ウイングの弟子として新たにゴンとキルアが参戦して6日が経過した。2人は教わる前と比べて安心したのか精神的にも少しずつ落ち着きを見せていた。
また、キルアに負けたズシも連戦を重ねて本日ルキウス達がいる150階クラスに合流したのだった。
案の定と言うか150階クラスになってもキルアやゴンの様な高い資質を持ち合わせた闘士は見られなかった。
しかし、接近戦闘の経験が浅いアンジェリカやポンズを始めポックルも苦戦を強いられた様だ。
基本的に緊急時を除いて纏と絶以外は応用であっても使用禁止としている。その為、技術力や実戦経験の差が如実に出ていた。
ルキウスからは更に100階クラス以上になってから、試合開始直後の押し込みを禁止していた。
念能力を習得した以上、彼等がやるべきは200階クラスの闘士達と戦闘しても動ける為の経験値を得る事だった。
「そう言えばズシ達はどのくらいで念能力に目覚めたの?」
「押忍ッ! 自分は、大体半年近くの時間を掛けてゆっくりと起こしたッス!!」
「うげっ!? そんなに掛かるのかよ……!?」
「押忍ッ! でも、それは自分がまだまだ未熟だったからッス!」
「えっ? どう言う事……?」
「自分は師範代からも才能があるって言われてましたが、ルキウス先生と修行をして未熟過ぎたと理解しましたッス。
念能力は高い身体能力や身体強度がある程に比例して覚醒速度や強さが増す傾向があるッス。その例がポックルさん達ッス」
「俺やポンズはハンター試験後に鍛えて貰い始めて大体17日で目覚めたんだよ」
「17日っ!?」
「滅茶苦茶早いっ!?」
「えぇ、そうね。でも、ルキウスさん達はゴン君とキルア君はもっと早く目覚めると思っているそうよ」
「えっ!? ポンズさん、本当っ!?」
「ねぇ、ルーシィさん。念能力ってそんなに早く目覚めるもんなんですか?」
「えぇ、そうね……。念能力の覚醒はやろうと思えば無理矢理覚醒させる事も出来ちゃうの」
「じゃあ、何で俺達はゆっくりと起こす方針なんですか?」
「無理矢理でも早い方が良いと思うんですけど……」
教えて貰っている身としてはこれ以上の文句は無いキルア達ではあるけど、単純に無理矢理起こす事に何かリスクがあるのか疑問に思った。
「確かに、そう言う意見があるのは分かるわ。特に君達みたいなタイプはね……。でも、無理矢理覚醒っていうのはとても危険な事なの」
[無理矢理覚醒させられたって言えば、私がその代表的な例みたいなモノだからね……]
「なっ!?」
「それって、どう言うっ……!?」
悲し気な表情で端末に文字を入力したアンジェリカを見て、ゴンとキルアはその真意について質問した。
「念能力を無理矢理目覚めさせるって事は、即ち生身の体にオーラをぶつける事と同じ意味をしているの」
[私は知らずに他人の念能力を受けて衰弱死する寸前まで追い込まれたわ。声を失ったのはその時に受けた呪いの様な代物なの]
「ルー君やウイングさんクラスの実力者なら、壊さない様に調整して覚醒させる事は可能だと思う。
だから、そう言う意味で無理矢理にでも早く起こせるか否かで言えば起こせると思うわ。
ただし、そのやり方は念能力を熟知したルー君達と身体能力や強度が常人離れしているキルア君達がいて初めて成立する話なの。
そして、纏をマスターしたズシ君やポックルさん、ポンズちゃんなら理解出来ると思うけど……。
念能力の基本中の基本である纏は行う技術じゃなくて、その状態の維持が自然と出来る事が大切なのよ。
その為、精神鍛錬と言う念能力の土台が出来ていない状態で無理矢理覚醒させても、長期的に見ると自然と起こした人に比べて纏の強さが違う事があるのよ」
「念能力の土台を作る為の燃って訳か……」
「そうよ。君達だって空気を吸うのに一々呼吸をしようとは思っていないでしょ?
念能力に覚醒したばかりの人達は人工呼吸器で息が吸えている状態だから、これをもっと自然に行い無意識まで落とし込む事が大切なのよ」
「纏を習得した身から言わせてもらうけど、平時で維持する纏と戦闘時で維持する纏では難易度が天と地程の差があるわ」
「纏を習得出来れば、それまで出来なかった事が出来るって言う感覚に陥りがちだけど……。
同格以上の戦いだと纏の維持だけでかなり気を取られたから、今の俺は燃の修行は必須だったと改めて思うよ」
「そう、なんですか……」
「うーん。イマイチ、ピンと来ねえな……」
無理矢理起こすリスクの高さや燃の有用性については理解出来た2人が、纏を習得出来ていない現在ではあまり理解出来る話では無かった。
[念能力に目覚めたらルキウス君に模擬戦を頼めば良いよ。私達も普段の修行で経験を積ませて貰っているから]
「押忍ッ! それが一番分かりやすいッス!!」
「確かに、今から考えても仕方ないよね」
「だな! それじゃ、燃の続きをして早く念を習得しようぜ!」
燃による精神鍛錬がつまんないと言う訳ではなかったが、これをやる意義について再確認した2人は更に集中力を増して修行に臨んだ。
そして、2人が170階クラスに到達した3日後の修行中、遂に花開いた。精孔が開きオーラに目覚めたのだった。
「これがっ……!?」
「オーラッ……!?」
「ゴン君とキルア君、おめでとうございます。それがオーラです。2人にはオーラがどう見えますか?」
「湯気だっ……! 薬缶から出る蒸気にそっくりだ……!」
「全身から迸っているけど、これってヤバくね……!?」
「そうだ。オーラは生命エネルギーである以上、底が尽きれば全身疲労でマトモに立てなくなる」
「やっぱりっ……!」
「2人とも、良いですか? 普段から燃を行うイメージで自然体となり迸るオーラを巡らせる様にとどめて下さい!」
「体内にある血液が全身を巡る様に円を描きながら、次第にゆっくりとその流れを落ち着かせるんだ」
この辺りは普段からポックル達に纏のコツやイメージなどを聞いて燃の精神鍛錬を行って来た2人だったので、ウイングとルキウスのアドバイスを改めて聞いて直ぐにマスターした。
「良い纏です。そのままゆっくりと目を開けて下さい」
「どんな感じか言葉に出来るか?」
「温い粘液に身を包まれている感じです……」
「重さの無い服を着ている感じかな……」
「そのイメージを常に持っていて下さい」
「纏は行う技術じゃなくて、無意識に出来る状態だ。寝ながら纏が出来るくらいはしないと話にならないからな?」
「その通りです。それではっ……!!」
突如、ウイングはゴンとキルアに向けて敵意を込めたオーラを放った。突然の事にゴン達は驚いたが、自身のオーラがウイングのオーラを防いだ事で念能力の実感が湧いたのだった。
「キルア君とゴン君、数日前ではこれだけでも辛かった筈ですがどうでしょうか?」
「確かに、今は圧迫感はあるけど辛くは無いです……」
「……正直舐めていた、とは思う。念を覚えていようがウイングさん達に殺されるほど俺は落ちぶれちゃい無いって思ってた……。
でも、甘過ぎた……。これは確かに、基本だけ中途半端に覚えちゃダメなやつだったと改めて思ったよ」
「それが分かれば十分です」
「取り敢えず、今日は纏の維持を行おう。2人とも、俺の借家に泊まって良いから思う存分強くなろう」
「っ!? 良いのっ!?」
「こう言うのは最初が肝心だ。夜更かししたい気持ちは分かるから最後まで付き合うさ」
「っ!? やりい〜っ!!」
「ポックル君、先輩としての意地を張る時が来た様だ。簡単に抜かれちゃダメだぞ?」
「っ!? はいっ!!」
「それじゃ、ウイング先輩に一礼! ありがとうございました」
『ありがとうございました!!』
「はい、皆さん、また明日」
ウイング達と別れたルキウス達は借家へ戻り、再びゴン達の纏の訓練に付き合った。
ゴン達は1時間以上も乱れず纏を維持するポックルを見て負けられないと闘志を燃やし、結局寝たのは深夜2時頃となっていたのだった。
ネット環境に関して、一時的に復旧したり不安定になったりしているのでこれから様子見しようと思っています。