ルキウスとメンチはグレイトスタンプを丸焼きにしてブハラに食べさせる光景を見て溜息を吐いた。
今年の受験者達は例年と比べても優秀な様で多くの者達がブハラの課題をクリアしていった。
しかし、その表情は料理に対して馬鹿にした様な、まるで手応えが無かったと言わんばかりでかなりムカついていた。
ただ、ルキウスは深く深呼吸を行い冷静さを取り戻す。美食ハンターとしてのプライドはあるけど、今日の役割はメンチのストッパーであるからだ。
メンチはルキウスと同時期に
彼女は世界有数の料理人でありながらも若干21歳と言う若さで、並み居る猛獣達を相手に食材の確保も行う天才である。
しかし、天才であるが故に気まぐれな所が多くブハラが予想する様に料理人としてのプライドが非常に高い。
今は何とか彼女が爆発しない様に適度にストレスを発散しているが、ここからが腕の見せ所だとルキウスはジッと見守っていた。
「ふぅ〜〜!! 食った、食った!!」
「あれだけの量、マジで食いやがったっ……!?」
「一体、何頭食ったんだよ!?」
「化け物かよ!?」
70頭ものグレイトスタンプの丸焼きを食したブハラを見て、受験者達が恐れ慄いていた。
「結局、ほとんど合格じゃない」
「まぁ、ある意味予想通りだろ」
「まっ、そうね……。それじゃ、豚料理70名合格〜〜!」
2次試験前半の課題で100人近い受験者の内、70人まで絞られた。
「2次試験後半! アタシが指定するメニューはズバリ寿司よ!」
「すし……??」
「すし? なんだ、それ……??」
「一体、どんな料理だ??」
「分かるか?」
「聞いた事がねぇ……。一体、どうすれば良いんだ??」
メンチから発表された課題を聞いて、余裕綽々な表情だった受験者達の表情が一気に曇った。
「ふふっ。困っている、困っている」
「メンチ、流石にノーヒントはやり過ぎだ」
「もう、分かっているわよ。ヒントをあげるわ。こっちに付いていらっしゃい」
外の開放的な調理場から一変して、メンチは室内調理場に受験者達を案内した。
「この場所で調理してね。寿司に必要不可欠なお米はこちらで用意した物を使って頂戴。
ただし、アタシの指定した寿司は寿司でも握り寿司だから気を付けて頂戴。
作ったら何度でも挑戦して良いわ。失敗しても即失格とかはしないわ。でも、アタシが満腹になったら試験終了だから気を付けて始めなさい」
メンチがスタートを号令するが未だにどんな料理なのか想像出来ず困惑する受験生達。
そして、困惑のまま始まった2次試験後半だったが結果は悲惨な物だった。
ライスと魚を使う料理である事は受験者が騒いだ事で判明したが、次々と出して来る料理とも呼べない酷い代物にあのブハラですら顔を引き攣らせていた。
次々とお出しさせる料理とは言えない代物にメンチのフラストレーションが溜まっていった。
ある程度、受験者達がやり終わった後にジャポンの忍者風の受験番号294番がしたり顔で持って来た後、それは起きてしまった。
なんとこの294番は握り寿司を持って来たが、彼女を満足させると言うクリア条件を満たさなかった。
彼は自身の国の民族料理であるが故にかなり舐めていたのだろう。その結果が料理の味に出ていて彼女は不合格にした。
その結果に不服を抱いた294番は握り寿司の概要を大声で暴露した結果、全員の寿司を食べざるを得ない状況となりメンチが満腹のまま2次試験は終了したのだった。
しかし、当然だがそれで納得出来る受験者では無く不満と怒り、敵意が立ち込める中で受験番号255番のプロレスラー風の男が叫んだ。
「ふざけるな! 俺が目指しているのはコックでもグルメでもねえ! ハンターだ!
しかも、ブラックリストハンター志望だぜ! 美食ハンター如きに合否を決められるのは納得行かねえぜ!!」
「……美食ハンター如き?」
彼の言葉に受験者達は応援する様な感じであったが、ルキウス達は全員青筋が浮かんでいた。
メンチに対して敵意をむき出しにしている255番へブハラが一歩前に出ようとする事が、ルキウスは彼を止めて大きく拍手した。
突然の音にビックリする受験者達。それもその筈。ルキウスはこれまで2人のサポートをすると言っても受験者達の前では何もしていなかったからだ。
「さて、合否に関しては俺達のトップが来て判断してくれる様なので静粛に」
「あぁ!? 何言ってっ……!?」
ヘイトがメンチからルキウスに変わった直後、2次試験会場の上空にある飛空船から1人の老人が落ちて来た。ハンター協会の会長アイザック=ネテロである。
ビスカ森林公園で見ていたサトツが受験者達に分かりやすくネテロの経歴を伝えた後、彼はメンチを宥めて説き伏せたのだった。
一体何処から聞いていたのか地獄耳のネテロは淡々とメンチに問い掛けるようにする様子は、まるで孫を諭すお爺ちゃんの様な菩薩のそれだった。