ハンター協会の美食料理人   作:火取閃光

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第8話

 トリックタワーの最上階に受験者達を置き去りにして数時間が経過した。ルキウス達は三日月諸島の軍艦島へ向かっていた。

 

 トリックタワーを攻略する3次試験の制限時間は3日で、軍艦島への片道移動で1日以上掛かる過密なスケジュールは本来なら試験中は行えない。

 

 しかし、4次試験会場のゼビル島が船で2〜3時間程度とトリックタワーの近くにあり、そこで1週間サバイバルする日程と言う事で向かっていた。

 

「ルキウス、軍艦島ってどう言う場所なんだ?」

 

「そうね、アタシも気になるわ。アンタが行きたいって言うくらいなんだからなんかあるんでしょ?」

 

「そんなに期待されてもブハラとメンチを満足させられる食材はないと思うぞ?

 

 ぶっちゃけると軍艦島って場所は難破船が行き着く場所で、墓場みたいな場所かな?」

 

「えぇー」

 

「そんな場所に何しに行くんだ?」

 

宝探し(トレジャーハント)だよ」

 

「宝探し?」

 

「アンタ、ブラックリストハンター以外にトレジャーハンターもしているの? 手が広すぎない?」

 

「まぁ、中途半端に色んな分野を齧っているだけだよ。師匠がストーンハンターだったから、宝石類の知識を深める過程で色々学んで興味が湧いた感じ。

 

 ほら、料理のレシピって偶に時代によって失伝していたりするだろ? 宝石類やその他のお宝を調べる過程でそう言う失ったレシピの復元とかも好きでさ……。偶に宝探しとかやってんだよ」

 

「へぇー! 面白いわね!!」

 

「探し当てたお宝はどうするんだ? オークションにでも出すのか?」

 

「ハンター協会に在籍して古美術商を営むバナーとジナーって夫婦がいてさ……。

 

 その人達に鑑定を頼んでお宝を引き渡す代わりに彼等の人脈ネットワークも使って歴史的な分野の詳細な情報を貰っているんだ」

 

「へぇー。お宝は全部渡すの?」

 

「歴史的に価値がありそうな代物は大体かな? 彼等は美術品ハンターとか歴史ハンターとかとも交渉してくれるからそれ系は渡す様にしている。

 

 ただ、宝石類や装飾品は姉さんや師匠へのお土産に取っておく場合もあるからその辺はまちまちだな……」

 

「面白そうだな。俺も美食ハンター以外の分野で何かやってみようかな……?」

 

「おう! それで良いと思うぞ? 将来的に三つ星(トリプル)ハンターを目指すって言うんなら他分野の実績は不可欠だからさ……。

 

 俺みたいに中途半端でも他分野を齧って面白かったやつを集中的に極めて行けば良いとは思う。

 

 それに、偶に遺跡調査とかしていると壁画とかにレシピや食材の在処が載っているんだ」

 

「それマジっ!?」

 

「マジマジ。理由としては結構単純で、遺跡ハンター的には興味無いとかで見逃されているケースも結構あるから遺跡調査とかも面白いぞ」

 

「……専門分野以外であるが故の見落としか〜。そう言われるとハンターあるあるだな〜」

 

「ちなみに、ルキウスはアタシ達が知らない情報とか持っているの……?」

 

「未発表の情報とか検証不足の情報とか色々だな……」

 

「それを教えてくれたりとかは……?」

 

「今回の宝探しを手伝ってくれるなら、言える範囲の情報と取引しようとは考えているぞ? 乗るか?」

 

『乗った!!』

 

「交渉成立」

 

 ブハラとメンチの協力が得られたルキウスは軍艦島に到着するとバカンスを楽しみながら宝探しと洒落込んだ。

 

 元よりそこまで長く滞在するとは考えておらず、2〜3日宝探しが出来れば良いと思っていただけに僅か1日掛からずに多くのお宝を見つける事が出来た。

 

 流石は実力派が多い美食プロハンターである。他分野のハンターとは違い自然を相手にする事が多い為、身体能力だけではなく総合的な適応能力値が高い傾向があるのだった。

 

 難破船は海の上に浮かぶ物もあったがそのほとんどは海に沈む船であり、そう言う常人には探せない場所にこそお宝達が眠っていたのだった。

 

「結構、良さ気なお宝が沢山見つかったな……! 俺1人だったらここまで見つけられなかったよ。ありがとう、2人とも」

 

 金品財宝や宝石類が入った歴史的にも価値がある品々の山を見て、ルキウスは素直に嬉しく思っていた。

 

 16世紀の戴冠式の日に海で行方不明となった悲劇の王子ジェラ3世が身に付けていた黄金の王冠。

 

 18世紀にイング女王へ献上する筈だったが行方知らずとなった幻の太陽の錫杖。

 

 中途半端に齧った知識のルキウスでも知っている様なお宝の数々が保存状態が良い状態で発見出来た。

 

 そして、最も歴史的に価値があったのはクルタ一族の伝説にあるカナン除けの効力を持つ黄金の蜥蜴のペンダント。

 

 クルタ一族は緋の目と呼ばれる世界七大美色の1つに数えられる程に美しい目を持つ一族だった。

 

 しかし、数年前に世界にその名前を轟かせているA級賞金首の幻影旅団によって滅ぼされたと言う情報があり滅亡してしまった。

 

 ルキウスがこのペンダントを見つけた難破船には攻撃の跡こそ無かったが、人体が腐敗した跡は無く寂しく机の引き出しの中にあったのだった。

 

 このペンダントは宝飾的に言えば本物だったとしてもそこまでの価値は無いが、ベンズナイフ同様に強いオーラが染み込んでいた。

 

 ルキウスはブハラ達と一緒に探したお宝の山々を一旦、自身の念空間に保管した。

 

 ハンター協会の飛空船は最終試験会場へ向かう際に受験者達を乗せるので、お宝達を置いておく訳には行かなかったからだ。

 

 ビーンズの計らいでバナーとジナー夫妻を最終試験会場へ案内する手筈になっているのでその時に渡す算段である。

 

 ルキウスは数々の歴史的なお宝を探してくれたメンチ達に感謝の気持ちを伝えたくて頭を下げたのだった。

 

「俺も結構楽しかったから礼はいらないぜ? 宝探しの最中は童心に返った気持ちになれたしさ」

 

「そうね……。ブハラの言う通り意外と面白かったわ。取引を行ったからには全力を尽くすつもりだったけど、これはこれでアリだったわ」

 

「あと、この辺の魚介類って結構珍しい種類の生き物がチラホラ見れたからそれも含めて楽しかったぜ」

 

「そうよね! 難破船が沈んでいるから海中環境が悪いのかな? って思っていたけど無人島であるが故に生活排水が全く無いから、美味そうな魚が沢山泳いでいたわ!!」

 

「それじゃ、今日の所は一旦宝探しは中止してこの辺りの生物を探索しよう! ブハラとメンチは三日月諸島の探索と海中のどっちからやりたい?」

 

「気分は断然、魚介類を食いたいけど……」

 

「これだけ海の幸があるのに無人島なのは、正直言って気が進まないわね……」

 

「それじゃ、ブハラとメンチは魚介類を任せるよ。俺は三日月諸島を探索してみる」

 

「何かあるのか?」

 

「いや、実は俺もこの辺りの調査は初めてだ。昔、ハンター試験で三日月諸島を使った時は3グループに分かれたバトルロワイヤルだった。

 

 だから、猛獣にしろ植物にしろどんなモノが居るのか知りたいじゃん。記憶が正しければ結構食える食材はあったからさ……」

 

 ルキウスが軍艦島で寝泊まりをしたのは彼が居たグループ全員を数十分で気絶させて木に吊し上げた事で、当時の試験官より軍艦島での待機を命じられたからだった。

 

 本当は3日間の制限で行うバトルロワイヤルが数十分で終わってしまったので、軍艦島や料理をして暇つぶししていた記憶しか無かったのだった。

 

「そう言われるとアタシ達も気になるじゃん!」

 

「そう言う事なら今日は俺達が海を探索して、ルキウスが島を探索する。そして、情報交換をした後に明日は逆をやってみるって言うのはどうだ?」

 

「それで行こう。メンチは?」

 

「アタシも賛成よ!」

 

 全員の意見が一致したことによりメンチとブハラは海の幸、ルキウスは森の幸を探しに行った。

 

 やはり朧気な記憶通り三日月諸島にはかなり食える食材が自生しており、更に奥地に進むと珍しい種類の果物も生えていた。

 

 そして、お互いに探索結果を持ち寄って情報交換をした後にルキウス達は2日間のバカンスを楽しんだのだった。

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