完璧で究極のアイドルがGI九冠バに転生しました 作:雑穀ライス
ついでに評価もしていただけると作者はとても喜びます。(露骨な催促)
私が社長のチームに所属してから二か月が経った。
トレセン学園では最初の選抜レースが開催されて、そこで社長にスカウトされたルビーがウチのチームに入って来た。どうやらルビーは私たちがウイニングライブの練習をしているのを見ていたらしく、そこがスカウトを受ける決め手となったようだ。
本格化が来ていない私とルビーは、身体を鍛えることよりもレースの技術を身に付けることを重点的にトレーニングしている。
私のお父さんも言ってたけど、本格化前に筋肉を鍛えすぎるのは怪我が怖いし、関節の可動域を狭くしてしまって逆に遅くなってしまう場合もあるらしい。だから肉体を鍛えるトレーニングは本格化後にやるのが推奨されているという話だ。
初等部のときにやたら2400mとか3000mとか長距離を走らされていたのは筋肉より心肺能力を鍛えるカリキュラムだったからのようだ。まあその長距離のレースで何度も渋滞戦法を食らって負けたせいで私はすっかり長距離レースが嫌いになってしまったわけだが。
というわけで、私たちが主にスタミナと賢さとスキルを鍛えるトレーニングを地道に続けていたある日のこと。
パンドラお母さんとカワカミプリンセスさんをコテンパンにしたメイショウドトウさんがテレビ番組に出演するという話を聞いた。
そしてその番組が放送日の当日、私は番組放送5分前にリビングに移動してテレビの見やすい場所で待機していた。
自室にテレビはない(申請すれば持ち込みは出来るが私はやっていないし、今はスマホでテレビを見る時代だ)しリビングにもテレビは一つしか設置されていないが、みんなレース中継と音楽係の番組しか見ない真面目ちゃんばかりなのでチャンネルの取り扱いはたまにしか起こらない。うちの実家みたいに大晦日に紅白歌合戦と芸人がお尻を叩かれるお笑い番組のどちらを見るかで戦争が起こることもないし、実に平和な寮だ。
そもそも冬休みはほとんどの寮生が帰省してるから喧嘩自体が起こらないんだけどね。まあどうでもいいか。
テレビのチャンネルをメイショウドトウさんが出る番組にセット。チャンネルを変えたことに文句をいう人は誰もいなかった。なんかこの寮にいるはずのないクロノちゃんがウチの寮生と
「テレビの前の皆さん、こんばんはー!
今日のゲストはメイショウドトウさんですー!!」
番組が始まり、司会者の紹介と共に現役時代の勝負服を着たドトウさんにカメラが向けられる。
彼女の勝負服は白のブラウスに青のハイウエストスカート。装飾のフリルがどこかメイド服を連想させるデザインである。「メイ」ショウ「ド」トウだからメイド服とは、なかなかセンスのあるデザインだよね。
拍手で歓迎してくれるスタジオの中で彼女は、カメラに向けて両手の人さし指を向けるポーズを取った。
「君、そのポースなんなん?」
早速司会者の芸人から人さし指を向けるポースについてツッコミが入った。
「あのぉ、話せば長くなるんですけどぉ…」
カメラに緊張しているのか、やや硬い口調で語り出すメイショウドトウさん。
「私、現役時代に中指を立てている写真の合成画像がいっぱい出回ってて…。そのときオペラオーさんと相談して本当に中指立てた写真出したことがあったんですぅ」
「顔に似合わずロックなことしてるな、君!?」
虫も殺せないような可愛い顔をしているメイショウドトウさんが若気の至りでヤンチャしたときの話を聞いた司会者があまりのギャップに思わずツッコみ、それに合わせてスタジオから笑い声が巻き起こる。
「その後トレーナーさんにめちゃくちゃ怒られて…。最終的に『中指じゃなくて人さし指なら大丈夫だから!』って話になってこういうポーズになりましたぁ」
「なるほど、つまりメイショウドトウさんにとって人差し指を向けるポーズは中指を立てるのと同じ意味合いなんですね!!」
「違いますぅ~!!」
可愛らしく怒ってみせるメイショウドトウさん。この人確かパンドラお母さんと同い年だったはずなんだけど、余裕で10歳以上若く見える。メイショウドトウさんが「まだ17歳ですぅ~」と可愛らしく嘘を言ったら世の中の半分以上の男の人は騙されてしまうことだろう。多分。
というかパンドラお母さんもカワカミプリンセスさんもウイニングライブに出ていた頃の10代の姿と全く変わっていないので、ウマ娘は全体的に老化が姿形に現れにくい種族なんだろう。野菜の星からやってきた戦闘民族かな?
「ところで、その衣装は現役時代の頃の衣装なんですよね?」
「そうなんです…でも現役時代と比べて大分太ってしまって……、いま力を込めて『ふんッ!』ってやったら北斗の拳みたいなことになっちゃいそうな感じなんですぅ」
「いやぁ、それは是非見てみたいですねぇ」
「放送事故になっちゃいますぅ!!!」
訂正、野菜の星の王子様じゃなくて愛で空が落ちてきて鼓動が早くなりそうな世紀末救世主のほうだった。世紀末覇王なお兄さんの役をテイエムオペ羅王さんにやらせればなかなか絵になりそうだ。
そんな感じで、挨拶代わりのメイショウドトウさんいじりは一旦終わって番組は本編に入る。
今回はメイショウドトウさんが働いている牧場の紹介。メイショウドトウのほかにもGIレース5勝ウマ娘であるタイキシャトルも同じ牧場で働いていて、ちょっとした観光名所になっている。地元も牧場の観光名所化に一枚噛んでいる状況で、今回のメイショウドトウさんのテレビ出演は牧場のPRを兼ねた企画だ。
メイショウドトウさんは観光客が訪れる休日と祝日にどうぶつショーを行って集客に協力していて、今回はそのショーの取材企画である。最近はテレビ局のコンプライアンスもかなり厳しくなっているようで、どうぶつ番組とクイズ番組は安牌としてよく取り上げられている状況だ。そんな背景でメイショウドトウさんが働く牧場に白羽の矢が立って、観光に力を入れている牧場にとっても渡りに船ともいえるWinWinな企画である。
番組の映像がメイショウドトウさんの牧場に切り替わった。
そこで牧場の作業服を着たメイショウドトウさんがヤギと一緒に野外ショー用の舞台の上に立っていた。
「では~、これからヤギさんにこの高さをジャンプしてもらいます~」
メイショウドトウさんはお客様向けの営業スマイルを浮かべて、走り高跳びで使うようなポールを指差しながらやや間延びした口調でこれから行うショーの内容を説明を始めた。
ポールの高さは50センチほどで、人間なら簡単に飛び越せそうな高さだった。
「では~、よ~い、ドン!」
メイショウドトウさんの合図とともにヤギが走り出す・・・もとい、てこてこと歩き出す。
そしてポールの前まで歩いて行ってポールの高さを確認するようにじっと見つめた後、Uターンしてメイショウドトウさんのところまで帰ってきた。
「も~!そんな簡単に諦めたらダメですよぉ~!?」
諦めが早すぎるヤギにメイショウドトウさんがぷりぷりと怒る。そんな彼女の様子をヤギはじっと見つめた後、ぷい、っとそっぽを向いた。
「ちゃんと聞いてるんですかぁ~!」
ここで私はようやくこのショーの方向性を理解した。
ヤギに
「気を取り直して~、もう一度、よーいドン!」
メイショウドトウさんの合図を受けて、再びヤギがポールに向かって突撃する。
てこてこと気の抜ける足の遅さでポールに近づいて、
ぽこん、と頭突きでポールを落として走り抜けた。
「も~!ちゃんとジャンプしてくださ~い!!」
メイショウドトウさんが耳と眉をへにょりと下げた困り顔をしながらヤギを叱った。うん、可愛い。
「あなたはやれば出来る子なんですから~!もっと頑張ってくださ~い!!」
わしゃわしゃとヤギを撫でてご機嫌取りをするメイショウドトウさん。見てて癒される。こういうのでいいんだよこういうので。
「ちょっと棒の位置が高過ぎたかもしれないですね~。ほら~これなら大丈夫でしょ~?」
メイショウドトウさんがポールの高さを下げて膝ぐらいの高さにした。ヤギを甘やかす計算され尽くした彼女の完璧で究極のダメトレーナーっぷりを見た観光客は微笑ましい表情で彼女の奮闘を見守っていた。ヤギの心配をしているのは多分メイショウドトウさん一人である。
「ヤギさ~ん、頑張れっ、頑張れ~。レッツ、ゴ~!!」
3度目の正直、メイショウドトウさんに急かされてヤギがポールにとてとてと突撃する。
子供を見守る親の心境でヤギの様子を見守るメイショウドトウさんと観光客。その祈りが天に通じたのか、ようやくヤギはぴょこんとジャンプしてポールを飛び越した。
「わぁ~!凄いです偉いですぅ~!やっぱりあなたはやれば出来る子ですぅ~!!」
メイショウドトウさんは大袈裟なぐらいにヤギを褒めながらなでなでわしゃわしゃする。
なんだろう、メイショウドトウさんの今の姿からどこかの漫画で見たようなデジャヴを感じる。「良ぉお~~~~~しッ!よしよしよしよしよしよし、立派に飛べたぞ!ヤギ!」って吹き出しを後ろに付けたらなんかそれっぽい感じになりそうだった。
という感じで、メイショウドトウさんのショーは終了。大したことはしてないのに笑いどころとツッコミどころが満載のシーンだった。
「はい!というわけでメイショウドトウさんのどうぶつショーでした!!ユースケさんはどう思いました?」
「メイショウドトウさんしか見ていませんでした」
「メイショウドトウさんを柵に入れて見物させたほうがお客さんが集まるんじゃないですか?」
「扱いが酷すぎますぅ~!!!」
どうぶつショーのどうぶつ扱いされたメイショウドトウさんが可愛らしくキレた。
うん、まあ残当な意見だと思うよ。
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フサイチパンドラのヒミツ①
実は大晦日に見る番組は「笑ってはいけない24時間」派。
豆知識⑥
ドトウの『カメラに向けて人さし指を向けるポーズ』『人差し指を向けるポーズは中指を立てるのと同じ意味合い』の説明について
ドトウ「見てくださぁい!!あの人10着ですぅううううう!!!ライバルとか言って出てきたのに10位です~~!頭が高いですうううぅ!!」
ドトトレ「ドトウ!そういうの良くないから!!!」
ドトウ「でも10着ですううううぅ!!!!勝手に垂れウマに引っかかってますうううう!!!
首は下げた方がいいですぅううううう!!!」
ドトトレ「ほらドトウ…競馬に絶対はないから…」
ドトウ「でも2000年の競馬だけは絶対がありました~~!同じ王でもオペラオーさんとは大違いですぅううううう!!」
「チクショウドトウ(ハロウィン衣装)」概念。風評被害が酷すぎる。