オフコラボから半月後、ルキウスはブハラから送られてきたビスカ森林公園に予定よりも少し前に到着していた。
ちなみにルキウスが了承した時点でブハラからネテロ会長の秘書ビーンズに連絡を取り、正式な手順は踏んでいた。
「ちょっと! ルキウスが来るなんて聞いてないわよ!?」
「あぁ、俺が呼んだ」
「何でよ!?」
「だって、メンチは自他共に厳し過ぎるから試験難易度設定を上げ過ぎるだろ? 俺は俺で難易度が緩くなりやすいからさ……」
「俺はそのストッパーって訳だ。厳しくなりやすいメンチと緩くなりやすいブハラの試験について、客観的に判断する時以外は口出す事はないよ」
「ぐぬぬ〜〜!!」
「まぁ、機嫌悪くなると分かっていたからさ……。お土産持って来たからこれで許してよ」
そう言ってルキウスは念能力を発動すると右手首に腕輪に繋がれた幾つかの鍵を出現させて、その内の1つを何も無い空間に差して鍵を回した。
この能力は放出系をメインに様々な系統を混ぜた複合能力の1つで、念空間に干渉する為のマスターキーである。
「相変わらず、便利な能力よね〜」
「俺も同じ放出系の能力だけど、ちょっと憧れるよ」
「ブハラ、こいつ特質系よ」
「えっ? マジ?」
「まぁね……。そんな事よりも姉さんから2人にって事で差し入れ。サトツさん達が来るまで軽食でも取ろうか」
ルキウスは驚き固まるブハラを横目に念空間の内、食料保存庫から姉ルーシィの手料理を取り出した。
料理はまるで今出来たかの様にホヤホヤしており、2人は久しぶりに食べるルーシィの料理に目を輝かせていた。
ルーシィの料理技術は冗談やお世辞抜きでとても高い。あの料理に厳しいメンチでさえ唸る程の料理人で、あの両親達が政争で返り咲けると確信するだけの天才的資質の持ち主だった。
ただ、彼女は7年前の出来事以降は大好きだった料理で束縛されたり傷付く事を嫌い、自分が振る舞いたい相手だけに料理をするスタンスに落ち着いたのだった。
ルキウス達はルーシィの手料理を食べながら受験生達が来るのを待っていると時間になり、第一試験官のサトツが森の中へ移動したのだった。
「おぉ〜。サトツさんの試験で結構残ったな〜」
2次試験会場の正門が開き現れた100人近い受験生達の人数を見てルキウスは呑気に感心していた。
「これより、2次試験を開始するわ! 受験生達はこっちに来なさい!」
ゾロゾロと移動する受験生達を他所にルキウスは視線を感じる方へ向くと森の木の上でサトツと目が合い手を振った。
サトツは驚きながらもメンチの悪い癖が出ないか心配だったが、彼がいる事に安心して笑って手を振りかえしたのだった。
「これより! 2次試験を始めるわ!!」
「試験官は俺、ブハラ」
「アタシ、メンチが行うわ」
「俺は彼等のサポートをするルキウスだ。試験官では無いけど彼女達と同じプロハンターだから安心してくれ」
「アタシ達の試験テーマは料理!」
メンチの言葉に受験生達から困惑と怒りの声が漏れ出した。しかし、それを無視して彼女は説明を続ける。
「試験の内容はアタシとブハラがそれぞれ出す料理を作り満足させる事よ」
「何で料理なんだよー!?」
「俺達はハンターになりに来たんだよ!?」
「それはアタシ達が美食ハンターだからよ!」
野次が飛ぶ中でメンチがビシッと決めてくれたが、やはりブラハが事前に予想した通りに嘲笑が起こり顔を顰めた。
「……ブハラ」
「俺が出す課題は豚料理。ビスカ森林公園に居る豚なら何種類でも良いからそれを使って俺を満足させれば課題はクリア」
「ブハラのお腹が満腹になった時点で前半の課題は終了。分かった?」
「分かった、分かった。とっとと始めてくれよ、試験官さんよ」
「それじゃ、2次試験前半スタート!!」
ブハラが自身のお腹を太鼓代わりに叩くと強烈な音を立てて2次試験がスタートしたのだった。
「それにしてもブハラ、アンタも性格が悪いわね! ビスカ森林公園にいる豚なんて1種類しかいないじゃ無い!」
「へっ! 死ななきゃ良いけどな!」
「それよりもルキウス、ブハラの試験はどうなのよ?」
「ん? まぁ、思っていたよりかは普通に無難だったと思うぜ?」
「おっ? マジ? やったー」
「ビスカ森林公園に生息するグレイトスタンプは巨大な見た目の肉食動物で、非念能力者でも良く観察して工夫すれば倒せる難易度設定。
ブハラは大抵の素人料理でも美味しく頂くから捕獲して調理出来ればほぼ合格出来る点はちょっと思う所はあるけど、予想よりかは全然良い試験だとは思う」
「まぁ、そうよね〜」
「それよりも、メンチはどうするんだ? 多分、見る感じ今年は結構粒揃いだぞ?」
「あぁ、ねぇ〜」
「まさか、念能力者が2人も混ざっているとは思わなかったぜ〜」
ルキウスの質問に対してメンチとブハラは渋い顔をした。例年ではいない事はない念能力者が2人も居て、それも明らかに熟練の使い手なヒソカとギタラクルに複雑な気持ちだった。
ルキウス的には自身が念能力を使える身で試験を受けていたからちょっぴり懐かしさを感じていた。
しかし、同時にヒソカから一方的にオーラを飛ばされて喧嘩を売られた事に面倒臭そうな顔をしていた。
「しかも、あのピエロ! 露骨にアタシ達に喧嘩売って来たわよね!!」
「お前等はそれで済んだけど、俺は明確にロックオンされた感はあるけど……?」
「それが余計にムカつくのよ! なんか勝手に品定めされて、勝手に好みじゃ無いみたいに言われた様で腹立つわ〜〜!!」
「もう1人はもう1人で、一般人の擬態が上手過ぎて逆に気味が悪いなぁ……」
「まぁ、後の事はアタシに任せてブハラは課題に集中しなさい」
「なんか不安だな……。ルキウス、後は頼んだ」
「あぁ、任された」
「だから、何でよ!?」
メンチのツッコミを受けているとビスカ森林公園から地響きの様な足音が近付いて来るのを感じたのだった。