 

(だからこそ君は、自分をさらけ出すことのできる環境が必要です。あの人(夏油さん)のように行動に移してしまう前に)

 

そこへ、背後から五条が音もなく現れた。

 

「どうだった?」

 

「知識としては伝えました。……仕事ではなかったのですか?」

 

「学長と来週からのビッグイベントの打ち合わせしてたんだ」

 

「今度は何を?」

 

「京都校との交換留学! と言っても2ヶ月程度だけどね。交流会でちょっとしか話してない生徒と交流する機会を設けようと思ってね」

 

「……不安しかありません」

 

七海の本音は、今回ばかりは誰の耳にも届かない切実な願いだった。

 

 

 

 

 


 

1週間後

 

「交換留学をするよ!京都校に行きたいかー!」

 

高専のグラウンドに五条の場違いなほど明るい声が響き渡る。

突然の突拍子もない提案に、照と月詠は顔を見合わせたが、二人の声は見事に重なった。

 

「おー!」「おー」

 

二人の反応に満足そうに頷いた五条だったが、その他の面々のあまりに冷ややかな視線に気づき、大袈裟に肩をすくめてみせる。

 

「あれ、二人以外行きたくないの?」

 

「「ない」」

 

真希とパンダが完全に声を揃えて即答し、棘も腕で大きくバツ印を作りながら「おかか」と拒絶の意を示した。あまりの急展開に、憂太もおろおろとしながら苦笑いを浮かべる。

 

「急だったので……」

 

「それにさ」と、真希が木刀を肩に担ぎ直しながら、現実的な理由を並べ立てた。

 

「残るやつも必要なんだろ? 二年は停学になっちまったし、私たちは残るぞ」

 

「じゃあ僕も残ります」「俺も」「しゃけ」

 

真希の言葉に続くように、憂太も高専に残ることを選択した。

 

「了解! 照、月詠! 荷物まとめて! 30分後にしゅっぱーつ!」

 

「「はぁ!?」」

 

有無を言わせない五条のカウントダウンが始まる。ろくな説明もないまま、双子は慌ただしく荷物を詰め込むため、自室へと走らされる羽目になったのだった。

 

 

 

 

 

嵐のような準備時間を終え、不機嫌そうな双子が京都校の敷地に降り立った。しかし、彼らを待っていたのは歓待ではなく、重苦しい沈黙だった。

 

「なんで私たちがあんたたちを歓迎しないかわかる?」

 

真依が毒を吐くように言い放つ。

 

「知らねーよ。こっちだって2ヶ月も行くのに支度30分で来てんだわ。照、心当たりあるか?」

 

「真依さんにはあるけど他の人にはないかな。交流会で勝っちゃったからとか?」

 

「違――」

「来たな! マイライバル!」

 

その絶叫と共に、東堂が凄まじい勢いで突っ込んできた。

月詠と照は、一瞬の沈黙の後、同時に背を向けた。

 

「「帰ろ」」

 

出てきてほしいキャラ、絡みを見たいキャラを教えてください(複数の場合は感想に加えてください)

  • 九十九由基
  • 東堂葵
  • 七海建人
  • 伏黒恵
  • 京都校メンバー
  • ドブカス
  • 秤、綺羅羅
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