ハンター協会の美食料理人   作:火取閃光

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第24話

 ゴンとキルアが纏を習得した翌日、180階クラスをパスしてもう直ぐ200階クラスに到達するまで秒読みとなっていた。

 

「さて、2人とも。早速だけど、これからポックル君達の修行メニューと合流する。準備は良いか?」

 

「ねぇ、具体的には何をするの?」

 

「先ずは今日から夕方と朝方の2回、纏を維持した状態で天空闘技場周辺を走るんだ。

 

 君達の場合、明日か明後日にでも200階クラスに到達するだろうから、少しでも早く動きながらの纏の維持に慣れた方が良いと言う判断だ」

 

「でも、200階に到達してもゴンは兎も角として俺は直ぐには戦わないよ」

 

「キルア君はそうでしょうが、200階クラスには新人を好んで狙う闘士がいます」

 

「そう言う輩はいつまでも粘着して来てとても面倒だ……。売り言葉に買い言葉で挑発に乗ったら最後、習熟度不足で纏が解けて大怪我一直線は何としてでも避けたい」

 

「あぁ、確かに……。俺は引き際と相手を選ぶけど、ゴンの場合はその辺考えなしにやりそうだ……」

 

「キルアッ!? 俺の事、そんな風に思っていたの!?」

 

 まるで心外だと言わんばかりにキルアに詰め寄るゴンだったが、キルアは微妙そうな表情で思い浮かぶイメージを述べた。

 

「でも、お前……。仮に200階クラスに到達して、纏を覚えた今ならどれくらい通用するかとか実力を試そうとするだろ?」

 

「うっ……!? それは、そのっ……」

 

 キルアに図星を突かれたゴンは言葉に詰まった。今ですら纏を覚えてワクワクが止まらなかったので、自分でもあり得ると思ってしまった。

 

「ゴン君の思いっきりの良さは長所ですが、考えなしの思いっきりは無謀と言います」

 

「折角、洗礼を受けず念能力に目覚めたのにそんな事になったら目も当てられないぞ……」

 

「うぅっ……。だって……」

 

「正直、ハンター試験の時からそう言う危うい部分があったから、俺はあの時に自信と傲慢を履き違えるなと注意したんだ」

 

「でも、ゴンは分かるけど俺ってそんなに引き際を見誤ると思われているの?」

 

「キルア君の場合、無鉄砲に突き進むゴン君を止められずにデッドラインを越えて巻き込まれる形でミスる感じだと思ったけど?」

 

「うっ……!? それは、あり得るかも……」

 

「キルアッ……!?」

 

 ルキウスの指摘にキルアが呻く様に頭を抱えている様子を隣で見たゴンがとてもショックを受けていた。

 

「うん、自覚したなら幸いだ。俺達は何も戦うなとは言っていないんだ。強くなる為には実戦経験が必要不可欠だからさ……」

 

「それでも、相手の力量を知ろうともせず戦いに挑む事は許しません」

 

「そう言う訳だから、出来るだけ早く纏に慣れてくれ」

 

「うす……」

 

「……あの!」

 

「ゴン君、何かな?」

 

「走り込みが終わったら、俺と模擬戦してくれませんか!?」

 

「その程度なら勿論だとも。ただし、相手は俺ではなく姉のルーシィにして貰う」

 

「えっ!? ルーシィさんって戦えるの!?」

 

 ルキウス達と一緒に天空闘技場で180階クラスの闘士をしている以上戦える事は知っていたが、ゴンとしては叔母のミトを彷彿するイメージだったので驚愕を隠せなかった。

 

「あぁ、今のゴン君なら殺す気で相手にしても勝てないくらいには戦える。安心して挑むと良い」

 

「それじゃ、俺も頼める?」

 

「流石にキルア君相手だと戦闘経験が不足していて、ちょっとキツイだろうから君は俺が相手しよう」

 

「では、ズシを先頭にランニングを開始して下さい」

 

「押忍ッ! では、みなさん行くッス!!」

 

 ズシの掛け声にポックルやポンズ、アンジェリカ達は100kgの重りを装備して走り出した。

 

 ゴンとキルアも続く様に走る。しかし、そこまで速くない速度であるにも関わらず早くも纏が消え掛かる。

 

 寝る前にあれほど慣らして完璧だと思っていたにも関わらず、激しい体力と集中力の消耗の中で動きながら纏を行う難易度の高さを痛感していた。

 

 ランニングで走った距離は15kmと本来のゴン達であれば息すら上がらない筈だが、服がベタつく程度には汗をかく位の疲労感を滲ませていた。

 

 対して重りを装備したポックル達は慣れた様に多少息は上がるが、まるで疲労感は滲ませていない。

 

 更に重りを周で強化しながら走ったズシは誰よりも疲れている筈なのに闘志を燃やして考えを巡らせた。

 

 現在、彼は発の修行に取り組んでいる。念系統を調べる水見式では葉っぱが動く操作系であると判明した。

 

 操作系の発は当たれば強いが発の開発がとても難しい系統であり、ルキウスからどう言う能力にしたいかのアイディアを常に考えておく様に言われていたのだった。

 

 発の開発に関するアイディアは普段の何気無い生活から突然思い浮かぶ事が多い。だから、修行中のふとした出来事を頭の中で思い出していたのだった。

 

「さて、ゴン君とキルア君。纏を行いながらのランニングはどうでした?」

 

「思っていた数倍疲れました……」

 

「まさか、動きながらの纏がここまで難しいとは思わなかった……」

 

「それが分かった状態で、これから模擬戦を行う」

 

「怪我しない様に手加減はするけど、悶絶は許してね!」

 

「うぇ……」

 

「マジ……?」

 

「疲れているからと言って相手が手加減をしてくれる程、勝負の世界は甘くありません。そうでしょう、キルア君?」

 

「っ!? あぁ、そうだな」

 

「うん、戦おう!!」

 

 そう言う事で始まったゴン対ルーシィ、キルア対ルキウスの模擬戦。最初はゴン達から行う。

 

 高い瞬発力を活かしたゴンが速攻で仕掛けるが、それに合わせたカウンターでルーシィの一撃を受けて吹き飛んだ。

 

「っ!? ゴンッ……!?」

 

「グッ……!? なんて重い一撃だっ……!? 纏で防御力が上がっている筈なのにっ……!?」

 

「それは、ゴン君の纏よりも私の纏の方が強かっただけだよ。筋力で言えばゴン君と私にそこまで大差は無いからね」

 

「念能力者同士の戦いは纏と練の力強さで勝敗が分かれる事があります」

 

「ゴン君達は昨日習得したばかりだけど、姉さんは少なくとも7年以上はずっと鍛えている。単純にその差は才能だけでは埋められないんだよ」

 

「それじゃ、今度は私から攻めるよ! ちゃんと防御してね!!」

 

 軽くステップをしてから踏み込んだルーシィの攻撃。手加減してくれている筈だが、彼女のジャブはゴンにとって猛獣に殴られた様な衝撃を受けた。

 

 まるで弾丸の様に素早く、それでいて全身の骨が軋む様な重い連撃に耐えられずゴンの纏は解けてしまう。

 

「グッ……!? ガァッ!?」

 

 ルーシィの連撃をモロに受けたゴンは何度も地面に転がり意識を飛ばした。纏が解けた時点で攻撃をやめても良かったが、纏を解いた状態で受ける念攻撃について知っておく事も必要と判断したのだった。

 

「これで決着だね」

 

「ズシとポックル君、ゴン君の手当てを」

 

「さてと、次はキルア君だ。安心して掛かって来なさい」

 

「っ!? シッ……!!」

 

 ルーシィの攻撃によってゴンが一方的に倒された事を見たキルアは、彼女よりも遥かに強いルキウスに向かって不意を突いて殺す気で攻撃した。

 

「弱い、弱い」

 

 だが、キルアの一撃をルキウスは纏による防御力のみとしてノーガードで止めた。

 

 殺す気で首元に手刀を叩き込んだ筈だったが、まさかのノーガードでノーダメな状況にキルアの思考が止まる。

 

 その隙を見逃さなかったルキウスは近くにいるキルアの額に目掛けてデコピンをかます。

 

 デコピンはおよそ人から鳴ってはいけない程の鈍い音がしていて、くらったキルアは何度も地面を転がり頭を抱えて悶絶していた。

 

「いってぇぇぇえええーー!?」

 

「纏で防御力が上がっていても痛い事には変わらない。良い教訓になっただろう?」

 

「それでは、今回の模擬戦を終わります。ポンズさんとアンジェリカさんはキルア君の手当てを頼みましたよ」

 

 死屍累々のゴンとキルアを介抱しながら模擬戦は無事に終了したのだった。そして、ポックル達はルキウス達が普段からどれほどの手加減をしているのか理解して内心ではビビったのだった。

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