最終試験当日となった。ルキウス達が乗っていた飛空船は試験会場であるハンター協会が運営するホテルに到着した。
これで本格的にルキウスはお役御免である。ネテロ会長には試験を見ていかないかとお誘いがあった。
しかし、ルキウスは軍艦島で手に入れた金品財宝の類をバナーとジナー夫妻に鑑定して貰う必要があった。
「おや、ルキウスさん。お久し振りでございます」
「いやはや、数年振りでございますな……」
「お久し振りです。早速で申し訳ないのですが鑑定といつもの取引をお願いします。
今回は同じ美食ハンター達と一緒に宝探しをした。その為、結構な量がありますので覚悟していて下さい」
そう言って夫妻と会う前に借りた一室へ案内する。そこには念空間に保管していたお宝の品々があり、夫妻もその量に驚きと喜びを隠せなかった。
「おぉ! こんなに沢山も!!」
「まぁ! 今回は特に凄いですわね!!」
「張り切り過ぎました。今回手伝ってくれた美食ハンターのメンチとブハラは現在、違う部屋で最終試験の立ち会いを行なっています。
最終試験の後で彼女達もここに合流する事になっています。その時はお2人を紹介したいので少しばかりお時間を下さい」
「えぇ、勿論ですとも」
「その方達には知り得た情報を共有しても良い方ですか?」
「勿論です。出来たら今後の為にいつも品物を購入してくれる美品ハンターや歴史ハンターとかにも紹介してくれると助かります。
俺みたいにそれを専門分野の1つにするかは分かりませんが、今回の宝探しで結構興味持ってくれました。
だから、自分とは別ルートから鑑定品を持ってくるかも知れませんので、事前に紹介して下さった方が手間が少ないかと思います」
「そういう事でしたら、喜んでご紹介致しますわ」
バナーとジナー夫妻に鑑定を頼み、その都度それが本物か偽物かの真偽やどういう年代の代物なのかについて軽く説明を聞いた。
やはり、長年ハンター協会と関わりを持ち宝飾類などの鑑定を任されてきた彼等の腕は凄まじいの一言に尽きた。
たったの1時間にも満たない鑑定で探して来たお宝の山々の半分近くが既に鑑定済みとなっていた。
最終試験の内容を結局聞かせて貰えなかったルキウスは、未だに合流していないメンチ達を待っていると電話が鳴った。
「失礼、ちょっと外に出ますね」
「えぇ、構いませんよ」
「私達も少し休憩しましょうかね」
「そうだな」
バイブレーション設定にしている携帯電話を2人に見せると気を遣ってくれたのか、彼等は休憩をとり始めたのでルキウスは外に出て電話を取った。
「もしもし、姉さん? どうしたんだ、姉さんからなんて珍しいけど……」
『ルー君、どうしよう……!!』
「落ち着いて、姉さん……。いや、ルー姉……。こういう時だからこそ、落ち着いて話して欲しい……。出来るかい?」
切羽詰まった様なか細く震えるルーシィの声にルキウスは出来るだけ安心させる為に焦らせず落ち着いた声で事情を聞いた。
事の発端はルキウスがブハラ達に試験官の助っ人を要請させれ向かった日に遡った。
先日のオフコラボのイベント配信でルーシィとアンジェリカのチャンネル登録者数が日に日に増加して、中堅V・Sから一気に有名V・Sの仲間入りを果たしたのだった。
それは2人にとってとても喜ばしい事であった。だから、自分達のファンに向けて感謝企画のオフコラボをすると発表した。
今注目の2人がファンに向けたコラボ配信をやってくれる。それだけで長年応援して来た者達にとっては嬉しい気持ちだった。
いつもの2人ならオフコラボはお互いの住まいで交互にやっていたが、今回は視聴者から来たプレゼント開封をやるつもりだった。
だから、その都合上で個人勢かつルキウスの拠点も兼ねたルーシィ宅では安全性を考慮して難しく、企業勢で事務所から近い場所に住むアンジェリカ宅でやる事が決定したのだった。
ここまでは何も問題はなかった。お互いにオフコラボを成功させる為に準備を進めて来た。
しかし、今回の問題は彼女達では無く他で発生してしまったトラブルが連鎖して引き起こってしまったのだった。
まず、アンジェリカの所属するホロホロ企業はここ数年で業界が活発し始めた波に乗って出来た新進気鋭の企業である。
最初期から契約したV・S達の活動が有名になった事で事業拡大をしたものの、急激な配信者の増加で本来なら企業スタッフが行う仕事を十分に果たせなかった。
新人配信者やスタッフの教育を行いながら初期から活動している有名配信者のサポートをする関係上、どうしても割を食うのがアンジェリカ達中堅配信者だった。
だから、今回の企画をする時に企業側はいつも通りの流れで、視聴者から送られて来たプレゼントの中身を確認せずに彼女の家に直接送ってしまった。
これがこの悲劇が起きた1つ目の理由。そして、急激に増加した視聴者には所謂アンチと言う活動者に対して攻撃的な視聴者が、今回の企画に乗じて嫌がらせ目的である贈り物を行った。
それは、本来なら取引自体が違法なブラックマーケットで扱われる曰く付き邪本だった。
それを贈ったアンチは元々アンジェリカのチャンネルが嫌いだったが、先日のイベントで応援するV・Sの見せ場を食ったルーシィ達が更に嫌いになり嫌がらせ目的でプレゼントをしたのだった。
この時、このアンチは運が良かったのか購入した邪本の中身を読まずにアンジェリカ宅へ贈った。
手に取った時に本能的な恐怖心と言うのだろうか。なんか持っていたく無い様な嫌な気分になり、一刻も早くアンジェリカへ贈り手放したかった。
ただ、それだけでは自分と同じ様にすると思ったアンチは購入時の紹介文にあった文を用いた。
とあるシリアルキラーが愛用していたらしい本を見つけたので是非読んでみて下さい、とファンを装った内容の手紙を添えて贈ったのだった。
そして、それを受け取ったアンジェリカは運が悪く何も知らないままその邪本を読んでしまったが故に、彼女は呪念による攻撃を受けてしまい一気に衰弱しきってしまったのだった。
アンジェリカは視聴者からのプレゼントは嬉しく思う反面、コラボ相手のルーシィに気分を害する訳にはいかないと事前に品物を確かめていた。
それが今回裏目に出てしまったのだった。ルーシィは時間より少し早くに彼女の家へ到着したので、準備の手伝いを含めて連絡するが繋がらなかった。
ここに来る数十分前の移動中では、何も問題無く連絡が通じていたのにも関わらずこの結果だった。
だから、ちょっと心配になったルーシィは品性の欠片も無いが彼女が住む3階のベランダまで駆け上り部屋の中を見た。
そこには非常に顔色が悪く大量の汗を流して助けを求めているアンジェリカ。その側には気持ち悪いオーラを発している本が開いていた。
ルーシィは直ぐに凝で拳を守りながら窓を破壊してアンジェリカを助けようとしたが、初めて見る状況にどうすれば良いのか分からず急いでルキウスに電話したのだった。
ちょっとだけ、ウイングさん達と合流する前に挟むお話し。