完璧で究極のアイドルがGI九冠バに転生しました   作:雑穀ライス

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今のはメラゾーマではない。メラだ

「さあ!好きなだけ食べてください!!お金だけはたくさん持ってますから!!」

 

 キタさんがテーブルに並べられた山盛りの料理の前で大きな胸を張りながら私たちに宣言した。

 私たちは学食を出す食堂ではなく、トレセン学園内にある少しグレードの高いお店で食事をしていた。私が社長にナンパ、じゃなくてスカウトされたときに入ったお店である。

 格式ばったコース料理を出す店ほどじゃないけど、そこそこいいお値段がするメニューが結構あるんだよね、この店。レースで例えるならGⅢレースぐらいのランクかな。しかもトレセン学園の補助金が入っているみたいで学園の外で同じ料理を食べるよりも安い。

 ちなみに学食は安くて量がたくさん食べられるメニューが多いのでトレセン学園の大多数を占めるはらぺこウマ娘たちはだいたいそちらのお世話になっている。カロリーは正義、はっきり分かるんだね。

 

「歴代GI勝利ウマ娘の勝負メシシリーズ。一度食べてみたかったんだ」

「クロノってこういうのに目ざといよね」

「流行には率先して乗っていく性分なんだ。といっても私一人じゃ全部食べられそうにないから、みんなで少しずつ小分けして食べようか」

 

 クロノちゃんはルビーの指摘に淀みなく答えて、キタさんに会計を押し付けて注文した大量の料理についての薀蓄を語りながらみんなに配り始めた。

 

「クロノちゃんって物知りなんですねー」

「トゥインクル・シリーズの歴史を調べるのが趣味なだけですよ?この知識はその副産物です。もちろんキタサンブラックさんのこともよく知ってますよ」

「えへへ。なんか照れますね」

 

 先ほど出会い頭に痴漢行為を受けた相手とは思えないぐらいにクロノちゃんとキタさんは打ち解けていた。しかもクロノちゃんは推しのアイドルの握手会にやってきたファンのような表情をしている。

 流行の話といい、意外とミーハーなところあるよねクロノちゃんって。

 

「なんかクロノちゃんとキタさん、すごく仲良くなってるよね。さっき出会ったばかりなのに」

「何言ってるんだ、キタサンブラックだぞ?2016年と2017年のURAレースの主役だぞ?せっかく知り合いになれたんだから仲良くならないと損じゃないか」

「去年の成績はともかく、2017年はまだ始まったばかりじゃん」

「いーや、キタサンブラックは今年中にあと4つはGIレースに勝利すると見たね。あの伝説の皇帝シンボリルドルフに並ぶ逸材だよ彼女は」

「そこまで持ち上げられると恥ずかしいよ…」

 

 クロノちゃんにベタ褒めされたキタさんが顔を真っ赤にして照れた。

 

 改めてキタさんの容姿を観察してみる。

 うーん、美人だ。

 瞳が大きくぱっちりと開いていて可愛らしい顔つきなのに、手足はスラっと長い。かといってビジュアルに全振りした華奢な身体ではなくその中にみっちりと筋肉が詰め込まれているのがわかる。大きな乳房は強靭な心臓を持っているウマ娘の特徴だ。そのすべてがレースを走り抜くために鍛えられたアスリートの肉体である。

 美と速さの最高峰。どことなくルビーのお母さんであるカワカミプリンセスさんの現役時代を連想させる姿だった。

 

 GIレースを勝ったウマ娘って特に美人が多い気がするんだけど、なんなんだろうねあの現象。ウマ娘レベルがアップしたら身体能力のステータスだけじゃなく魅力のステータスも上がるのだろうか。

 ちなみに私のパンドラお母さんはふわふわした砂糖菓子みたいな印象を振りまいてるのでGI勝利ウマ娘の威厳はほとんど感じない。まあお母さんの魅力は分かる人にだけ分かればいいんじゃないかな。

 

 そしてキタさんのお父さんは有名な演歌歌手で彼女の持ち歌も演歌だということも個性として強い。父親のファン層をそっくりそのまま取り込めるのでアイドルとしての素質にも隙がない。去年の有馬記念では彼女は2着だったが、ウイニングライブとは別枠で親子デュエットを披露して観客から大歓声を受けていた。

 クロノちゃんの言ってた「2016年と2017年のURAレースの主役」という言葉もすんなりと納得出来る活躍ぶりだった。クロノちゃんのパンツを見せるだけでそんなすごいウマ娘と知り合いになれたというのはかなりお得な取引だったと思う。

 

 

 すごいなぁ。憧れるなぁ。

 みんなから、いっぱい愛されているんだろうなぁ。

 

 

 

「それでは、いただきます。ほらほら!冷めないうちにみんなも食べちゃいましよう!」

 

 キタさんが笑顔でみんなに食事を促す。

 私は彼女に対する羨望と嫉妬の混じった感情を「嘘」の仮面の下に隠した。

 そして誰も私の昏い感情に気づくことのないまま、みんな笑顔で料理を食べ始める。

 

 

 愛を知って、心は満たされたはずなのに。

 いつしか別の渇望が私の中から泉のように湧き上がってくる。

 

 

 

――いつか、彼女(キタサンブラック)を超えるウマ娘になりたい。

 

 

 

 料理を食べ終わる頃には、そんな苛烈な情熱が私の中にふつふつと沸き立っていた。

 

 

 

「うぷ…ちょっと食べ過ぎたかな?」

 

 会計を終えて店から出た後、クロノちゃんが青い顔をしながら言う。

 キタさんの奢りということで欲張ったツケがクロノちゃんのお腹の中から襲いかかり、タダより高いものはないという言葉の意味をその身で味わうハメになっていた。どうやらクロノちゃんは食べ物を食い溜め出来る体質ではなかったようだ。

 キタさんが心配しながらクロノちゃんの背中を(さす)っていたが、急にクロノちゃんがビクンと背筋を強張らせる。吐き気を我慢しているのかなと思ったら、どうもお腹ではなく背中の辺りを気にしている感じだった。

 

 あ、まさか。

 

「クロノちゃん、もしかしてキタさんに服の上からブラジャー外されたの?」

「~~~~~~~~!!!」

「きゃあ!?ご、ごめんなさぁい!!!」

 

 クロノちゃんは涙目で私とキタさんを睨みつけてきた。この様子だと正解っぽいね。

 うん、セクハラされた相手がクロノちゃんでよかった。クロノちゃんなら需要と供給が一致しているからこのぐらいでは大きなスキャンダルにはならないだろう。

 私はそんなことを考えながら、キタさんに無言で抗議するクロノちゃんの様子を微笑ましく見守っていた。

 

 

 

 しかしこの「大事にはならないだろう」という私の予想は大きく外れることになる。

 この程度のセクハラはキタさんのラッキースケベ体質にとって小手調べ…牽制のジャブでしかなかったのだ。

 

 

 このときの私たちはキタさんが「クロノちゃんパンツ強奪事件」「クロノちゃん押し倒し事件」「クロノちゃんダイナミック盗撮事件」という大事件を引き起こすとは夢にも思っていなかったのだった。

 

 

 

―――――――――――――――――

 

Q:ToL〇veる展開はウマ娘の規約的にアウトじゃね?(念押しの確認)

A:クロノジェネシスの中の人はウマ娘じゃないから…(白目)

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