完璧で究極のアイドルがGI九冠バに転生しました   作:雑穀ライス

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ありがとう。その言葉が、全てだ

 ゴールドシップさんがマメちんさんに連行されて、ウェルカムレースはお開きとなった。

 色々言いたいことが山ほどあるイベント内容だったが、まあトータルとしてはプラスだったんじゃないかと思う。知り合いが増えたし、GI勝利ウマ娘とLANE交換も出来た。しかし、私にとって一番重要なことはそんなことじゃない。

 

「ヒカル……」

 私は今、この世界の神木輝(シャインツリー)と対峙している。

 

「…あの、僕に何か用かな?」

 私と何を話したらいいのかわからない、といった表情でヒカルがいう。そういう私もいざマンツーマンで彼(彼女?)と対面するとなんだか言葉が出てこない。そもそもヒカルは何故自分が私に執着されているのかも理解していなさそうな感じだった。

 きっとヒカルも社長と同じで前世の記憶がないタイプのパターンなのだろう。

 彼が私のことを忘れているのは悲しいが、同時に私の()()()()を覚えていなかったことに少しだけ安堵した。

 

「あ……あの、その、ごめんね!!」

 私は取り敢えずヒカルに謝った。

 

 

――俺()はもっと痛かった!苦しかった!!

 

 

 私は前世でリョースケ君が言った言葉を思い出す。

 彼の言葉は、ヒカルの言葉だ。

 

 彼は私を「愛してる」って言ってくれたのに。

 私は彼に「私は貴方を愛せない」と言ってしまった。

 

 私に見捨てられたと思ったヒカルは苦しんで、苦しんで。

 結局私に復讐することを選んだ。

 その後彼がどうなったかは、私は知らない。

 

 

 …知るのが、怖い。

 

 

 

 私は結局リョースケ君に殺されてしまったけど、でもこちらの世界で前世とは比較にならないぐらいの幸せな環境を手に入れて。

 なんというか「私ばかり得をしてしまって申し訳ない」という気分でいっぱいだった。

 

「ああ、うん。気にしてないから」

 そんな複雑な想いを込めた私の謝罪に対してヒカルの返事はすごく軽いものだった。

 

 あ、ダメだ。これ全然伝わってないやつだ。

 出会い頭におっぱいを揉んだことに対する謝罪だと思われている。多分。

 前世の記憶がないタイプのパターンだから、私が何に対して謝っているのかが全然分かってない!!!

 

「あの…その……じゃあ、私のおっぱい、揉む?」

「君が何を言ってるのかよくわからない」

 

 私の提案を聞いたヒカルは超複雑な表情をしながらそう答えた。

 何を言ってるんだこのむっつりさん。一瞬「えっ!揉んでいいの!?」といった表情したのを私は見逃がしてないぞ。

 遠慮しなくていいんだよ?おかわりもあるよ。今まで会えなかった分いっぱい揉んでもいいんだよ?

 

「…うん、うん。気持ちだけ受け取っておくよ」

 半笑いで微妙に名残惜しそうな顔をしながらヒカルはそういった。 

 ダメだ、おっぱいがノイズで話が脱線したまま全然進まない。どうしよう。

 

 あ、そうだ。これだけは絶対に言わなくちゃ。

 

「ヒカル…『愛してる』よ」

 

 愛していなかったわけではない。

 愛し方が分からなかっただけなんだ。

 

「『私は貴方を愛せない』なんて言って、ごめん」

 

 前世でこの言葉が「嘘」だと気づいたときにはもう手遅れだった。

 この気持ちを伝えたかったのに、そこにキミはいなくて。

 

 でも今なら言える。

 この言葉は、嘘じゃない。

 

 

「やっと言えた。遅くなって、ごめんね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…君の言いたいことは、よくわからないけど」

 数秒にも、数分にも感じられる重い沈黙を破って、ヒカルが口を開く。

 

 

 

「ありがとう、僕を愛してくれて。――その言葉が、噓偽りない僕の気持ちの全てだよ」

 

 

 

 

 

 私がヒカルにずっと言いたかったことを伝えたことで、ゴールドシップさんの起こした騒動から始まった一連のイベントはようやく本当に閉幕となった。

 今日一緒に走ったみんなはもう全員友達だ。「強敵」と書いて「とも」と呼ぶ、アレだ。

 きっと今日の出来事は、一生忘れられない思い出の一ページとなるだろう。

 

「それではみなさん、さようなら!来年、この学園でまた会いましょう!!」

「待ってるよー!!!」

 

 ちぎれんばかりに手を振りながら、後輩たちと別れの挨拶を交わす。

 その後私たちは社長のところに戻ってライブをサボったことを謝ったが、ゴールドシップさんの仕業だと説明したら理解を示してくれた。なんだろう、この「まあ、ゴールドシップだからなぁ…」という半ば諦めの混ざった無敵感は。水戸黄門の印籠並の強さを感じるんだけど。

 

 全力で走ったレースの後ということもあり、私たちのその日のトレーニングはストレッチ等の疲労を軽減するメニューのみ。

 その後は寮に帰って晩御飯を食べて、お風呂に入ってすぐに寝た。

 ヒカルたちがトレセン学園にやってくる未来を夢見て、私は幸せな気持ちでぐっすりと眠った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――そのときの私は、今日一緒に走ったメンバーの中から脱落者が出るとは思いもしなかったのだった。

 

 

 

 

 

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