およそ2週間後にポックルとギド選手の試合が決まった翌日、ルキウスやウイング達は弟子達を集めて修行に打ち込んだ。
ポックルの試合は若干イレギュラーで本来の目的はルキウスとヒソカの試合観戦であったが、それも込みでの修行である。
「さて、ポックル君」
「はいっ!」
「2週間後の試合に向けて勝率を上げる様に特訓を開始するよ」
「よろしくお願いします!!」
「ゴン君とキルア君もこれからルキウス君が話す訓練メニューをして貰います」
「ウイングさん、俺達も?」
「具体的には何すんの?」
「纏の応用技、周を行って貰う」
「周?」
疑問に思うゴン達を前にルキウスは厨房にあった包丁を見せながら、纏の応用技である周を使いオーラを纏わせて強化した。
「周とはオーラを使い自身が身に付けた武器や道具を己の体の一部として強化する技術です。
応用技は通常の纏に比べて数倍以上にオーラや精神力、スタミナなどを消耗させて、全身に大きな負荷を与えます」
「本来なら、応用技は四大行をマスターしてからの方が順番的にも体力的にも良いから推奨されている。
だけど、周を習得すれば効率的にオーラ総量やスタミナは勿論だけど単純に今まで以上の強さを得られる。
周は応用技の中ではとても簡単に習得出来る部類の技術だけど、これを使い熟せれば念能力者として第一歩を踏み出せると言っても過言では無いんだ」
「これから3人に課す訓練メニューを1月半前からズシに行って貰いましたが結果は上々です」
「押忍ッ! 使い熟すまでは滅茶苦茶難しかったッスけど練が不安定だった自分が、たったの半月程度でオーラ総量がかなり増えて練が安定したッス!」
「へぇ!」
「実際、どのくらい増えたんだ?」
「自分の感覚ッスけど……。半月でも倍近くは増えた様な気がするッス!」
「倍っ……!?」
[それは凄いっ!!]
周を使った修行での成果にポンズやアンジェリカ達から驚愕と期待の声が溢れた。
「あはは……。でも、修行負荷は皆さんがやっているランニングの数十倍はキツかったッス。それは覚悟しておいた方が身の為ッス」
「数十倍か……。だけど、これも強くなる為……!」
「その意気だ、ポックル君。現状でも、ギド選手と比べてもそこまで大きな差は無いと思っている。
昨日チラッと見た感じではあるけど、新人潰し専門と独学による弊害の為か基礎トレーニングを疎かにしている様に思えた。
正直修行不足だと思った。ゴン君やキルア君、ポンズさんやアンジェリカさんではまだ厳しいけど、ポックル君なら現状でも勝率は3割くらいはあると思う。
それでも、彼が君に勝っているのは念能力を使った戦闘経験値だ。だから、苦戦こそするだろうが大敗するとは思っていない」
「しかし、200階クラスからあらゆる武器の仕様が許可されています。そういう所で差を埋める為にこの訓練を課すんです」
「ねえ、ルキウスさんとウイングさん……。これから習う周ってヒソカも、出来るの……?」
「当然です。あの技量の持ち主が出来ない筈がありません」
「ゴン君達はハンター試験でヒソカのトランプが人や動物、建物を切り裂いた光景を見たことはないかい? アレが周だ」
「トランプで生き物を殺しているから特殊なトランプだと思っていたけど……」
「まさか、アレが念能力だったなんて……」
ハンター試験参加組は1次試験でヒソカが試験官であるサトツに向けてトランプを投げた時の事を思い出した。
普通に考えればただのトランプを投げて偽試験官に化た猿を殺せる道理はない。紙製のトランプと生き物とではそもそもの強度が違うからだ。
だから、ゴン達はアレが特殊加工したトランプだと思っていたが、念能力の一種であると聞いて逆に納得したのだった。
「そういう事だ。これからは朝方と夕方に行っているランニングに加えて昼前の合計3回、周を維持したランニングを行って貰う。
ポンズさんとアンジェリカさんは絶を習得した後でポックル君達の修行に合流する事。
絶はオーラや疲労を素早く回復させる為には必須となるから、周などの応用訓練では必ずと言って良い程に使うので焦らず習得して欲しい」
「っ!? はいっ!!」
[分かりました!!]
「それでは、修行を始めます」
『押忍ッ!!』
ウイングの掛け声に合わせて全員が一礼をしてランニングがスタートした。
ゴンとキルアの重りに関しては絶の習得で別メニューを課されているポンズとアンジェリカの物を使い、それを周で強化したまま軽快な足取りで走った。
しかし、ランニングを開始して僅か数分後には彼等の表情が苦悶に歪んでいた。
普段ならなんて事はない速度と距離の筈なのに、自分自身から滝の様に零れ落ちる汗と全身から力が抜ける様な疲労感に早くも襲われていた。
序盤は何とか走れていたけど中盤に差し掛かった時にはかなりペースダウンして、終盤に至ってはマトモに走る事が出来ずランニングよりもウォーキングに近い速度まで落ち込んでいた。
結局、いつもやっている距離のランニングは3〜4倍の時間が掛かってしまい、ゴールと同時に地面へ倒れ込んでしまった。
「3人とも、お疲れ様。念能力の応用技は疲れただろう?」
「はぁ……。はぁ……。はい……」
「疲れた、なんて……。レベルじゃ、ねぇぞ……」
「もう、動けない……よ……」
ポックル達は自身の少ないオーラを全て出し尽くし全身疲労状態に陥っていた。
「取り敢えず、3人ともお疲れ様です。お風呂のご用意が出来ていますので、ゆっくり湯船に浸かり体をほぐして下さい」
「その間に美味しい料理を一杯作るから楽しみにしていて!」
ウイングとルーシィの言葉を聞いたポックル達は体を引き摺る様に歩いて汗を流した。
その間にルキウスとルーシィは修行で疲れたゴン達の体力や疲労などを回復させる極上の料理を作っていた。
こう言う時ほどルーシィの能力は輝きを発揮するのだ。彼女の料理はただ回復させているだけでは無く、強い筋肉や骨、神経になる様に少しずつ強化させながら修復するのだった。
これは特質系なルキウスとは言えど持っていない強化系なルーシィが持って生まれた才能が由来していた。
念能力者における治癒者が希少能力である理由であった。強化系とは言えど他者に影響出来る回復能力は物体の強化とは違った類の才能だった。
風呂から上がり事前に用意していた予備の修行着に着替えたゴン達は空腹の音を鳴らして食事を貪る。
肉料理や野菜料理、スープ料理やパンや米などの麦料理に加えて食後のデザートとして甘味料理を食した。
ルーシィの
これは誰でもそうなのかと言えば違く、制約としてルーシィが真の料理人と認めた者にのみ使える
しかし、ルーシィの発がオーラ消費が低いとは言え大量に作れば消費量が膨らんでしまう。彼女自身のオーラ総量はまだまだ足りていない。そこで、使われるのがルキウスの発で具現化した包丁である。
その名前も
こう言う制約は本来、数回程度で達成可能な制約を行う事で一時的に能力が強化されて直ぐに元に戻る事が一般的である。
具体的に言えば幻影旅団のフィンクスの能力である
その能力は一撃の瞬間火力を増強する為、1回腕を回す度に増大する強化率もかなり高い仕様になっている。
しかし、様々な能力を永続的に付与する為、ルキウスは制約で総切断回数と言う解放条件を設定した。
つまり、やっている事はフィンクスの逆で1回の切断で得られる制約的な強化を極限まで下げる事で能力の付与と永続化を果たしたのだった。
その制約で設定された能力の1つで、総切断回数10万回以上と言う条件で解放した包丁の分身能力。
オリジナルをルキウスが所持した場合に発動出来る能力で、サブの包丁を1本分身させて他者に貸す事が可能。
更にルキウスが認めた料理人に限定して貸した場合にのみ自身のオーラを分け与える事が可能な相互協力型となる。
それは総切断回数によって与えられる割合が比例して増える様にしているので、彼女のオーラ不足は解消されていた。
この発はルキウスがビスケに弟子入りし念能力について学んでから初めて作った能力だった。
師匠にも呆れられたが具現化した武器としての性能で言えば、解放される付与された能力と課された制約が釣り合っていないので弱い部類の念能力だ。
武器として使い強くなるだけなら、もっと軽い制約でより強力な代物を具現化出来るだけの才能は有していたからだ。
しかし、ルキウスとしてはこの能力をとても気に入っていた。元々は世界中の何処にいても一生使える包丁が欲しいと言う想いからスタートしていた。
付与された能力を解放する為の重い制約についてはほとんど遊び半分の思い付きで、料理人としての目に見える目標設定くらいに考えたのだった。
2人の料理人によって作られた極上の料理を平らげたゴン達は、修行で疲弊していた体が急速に回復していくのを感じた。
更に絶を行う事でオーラと疲労感の回復力が更に増す。それは本来なら連続して行えない修行を可能にする程であり、ポックル達は昨日までとは違い加速的に成長する実感を得られていたのだった。
ルキウスの新たな発が登場しました。
⚪︎
具現化系・特質系などの複合能力。
制約は包丁で切った総切断回数によって付与された能力が順次解放される。
現在判明している能力
・総切断回数が10万回以上に達した時、包丁が分身する能力。貸した相手がルキウスが認めた料理人である時のみオーラを与える事が可能。
武器としての性能で見れば能力は多種多様だが、重い制約を考慮すると弱い部類の念能力。
ただし、世界中何処にいても一生使える包丁として考えれば、まだ明かされていない能力を含めてかなり有用な性能をしている。そう言う遊び心で作った発。