比企谷八幡 山星高校に入学する   作:狂った自販機

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やっと話が大きく動くところまで来ました

毎週末に上がれるように頑張ります


8話

 

 

朝から文化研究部との集団サボりをし、その後後藤先生に呼び出しをくらい実は元々文化研究部の部員であった事が判明した日の午後、最後の授業が終了。

 

その放課後、俺は小町に部活に入った事を報告、文化研究部の部員として自覚して初めての部活動に勤むために部室棟の4階の文化研究部の部室に向かっていた。

 

 

扉を開けて入室してすぐその部室内の異常に気づいた。入った瞬間の獲物を見るような強烈な視線、それの主は部室の中央に座る永瀬だった

 

「……っち。比企谷くんか。太一はまだなのかなあ……」

 

「え、なんで舌打ち?俺なんかした?」

 

部活初日から歓迎されて無い感じ?昨日のあの勧誘は嘘だったんですか?流石にへこむよ?

 

 

「んーん。俺が入った時もこんな感じだったよ。」

 

「なーんか太一に用があるらしいなぁ……あいつ何やったんだ?」

 

「こんなに機嫌が悪い伊織初めてみたかも……」

 

「あ、伊織っちゃんもしかして今日、女の子の日「デリカシー皆無か!!」ぶはぁっ!!」

 

 

異様な部室の中でノンデリかました青木の鳩尾に手刀を叩き込む桐山に、こちらに目線も向ける事なくパソコンを弄っている稲葉。

 

とりあえず空いている椅子に座るのだが永瀬の強烈な視線はまだ扉を睨んでいた。

すると永瀬は立ち上がり扉の近くにたった。扉の窓からは見えないような死角の位置だ。

 

微動だにせず鋭い視線は扉から一切動かさない

 

それは草食動物を待ち伏せる肉食動物に見えた

 

 

 

そしてしばらくすると部室の扉が開いた

 

 

「遅くなってすまなーーーのわっ!!?」

 

 

部室に入った瞬間の八重樫の前に、扉の側に姿を潜めていた永瀬が飛び込出した。

 

 

「太一……!貴様に……貴様に訊きたいことがあるっっっっ!!!」

 

「な、どうしたんだ、永瀬?」

 

ここまで貯めていた怒りが爆発したのか、身体全体をプルプル振るわせながら八重樫の前に立ち、怒りと不安と困惑と色々な感情とかが入り混じった顔で八重樫を問い詰めていた

 

 

 

「昨日、わたしが教室に乱入する前……藤島さんと何があったぁぁぁぁ!?」

 

 

昨日の俺も目撃した永瀬【八重樫人格】と俺のクラスの委員長であるメガネ女子の藤島とのあの絡み。

 

その原因か何かでどうやら抉れに抉れてるらしかった

 

 

ちなみにそれを聞かれた瞬間の八重樫だが、小さい頃小町が俺のおやつを勝手に食べてそれがバレた時の「あ、やっべ」って顔をしていた

 

何やらかしたんだ?八重樫

 

 

 

「い、いや、それは、大したことじゃなくーーー」

 

「大したことじゃないかどうかはわたしが決めるっっ!」

 

 

「こんなに怒ってる伊織ちゃんってマジでレアじゃね?」という青木の雑音と共に八重樫はその場に正座になりながら事の昨日の端末を語り始めたのだった……

 

 

 

八重樫がしどろもどろながら話した端末を端的に言うと

 

昨日初めての人格入れ替わりが永瀬と八重樫に起こる

           ↓

急に教室の机に座っていた八重樫が混乱して、いつもよりも膨らんでて違和感のある胸を揉みしだく

           ↓

その行動を藤島に見られて「わたしが揉んであげようか?」と言われてそれを抵抗(俺はその瞬間を見てた)

           ↓

八重樫の身体に入った永瀬が部室から教室に走り込み、藤島に襲われる瞬間に乱入

 

 

それが昨日あの教室で俺と永瀬が来るまでに起こった事だった。

 

さらに簡略化するなら『八重樫が永瀬の胸を揉んでるの藤島に見られた』それだけである

 

……人格の入れ替わりの前情報がないと勘違いされそうだな。実際は永瀬本人が揉んでいるようにしか見えない。その中の人格が八重樫である

 

 

 

「うわーん!!胸揉まれたぁ……。お嫁にいけないよぉ…!」

 

本当に涙ぐむ永瀬。ガチ泣きである

 

「じ、自分の状況を確かめるには仕方なかったんだよっ!その、女かどうか確かめるためにはっ!」

 

「無意識かどうか知らないけどそんな事ある!!?ほんと信じられない!!」

 

「いや、仕方…」

 

「ていうか藤島さんが見てるの気づかないくらいとかどのくらいの時間揉んでたんだよぉ!!?」

 

「え、とその……。じゅ、10揉みくらい……?」

 

(揉みって単位初めて聞いたぞ……)

 

「めちゃくちゃ揉んでるじゃんけぇ!!」

 

どうやら永瀬の中では『10揉み』は重罪らしい。いや『1揉み』でもアウトだろうが

 

永瀬は絶叫しながら机に突っ伏した。起き上がる気配が全くなく、そのまま机と一体化しそうだった。

 

 

「……昨日からわたしの中の太一の印象変わりまくりね。青木と変わらないじゃ無い……。ほんと男子って大きいのしか視界に入らないのかしら……」

 

少し顔を赤めて、そうぼそっ言いながら冷たい目線を八重樫にぶつける桐山。それが聞こえたのか八重樫が小さくなってる

 

だがまあ、俺含め思春期男子なんて大体そんなものだ。口に出さないだけでな。……もちろん出すのも触るのも論外だが。

 

 

 

 

「うっ……ぐす……。比企谷くんが入れ替わった時はポケットのスマホを取るのすら気を配ってくれたのに……。ほんと……他男2人に感しては……っ!?」

 

 

 

永瀬本人の追撃にさらに身を小さくする八重樫。それを見て多少あった八重樫の羨ましさも塵となって消えた

 

 

昨日の俺ぇ!!ほんとナイス!普段とは違う目線とか声で違和感をすぐに持って変な行動をしないで良かった!!!

八重樫と同じ事してたら永瀬本人の目の前で胸揉んでこれ以上の修羅場になるところだったぁ!!

 

 

 ……いや、まあ今現在の修羅場もすごいことになってるか……。

 

 

パソコンをいじりながら面白いものを見るように八重樫を見る稲葉 ガチ泣きの永瀬 男子に冷たい目線を向ける桐山 そして小さくなって正座をしている八重樫

 

 

俺の初部活動。地獄かな?俺が知らないだけで部活動ってどこもこんな感じなの?俺の憧れてる青春って……何処?

 

 

「はいはい!!ちょっとごめんね!!太一に質問!!」

 

 

その空気をぶち壊す為のように青木が立ち上がった。お前が救世主か?

 

「伊織ちゃんの胸の大きさはどれくーーふべっ!!」

 

あ、違う。こいつ馬鹿だったわ。さらに悪化させようとしてどうする

 

 

稲葉がその青木にゲンコツを落とした。高校生にもなってゲンコツを落とされる人間を見るとなんだか侘しい気持ちになる。さらには同学年の女の子にだ

 

 

「そろそろ良い加減にしろ!!知りたきゃあたしがおしえてやるよ!伊織はCカップだ!ついでに言うとあたしがBで唯がAだ!」

 

 

あなた八重樫と永瀬の問答愉快そうに見てましたよね?てか何で桐山に流れ弾でダメージ与えてんの?何故が自分のカップ数もつけて。

 

人を揶揄うのに命かけられる人なの?稲葉さんやい。

 

 

「稲葉ぁっ!?何でわたしのサイズ知ってるのよぉ!!それに『ついで』でなんてこと言ってくれてるのよっ!?」

 

「昨日入れ替わった時に知った。……すまん、勢いだ。その証拠に自分のカップも自己申告しちまった」

 

「ほんとなんのためにっ!?」

 

 

頬を紅潮させ、机をバンバン叩きながら抗議する桐山。その様子を稲葉は腹を抱えてゲラゲラ笑いながら眺めていた。

 

 

「大丈夫だ。唯。胸はドンマイかもしれないけど、唯には他の魅力がいっぱいあるから!」

 

ゲンコツくらった頭をさすりながら青木が爽やかな笑顔を桐山に見せる

 

 

「ドンマイってなによっ、ドンマイって!後小さい方が可愛いってポイント高い時もありますからっ!」

 

「え!俺フォローしたつもりなんだけど!?それに俺が唯を好きになった理由に胸の大きさは関係ないからな!!」

 

「え。別にあんたの好みは興味ないし、むしろ迷惑」

 

「ええ……そんなぁ……。急にスンって冷静になんないでよ……」

 

先程の永瀬と八重樫の騒ぎに負けないように他の文研部も騒ぎ出した。

 

この部活の日常なのかこれが……。

 

まだ正座したまま八重樫。机に突っ伏して起き上がる気配のない永瀬、そして新たな話題でギャーギャーと騒が始めた桐山と稲葉と青木

 

その光景を見ながら、俺は1人思い出した。

 

 

 

 

(今日って人格入れ替わりの対策について話合うんじゃなかったっけか……?)

 

 

 

そうギャーギャーと騒いでいる部員たちを見ながら俺は初めての部活動を過ごすのであった。

 

今後この部活の勢いの雰囲気についていけるか……?俺がこの部活に適応できるイメージがわかない……。

 

 

 

しばらくギャーギャーと騒いでいた文研部一同(俺以外)であったがそうばかりもしていられないので稲葉の号令のもと、真面目な話し合いを始める事となった。

 

「なあ?」

 

「ん〜?なに〜比企谷くん?」

 

 

まだダメージが残っているのかグデェ〜とまだ机に突っ伏したまま稲葉に進行を全任せしてる永瀬に話しかける

 

「部長って永瀬だよね?稲葉の間違いだったか?」

 

「い〜や。わたしが部長で合ってるよ。」

 

「あ、そっかぁ……。」

 

「なに、ナニか言いたげだね?」

 

「い、いや何でも無いぞ」

 

今日の不機嫌で、ジトーっとした目でこちらを見てくる永瀬にはとても「永瀬に部長の役職合ってなくね?」とは言えなかった。

 

ま、まあ、人には向き不向きがあるしな。マスコット担当の部長がいても良いよな。うん。

 

あ、ちなみにずっと正座をしていた八重樫だが、暗黒微笑を浮かべた永瀬が「今日のところ『は』これくらいにしとくね?」っと許し得た後に痺れで震える足を引きずらせながらスゴスゴと自分のいつも座っている椅子に向かい、そこに座っている。

 

「じゃ、ここらで一旦まとめるぞ。まず2日前の夜に就寝中の唯と青木の間で初めての人格入れ替わり現象が起こる、っと」

 

開始号令だけでなく進行担当に書記まで務める稲葉が黒板にそう書くとそれを見つめながら続ける。

 

あの、永瀬さん?君は稲葉の手伝いとかしないの?

 

 

「そして昨日の放課後、部活を始めた直後にまずは伊織と太一との入れ替わりが発生。しばらくした後今度は入れ替わって伊織の身体の中にいた太一の人格と比企谷との3人間でのシャッフルが発生。で、今日の朝だいたい皆んなが登校する時間帯に【あたしが唯に、】、【唯が青木に】、【青木が比企谷に】、そして【比企谷があたしに】なる4人間のシャッフルが発生して、今日の昼に唯と太一の入れ替わりが発生した、ってことだな」

 

 

ちなみに桐山だがこれにより入れ替わり先が女子が未経験のまま、男子が俺のリーチとなった。もし入れ替わりが今後続くのであれば願わくば次は永瀬か稲葉と入れ替わり発生させてあげてください。次俺と入れ替わった際の桐山の精神状態の悪化が恐ろしいです。よろしくお願いします。

 

 

「改めて見ると凄いことになってるね……。入れ替わって戻って、また別の人ともいれかわって……。」

 

永瀬が難しそうに顔をしかめながらぼやく。

 

続けて稲葉が言う。

 

 

「次に入れ替わりの特性をまとめるが、まずその1に『唐突におこる』

何時何分、午前午後、学校自宅、場所時間全て関係が無く規則は全く無い」

 

 

今まで起きたのは時間帯は深夜、放課後、早朝、昼間と全てバラバラてある。

まだサンプルが少ないので順番の途中である可能性もあるな。もし『昼間』が最後で【深夜、放課後、早朝、昼間】が入れ替わりの時間帯の1サイクルなら、それなら次深夜に起こる可能性がある。それなら時間帯の予想はつけれそうだ。

 

 

場所はなあ……今のところ街中で入れ替わりは起こってなくて学校内か自宅にある時だけなんだよなぁ。

 

学校に近づかない……。

 

いや、それじゃ学校を休み続けるしかない。

 

家にも近寄らないとなると家出まで必要になる。

 

……却下だ。

 

小町を心配させるなんて論外だし、俺自身そんな選択はしたくない。

 

むしろ街中でも入れ替わりが起きてくれた方が助かる。

 

そうなれば学校や家を避けるなんて馬鹿げた作戦を考えなくて済む。

 

 

小町に会えなくなるとかは関係ないよほんとだよ?

 

非現実的な事に対策するなら現象的なことしてたらダメだからやらないといけないかもだけど……。

 

これはほんと最終手段だな、それか街中での入れ替わりカモン!!

 

 

 

「その2。入れ替わりの時間。今のところ最短はさっき昼間にあった唯と太一の入れ替わりの3分ちょいで、最長が今朝の2時間越え。平均だと30分から40分くらいか?」

 

 

入れ替わり時間もバラバラ。

 

あ、でももし1日の入れ替わり制限とかあるならそれでその日の入れ替わりがもう無いとかの判断できるか?それなら今日の入れ替わりも朝が長すぎたから昼間の入れ替わりはカップラーメン作るくらいの時間で入れ替わり解除されたとかあるかな?

 

後ありそうな仮説で人一人に時間の制限もあるとか?今日桐山はすでに2時間入れ替わり起こってたから今日八重樫と入れ替わった際にもう待ち時間が3分しか無くてそれですぐに入れ替わりが解除されたとか?

 

 

「その3。人格入れ替わりの現象は文研部の6人間で起こっている。……。今日後藤に呼び出させるまではこれから学校中で起こる可能性もあったけど元々比企谷もこの部員であったと言うところからとりあえず今の所はこの部員内での現象だと仮定するしかねえか……。」

 

 

 

うん。今日の出来事で俺が実はこの部員だった事が今日1番の驚きかも

 

幸か不幸か、この現象が俺たちの中で止まっているなら俺たちが適応できるなら大きな騒ぎには繋がらなそうだな

希望的観測すぎるか?

 

 

「でだ。ここまでまとめてみたが……。結論から言うとマジで何もわからん。タイミング、入れ替わり時間、入れ替わる人員その対象全てがランダムのクソ非現実現象だな……。他に何かあるやつないか?」

 

 

 

頭を抱えながら言う稲葉に誰も何も答えなれなかった。俺も今は黙ってシャーペンを走らせる。人前で話すのは苦手だが、さっきの考えをまとめるくらいなら一人でもできる。

そう思いながらカリカリとシャーペンを動かす。よし、とりあえず今思った事現象の特性の仮定だったり対処方だったり纏めれた。

発表はな……。対人スキル皆無のボッチにほちと荷が思い

 

 

「なあ稲葉。ちょっとこれ見てくれないか?」

 

「あ、何だ?」

 

「いや、今の話聞いてて自分なりに推理してみた事まとめたんだが……。」

 

 

「ほーん。確かに時間制限とかの可能性もあるか…。てか不登校&家出作戦はひねくれてんな、お前。面白い案だと思うけどなっ。」

 

「ほうほう。確かにわたしたちには思いつかないような目線からの作戦だね。流石わたしとても良い人材をスカウトしたのではっ……!?」

 

 

「ひねくれてるとか褒めてる?」

 

「「褒めてる褒めてる」」

 

 

稲葉だけでなく、そのメモを見た永瀬からも褒められる。ん?あれ?褒められてんのか?これ?

 

 

「ね、ねぇ。稲葉わたしからもちょっと良い?引っかかる事があるの……」

 

そう桐山もおずおずと口を開いた

 

 

「ああ、良いぞ。何でも言ってくれ唯。どうせ何にも根拠なんてないんだ気にせずに言え」

 

 

「あたしその……、何回も巻き込まれたからかきになるのかもしれないんだけど。昨日初めて伊織と太一が入れ替わった時、【太一の身体】がガクンと折れて、一瞬完全に意識が落ちてたわよね。で、今日さっき昼に太一と入れ替わった時なんだけど倒れ込む事もなく立ったままでいられたの。それって……」

 

 

「入れ替わる時の反動?になれてきてんのか?」

 

稲葉が桐山の仮説を引き継ぎついだ。

 

 

今日までに起きた入れ替わりは全部で四回。昨日の俺・八重樫・永瀬のシャッフルを一回と数えるなら、そのうち三回も巻き込まれている桐山だからこそ気付けた視点なのかもしれない。

 

ちなみに最多タイに八重樫の3回もある

 

確かに昨日俺も初めての入れ替わりの際は廊下に倒れ込んでいたが、今日の朝の稲葉の身体に人格が入った際は普通に立っていたな……。

 

俺2回目だったのに立ってたのもしかしてこの現象に対する順応性高くない?あ、でも今後何ににも活かせなさそうな特技だなおい

 

「なるほど、言われてみればそうだなナイスだ、唯。……しかしその入れ替わりに耐性ができるのってはあたし達にとって望ましい事態と言うべきことなのかねぇ?」

 

「まあ反動が無くなる事に越した事は無いだろ。毎回初期の反動で倒れてたら周りの人間から『文研部は『ド貧血』集団』と思われるしな」

 

 

 

違う意味で部員全員病院行きになっちまうよほんと……

 

 

「さて、他になにも無ければ、次は具体的な対策とやらを考えていくか。あ、比企谷の不登校&家出作戦は今のところ無しな。この現象がいつまで続くかもわからんのにそんな事したらあたしらの今後の人生の影響が大きすぎる」

 

 

そりゃそうだ。と言うより人格入れ替わりのトリガーが場所によるのかも確定してないな。

 

てか稲葉さん頼りになりすぎじゃない?今朝はあんなにこの現象に圧倒されていたのに他の部員をまとめ上げてくれてるの。

昨日八重樫と永瀬がすぐに稲葉を頼ったのもわかる気がするな

 

「まず突き止める必要があるのは『なぜこうなった』だこんなたいそれた現象なんぁ必ず明確な原因があるはずだ……。てかないと困る。つー事でお前ら、心当たりないか?変わった事とか?あたしは何一つ心当たりないぞ?」

 

 

するとここまでほぼ喋らずに黙っていた青木が久しぶりに口を開いた。

 

「う〜ん。とりあえず漫画とかでありがちなのが走ったりしてる時にあたま同士ぶつかった時に入れ替わるとか?」

 

「アホ青木。略してアホ木。お前はなにアホな意見を……いやこの事態そのものがアホみたいに突拍子も無いこと何だから的外れと断言する事もできないのか……」

 

「的ハズレじゃ無いのにアホアホ言い過ぎじゃ無い!!?酷いよ稲葉っちゃん!!」

 

青木のこの部活での扱いも雑すぎてちょっと同情するな。するとここまで発言のなかったもう1人八重樫も口を開いた。

 

 

「あ、うーん……。こんなの言いがかりみたいで悪いんだけどさ。1学期と違う点と言ったら、比企谷が来たことじゃないか?比企谷が来て本来の文研部が集まったからこの現象が始まったとかないか?」

 

「本当に言いがかりだな…俺にこんな非現実能力起こすような能力ねえぞ…」

 

「いや!悪い。本気では言ってないぞ!?ふと変わった事で思いついたのがそれだっただけで……」

 

 

ふふふ、小学生の頃に『ヒキガヤ菌』だ〜って言われた事思い出しちまったぜ……凄いんだぜヒキガヤ菌。俺に触れた瞬間感染して、感染した奴らが他の人間に触ったら感染爆発していくの

 

ワクチンも治療薬もない最強のウィルス。それがヒキガヤ菌。感染したらどうなるって?感染した奴らは楽しそうだったよ?

 

主に俺がメンタル傷ついてた……。

 

 

「おい!太一真面目に考えろ。あるはずなんだ、何か原因がーー」

 

 

 

苛立ち気に稲葉が言ったその時、外から扉が開かれたーー。

 

 

俺がこの部室に訪れたのは今回で3回目。それでもわかる。古臭い部室棟の4階にわざわざ訪れる人間など基本この部員のメンバー以外にはいないだろう。用があるなら呼び出してこちらを出向かせる方が楽で賢い選択なのだ。それだけこの部室は立地はハズレなのである。

 

そのような場所にこの『人格入れ替わり現象』などとおかしな事が起きているのに『いつも』ではあり得ない事がまた起きるのだ。

可能性は低いかもしれないが無関係であるとは俺には思えなかった。

 

 

そしてその扉から顔を覗かせた人物はーー

 

 

1年3組担任兼、文化研究部顧問の後藤龍善だった。

 

 

だが

 

 

 

「……はーい……どうも……、と」

 

 

その姿、声は後藤先生そのものだったが、それはいつもとははっきりと違う雰囲気で異質な存在に見えた。

全体的に覇気が感じられずに目もいつもの半分くらいしか開いてない。

何か催眠術にでもかけられているのか?そんな雰囲気だった

 

「〜〜〜〜〜〜〜ってっっっめぇ!!!おいこら後藤っ!変なタイミングでこんなところに来るんじゃねえよ!ちょっとビビっただろうが!!?」

 

肝の座っている稲葉も流石にビビったらしい。まあそうだわな黒板には『人格入れ替わり』のこと書いてあるし、この部活が急に『オカルト研究会』にでもなったと勘違いさせるレベルの話してたしな

 

 

「いやいや……しらないですよ……そんなの……」

 

「……どうしたんだよ後藤お前。体調でも悪いのか?」

 

後藤先生は先程かは相変わらず覇気のない様子で返事をする。

流石の稲葉も心配したような面持ちで訪ねる。

 

「いやいや、体調はバッチリですよ……【この人】無駄に健康体ですし……。ただ【僕】にやる気とか根気とか勇気とか正気とかその他諸々がないからじゃないですかねぇ……」

 

 

……っ!?明らかに後藤先生の話し方と内容が変だ。後藤先生は一人称は【俺】だったはずだしそれに何て言った?【この人】?自分の体調を知らせる際に【この人】なんて言うか?

 

まるで今の俺たちのように自分の身体では無い状態じゃないか

 

文研部の間に、徐々にあり得ない想像が染み渡っていく。今の後藤先生は俺たちと同じ現象に巻き込まれている【被害者】か?それとも……

 

 

「あんた誰?」

 

永瀬がいつものふわふわとした雰囲気ではなく、俺が初めて永瀬の身体に入った時のファーストコンタクトと同じような警戒心を抱きながら後藤先生をどこか冷たく澄んだ目で睨みハッキリとそんなふうに言った

 

 

どう見ても姿は【後藤龍善である存在】は

 

 

「……永瀬さんさ話が早くて助かりますよ……ホント……。色々説明するのって面倒くさいですからねぇ……」

 

 

「お、おい……。なにふざけた真似やってんだ……?」

 

 

まだ僅かな可能性をすがふように稲葉が言葉を絞り出した

 

「いやいや、この上なくふざけた状態の皆さんが言うセリフじゃないでしょ……」

 

 

「ちょっと、ごっさん、どうしたのよ……?」

 

まだ事態が飲み込めてないのか桐山がオロオロとした様子で尋ねかけた

すると後藤先生の姿をした何かは半開きの目を開きながら少しニタァと口をニヤつかせて言った

 

「どうしたのって、いやぁ……皆さん困ってるみたいだったので様子を見に来ました……。大変ですよねぇ……人格が入れ替わるなんて。そりゃ僕だってこんなところ来たくなかったんですよ……?この階まで上がるの面倒くさいのに……。あ、後僕の事【ごっさん】とか【後藤先生】とかで呼ぶのやめてくれます?【僕その人じゃ無いですしねえ】。……ああ。もしかして、名前が必要でした?じゃあ便宜上こう呼んでください」

 

 

 

         〈ふうせんかずら〉

 

 

 

とその【後藤龍善の姿】をした何かは自分を〈ふうせんかずら〉と呼び、この現象の【この現象を知る者】として俺たち文研部の前に現れた。

 

それは俺たちの『日常』の崩壊の宣言として、しっかりと6人の胸に刻まれたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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