完璧で究極のアイドルがGI九冠バに転生しました   作:雑穀ライス

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絶対に誰かが書くと思って1年ぐらい待ったけど誰も書かなかったので自分で書いた(半ギレ)
対戦よろしくお願いします


嘘の代償

お腹が、熱い。

 

 

「ふはっ・・・痛いかよ!」

 玄関のドアを開けた瞬間、黒いフード付きパーカーを着た男の人にナイフで刺された。

 

 腹部をナイフで抉られた私は血をまき散らしながらよろめいて、傷口を押さえながら私を刺したその人の顔を見る。

 その人は、私の知らない男の人だった。

 

 …いや、よく見ればどこかで見たような気がする。

 

 

「俺()はもっと痛かった!苦しかった!!

 アイドルのくせに子供なんて作るから・・・!ファンの事蔑ろにして、裏ではずっとバカにしてたんだろ!」

 

 「俺達」という言葉を聞いて、私はようやく目の前の男の人が誰なのか思い出した。

 

 この人は、(カミキヒカル)の友人。

 名前は確か「リョースケ」だったはず。昔、ヒカルが携帯で撮った写真を見せてくれたことがある。リョースケ君の話をするときのヒカルは、とても明るい顔で楽しそうだった。

 私はヒカルのその様子を見て、彼がリョースケ君のことを凄く信頼してるんだなぁと思ったんだ。

 

「この噓吐きが!散々好き好き言って釣っておいてよ!全部嘘っぱちじゃねえか!!」

 そのヒカルの友人が、怒りと憎悪に顔を歪ませて噓つきな私を責め立てる。

 

 痛い。

 

 刺されたお腹も当然痛いけど、それと同じぐらいに心が痛い。

 リョースケ君の言葉が、まるでヒカルの心を代弁しているかのように私の心を抉ってくる。

 

「…私なんて元々無責任で、どうしようもない人間だし、人を愛するってよく分からないから」

 

 分かっている。

 悪いのは私だ。

 

 お腹が痛くて痛くてたまらないのに、なぜか彼を恨む気持ちにはなれなかった。

 

 私を「愛してる」って言ってくれた彼から。

 私と「結婚しよう」と言ってくれた彼から背を向けて逃げた私のせいだ。

 

 

「…だから、私は代わりに皆が喜んでくれるようなきれいな嘘をついてきた。

 いつか嘘が本当になることを願って…頑張って…努力して……全力で嘘をついてきたよ……」

 

 私は彼に「貴方のことを愛せない」と言った。

 私は彼に「縒りを戻すとかそういう話じゃない」と言った。

 

 全部、嘘だ。

 

 本当は「貴方のことを愛したい」と思っていた。

 本当は「いつか縒りを戻したい」と思っていた。

 

 

「…私にとって嘘は愛。私なりのやり方で愛を伝えてきたつもりだよ。

 君達のことを愛せてたかは分からないけど…愛したいと思いながら愛の歌を歌っていたよ」

 

 貧しい暮らしに耐え兼ねて彼が私に愛想を尽かすのが怖かった。

 育児と仕事に(かま)けて彼を蔑ろにして、彼に見捨てられるのが怖かった。

 私を捨てた、私の母のように。

 

 だから、せめて子供たちが大人になるまでは彼の愛に応えられないと思って、嘘を吐いて彼から逃げた。

 愛を失うのが怖くて、失う前に私は彼の愛から逃げたんだ。

 

 

 彼に「15年待ってくれ」なんて虫の良いことは言えなかった。

 私がいないところで彼が幸せになってくれるならそれでも良かった。

 

 私は彼のことを愛したいとずっと思っていた。

 ただ、愛し方が分からなかっただけだ。

 

 

 苦痛と貧血で青ざめた顔を笑顔に変えて、血で染まった手のひらをリョースケ君に差し出しながら私はリョースケ君に語り掛ける。

 彼の怒りに対して、私は自分なりの「愛」を語ることで応える。

 

 いつもライブ会場でファンに見せている笑顔を浮かべながら彼と対峙する。

 

 

 

「今だって君のこと、愛したいって思ってる」

 

 

 

 

 …あは。

 私はひどい女だ。

 この期に及んで、まだ嘘を吐くなんて。

 

 「(リョースケ)」にではなく「(ヒカル)」に向けた言葉を投げかける自分の図々しさと未練がましさがおかしくて、情けなくて、思わず自嘲の笑みが溢れた。

 

「噓吐け…俺のことなんて覚えてもいないんだろ!見逃してもらおうと……」

「リョースケ君だよね。よく握手会来てくれた」

 

 私がリョースケ君の名前を言うと、彼はお化けを見たような表情で後退った。

 

「あれ?違った?ごめん私、人の名前覚えるの苦手なんだ」

 私は頭に指を当てながら、苦痛で歪みそうになる表情を無理矢理笑顔に作り替えて優しくリョースケに語り掛ける。

 ちょっと頭がぼーっとしてきた。駄目だな、私って。

 

「お土産でくれた星の砂嬉しかったな。今でもリビングに飾ってあるんだよ」

「んだよ…それ…そういうんじゃ……!」

 

 リョースケ君は頭を抱えながらぶるぶると身体を震わせて、カチカチと歯を鳴らした。

 なんだか目の焦点も合っていない。大丈夫かな。病気じゃないかな。

 

 

「あああああああああ!!!!」

 そうやってリョースケ君の様子を観察していたら、彼は大声を上げて走り去っていった。

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