完璧で究極のアイドルがGI九冠バに転生しました   作:雑穀ライス

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夏合宿とバカ2人

ゴールドシップさんのウェルカムレース騒動から早3ヶ月。季節は春から夏に変わった。

 

「海だーっ!!」

「うみだー!」

 

 私たちは社長のチームの先輩たちに同行して夏合宿にやってきた。

 トレセン学園の2学期は4月から6月の終わりまでで、7月の頭から8月の終わりまでは夏休みが2か月間続く。年々夏の気温が上がり続ける炎天下の東京の府中で夏バテに苦しみながら効率の悪いトレーニングをするぐらいなら海なり北海道なり好きなところに遠征して効率よくトレーニングしてきなさいという学園側からの配慮だ。

 

 私たちのチームの夏合宿は海でやることになった。どうやらトレセン学園と提携している施設が全国各地にあるので在学中の生徒は安価で利用できるようだ。私達のほかにもトレセン学園からやってきたウマ娘たちがわらわらと集まっている。

 かつてはトレセン学園生が現地の人たちと協力して畑を耕したり温泉を発掘したり無人島を開拓したりしていたこともあったらしく、先輩たちが築いたコネの一つがここだということだ。ていうか畑はともかく温泉発掘と無人島開発って何?鉄〇ダッシュの企画かな?

 

「海…夏休みの象徴……あの勉強とレッスンとトレーニングばかりの灰色の青春から私はようやく解放されたんだー!!!!」

「嬉しそうだねー」

 

 ルビーの魂の叫びに私は取り敢えず相槌を打っておく。うちのチームは週に一回はちゃんとお休みがあったはずなんだけど、前世のトラウマでも思い出しているのだろうか。私はレッスンとトレーニングはあまり苦に思わないからよくわからない。

 勉強は?ああ、うん。ノーコメントで。

 

「こらこら、まだ本格化前とはいえお前らも特訓のために来たんだぞ。息抜きもほどほどにな」

「現実が私に追いついてきた…」

 

 社長に釘を刺されたルビーががっくりと項垂れる。

 うんうん、現実っていつもすごい末脚で差してくるよね。現実の厳しさには勝てなかったよ…

 

「ほらっ、ボケっとしてないで荷物運べ!ホテルじゃないんだから全部セルフサービスだぞー!!」

「はーい」

 社長に急かされて私達はバスから荷物を降ろして宿舎へ運ぶ。

 準備が終わった頃には時間はお昼になっていた。

 

 

「あー、満腹満腹」

「食事はトレセン学園の学食とあんまり変わらないよねー」

 

 ボリュームたっぷりの昼食を食べた後、私達は腹ごなしに海にやってきた。

 合宿所で提供される食事はトレセン学園の学食とあまり変わりはなかったが、食堂に貼り出されていた「おかわりは一人10杯まで。無限には出来ません」の貼り紙がなんだか哀愁を誘った。

 ウマ娘の一食って人間の3倍ぐらいあるんだけど、それを10杯もおかわりする人なんているんだろうか?いるからあんな貼り紙されているんだろうなぁ。

 

「泳ぐときは二人一組が原則。一応ライフセーバーが見張ってくれてはいるが、何分人が多いからな。競走よりも相方が溺れていないか注意しろよー」

 

 ウマ娘を引率する社長が注意を促す。

 合宿初日は下見を兼ねての自由時間だ。すでにビーチバレーやビーチフラッグをしているウマ娘たちの姿がちらほらと見える。遊びながら鍛える、いい時代になったものだ。

 砂浜でトラックぐらいの大きさのある巨大タイヤを引いているウマ娘がチラリと視えたが私はそれを見なかったことにした。

 えっ、私達も本格化したらあんなことさせられるの?

 

「さて、何しよっか」

「サーフィンやボディボードとかはどうかな?せっかく海に来たんだから、海じゃないと出来ないことをやるべきだよ」

「いやなんであんたがいるのよ」

 

 なぜかトレセン学園の合宿先にクロノちゃんがいた。

 ここ東京じゃないんだけど、なんでこんなところにいるのかな?もう慣れたけど。

 

「固いこと言わないで欲しいな。旅は道連れ、世は情け、というじゃないか」

「そうそう、枯れ木も草の賑わいっていうしな!」

 

 クロノちゃんと立ち話をしていると、そこに追加でゴールドシップさんまで現れた。

 ゴールドシップさんはすでにトレセン学園を卒業してるはずなんだけど、なんでここにいるのかな?もう慣れたけど。

 

「もしかして2人で一緒に来たの?」

「いや…全くの偶然……」

「各チームの合宿の行先はトレセン学園で公表されているからな!自腹で参加する分には問題なしってわけだよ!!」

 

 なんだかクロノちゃんはゴールドシップさんと行動が被ったことにショックを受けている感じだった。いやすでにクロノちゃんって「ゴールドシップの後輩」ってイメージで固まってるし、もう手遅れだと思うよ。色々と。

 

「泳ぐにしろ走るにしろ、取り敢えず水着に着替えないかい?酷暑が過ぎてここまで移動するだけで腋の下まで汗びっしょりだよ」

「どれどれ」

 クロノちゃんの言葉に反応したゴールドシップさんがクロノちゃんの腕を持ち上げ、腋の匂いをくんくんと嗅ぐ。

 

 

「アポクリン汗腺!!!」

 

 

 ムンクの叫びのような悲壮な表情をしながらゴールドシップさんが絶叫した。

 

「貴様ぁーー!!!!!」

「あははー!私を捕まえてごらんなさーい!!!」

「お前を全裸にひん剥いた写真を『今日のバ肉』スレにアップロードしてやるぅうううう!!!」

 

 顔を真っ赤にしながら涙目でゴールドシップさんを追いかけるクロノちゃん。砂浜を爆走する二人の姿はあっという間に豆粒みたいな大きさになっていた。

 事情を知らない人が見たら面倒見のいい先輩が後輩と併せウマをしているように見えるかもしれない。平和だなぁ。

 

「仲いいね、あの二人」

「うん」

 

 クロノちゃん以外のウマ娘にやったら一発アウトのセクハラ行為をゴールドシップさんはいとも簡単にやってのける。その関係に憧れはしないけど傍から見てる限りでは中々微笑ましい光景だと私は思った。

 

「ゴルシ忍法!砂蹴りの術!!」

「わぷっ!?てめぇダート適性Gのくせにダートコース用スキルなんて使ってんじゃねーよ!!」

「わはははは!!!!」

 

 自分の後ろを走るクロノちゃんに大量の砂を浴びせながらゴールドシップさんが戻ってくる。

 そして私たちの隣を通り過ぎようとしたところでなぜか砂浜に落ちていたバナナの皮を踏んですっ転んだ。

 

「はぁっ、はぁっ、つ…捕まえたぞぉおおおお!!!」

 

 顔面から砂に頭を突っ込むゴールドシップさんの上から息も絶え絶えの様子のクロノちゃんがヘッドダイビングで飛び掛かった。なんだかクロノちゃんがゴールドシップさんのお尻に顔を(うず)めてるような体勢になっていた。それはひょっとしてギャグでやってるのかな?

 あ、よく見たら前世でレース場を走っていた「馬」みたいな感じのポーズになってる。馬というかケンタウロスって感じだけど、2人とも本能が芸を求めているのがよくわかるワンシーンだ。写メ撮っておこう。

 

「いやんえっち、私クロノに犯されちゃーう」

「その減らず口を叩くのはこの尻かぁあああ!!!」

「ギャー!!!?」

 

 頬を赤らめてくねくねと恥じらうゴールドシップさんに対してクロノちゃんは彼女の大きなお尻を太鼓を叩くようにぺちぺち叩き始めた。

 目には目を、セクハラにはセクハラを。つまり「争いは同じレベルの者同士でしか発生しない」ってことだね。うん、勉強になった。動画撮っておこう。

 

「ぐっ…無駄に硬いケツしやがって……」

「がはは、修行が足りんな」

 

 しばらくクロノちゃんのケツドラム演奏が続いていたが、どうやらゴールドシップさんの鋼のような硬いお尻にクロノちゃんの手のほうが先に音を上げたらしい。流石はGIレースを走り抜いて鍛えられたウマ娘のお尻だ、面構えが違う。

 いやこの場合は尻構えだろうか?まあどっちでもいいか。

 とうとう根負けしたクロノちゃんがゴールドシップさんのお尻を解放してどこかに向かって歩いて行こうとする。

 

「どこ行くの?」

「水着に着替えてくる。馬鹿の相手したせいで汗だくだし、早く泳いでクールダウンしたい」

「そっか。じゃあね」

 

 私たちもこんなところでいつまでも時間を潰しているのももったいないので、ルビーと一緒に着替えに行った。

 

 ちなみにクロノちゃんは凄く水泳が上手だった。

 「なんでそんなに上手なの?」と聞いたら「冬の海で寒中水泳して溺れたバカを助けるために必死で練習した」という答えが返ってきた。

 クロノちゃんも思ったより苦労してるんだなぁ。

 

 

 

―――――――――――――――――

 

 

 ■■■■のヒミツ

 実は寒中水泳して溺れたバカを助けた世界線を経由してこの世界にやってきた。

 

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