ハンター協会の美食料理人   作:火取閃光

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第15話

 ポックルの弟子入りを決めて数日が経過した。アンジェリカとルーシィの活動休止に関する事件に電脳ネット上では未だに波紋が相次いでいだ。

 

 しかし、これで修行をする準備は出来た。アンジェリカの精密検査では健康そのもので、何故声が出ないのか原因不明と言う結果で終わった。

 

 ポックルに関しては4次試験で別れたポンズと連絡を取り直接彼女を迎えに行った。

 

 ハンター試験の受験者や新米ハンターのあるあるだが、プロハンターを目指すのは容易では無く金欠になりやすい。

 

 そう言う受験者達は次のハンター試験に向けて経験と収入を得る為にアマチュアハンターの仕事斡旋サイトを使う事が多い。

 

 アマチュアハンターとプロハンターの違いはライセンスの有無だけでは無く、活動拠点や報酬金額など様々である。

 

 アマチュアハンターの仕事斡旋サイトは一般人が何か困った事や依頼を掲示して、それをアマチュアが受託して依頼を完了する事で報酬が発生する。

 

 その報酬額は依頼によってマチマチであるけど、1回当たり平均して2〜3万Jである事が多い。1回の報酬で数千万J以上も見込めるプロハンターとは全く違う。

 

 勿論、これは分かりやすく単純な金銭報酬での違いだ。アマチュアとプロハンターの明確な差は未知に対する考え方である。

 

 プロハンターは自身の専門分野において未知の事象に対して金銭や時間を厭わない。マネーハンターでも無い限りお金を稼ぐ事が目的では無いのだった。

 

 ポックルは1〜2ヶ月程度の貯えこそあったが、ポンズもその例外では無くルキウスの弟子入りに選ばれた事は嬉しく思ったが金欠で合流が困難だった。

 

 しかし、ある程度その辺を察していたルキウスはポックルが指定した口座に当面の活動資金と信用を兼ねて、2000万Jを即送金した事で無事に合流が出来たのだった。

 

「2人とも、数日振りだね。無事に合流が出来て嬉しく思う」

 

「あの、ルキウスさん……。ポックルが言っていた弟子入りの件や私がプロハンターになれるって事は本当なの……?」

 

「現状の実力で言えばポックル君の方が上だけど、潜在的なポテンシャルで言えば君も中々だよ。

 

 今年のハンター試験は受験者の数に対して将来有望な選りすぐりの人材が多い印象だった。

 

 正直言って、君は最終試験に残る人材だと思っていたから落ちたって知らせを受けた時は本当に驚いたよ」

 

「っ!? それじゃ……!?」

 

「うん、これから1年以上掛けてプロハンターとして活躍出来る様にしっかりと鍛え上げる。

 

 ポンズさんは来年のハンター試験の合格に向けて仕上げるつもりだ。よろしく頼むよ」

 

「は、はい! よろしくお願いします!!」

 

 4次試験で落ちてしまったポンズは現役で活躍するプロハンターからの言葉に嬉しさが爆発していた。

 

 ルキウスはメンチ同様に一つ星ハンターであるが、この称号を20代で持っているのはかなり稀である。

 

 それも、2次試験の際に明かされた彼の過去話には若干13歳で昇格条件を満たしていて、ネテロ会長が直々に目を掛けていた事も踏まえればポンズの評価がかなり高いことが明白だった。

 

「それで、ルキウスさん……。こちらの女性達を紹介して貰っても良いですか?」

 

「そうだね……。右からルーシィとアンジェリカ。ルーシィは俺の実の姉でアンジェリカはその友人。

 

 どちらもポンズと同じく来年のハンター試験を目指す俺の弟子だけど、姉に関してはアマチュアながら下手なプロハンターよりも強いから仲良くして欲しい」

 

「もう! ルー君、大袈裟だよ!!」

 

 [アンジェリカです。よろしくお願いします]

 

「ルーシィです! アンジェリカちゃんは事情があって声が出ないので、彼女共々よろしくね!」

 

 若干、申し訳なさそうにしているアンジェリカを見てルーシィは彼女のサポートをしながら挨拶を交わした。

 

 2人とも修行に適した動き易さ重視のスポーティな格好をしているが、基となる容姿や陽気な性格が相まって周囲から視線を浴びていた。

 

 元々、祖父母の代まで侯爵家だったルキウス達の実家で政争の道具だったルーシィは、真面目に着飾れば深窓の御令嬢に早変わりする程の美貌を有していた。

 

 それだけでは無くアンジェリカの家も元はサヘルタ合衆国のヨークシンシティで、新進気鋭のベンチャー企業でありながら大きく成長した大企業の御令嬢だった。

 

 しかし、彼女の両親が手掛けていた事業がマフィアと懇意な類似企業の利益を掻っ攫った事で逆恨みをされてしまった。

 

 幼き日のアンジェリカは何とか両親の手によってクカンユ王国にある祖父母の家に避難出来たが、両親とはその時に死別していた過去がある。

 

 一時は復讐も考えていたが歳老いた祖父母達を悲しませまいと復讐を諦め、その過程で得た殺人に関する勉強がキッカケでシリアルキラー好きに目覚めると言う変わった経歴を持つ。

 

 そんな彼女もまたルーシィ同様に自身の容姿に無頓着であるが、少し陰のあるタイプの魅力的な女性として見られていたのだった。

 

「お、おう……。よろしく」

 

「よろしくね、2人とも」

 

 男性比率よりも女性比率が大きくなったポックルは歳相応に照れてしまいぶっきらぼうになり、逆にポンズは同じくハンター試験を目指すルーシィ達にホッと一息付いた。

 

 ルーシィ達は別段プロハンターになりたい目標がある訳ではないが、当面の目標としての意味やライセンスの有用性について思うところが有り試験を受ける事にしたのだった。

 

「さて、挨拶は済んだ様だから早速で悪いけどこれからジャポンに向かうよ」

 

「ルキウスさん、ジャポンでは何をしに……??」

 

「ジャポンにいる俺の兄弟子から弟子の教育を手伝って欲しいって頼みがあってね……。それを行いながらみんなに修行をつけるんだ」

 

「えっ……? これから、プロハンターとして活動するんじゃないんですか……!?」

 

 別段、文句があった訳ではないがルキウスの指導方針に驚いたポックルだったが、彼はその表情を見て苦笑いした。

 

「ポックル君、厳しい事を言うがプロハンターになったばかりの君では最低限必要な力が全く足りていないんだ……」

 

「っ!? そんなっ……!?」

 

「でも、それは仕方ない事だ。何故なら、君は表のハンター試験を合格しただけのハンターライセンス持ちであって、俺達プロハンター業界から見ればまだプロハンターでは無いのだからね」

 

「表のっ……!?」

 

「ハンター試験っ……!?」

 

 あの激戦とも呼べるハンター試験が、ハンターとしての資質を測る為の篩でしかないと言う事実にポックルとポンズは目を見開いた。

 

「ポックル君や他のみんな、これより裏ハンター試験を開始する。この試験はプロハンターとして最低限の力を付ける為に行う修行である」

 

「裏ハンター試験を合格する為の条件とは……!?」

 

「大丈夫、安心して。表ハンター試験とは違い不合格は無いし、基準値を下回ったからと言ってライセンスを没収とかのペナルティは無いから」

 

「よ、良かった〜〜!!」

 

 数日前に受かったばかりの表ハンター試験の様に何かしらの罰則があるのかと思ったポックルはホッと胸を撫で下ろし安堵した。

 

「これから、プロハンターとして活動する為に必要不可欠な力を身に付ける事がある意味合格ラインって訳だ。

 

 プロハンターとして活動すると必ずと言って良い程に求められて、その基準に満たさなければ依頼を受ける前の試験にすら門前払いされるから心して受ける様に」

 

「あ、あのっ……! それって、ライセンスを持っていない私達も受けて良いいんですか……!?」

 

「ハンター協会的には表向きには良い顔はしないよ。ハンター十ヶ条に抵触はしないだろうけど、ライセンスを持たない一般人には秘匿する様に厳命されているからね……。

 

 でも、裏ハンター試験を行った後にその弟子が表ハンター試験で合格する意思があるなら前後逆にしても良いんだ」

 

「それは、他のプロハンターでも同じなんですか……?」

 

「それは人に寄りけりだね……。俺の場合、美食ハンター以外にも人材発掘ハンターって肩書きと実績があるからね」

 

「人材発掘……。具体的にはどんな事をしているんですか?」

 

 本当に色々な事をやっていると感心したポックルは参考までにどんなハンター活動をしているのか質問した。

 

「そうだな……。例えば、絵画の才能はあるんだけど画家としてのキャリアを積む為のお金が無いみたいな人を発掘して、金銭援助や美術品ハンターに紹介するとかな……。

 

 ハンター協会は意外だけど政界との繋がりはかなりあるからさ……。そう言う繋がりを強固にする時に絵画みたいな美術品って割と好評らしいよ。

 

 だから、そう言う所でハンター協会に貢献した俺であれば若干のグレーゾーンも目を瞑りますし、弟子をハンターに育てるなら許しますって感じの許可は貰っている。今まで使った事がないんだけどね」

 

「なるほど……。それなら、安心しました」

 

「また、何か聞きたかったら遠慮せずに聞いてくれると助かる。それじゃ、チケットは既に取っているから行こうか」

 

 ルキウスからジャポン行きのチケットを貰ったポックル達は来て早々にクカンユ王国から飛び立ったのだった。

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