ハンター協会の美食料理人   作:火取閃光

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第21話

 ズシを除いたルキウス達は無事に50階クラスをパスして、同日に60階クラスを難なくパスした。

 

 流石にキルアを相手にしたズシはポイント上では劣勢だったが、最後は判定まで何とか持ち堪えて負けたのだった。

 

 彼は自分1人が40階クラスになってしまった事を酷く落ち込んでいたので、励ますのに時間が掛かったのだった。

 

 キルア戦でボロボロになったズシは50階クラスへの昇格戦は明日以降と判断されたので、天空闘技場へ向かう前に2年契約した借家へ帰ったのだった。

 

 借家はウイングとズシのペア。ルキウスとポックルのペア。ルーシィとアンジェリカ、ポンズのペアに分かれて近場の3軒を借りたのだった。

 

 天空闘技場では100階クラス以上になると専用の個室が手に入る特典が得られるが、同室で修行をするとなると個室では何かと不便だった。

 

 それに加えてルキウス達の場合は、ルーシィの手料理と言う回復手段もあるので出来るだけ広いスペースの確保が必須だった。

 

 傷付いた体と精神を料理で回復したズシは敗北を切り替えて、次に活かす様に反省会を行った。

 

 そして、自分達に何が足りないのかを理解してそれぞれが借家に戻り本日の修行を行ったのだった。

 

 場面は変わり天空闘技場近くの宿屋でゴンとキルアはそれぞれの戦いについて話し合っていた。

 

「キルア、ズシとの試合で手こずっていたみたいだけど……」

 

「あぁ、勝ちはした……。けど、判定まで粘られたし俺も何発か攻撃をくらっちまった……」

 

 苦過ぎる勝利にキルアの表情は珍しく曇っていた。自身と同世代かちょっと下の子供相手に圧勝出来なかったのがとても悔しかったからだ。

 

「ズシって、そんなに強かったの?」

 

「いや、どうなんだろうな……」

 

「うん? 戦ったんでしょ?」

 

「うーん……。表現が難しいんだよ……。少なくとも俺から見れば実戦経験は少ない上に隙もまだまだ甘い……。

 

 パワーはゴンと同等以上な感じだったけど、防御力って言うか耐久値は俺と比べてもそこまで大差は無かったと思う……」

 

「そんなにっ!? でも、なんて言うか……。チグハグだね?」

 

 自信無さ気に話すキルアの表現にゴンは驚きつつも首を傾げた。彼は試しの門の1の門を開けたが、キルアは3の門を開けている。

 

 キルアの猛攻を受けて粘ったと言う事は身体強度に加えた身体能力もキルアと同等は無いとおかしな話となる。

 

 しかし、実際の身体能力はゴン自身と同じ程度にしか感じられないとなるとどう言う理屈なのか不思議で仕方なかった。

 

「そうなんだよ。俺もあんまりに倒れないから割とマジ(9割)で殴ったんだけど……。それでも、直ぐに立ち上がって来たんだ。

 

 ついカァーッとなってやっちまった俺が言うのもアレだけど、あの一撃は例えゴンでも最悪死ぬレベルの攻撃だ。

 

 俺みたいにガキの頃から殺し屋やっていたみたいな場合でもない限り、堅気の人間が鍛えたからどうこう出来る範疇を超えていたんだ」

 

「……でも、ズシは立ち上がったんだね?」

 

「あぁ。悶絶どころか割とピンピンしていたぜ……。どうなってんだ、アレは……??」

 

 イライラで怒りに身を任せた一撃。そのズシを殴った感触はキルアの脳裏に確実に殺したと言う確信を与えた筈だった。それなのに殺せなかった事実は信じ難い思いだった。

 

「それって、やっぱりルキウスさん達の指導が絡んでいるのかな?」

 

「恐らく、としか言えねえけどな……。並の鍛え方じゃ、絶対にあんな風にはならない……。それに……」

 

「何か、気になる事があったんだね?」

 

 キルアが思い詰めた表情を浮かべたのでゴンが事情を聞くと、キルアが敗北したズシに強さの秘密を聞こうと彼の元へ行った時の事を話してくれた。

 

「俺に負けたズシは酷く落ち込んでいたが、ウイングって言うズシの師匠とルキウスが慰めていたんだ。

 

 そん時、ズシに対して"よく言い付けを守り、レンやギョウを使いませんでしたね。結果こそ負けてしまいましたが素晴らしい戦いでしたよ"って言っていたんだ」

 

「レンに、ギョウ……?? 何かの技術かな?」

 

「多分そうだ……。それがズシの秘密、なんだろうな……。正直全然比べ物にはならないけど、ズシと戦っている時に兄貴やネテロの爺さんみたいに勝てないって思ったんだ。不思議とな……」

 

「イルミと一緒……」

 

「全然、空気って言うか雰囲気は違い過ぎるけどな……。それでも、なんて言うか……。俺とズシの間には明確な壁があった。そんな気がした」

 

 今にして思えばイルミから放たれた嫌な圧力を感じた時も、ズシと同様の壁を感じていた事をキルアは思い出していた。

 

「ルキウスさんはズシに何か言ってなかったの?」

 

「アイツか……。アイツが言っていたのは"たった1ヶ月でテンの防御力が格段と上がっている。あの手合いに対して最後まで粘ったのは良いペースだ。

 

 200階クラスの闘士達にも通用する領域まで足を踏み入れたのさ。だから、これからもシュウとケンは続けよう"ってさ……」

 

「テンにシュウとケン……。また、俺達には分からない用語が飛び交っているね……」

 

「だな……。俺決めたよ、ゴン」

 

「えっ?」

 

「200階までゆっくりのんびりしながら金を稼ごうって思っていたけど、俺は200階まで最短で駆け上がろうと思う。

 

 ルキウスやメガネ兄さんの言葉を聞く限り、ズシのあの技術は200階クラスに行けば自ずと分かると思う。

 

 俺が兄貴に、お前がヒソカに勝つにはズシのレンとか言う技術の習得が必須だって分かったからな」

 

 ゴンの武者修行に付き合いながら資金稼ぎをする目的を一旦白紙にして、キルアも強くなる事を決意した。

 

「それじゃ、ズシやルキウスさん達に直接聞きに行かない?」

 

「……なる!」

 

「強さの秘密は簡単に教えてくれないかもだけど、そこは一杯お願いしてみようよ」

 

「だな! そんじゃ、明日か明後日にでも聞きに行くか!」

 

 本来の彼等はほとんど初対面のズシやウイング達に質問するまで100階クラスを超えてから向かったが、この場にはハンター試験を共にしたポックルやルキウス達がいた。

 

 彼等とは高々2〜3週間と言う短い付き合いだが、それでも強さの秘密を聞きに行くには十分過ぎる付き合いだと思ったのだった。

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