読まなくても物語に影響はほぼありません。
あと、まだ永愛君は前世の記憶が戻ってません。
光祐一朗先生により疑似人格プログラム『ロックマン』が誕生した。
これは歴史的な出来事だ。助手として付き添ってきた私にとってもとても喜ばしい。
だが、先生の表情は優れなかった。
「先生?やりましたね!」
「……あ、ああ。ありがとう路挑君」
この時点では私にはわからなかったが、後に自分の息子の遺伝子データを使用して疑似人格を作成したことについての苦悩があったことがわかった。
息子さん、彩斗君がプログラムとして蘇ったことを喜びはするものの、一度は死んでしまった者を自身のエゴで蘇らせたと思い、感情が落ち着かなかったのだろう。
その時の私は、感情・自我・思考能力を持ったプログラムの開発に成功という、今世紀最大の発明に浮かれていたため、先生のことを気にかける余裕などなかった。
――――――――――――――――――――
その後、盛大なパーティとなった。
主役はもちろん光祐一朗先生である。
先生のご家族も参加し、ウチからも息子が来ている。
先生のご家族とは会う機会が多く、特に息子さんの光熱斗君とは私の息子の安堂永愛と1歳差ということもあり、よく遊んでくれている。
「こんにちは路挑おじさん!」
「ああ、こんにちは熱斗君。今回は熱斗君のお父さんがすごい発明をしたんだ。おめでとう」
「うーん?俺にはよくわからないけど、ありがとうおじさん!」
「自分のお父さんはすごい人なんだってことがわかればいいさ」
「そんなこと知ってるよ!」
「ハハハ!そっか!そうだよな!」
熱斗君は無邪気で明るく、そして優しい、家族想いの子だ。祐一郎さんにそっくりである。
「おじさん!永愛と遊んできてもいい?」
「ああ、いいよ。周りに迷惑をかけないようにね」
「うん!」
「じゃあ、行ってくるよ父さん」
「うん、永愛なら大丈夫だと思うが、熱斗君を頼むよ」
「うん」
永愛はまだ小さいがしっかりしており、子供とは思えないほどおとなしい。こうして見ると熱斗君とは本当の兄弟のように見える。
まったく誰に似たんだか、確実に私ではないだろう。私が子供の頃にこんなパーティに来ていたらもっとはしゃいでいたはずだ。確実に母親似だな。
幼くして母親を病気で亡くしている。そんな環境のせいもあるかもしれない。息子にも苦労をかけてしまっている。その分、大事にしようとあらためて思う。
「さて、私も挨拶回りに……おや?」
「これはこれは路挑先生!今回はお手柄でしたな!」
話しかけてきたのは現在研究所に出資してくださった重役のおひとりだ。こんな言い方をすると偉そうで陰険な方のように聞こえてしまうかもしれないが、とてもよくしていただいた良識ある方である。いや、偉いのは本当に偉いのだが。
「ありがとうございます。これもあなた方のご助力あってこそです。それに1番の功労者は光先生ですから」
「そうですな!さすがは光先生!」
「ええ、ええ、私も同じ意見です」
実際、先生がいなければ完成しなかった。
「ところで、私から挨拶に伺う予定でしたが、そちらから来られたということは何かご用事が?」
「ハハハ、そうなんだよ路挑君!実はね……」
今回ロックマンの作成に成功したことを受け、第2のロックマンを作る企画が進行しているらしい。
しかし、光先生には既に断られてしまったそうで私に白羽の矢がたった。
「なるほど、そこで私ですか」
「その通り!残念ながら光先生は断ってしまってね。あのプログラムを作ったチームの者にリーダーとして加わって欲しかったからな」
「……ふむ」
とても喜ばしいお誘いではある。
しかし、光先生はなぜ断られたのだろうか?それを聞いてからでも遅くはないだろう。
「少し考えさせていただけませんか?」
「構わんとも。ただ君が第一候補になるからな、あまり長い時間は待てんぞ?」
「承知しました」
そこで別れる。
さっそく光先生を探そう。話は早い方がいいからな。
それにちゃんとお祝いもしなくてはならない。今回のパーティの主役を。
――――――――――――――――――――
「先生!」
「ああ、路挑君」
「あらためて、この度はおめでとうございます」
「ありがとう。でも私1人の力ではなし得なかった。路挑君はもちろん、チームのみんな、そして……」
「……?」
そこで先生は少し暗い表情で遠くを見ていた。疑似人格プログラムが完成した際もそんな表情をしていたことを思い出した。
「どうしました先生」
「……うん、路挑君。僕はね、少し後悔をしている」
「え?」
あまりにも似つかわしくない言動に狼狽えてしまう。いつも自信たっぷりな先生とは思えなかった。それに今はそんな先生を称える場である。
初めて聞く先生の……いや、祐一郎さんの弱音かもしれない。
「路挑君も知ってると思うけど、今回ロックマンに使用したエクサメモリは、心臓病でこの世を去った僕の息子の人格をプログラム化したものを組み込んだものだ。彩斗……君の知っている熱斗の双子の兄だよ」
「……ええ、存じています。」
嬉しさと悲しみと後悔、様々な感情が入り乱れたような表情をする祐一郎さんを見て、素直に賞賛を送ることができなかった。
「これはね、僕のエゴなんだ。息子が生き返ってほしいと思ってしまった。でも、実際に生き返ったわけじゃない。ロックマンというプログラムに彩斗の人格を埋め込んでしまった」
「そ、それは……」
「わかってるさ、これは僕が抱えなきゃいけない問題だ。そして僕自身で解決しなきゃいけない問題なんだ」
人類の禁忌であり、人類の夢でもある、死者を蘇らせること。さらにはロックマンという素体に人格を埋め込んだために、自身のエゴで、押しつけで、彩斗君の人格を弄んだようにも感じてしまっている。そんなの冒涜だと。
「祐一郎さん」
「なんだい、路挑君」
「私から祐一郎さんへかける言葉は今はありません。ですが、その答えは先生が見つけるものでもないと思います」
「え?」
「それはこれから人生を歩むロックマン……いえ、彩斗君自身に聞いてみましょう。自己の幸せなんて、自分にしかわかりませんよ」
「!」
「その時にもし祐一郎さんの体1つで足りなかったなら、私も一緒に謝ります。腹を切ります。だから
「……そうだな」
祐一郎さんは涙を浮かべていたけど、この先どうなるかわからない。
「そういえば、僕を探してる感じだったけど」
「あ、いえ。解決しました」
「ん?」
今の話を聞いて、第2の疑似人格プログラムの企画に着手することはすぐには無理だろうと思う。少なくとも今の心境で行ってもいい結果にはならないだろう。
であれば、
「先生、次の企画、私が引き継ぐことになりました」
「……そうか。路挑君ならきっとうまくいく」
「今回だってうまくいったじゃないですか!失敗したみたいな言い方!」
「…ふふ、そうだな!」
そして、私は第2疑似人格プログラムのプロジェクトリーダーとなるのだった。
――――――――――――――――――――
「路挑先生!やはり無理なのではないですか!?」
「いや、計算はあっている。だが、なにかが欠落しているのだ!」
企画は進められていた。しかし、あまりいい方向に進んでいるわけではなかった。
「完成はしているはずなのだ!思考はしている!……だが、感情がない!」
そう、疑似人格は出来上がった。だが、感情がなかった。オペレーターの言うことは聞く。思考してると言っても『ウイルスをデリートする』『プログラムを実行する』など、現在の最適行動をとるのみで、これではコンピュータと変わらない。
「く……やはり人の人格データが必要なのか……?」
祐一郎さんの話を聞いたせいか、人の人格データを埋め込むことに躊躇するようになってしまった。しかし、この状況ではそこに答えが行き着いてしまう。
やはり、妻の……
「……今日は1度解散しよう」
「先生!?」
「1度頭を冷やすべきだ!今の我々の精神状態で続けていてもいい結果にはならない!!」
「……わかりました」
助手や部下たちには悪いが、私にも頭を休める時間が必要だと判断した。
結果を残さなければ出資も止まる。様々な人にも迷惑がかかるであろう。
人、研究、金、信頼、頭が割れそうだった。
そこでふと永愛の顔が浮かんだ。
(今のプログラム、永愛に少し似ているな)
どこか達観している感じ、落ち着いてウイルスをデリートする様子。
永愛に似ているということは妻にも似ているということだ。人格データを入れずともだ。
もしかして……
――――――――――――――――――――
一旦プロジェクトは中断となった。
失敗したから中断としたわけではない。様子を見る期間となったのだ。
というのも、
「永愛、様子はどうだ?」
「ん?元気だよ、俺もオケストラも」
オケストラと名付けられたナビ。これが私たちが作った疑似人格プログラムである。
熱斗君とよく遊ぶ永愛に預けることで、ロックマンとの交流の機会が増え、疑似人格に刺激されるかもしれないと思ったわけだ。
そうそう、今ロックマンは熱斗君のネットナビとなっている。祐一郎さんが彩斗君は熱斗君と一緒にいる方が喜ぶだろうと考えてのことだろう。
「最近はよくオケストラと2人で遊ぶんだ」
「ん?熱斗君とロックマンはどうした?」
「あの2人とも遊ぶけど、ずっと一緒にいるわけではないから」
「まぁ、それもそうか」
たしかにロックマンとの交流を狙ってはいたが、永愛とオケストラが仲良くなる分には喜ばしい。
「2人の時は何して遊ぶんだ?」
「最近は俺が楽器を演奏したり、一緒に音楽を聴くことが多いかな」
「ほう」
「オケストラはクラシックが好きみたいで、一緒に聴く時はクラシックが多いよ」
「……我が息子ながら渋いな。まだ小学1年生だろ」
永愛はいろんな楽器を触ることが好きで、最近はヴァイオリンを弾いている。
……ん?なんか今の会話に違和感が。
「……永愛」
「ん?何、父さん?」
「オケストラはクラシックが好きなのか?」
「うん、最近のお気に入りはリストらしい」
「お、おぅ。父さんにそのリストとかはよくわからないけど。それはオケストラが言ってたのか?」
「うん、この曲が好きとか、落ち着くとか」
『好き』『落ち着く』
確実に感情表現だ。どういうことだ?
「音楽以外での遊びはなにかするのか?」
「んー……オセロとかトランプとかはしたけど。あ、チェスは楽しいって言ってたかな」
なんか小学生にしては多才じゃないか?うちの息子。
そんなことより『楽しい』だって?
これは、もしかすると、
「永愛、オケストラを少し点検したいから、明後日一度貸してくれ」
「わかったけど、どこか悪いの?」
「いや、とても良い傾向だから確認したいんだ」
もしかするかもしれない!
――――――――――――――――――――
結論から話そう。
オケストラに感情が芽生えた。
これは確実だ。ではどうやって?なぜ?
オケストラ本人に聞いてみた。
「元々思考はしていた。でも感情が感じられない、本人に言うには不適切かもしれないが、抜け殻のようなナビだった君が、そんな感情豊かになったのはなぜだい?」
「永愛ですよ先生。彼はずっと私に話しかけてくれた。最初は返事をすること以外にする意味を感じなかった。しかし、そんな私に挨拶する、遊ぼうと言ってくる、楽しげに音楽の感想を言う。愛情や友情を知ったのです。私は永愛を大切に想うと同時に、永愛も私を大切に想ってくれていると感じる。それが答えですよ」
「……」
まさに絶句だ。そして盛大に勘違いしていたことがわかった。
疑似人格も
しかし、プログラムには痛い、苦しい、喜ばしい、楽しいといった喜怒哀楽を感じるところから学ぶ必要があった。そう、
情けなかった。そんな単純なことに気づかなかったことに。
誇らしかった。息子がそれを教えてくれたことに。
「……そうか、そうなんだな。よかったなオケストラ」
「ええ。先生が永愛に会わせてくれたおかげです。ありがとうございます」
「いや、こちらこそありがとう」
こうして第2疑似人格プログラムは完成された。
ナビは成長する。そんな簡単に見えて、誰も気づかなかった常識に気付かされた、そんな歴史的なプロジェクトとなった。
永愛の父親。
今回は大人としてのシーンが多いけど、基本ハッチャケてる。
頭脳的には光祐一朗に1歩及ばないくらい。十分すごい。
名前の由来は
安堂路挑=Android
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