これにてカラオケ反省会編は終了となります。
お気に入り登録等よろしければお願いします
「さて、そろそろ本題に戻るが、今日集まったのはほかでもない。『人格入れ替わり』に対する大反省をするためだ!」
気合いが入りすぎて怒気を含んだ稲葉に対して俺たちは思い思いの返答をする。
「ではまず……「失礼しま~す。ご注文の山盛りポテトとピザです~」あ、ども……。」
タイミングが悪く稲葉が進行しようとしたところ、カラオケ店員がポテトとピザを持って入室して来た。
誰が頼んだ?
テーブルの上に置き「ごゆっくりどうぞ~」とカラオケ店員が退室したところ、稲葉も疑問に思ったらしく
「おいこれ誰が頼んだ……?」
そう稲葉が聞くと、八重樫申し訳なさそうに
「あ、悪い。さっきの稲葉の歌うか歌わないかの押し問答中に俺と桐山で適当に頼んだ」
「ええ、ちょっと小腹空いてたし……ごめんね」
「まあ……いいか。だがまあさっきみたいに急に入ってこられて会話聞かれるのもめんどうだから気を付けてくれ。……さて気を取り直して……。」
そんなこんなでやっと反省会が始まった。前回と変わらず司会兼、議長兼、書記兼、最終決定権保持者は稲葉姫子である。
「では最初に入れ替わりの際にどうしたらいいのか、みんなで話し合ったことをおさらいしようか。まずは『可能な限り行動をグループメッセージで共有して人格入れ替わったさいはすぐに連絡する』だったな」
某メッセージアプリでの文研部グループでできる限りの行動を申告するといった決まりだ。
あ、グループにはその日のうちに入れてもらったぞ。
暇つぶし機能付き目覚ましとしか使っていなかった俺のスマホの連絡先にはこれまでほぼ家族しかなかったが、そこに5人分も一気に増えた
例えば『もうご飯は食べた』とか『風呂に入ってくる』とか。
もうご飯食べているのにまた「飯まだか~」とか言わないようにして、人格入れ替わった際に行動変な行動をしないようにするためである。
そして、人格が入れ替わった場合はすぐに今誰の体に人格が入っているか申告するのもきまっていた。
俺は昨晩すぐに『桐山』と入れ替わったと入力したが桐山は未だに入力されていなかったりする。
「で、他には『なるべく人目を避けて大人しくいている』と『やむを得ず他人と相対する場合は本人になりきる』と『余計なことはしない』だったな。これさえ守っていれば、ある程度の期間は誤魔化せると考えていたんだが……お前らはあまりにも注意力がなさすぎるっ!!」
稲葉はバンっ!!と机を叩きながらみんなの顔をにらみつけた。
「まず、初歩中の初歩!誰か異性と入れ替わっている時、男子トイレと女子トイレを間違えた事のあるやつっ!?」
「はい」「はい」「はい」「はい」
俺と稲葉以外全員だった。
「なぜ間違う!?男と女で入れ替わったら注意すべきナンバーワンだろ!」
「やっぱ癖がねぇ……。しかもトイレって逃げ込もうとして入る時もあるからつい、ね?」
「なにが『ね?』っだ伊織。おかげであたしたち若干トイレ入りにくくなっただろ!」
俺個人気を付けてても他の人格がやらかすとそいつに迷惑かかるのがなぁ……。
高校生にもなってトイレを間違えるとギャーギャー騒がれるというより普通に引かれるだけだった。
「俺も間違えてるから文句言えないんだけど……俺の身体で間違えた時だけ教師に突き出されるの釈然としないんだけど……。太一と比企谷くんはみんな反応に困っていただけなのに……。」
「その時は悪かったわよ……。」
外見が青木でその時は中身が桐山で半泣きになっていた
「あ、それで提案があるんだけどみんな入れ替わってないうちに、もっとトイレに行っとかない?」
「今トイレに生きづらくなったって話し合したばかりだとおもうんだが……。」
稲葉が呆れ気味につぶやく
「だってあたしたち女子がだれか男子になっている時、トイレに行きたくなったら……必然的にあのおぞましいものを見なきゃいけないのよっ!いやぁぁぁ!!」
思いだしただけでもダメージがあるようで、桐山は顔を青くして鳥肌をもみ消すように自分の腕を撫でた。
まあ、桐山どちらかというと、恋愛の対象が『アッチ』感じあるし、触られただけで力が抜ける位で男苦手っぽいからな……。そんな桐山にとってはきついか
「あんまり気にしなければ大丈夫だよ、唯。わたしなんてもう立ちションできるようになったしね!」
そうヘラヘラと笑っていう永瀬。
「それはさすがにきにしなさい永瀬よ。自慢げに言わなくてよろしい。」
純粋な笑顔でそんなこと言うのやめなさい。……まあ俺もあらかじめ行ってくれてると助かるな……。我慢できるときは我慢してたが漏れそうになると辛いしね
「桐山が嫌だっていうなら俺たちで気を付けておくよ」
「あ、うん。ありがとう、太一」
「コラ、太一。なに1人で好感度上げてんだよ。俺も気を付けるからね、唯」
「そうだ、こいつらのはたいしたことはないぞ、唯。ちなみに一番でかかったのは太一のだった」
「比べんなよ稲葉!それと青木!真剣に頭抱えておちこむな!」
ニヤニヤと笑っていう稲葉に八重樫が本気で突っ込んでいた。稲葉さん今回は男の方のサイズ暴露かよ……。
「しかし、それよりもあたしたちの貞操というか身体は大丈夫なのか……?」
先程のおふざけとは一転して真面目な雰囲気で稲葉が尋ねる。
「大丈夫だ。なあ、青木、比企谷」
「ああ」
八重樫の問いかけに秒で返した。そんなことをしてもその場の欲求が満たされるだけで、今後の関係が終わるだけだものリスクとリターンが合わん。
「あー、確かに自分が【女の子の身体】になるもんだもんな~。あんなことやこんなことやってみたくなるよなー……ってなに?皆さんドン引きしないでよやらないって!!思ってるだけで!!」
青木の返答に思わず頭を抱える。思っていても今この場では言ったらダメだろ……。
「俺は何もしてないぞ」
「太一は……まあ、そう言うなら、な」
「もち俺もーー」
「……本当か?」
青木が言い切る前に稲葉の疑いの声が被った。稲葉は疑い全開の眼差しで青木を見る
まあ、当たり前のだわな。空気読まずに煩悩ダダ漏らした青木が悪い
「ホントだって!こういう時こそ『信頼関係』ってのが重要になるんじゃん!だからこそそんな馬鹿な真似はしないって」
「ーーそ……うだな」
稲葉は一瞬ことばに詰まり苦い物を飲み込むような顔をした。信じたいが信じきれないそんな表情だった。
微妙な空気が生まれた。
「稲葉の不安もわかる。俺も何もしてないが、まあ、俺に関してはお前らと関わり会ってから一週間も経ってなくて、信頼関係もクソもないからな。無理に信用してくれとは言わん」
「ええ、そんな悲しいこと言わないでよ比企谷くん……」
と青木が言ってくれるが
「いや仕方ないけど事実だろ。お前らからすれば俺はまだ部外者みたいなもんだし」
「でもさ」
永瀬が少しだけ真面目な顔になる。
「比企谷くんだって、今までちゃんとしてて、変な事は何もしてないじゃん。初めてあたしと入れ替わった時も気を配ってくれてたし」
初めて永瀬の身体に入ってスマホを取った時のことか
「……」
「それに、比企谷くんも私たちの事だって、完璧に信用してるわけじゃないでしょ?」
「まあ……そうだな」
「だから互いにこれからでいいんじゃない?」
永瀬が笑う。
「一週間しか経ってないなら、これから一週間とか一ヶ月とかかけて信用してもらえばいいじゃん」
「……」
こういう時だけ、妙に真っ当なことを言う。これが永瀬が部長である理由かもな
「……お前、たまにまともだよな。今のはなんか部長ぽかったぞ」
「たまにって何よ!」
「普段が普段だからな」
「ひどーい!」
いつもの調子に戻った永瀬を見て、少しだけ肩の力が抜ける。
そうだよな。
これからの信頼は、今後の俺の行動で勝ち取っていけばいい。
そして俺もこいつらのことを信用していけばいい。そのためにも、俺もこいつらの話をちゃんと聞いていかなきゃならない。
……だからまあ。
そのために、今日絶対にどうしても確認しておきたいことがある。
俺は今日、まだ一度もまともに話していない人物へ視線を向けた。
桐山。
俺と目が合った瞬間、桐山はビクッと肩を跳ねさせた。
そして、ものすごく気まずそうに目を逸らす。
……なるほど。
これは分かりやすい。
さて。
覚悟はいいか?
容疑者X。
「さっきの信頼関係どうこうの話が出たから、ちょっと個人的に聞きたいことがあるんだが……いいか?」
「……ああ、どうした。改まって」
八重樫が不思議そうにこちらを見る。
「いや、ちょっと確認したいだけだ」
俺は桐山を見る。
「もう単刀直入に聞くぞ。桐山?」
「……はい」
名前を呼ばれた桐山の身体が、ビクッと震える。
そして数秒の沈黙のあと――。
桐山は観念したように小さく息を吐いた。
それから、なぜか座席の上で靴を脱ぎ、きっちりと正座する。
「お、おい唯。どうした?」
青木が困惑した声を上げる。
「え、な、なにが始まるの?」
永瀬も桐山と俺を交互に見る。
俺はそんな二人を無視して、桐山に問いかけた。
「昨日の夜――」
「……」
桐山の顔がみるみる青ざめる。
「小町……俺の妹になにをした?」
「――――」
一瞬の沈黙。
そして。
「ほんっとぉぉぉぉぉにごめんなさいぃぃぃぃぃ!!」
桐山が座席の上で勢いよく土下座した。
「うおっ!?」
「ええっ!?」
「ちょ、唯!?」
部屋中に他の部員の驚きの声が響く。わかっていたがやはりお前だったのか容疑者X。
「何が聞きたいかわかるよな」
「ええわかってるわ……。あたし桐山唯は、昨晩突然目の前に現れた天使みたいな女の子に、我を忘れて飛びついてしまいました」
おい。天使の様に可愛いのは否定しないが限度があるだろ
「何か言い訳あるか」
「その……昨日妹と夜テレビを見てて、ついウトウトしてたのは覚えるの……」
ああ、俺も覚えている。
その頃は小町とリビングでテレビを見ていた。
そこから突然視界が変わって、気づけば見知らぬ女の子の部屋にいた。
『おねえちゃん? どうしたの?』
そう心配そうに声を掛けられたのも覚えている。
俺は適当に誤魔化してその場を離れ、その後ガラスに映った姿を見て、桐山になっていることに気づいた。
そしてグループメッセージに、
『比企谷、現在桐山に入れ替わり中』
と送ったのだ。
「意識がもうろうとしてた時にあんなに小さくて可愛いい子が、悪戯っぽく至近距離で「お兄ちゃんどうしたの?眠いの?あ、膝枕でもしてあげよっか?」なんて誘惑してくるんですもの!!夢かと思うじゃない!!」
「小町が可愛いのが悪いって言いたげだな……。まあ否定はしないが。で言い訳とするなら『夢だと思ってすきかってした』ってことで良いのか?」
「ええ……。そうよ、申し訳ないと思ってるわ……。その……ストレスが溜まってて、最近寝れてなかったのも影響してるかも……」
まあ、ここまで桐山の入れ替わり先ほぼ男だから男が苦手な桐山には辛い所もあったかもな……。
「で、詳しくはなにしたの?入れ替わり終わった直後のあいつ、世間にはお見せできないような姿になってたんだぞ」
「えっと、膝枕してもらったり、小町ちゃんの頭なでたり、ハグしたり、そんなところよ……。勢いは凄かったかもしれないけど……。」
「それだけか?本当に?」
「え、えっとその身体中をフニフニしました。だいぶ……。」
「ふ~。俺がそのあと大変なめにあったのは理解できるな?」
小町が兄LOVEルートに入りかけたんだからな。
最悪、両親に何か誤解されたら俺が家から追い出される可能性だってある。
……いや、冷静に考えたら笑い事じゃないな。
「で、次もし俺が桐山と入れ替わった時に小町とあったら、小町の貞操、正直青木と同じレベルで心配になってる」
「え……っ」
桐山の顔から、さらに血の気が引いた。
……そこまでショックなのか。
まあ、青木と同列扱いだからな。俺でもちょっと嫌だ。
今日1番の絶望した顔してるよ桐山。
青い顔のまま、先ほどよりもより深々と頭を下げて土下座した
「ほんとうに申し訳ございませんでした。」
「うん。本当に気をつけてね」
桐山の小さくなった頭の天辺を見ながら俺はひとまず許す事にした。
「ええ~っと。さっきから俺はの扱いひどくね?誰か慰めてよぉ……」
「うるせえ青木。お前は日頃の行いの自業自得だ」
「稲葉の言うとおりだな。……それにしても桐山が入れ替わった時、俺の妹も危ないかもしれないな……」
「はは~。今後すこしは改善しようねぇ~。」
「うう~。みんな酷い……。」
パンっと稲葉が手を鳴らした
「とにかくだ、なんだかんだで入れ替わってる、つまりは一人一人が責任を持って【自分の身体】と思って生活しましょうってことだな」
「はい反省してます……。」
「さて、比企谷のついでにあたしも文句がるやつがいるんだがいいか?」
稲葉が今度は嫌味ったらしく言う
「あたしも実害がでてんだよ青木」
「え、なんかあったっけ?」
ガクリと稲葉の体が折れた
「なんでお前は唯と違って自覚がないんだよ!?あたしの英語の小テストでめちゃくちゃな点数取っただろうが!」
「あー、あれか俺にしてはめちゃくちゃ頑張ったんだよ?」
「めちゃくちゃ頑張って、30点満点中7点のどこが頑張っただ!おかげで今度補修だぞ!!全く、馬鹿であっても他人に迷惑はかけんなよ……。」
「しゃーないでしょ、俺だって好きで馬鹿なわけじゃないし……」
青木は不貞腐れたように髪をいじった。
「まあ、稲葉もそこまで目くじら立てなくてもいいだろ、あのテストも成績には反映されるわけじゃないんだし、馬鹿はどう頑張っても馬鹿なんだから」
八重樫が割って入った。そして
「そだよ、稲葉ん。馬鹿は死んでも治らないんだし」
永瀬が言い
「そうよ、稲葉。馬鹿は馬鹿のまま死ぬしかないんだし」
桐山が続けた。
「みんな、フォローになってないよ!?」
みんなに愛されている青木だった。
「お前ら、大したことないと思ってるみたいだがよく考えてみろ、今回は小テストだったがこれが中間テストや期末テストだった場合……。」
その時青木以外の4人は、はっと息を吞んだ
「なあ、桐山、青木実は英語だけがすこぶる苦手で他の教科は普通に点数が取れているとかは……。」
「残念ながらないわよ比企谷君。あいつ一学期ほぼ毎回赤点ギリギリだったから……。」
渦中の馬鹿は「赤点減るかもヤッホー!!」と喜んでいた。
そんな愛すべき?馬鹿の姿をおれたちは頭を抱えて見ていたのだった。
頼むから入れ替わるならせめて理系テストの時にしておくれ……。