僕のヒーローアカデミア:科学結界の学園都市(アカデミーシティ)   作:まだら模様

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iエキスポって学園都市に挿げ替えれそうと思ったので初投稿です(白目)
ヒロアカもとあるも作者はにわかです…申し訳ない…
突貫工事です。
評価が良ければ続くかも…?


第1話:科学の島、ヒーローの庭

第1話:科学の島、ヒーローの庭

 

 太平洋のど真ん中。

 そこには、地図に載りながらも、地図上の常識が通用しない「独立領土」が存在する。

 

 学園都市(アイ・エキスポ)。

 

 総人口二百三十万人。その八割が学生であり、世界最高峰の「個性研究」と「テクノロジー」が融合した巨大人工島だ。

 かつて世界を驚かせた『I-アイランド』の技術をさらに発展させ、独自の自治権を持つに至ったその場所は、今やヒーロー社会とは異なるベクトルで進化を遂げていた。

 

 その巨大な防壁、あるいは「門」を、一台の大型バスが通り抜ける。

 

「……すげぇな。ここ、本当に日本かよ」

 

 窓の外を眺めていた上鳴電気が、感嘆の声を漏らした。

 視界に飛び込んできたのは、見渡す限りの風力発電用プロペラと、空を浮遊する巨大な飛行船。そして、歩道を整然と進む、丸っこい警備ロボットたちの姿だ。

 

「電気が通っている場所なら、どこでも僕らの街と変わらないと思ってたけど……ここは少し、異質だね」

 

 緑谷出久は、膝の上に乗せた『ヒーロー分析ノート』を握りしめた。

 彼の瞳は、街の至る所に設置された観測デバイスや、学生たちが当たり前のようにタブレットを操作しながら「演算」を口にしている光景を、一秒たりとも逃さず捉えようとしている。

 

「デク君、緊張してる?」

 

 隣の席から麗日お茶子が声をかける。出久は少し肩を揺らし、苦笑いを返した。

 

「あはは……少しね。だって、今回はただの校外学習じゃない。雄英高校と学園都市の『合同交流祭』なんだ。僕たちが培ってきた『個性』が、最新の『科学』とどう交わるのか……ワクワクしない方が無理だよ」

 

「ふん、科学だか何だか知らねェが……要は、温室育ちのガキ共が理屈をこねて個性を弄んでる街だろ。反吐が出るぜ」

 

 前方の席から、不機嫌そうな爆豪勝己の声が響く。

 爆豪にとって、個性とは己の肉体と精神で磨き上げるものだ。機械や演算といった「外部の力」で補強されるという学園都市の理念は、彼の矜持とは真っ向から対立していた。

 

「爆豪、そう尖るな。相澤先生も仰っていただろう。これは平和の象徴なき後の、新たな治安維持の形を模索するための視察でもあるんだ」

 

 飯田天哉が眼鏡をクイと押し上げ、真面目な顔で窘める。

 だが、その飯田の手も、わずかに震えていた。

 彼ら雄英生は知っている。この島が、世界で最も「個性を武器として効率化」した場所であることを。

 

 バスが到着したのは、都市の中心部に位置する『第7学区』。

 そこは学生たちが最も多く行き交う、学園都市の心臓部だ。

 

 バスの扉が開くと、外の空気は意外にも無機質ではなく、どこかピリついた「計算」の気配を含んでいた。

 

「おーい、こっちだ! 雄英のみんな、歓迎するよ!」

 

 出迎えたのは、同じ年頃の少年だった。

 ツンツンした黒髪に、どこか締まりのない学生服。一見すれば、どこにでもいる普通の高校生に見える。

 

「……君が、僕たちの案内役の?」

 

 出久が歩み寄ると、その少年は照れくさそうに頭を掻いた。

 

「ああ。俺は上条当麻。この街の『レベル0(無能力者)』……って言っても、こっちの基準じゃなきゃピンとこないか。とにかく、今日から一週間、君たちのガイドを任されたんだ。よろしくな」

 

「僕は緑谷出久です。よろしくお願いします、上条君!」

 

 握手を交わそうとした、その瞬間。

 出久の背筋に、冷たい汗が伝った。

 

(なんだ……? この感覚。ヴィラン連合の時とも、オール・フォー・ワンの時とも違う……)

 

 目の前の少年、上条当麻からは「個性」の気配が一切しない。

 ヒロアカの世界において、無個性であっても何らかの「生命エネルギー」のようなものは感じられる。だが、彼の手が触れそうになった瞬間、出久の中に宿る『ワン・フォー・オール』の歴代継承者たちが、一瞬だけザワついたような気がした。

 

「……? どうかしたか?」

 

「あ、いえ。なんでもないです!」

 

 二人のやり取りを、少し離れた場所から見つめる影があった。

 歩道のガードレールに腰掛け、不機嫌そうに缶コーヒーを飲んでいる銀髪の少年。

 白一色の服装に、細い体。しかし、そこから放たれる威圧感は、並のプロヒーローを凌駕している。

 

「チッ……『ヒーロー』様のご到着かよ。ヘラヘラしやがって、三下共が」

 

 少年の呟きは、風にかき消された。

 だが、その瞳は確かに、出久の右腕に宿る「膨大なエネルギーの揺らぎ」を凝視していた。

 一行は、上条に連れられて学園都市の主要施設を巡る。

 

 道中、お茶子や八百万百は、浮遊する看板や無人コンビニの利便性に目を輝かせていたが、轟焦凍だけは、周囲の学生たちの「視線」に違和感を覚えていた。

 

「……緑谷。気づいているか」

 

「え? 何を、轟君」

 

「ここの学生たちは、俺たちの『個性』を……ヒーローとしての力を見ていない。まるで、新しい『試作品』を査定するような目で見ている」

 

 轟の指摘は鋭かった。

 学園都市において、個性とは「自分だけの現実(パーソナルリアリティ)」を量子力学的に演算し、世界を上書きする現象を指す。

 彼らにとって、努力や根性で出力を上げるヒーローは、理論に基づかない「未開の現象」に近いのだ。

 

 そんな緊張感の中、事件は唐突に起こった。

 「ドンッ!」という爆発音と共に、交差点の向こう側で悲鳴が上がる。

 

「あははは! 見ろよ、これが俺の新しく手に入れた『ブースト』だ! レベル4にも手が届くぜ!」

 

 現れたのは、全身から高圧のガスを噴出させている数人の学生たち。

 彼らの瞳は血走り、明らかに正気ではない。

 手に持っているのは、禍々しい紫色の液体が入った注射器――「個性拡張薬(クォーク・ブースター)」の試供品だ。

 

「ヴィラン……!? いや、学生か。危ない!」

 

 出久が即座に反応し、飛び出そうとする。

 しかし、それよりも早く、一人の少女が前に出た。

 

「まったく……せっかくの交流祭だってのに、恥をさらさないでくれる?」

 

 茶髪のショートカットを揺らし、常盤台中学の制服を着た少女。

 彼女はスカートのポケットから、一枚のコインを取り出した。

 

「あ、あれは……御坂美琴さん!」

 

 上条が叫ぶ。

 パチン、と指先でコインが弾かれる。

 少女の周囲で、青白い火花が激しく弾けた。

 

「学園都市の治安を乱すなら、お仕置きが必要よね――」

 

 次の瞬間、轟音と共にオレンジ色の閃光が空間を切り裂いた。

 超電磁砲(レールガン)。

 音速の三倍で放たれたコインは、暴走する学生たちの足元の地面を正確に削り取り、その衝撃波だけで彼らを一網打尽に無力化した。

 

 呆然と立ち尽くすA組の面々。

 特に、同じ電撃系の個性を持つ上鳴電気は、その「精度」と「威力」の桁違いなバランスに言葉を失っていた。

 

「……これが、学園都市の『レベル5』か」

 

 爆豪が低く唸る。その瞳には、隠しきれない闘争心が灯っていた。

 だが、この騒動は、これから始まる巨大な嵐のほんの序章に過ぎなかった。

 倒れた学生たちの影から、不気味な通信機が声を拾っている。

 

『――観測終了。雄英側の個性出力、および学園都市側の演算効率。データリンクを開始せよ』

 

 科学とヒーロー。

 二つの頂が交わるこの島で、運命の歯車が回り始めた。

 

 

 放たれた閃光の残光が、アスファルトの上に陽炎を作っていた。

 一撃。

 たった一発のコインで、暴走していた数人の学生を無力化した少女――御坂美琴は、ふぅと短く息を吐いて前髪を払った。

 

「……ったく。せっかくの交流祭だってのに、色気のない真似しないでよね」

 

 彼女は倒れた学生たちの安否を冷めた目で見守る警備ロボット(駆動鎧)を一瞥すると、呆然と立ち尽くす雄英A組の方へと向き直った。

 

「あ、えっと……助かりました! 凄い威力……」

 

 出久が真っ先に駆け寄り、深々と頭を下げる。その視線は、美琴の指先に残る微弱な電磁火花に釘付けだった。

 彼の脳内では、今見た現象の分析が高速で回転し始めている。

 

(音速の三倍……いや、それ以上か? コインを電磁誘導で加速させる……。上鳴君の『帯電』とは根本的にコントロールの精度が違う。まるで、精密なレールガンを体内に飼っているみたいだ……!)

 

「別に。あんたたち、雄英の生徒でしょ? 放っておいてもどうにかしたんだろうけど、この街の揉め事はこっちのルールで片付けるのが筋だから」

 

 美琴は少しぶっきらぼうに言い放ったが、その視線は出久の後ろに立つ爆豪や轟を、品定めするように横切った。

 

「……おい、ツラ貸せよ電磁女」

 

 爆豪が低い声で歩み出る。その手の平からは、今にも爆発が起きそうな火花がパチパチと漏れ出していた。

 

「今のは『個性』じゃねぇ。ただの計算だろ。そんなんで俺たちに勝った気になってんじゃねェぞ。ああん?」

 

「勝ったも負けたもないでしょ。……それに、あんたのその火花。爆破の瞬間の化学反応、無意識に脳で制御してるみたいだけど……学園都市の基準じゃ、それじゃLevel 3(強能力)止まりよ。計算が雑すぎる」

 

「んだとコラァ!!」

 

 一触即発の空気。

 それを遮るように、案内役の上条当麻が慌てて二人の間に割って入った。

 

「ま、まーまー! 御坂さんもそんなに煽るなって! せっかくのお客様なんだからさ。……っつーか、俺の不幸体質が伝染したのか? 到着五分で騒動とか、勘弁してくれよ……」

 

 上条の情けない嘆きに、A組の面々の緊張が少しだけ緩む。

 だが、その場の誰もが感じていた。

 自分たちが「平和の象徴」を失い、必死に守ろうとしているこの「個性」という力が、この島では単なる「演算の結果」として数値化されているという事実に。

 

 その日の夜。

 雄英生たちの宿泊施設として用意された、第7学区の高層ホテル。

 窓の外には、二十四時間止まることのない学園都市の夜景が広がっていた。

 A組の面々は、食堂に集まって今日の出来事を振り返っていた。

 

「……驚きましたわ。あの少女の攻撃、一切の予備動作がありませんでした。個性の発動というより、空間そのものを書き換えているような……」

 

 八百万百が、出されたお茶を一口飲んで溜息をつく。

 

「ああ。僕の氷結や炎も、ここでは『熱力学第二法則の無視』とかいう難解な言葉で片付けられた。……少し、嫌な予感がするな」

 

 轟が窓の外、等間隔に並ぶ風力発電機を見つめながら呟く。

 

「……ねえ、デク君。どうしたの?」

 

 お茶子が、隅の方でずっとノートを読み返している出久に声をかけた。

 出久はペンを止め、複雑な表情で顔を上げた。

 

「あ……うん。さっきの『個性拡張薬』のことなんだけど。あれを使っていた人たち、自分の力に振り回されている感じだった。……まるで、脳に無理やり何かを流し込まれているみたいな」

 

「それが学園都市の『能力開発』の闇、ってことかしら?」

 

 蛙吹梅雨が顎に指を当てる。

 

「わからない。でも、あの御坂さんって人や上条君を見てると、悪い人たちには見えないんだ。……ただ、この街には、僕たちの知らない『正義の形』がある気がして……」

 

 出久の脳裏には、あの夕暮れ時に見かけた、銀髪の少年の冷ややかな瞳が焼き付いていた。

 あの少年からは、血の匂いと、圧倒的な「拒絶」の気配がしたのだ。

 同じ頃。

 学園都市のさらに深部。窓のないビル。

 生命維持装置の液体の中に、逆さまに浮かぶ一人の男がいた。

 

 学園都市統括理事長――アレイスター=クロウリー。

 

 彼の前には、複数のホログラムウィンドウが浮かんでいる。

 そこには、緑谷出久のフルカウル発動時のデータ、爆豪勝己の爆破効率、そして――

 

「……『ワン・フォー・オール』。世代を重ねるごとに増幅する、物理法則を逸脱した蓄積型のエネルギー体。実に興味深い」

 

 暗闇の中から、もう一つの声が響く。

 それは、死柄木弔のものではない。より合理的で、より冷酷な「科学」の声。

 

「理事長。雄英の生徒たちのデータ収集は順調です。……しかし、彼らヒーローの存在は、我々の進める『個性特異点』の制御実験において、ノイズになりかねませんか?」

 

「ノイズも、重ね合わせれば美しい和音になる。……彼らには『実験体』として、学園都市の真実を見届けてもらうさ」

 

 ホログラムが切り替わる。

 そこには、第15学区の地下施設で培養されている、巨大な「何か」のシルエットが映し出されていた。

 それは、人工的に生み出された「平和の象徴」の代替品。

 学園都市がヒーロー社会に叩きつける、最後通牒(アンサマブル)だった。

 

 翌朝。

 昨日までの快晴が嘘のように、島は重苦しい曇天に包まれていた。

 出久がホテルのロビーに降りると、そこには不機嫌そうに壁に寄りかかる爆豪と、何かを決意したような顔の上条当麻がいた。

 

「……よぉ、緑谷。今日からが本番だ」

 

 上条が、どこか緊張した面持ちで告げる。

 

「今日の予定は、雄英と学園都市の『合同模擬戦』。場所は第11学区の無人演習場だ。……そこで、あんたたちは知ることになる」

 

 上条は一度言葉を切り、出久の目を真っ直ぐに見据えた。

 

「この街の『最強』が、どんなに理不尽かってことをな」

 

 その言葉と同時に、街中にけたたましいサイレンが鳴り響いた。

 交流祭という名の、生存競争(サバイバル)の幕が上がる。

 出久は拳を握りしめた。

 その腕には、いつになく激しい熱が宿っていた。

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