「悪魔の子」
それが私の名前だった・・・
本当はちゃんとした名前があるのに・・・私は、昔からそう呼ばれていた・・・
私は、生まれて間もなく、両親が殺され、養子として、叔父と叔母に引き取られ育てられた。
でも、私が五歳の誕生日に仕事先の事故で二人とも亡くなってしまった。
私は、いつしか人が怖くなった。
見るのが嫌になった。
大切な人を作りたくなかった。
また・・・大切な人が私の目の前で消えてしまいそうで、怖かった。
私は、大きな繁華街を一人歩いていた。
その近くには、踏切があったらしい・・・
私は、そのことに気づけず、踏切に入ってしまった。
その直後、迫ってきた電車によって・・・
私の人生は、終わりを告げた・・・
その後、特に悪いこともせず、死んだ私は、冥界で、『天国』と裁かれた。
天国でも、相変わらず私は、人と接することをしなかった。
大切な人を作りたくなかった。
でも、その行動が天国にいる人たちにとっては、邪魔だった。
いつしか、「あの子は、悪魔の子」
そう呼ばれるようになった。
「あの子は、悪魔の子!」
「お前なんて、地獄に落ちろ!」
「お前なんか、天国にいるな!」
そう叫びながら、私を地獄に突き落とした。
抵抗は、しなかった。
『あそこが私にぴったりの場所なんだろう。』
私は、そのまま、静かに地獄へ落ちて行った。
地獄では、皆が人を疑い、人のことを嫌っているので私は、珍しくなかった。
みんな私を変な目で見ることもなかった。
ただ、私は、この地獄に後から入った存在。当然上の人のことは敬わなければいけないし、従わなければいけない。
それがこの地獄でのルールだった。
だから、私は、地獄の人たちにこき使われていた。
言わば、『奴隷』のような存在だった。
地獄での生活は、三年間くらい続いた。
私は、いつしか『心』がなくなったような気がした。
ここにはいるのに、感情がない。まるでそんな感じだ。
地獄では今日も奴隷扱いされている。
死んでいるから通じるかわからないけど、死にたい。
そして、私の体には、いつからか生傷が絶えなくなった。
命令されたことをきちんとやり通さないと、鬼にぶたれ、地獄の亡者に殴られ、凶暴な人には、殴られ、罵られる。
そんな毎日だ。
でも、そんなある日・・・
地獄に閻魔さんとその秘書の人と女の子が来た。
???「地獄の見回りかな?」
私は、大きな荷物を運びながら、横目でそれを見ていた。
地獄では、亡者たちにそれぞれ与えられた仕事がある。
それをこなさない人は、罰を受ける。
私は、一番下っ端だから、みんなの仕事を受けなければいけない。
???(さて、早く片付けないと!)
私は、荷物を持ち直し、歩き始めた。
と、
亡者①「おぉ〜!嬢ちゃん!これもよろしくな!」
男の持っていた荷物が私の荷物の上に置かれた。
???「あっ。はい。」
逆らったら、ぶたれる。
そう思った私は、なんの反抗せずに、従った。
因みに、積まれている荷物は、合計3㎏ぐらい。
かなり重い。
???(重い・・・)
心の中では愚痴を零しつつも仕事は、やらなければいけない。
3㎏の荷物もなんのその!
私は、再び歩き始めた。
と、
???「きゃっ‼」
バランスを崩して、転倒してしまった。
???「あいたた・・・」
亡者②「おい!嬢ちゃん!」
亡者③「てめぇ!何、荷物落としてるんだ!」
???「あっ、ごめんなさい・・・」
亡者⑤「お仕置きだな。」
???「えっ・・・」
亡者⑥「おう!一回、ぶん殴ったれ!」
一回じゃない・・・
何度もぶたれた。
見えないんだよね・・・
誰にも私の痛み。悔しさ。傷・・・
周りを見る。
誰も私を助けようとしない。
見て楽しんでる・・・
でも、亡者が私に手を上げた瞬間、誰かが私の前に現れた。
バシッ
私に降りかかろうとした拳が止められた。
???(誰?)
私の前に現れた人は、私を見て、安堵の息を落とした。
???「良かった。無事で・・・」
そして、私に優しく笑いかけて来てくれた。
???「あの・・・」
???「今は、ゆっくり話してる場合じゃない。急いで、大王たちのところに!」
えっ?
訳がわからない・・・
大王のところへ行け?
どうして?
まず、なんでこの人は、私を助けたんだろう?
頭を見る。
小さなツノが二本、生えていた。
???(鬼?)
一目で鬼だとわかった。
ただ、ここにいる鬼とは、全然違った。
優しくて、笑顔が似合っていて、全く、鬼には、見えなかった。
と、向こうから、黒い服を着た男性とコートを着た女の子が私の方に駈けて来た。
???「あっ、いたいた!」
???「あの、私に何か御用ですか?」
???「あるよ!」
私を見つけ、黒い服を着た男性は、私のことを呼び、女の子は、私を助けにきた理由があると言った。
???「貴方を助けに来たんです!」
さっきまで、地獄の人たちと戦っていた、金髪の男の子は、戻って来ていて、言った。
私を助けに来た?
どうして?
???「今は、時間がないからね!」
と、言った黒い服を着た男性は、指をパチンと鳴らしたと思ったら、次の瞬間には、地獄じゃないところにいた。
???「えへへ!脱出成功!」
黒い服を着た男性は、Vサインを出しながら、言った。
・・・
鬼男「申し遅れました。僕は、閻魔大王の秘書をしている鬼男です。」
閻魔「おっ、俺も忘れてた!
俺は、閻魔大王だ!」
采「私は、采。よろしくね。」
???「・・・。」
閻魔「んっ?どうしたの?」
???「助けてくださったのは、感謝しています。ですが、私は、地獄へ帰らせていただきます。」
采「えっ⁉なんで!せっかく地獄から抜け出せて来たのに。」
???「私は、悪魔の子だから、地獄に居なきゃいけないんです。」
鬼・閻・采『・・・』
???「では、私はこれで失礼させていただきます。」
鬼男「貴方が地獄へ戻る必要は、ありません。」
えっ?
???「なんで・・・」
閻魔「まず、天国で裁かれた君がどうして地獄にいたの?」
???「それは、私が悪魔の子だから・・・」
采「違うよ。」
???「えっ・・・」
采「貴方は、全然、悪魔の子じゃないよ。」
???「だって、私と一緒にいると、見ると、不幸になるよ・・・」
閻魔「それは、誰が決めたの?」
???「えっ・・・」
閻魔「あ〜・・・じゃあ、質問を変えよう。
誰が君を地獄に落としたの?」
???「それは・・・同じ天国にいた人が・・・悪魔の子だと言って、私を地獄に続く穴へと突き落としたんです。」
鬼男「そこがまず、間違ってます。」
???「どういうことですか?」
閻魔「君は、悪魔の子。何かじゃないよ。さっきも采ちゃんが言っていたように、君をみてると不思議と元気が出るよ!」
???「・・・」
鬼男君「それに、そんな傷が絶えない地獄に戻るのも嫌じゃないですか?」
???「‼!」
私は、金髪の男の子に言われた直後腕の傷を隠した。
傷は、腕だけじゃなく、至る所にある。
閻魔「あっ!ほんとだ!」
と、私の近くに寄って来た。
私は、すぐにその人から離れた。
閻魔「だめ!動かないで!」
私は素直に従った。
と、閻魔さんは、私の腕にそっと手を置いた。
その直後、体中の傷は、消えていた。
閻魔「はい。オッケー!」
と、言い、私の腕から手を離した。
???「あの。ありがとうございます!」
閻魔「んっ?このくらいお安い御用だよ!」
采「よかったね!」
???「うん。」
「あの・・・私の正直な気持ち言っていいですか?」
閻魔「いいよ。君の素直な気持ちを聞かせて。」
???「私・・・二度とあんなところに行きたくないです!本当は、私、辛かったんです・・・逃げ出したいほどに・・・
でも、逃げたら、私は、あの人たちにぶたれる。そう思って、私は、この自分の気持ちを隠し続けてきました。」
閻魔「辛かったよね。」
???「はい。でも、もう大丈夫です!」
鬼男「大王。この人をここにおいてあげられないですか?」
???「えっ?」
閻魔「おっ!鬼男君、俺と同んなじこと考えてた。」
采「あっ、私も考えてました!」
???「えっ?私。ここにいて良いんですか?」
閻・鬼・采『もちろん!』
???「あっ、ありがとうございます!」
ポロッ
???「本当にありがとうございます。」
私の口からは、その言葉しか出なかった。
閻魔「いいよ。じゃあ、君の名前、教えて♪」
小雪「小雪です。今日からお世話になります!」
閻魔「よしっ!じゃあ、二人とも鬼男君と一緒に俺の秘書をやってくれないかな?」
采「はい。」
小雪「こんな私でよければ喜んで!」
鬼男「じゃあ、二人とも今日からよろしくね。」
鬼男さんは、私と采ちゃんに笑いかけてくれた。
閻魔さんも優しい笑顔で笑いかけてくれた。
小雪(鬼男さん、閻魔さん、そして、采ちゃん。ありがとう。私を地獄という暗黒の世界から救い出してくれて・・・
本当にありがとう。)